企業に喜ばれる「密輸取り締まり」
李 文
昨年七月、中国政府は密輸取り締まりに大いに力を入れ、密輸取締体制を改革し、密輸取締警察を発足させた。昨年七月から今年五月まで、税関部門が摘発した重大な密輸事件は千四百二十四件に達し、事件に絡む金額は百十六億元を超えた。一年間にわたる密輸の取り締まりを経て、密輸によって大きな被害を被った業種はどうなっているのだろうか。
この間、第一自動車・フォルクスワーゲンは「アウディ」乗用車をPRした際、「中国政府の密輸取り締まりに感謝する」という胸の中の言葉を表明した。これは一年以来、国の密輸取り締まりに対する自動車業界の心からの言葉である。いやというほど密輸の影響を受けた石油化学、化繊、感光材料、食用油などの重点業種も同じように政府の密輸取り締まりによってもたらされた秩序立った、公平な競争環境に対し政府に感謝の意を表している。
自動車業界
昨年七月以前、広東、広西、福建、浙江などの省・自治区で自動車の密輸が猛威をふるっていた。「密輸自動車はこれら地方の自動車市場を占領し、わが社の自動車は広東でほとんどゼロに等しかった」と安徳武第一自動車グループ公司副社長は感慨深げに語った。
安副総経理の話によると、昨年七月、全国密輸取締対策会議以後、自動車の密輸が著しく抑制され、これら地方の自動車市場のために生存空間ができ、自動車メーカーは公平な競争の環境を手にした。第一自動車グループ公司製の自動車の販売台数はこれらの地域で大幅に増えた。広東省で一月から六月まで「紅旗」乗用車の販売台数は一五%増え、そのうち、六月には百余台が売れた。第一自動車グループ公司製トラックの広東省における販売台数は全国で三番目となっている。深せん塩田港はこれまで日本製の「三菱」トラックを使っていたが、現在、大量の第一自動車グループ公司製のトラックを購入している。
密輸自動車は関税、増値税を逃れるばかりでなく、売上税も逃れ、利潤から言えば、密輸は中・高級乗用車に大きな影響を及ぼした。第一自動車グループ公司製の「アウディ」乗用車は最もひどい損害を被った国産車である。密輸取り締まりに力を入れるようになってから、今年一月から五月まで、「アウディ」乗用車の販売台数は五六%伸びた。そうして、「アウディ」乗用車代理販売店は「中国政府の密輸取り締まりに感謝する」というPRの言葉を口にするようになったのである。
石油化学工業
密輸油類のあおりを食って、中国最大の油田である大慶油田は昨年一月から五月まで、余儀なく五百余りの油井を閉鎖し、石油を累計四十九万九千トン減産し、五億元の損害を出した。
密輸油類は製油所に最もひどい損害を与え、油製品の価格が大幅に下がり、平均価格は最高の一トン当たり二千二百元から最低の千四百元に下がり、一トン当たり千五百元の原価より低いものとなった。それによる直接経済的損失は約三億元に達した。密輸は中国の石油化学工業業種にこれまでにない苦しみをもたらした。昨年一月から三月までに、全国の石油化学工業業種は三十億元の欠損を計上した。
昨年下半期、国が厳しく密輸を取り締まった状況の下で、石油化学の工業市場が整備され、油製品の価格が回復し始め、安定するようになった。大慶油田の閉鎖された油井も生産を回復した。
設立後十四年になる上海高橋石油化学工業国際貿易公司は、昨年上半期、密輸油製品の影響によって、初めて六千万元の欠損を出した。同公司の羅新富総経理の話によると、企業の真の転機は昨年の八月に現れ、全国の厳しい密輸取締によって油製品の価格が回復し、企業の生産も正常化した。年末に、公司は上半期の欠損金を返済したばかりでなく、二億元余りの利潤を上げた。
国家石油・化学工業局によると、今年上半期に全国石油化学工業業種の利潤は八十億元に達した。
化繊業界
中国化繊業界の最大手企業は儀征化学繊維株式有限公司である。同公司の徐正寧副社長の話では、国内化繊紡績業種の原材料の供給には抜け穴があり、密輸は非常に深刻な状態にある。儀征化学繊維株式有限公司は一九九五年、十三億元の利潤を計上したが、一九九六年には三億元に下がり、一九九七年は四百万元に、一九九八年上半期は一億八千万元の欠損となり、同公司は初めて欠損を出したのである。ポリエステル切片を例とすると、密輸品は一トン当たりの価格が正常な市場価格より千余元安い価格で売られ、市場の秩序をひどくかき乱した。
密輸取り締まりによって、経済の秩序が整とんされ、経済の環境の改善と企業の公平な競争のためにチャンスを提供している。今年六月、ポリエステル切片の価格は昨年の一トン当たり六千三百元から七千三百元に上がり、短繊維は昨年の一トン当たり七千六百元から八千八百〜九千元に上がり、正常な水準に回復し、企業の操業率はあまぬく上昇した。今年一月から五月まで一億元の利潤を上げ、在庫はゼロとなった。
企業は政府が密輸取り締まりを長期的な活動として続けるよう望んでいると徐副社長は心をこめて言った。
感光材料業界
フィルムと感光紙の密輸は長年、中国の感光材料業種の発展の悩みとなってきた。中国の感光材料業種はもともとは世界でも立ち遅れていた。密輸品の影響の下で、その発展はより困難となった。
関係部門の統計によると、密輸が最もはびこっていた一九九七年にカラーフィルムと感光紙の密輸量はそれぞれ九千万個と四千八百万平方メートルに達した。税関筋の話によると、近年、正常な貿易ルートを通じて輸入したカラーフィルムと感光紙の量は非常に少なくなり、一九九六年は九万余個、二十万平方メートルで、一九九七年は七万余個、百万平方メートル、いずれも国内市場の一%を占め、国は十五億元の関税を損失した。
全国密輸取締対策会議以後、国内の感光材料市場は正常化し、感光材料企業も公平な競争の環境の下で発展している。楽凱グループの李宝和会長の話では、同公司は一九九八年の売上げ高は前年より九・四%増の九億三千万元に達し、利潤・税金上納額は前年より一九・三%増の八千二百四十二万元に達した。今年一月から五月まで、公司の売上げ高は増やし続け、五億余元に達した。
食用油業界
一九九六年、一九九七年の二年間に、密輸食用油は国内市場を大きくゆさぶった。関係部門の統計によると、この二年間に毎月、国内市場に流入した密輸食用油は一万トンに達し、正常な貿易量の半分を占めた。上海市が当時、広東、広西、福建、浙江などの地方から購入した枝豆油、精製油は一トン当たりの価格は市場価格より百〜二百元安かった。特に昨年の上半期、密輸食用油の影響で上海油脂公司の食用油製品が大量滞貨し、売れ行きが思わしくなく、一億五千万元の企業資金が占用され、五月から六月までの間に同公司は操業停止を宣し、直接の経済的損失は四百万元を超えた。
劉啓斌同公司副社長によると、全国密輸取締対策会議以後一カ月足らずで、企業の生産に転機が現れた。月間生産量は会議前の二千〜三千トンから、八千〜一万トンに上がり、石油価格は以前の水準に回復した。統計によると、昨年下半期、同公司は会議以前の欠損を埋めただけでなく、五千万元の利潤を上げた。
「国は企業を救い、密輸取り締まりはわれわれを救い、改めて市場を占領させてもらうことになった」。劉副社長の言葉は密輸で損害を被った企業の政府に対する感激の気持を表している。