ハイテク産業開発区の過去、現在、将来


 劉淇北京市市長は、国務院の認可した中国最初のハイテク産業開発区である北京市ハイテク産業開発実験区を、首都の経済発展を推し進める「エンジン」にたとえた。この「エンジン」は過去十年間に注目を集める成果を挙げ、主要な経済発展指標は終始三〇%以上の伸びを保っていた。一九九八年、同開発区の技術・工業・貿易収入額は五百十三億八千六百万元、国内総生産(GDP)は百五十七億元、工業総生産額は三百三十二億五千万元、輸出による外貨獲得額は三億三千四百万ドル、上納した税金と費用は十七億九千八百万元に達し、前年同期と比べて、それぞれ三五・七%、二〇・九%、四二・四%、一〇・四%、四〇・四%増え、北京市の工業成長への貢献度は五〇%以上に達した。劉市長は、同開発区は中国の新世紀に向かって前進する情報経済の強力なエンジンとなるものと信じていると述べた。

 国家科学技術部ハイテク開発区管理処によると、一部の主要な都市では、ハイテク開発区の発展がますます重要になってきている。張超英処長は例を挙げて、一九九八年、蘇州ハイテク開発区の工業総生産額が蘇州市街区の工業総生産の三三%、青島市ハイテク開発区が一六・六%、西安市ハイテク開発区とハルビン市ハイテク開発区が一四%、綿陽市ハイテク開発区が四四%それぞれ占めたと述べた。。。

創業と発展

 中国のハイテク産業開発区は八〇年代中期に芽ばえ、八〇年代末期から創建され始めたものである。これは、世界のハイテク革命にかなり立ち遅れていた中国が奮発してそれに追い付く始まりである。

 一九八八年に国が正式に設置を認可した最初のハイテク開発区から、すべてのハイテク開発区の誕生には、中国の第一世代の科学技術創業者たちが金字塔を打ち建てた後の伝奇的な色彩に満ちた開拓物語がたくさんある。これはアメリカのシリコンバレーなど多くの国と地域の科学技術ゾーンの創業の道とよく似ている。一九九七年現在、国家クラスハイテク産業開発区は全部で五十三カ所あり、北京、武漢、瀋陽、南京、広州、重慶、西安、上海、深せんなど知力が密集した都市に分布している。そのうち、北京、蘇州、合肥、西安、煙台の五つのハイテク開発区は「中国アジア太平洋経済協力会議科学技術工業ゾーン」とすることが認可された。そのほか、各省・自治区・直轄市では、地方のハイテク産業開発区がかなり多く設置された。

 十年の発展を経て、主に良好な投資環境をつくること、原始的な資本蓄積を実現すること、産業資源を初歩的に集積することを含めて、ハイテク開発区は創業の第一歩をほぼ踏み出した。これまで、各地のハイテク開発区は地元の経済成長率最高の区域となっている。

 科学技術部の統計データによると、毎年全国のハイテク開発区では数百社の企業が倒産したが、同時に新たに数百社企業が設立登記したので、一九九八年の時点で五十三カ所の国家クラスハイテク産業開発区はハイテク企業一万五千余社(従業員は約百五十万人)を擁している。そのうち、技術・工業・貿易総収入が億元以上の企業は六百社あり、その技術・工業・貿易総収入は四千二百億元、総生産額は三千九百億元、利潤・税金は四百四十億元、輸出による外貨獲得額は八十億ドルに達し、しかも北京の聯想、深せんの華為、青島のヘール、四川の長虹など独自の知的所有権を持つハイテク企業が現れ、同時に市場経済の要請に応え、強い技術革新能力をもつ多くの中小ハイテク企業がハイテク開発区で急速な発展を遂げた。

 広東省の広州ハイテク産業開発区は、すでに地元のハイテク産業の重要な基地および在来産業にハイテク技術を広める源となり、しかも速やかに広州市のますます主要な経済成長要素になりつつある。コンピューター通信産業と電子情報産業とバイオ医薬産業は、このハイテク開発区の柱となる三大支柱産業である。

 一九九八年末現在、広州ハイテク開発区は累計で、技術・工業・貿易総収入四百十余億元、工業総生産額百八十五億元、輸出による外貨獲得額二億七千六百万ドル、利潤・税金三十六億余元を実現した。ハイテクの波及作用で、ハイテク産業の生産額は全市の工業総生産額に占める比率は絶えず上昇しており、二〇〇〇年になると、一六%以上を占めるものと見られている。

 同開発区の中堅企業の中で、民営の科学技術企業はかなりの数にのぼっている。同開発区の盧錦洪副主任によると、ハイテク開発区の扶助政策と運営メカニズムは、抱負と理想を持つ多くの科学技術者に創業の条件を提供した。同開発区は科学技術計画プロジェクトの按配の上では、民営の科学技術企業を一視同仁に扱い、金融機構が貸付で民営の科学技術企業をサポートするのを奨励している。十数人が数十万元の資金で事業を興した新太グループは、十年の刻苦創業を経て、一億元の固定資産と千余人の各種の専門科学技術者を擁する、同業界の有名な企業グループとなった。

 華中地区にある湖北省は、全国で最初に地元政府の提唱、指導で、ハイテク開発区を設置した省である。武漢市を重点として、長江沿岸の経済がわりに発展し、科学技術の基礎が比較的堅固ないくつかの都市に依拠して、ハイテク産業開発区を建設することは、同省がここ数年ハイテク産業を発展させるために取った重要な措置である。一九九八年、全省のハイテク開発区の技術・工業・貿易総収入は二百一億九千万元に達し、近代的な通信と新素材など多くの強みを持つ産業を興した。

 国家クラス開発区である東湖ハイテク開発区では、武漢大学、華中理工大学などの著名な大学を含む二十三校の大学、十カ所の研究と設計機構、十カ所の国家工程技術センター、七百余の技術開発機構、二万余人の専門技術者を擁し、年間に千余項目の科学技術成果を挙げている。そのうち、武漢郵便電信科学研究院は中国の光ファイバー通信分野最大の研究、開発、生産、販売、サービスを一体化した研究機構であり、昨年の生産額は十億元に達した。長飛光ファイバー光ケーブル有限公司は、すでに中国最大の光ファイバー光ケーブルメーカーとなり、一九九八年の生産額は十億二千万元に達した。

 一九九八年、東湖ハイテク開発区の技術・工業・貿易総収入は百三十億元、工業生産額は百億元に達し、新規増加した生産額は武漢市のそれの四〇・五%を占めた。これによって、武漢市の工業生産額は五・五%伸びた。

 上海市のハイテク産業開発区に、海外業者が投資のため続々と訪れており、今までのところ約三百社が同開発区に投資し、世界の多国籍企業ベスト五百社のうち、四十余社が開発区にハイテク企業を設立し、総額七十余億ドルの外資が導入された。これらの海外企業は上海の研究機構と協力し、ハイテク成果を応用する産業に多額の資金を提供し、ここ数年に一千余項目の科学技術成果は生産力にシフトされ、年間に生産額が約百億元増加した。。。

企業「インキュベーター」

 十余年の創業と発展を経て、ハイテク開発区の建設と発展の規範は徐々に国際レベルとリンクし始めた。科学技術部ハイテク開発区管理処の李僚副処長は、当面最もよく発展しているのはハイテク創業サービス・センター、つまり企業「インキュベーター」であると次のように述べた。

 科学技術の成果が企業にシフトする過程、つまり企業の草創期は、最も弱い段階であり、それは乳児のように、扱い方が適切でなければ、きわめて若死にしやすい。企業「インキュベーター」はハイテク開発区内に草創期の企業を専門に保護するものであり、現在は全世界にはこのような「インキュベーター」が一万八千カ所あって、大きな「インキュベーター」サービス機構は四つある。

 中国のハイテク開発区内の「インキュベーター」である創業サービスセンターはハイテク開発区のようにスタートが比較的遅かったが、十年足らずのうちに、比較的順調な発展を遂げた。これらのセンターは技術革新活動と新たに設立された企業に場所、施設、関連サービスおよび養成と相談・指導を提供し、リスク投資活動を組織し、技術、資本、商品および研究機構、企業、市場の結合を効果的に促した。

 統計によると、一九九八年の時点で全国に創業サービスセンターは百近くあり、その中には総合的な企業「インキュベーター」ばかりでなく、専門技術「インキュベーター」、国際企業「インキュベーター」、「インキュベーター」ネットワークもある。このほか、インキュベートする場所八十万平方メートル、インキュベート基金二億元を擁している。現在は新型の小企業三千七百社を育成中であり、科学技術成果五千七百余項目をシフトし、ハイテク企業を累計一千二百社設立し、社会に十二万人の就職チャンスを提供し、自身の技術・工業・貿易総収入も六十億元に達した。

 「海外学人創業園」も企業「インキュベーター」の一種である。留学生が設立した科学技術企業はたいてい草創期にあり、創業の面で困難とリスクに直面している。「海外学人創業園」の作り出す部分的最適化の環境は、これらの企業に創業の始動段階を順調に乗り切り、ハイテク産業開発区とハイテク創業サービスセンターの国際優遇政策、および留学生の創業と帰国に関する各級政府の優遇政策を享受し、最小の投入とリスクで最大の収益を獲得させることができる。現在、全国「海外学人創業園」が三十カ所近くある。

 国際企業「インキュベーター」は、国連が中国のハイテク開発区をサポートするために設立したものである。その目的は、国外の科学技術成果と関係ある科学技術者を中国に来てインキュベートするように引きつけ、中国企業と協力して、市場を開拓し、共に発展するように助けることにある。他方では中国の中小科学技術企業と大手企業の研究機構が国際市場に進出して、国際業務を開拓し、発展させることにサービスを提供する。現在、北京、蘇州などに国際企業「インキュベーター」が八つ設立されている。発展計画によると、これらの国際「インキュベーター」はさらにロシアとアメリカなどでインキュベート基地を建設し、国外の科学技術成果と小型科学技術企業を直接吸収するとともに、国内の中小科学技術企業が当地の市場に進出するためにサービスを提供する。。。

ハイテク産業ベルト

 中国を横切る重要な鉄道幹線である隴海鉄道の陜西省区間を中心とする回廊地帯には、西安、宝鶏、楊凌という三つの国家クラスハイテク産業開発区と、咸陽、渭南などの省クラスハイテク産業開発試行区があり、陝西省の科学技術力と工業力の八〇%がこれらの開発区に集中している。「中国西部のシリコンバレー」と称されるこの地区では、二十一世紀のハイテクの神話がひそかに温められている。同地は今まさに形成されつつある全国十大ハイテク産業ベルトの一つである。これらのハイテク産業ベルトはほかに、京津塘ハイテク産業ベルト、珠江デルタハイテク産業ベルトなどがある。

 ハイテク産業ベルトは、交通幹線、海岸線、国境線および河川の河口に依拠し、若干のハイテク開発区を主体として構成された比較的大きな自然経済区域であり、この区域の知力、資金、天然資源、工業基盤を利用して、在来産業を比較的集中して改造している。当面の十のハイテク産業ベルトは、全国の八〇%以上の工業基盤を含めて、全国の七〇%以上の科学技術資源を集中しており、二十近くの省と直轄市の経済資源を調達し、八〇%以上の対外開放条件と海外資金を利用することができ、その未来の経済効果と影響は非常に巨大かつ深遠なものとなると思われる。

 遼東にある瀋大高速道路ハイテク産業ベルトは、瀋陽=大連高速道路をきずなとして、三つの国家クラスハイテク開発区、二つの省クラスハイテク開発区、三つの国家クラス経済技術開発区および四つの港、五つの空港があり、自動車道路の密度も非常に高い。現在は情報産業、バイオ医薬産業、新素材産業、先進的な製造業、高効率・省エネの環境保全産業に支えられるハイテク企業群が一応確立されている。一九九八年、同開発ベルトのハイテク産業の生産額は全省の九一%を占める六百三十九億元に達した。。。

何がまだ足りないのか

 しかし、シリコンバレーに代表される先進国のハイテクゾーンと比べて、中国のハイテク開発区は規模や収益でも、科学技術成果のシフトや開発区の管理建設の面でも、若干の格差がある。

 国家科学技術部の専門家と担当者の分析によると、中国のハイテク開発区が直面している主な問題は、科学技術資源開発への力の入れ方が足りず、成果のシフト能力が強くなく、大手企業の導入を重視して、小企業の育成をおろそかにし、特に沿海地区の一部のハイテク開発区では独自の知的所有権を持つ産業の発展が脆弱な状態にある。このほか、新政策による扶助と指導が足りないことも当面直面している比較的大きな問題である。例えば、リスク投資、資本市場の建設に相応の扶助・指導政策がなく、ハイテク開発区の総合的改革も政策によるサポートなどが足りない。

 中国の「リスク投資」メカニズムがこれまでいくら努力しても形成されないことは、新しい開発区の発展の大きな障害となっている。ハイテク開発区の企業を森林に例えれば、すべての木の枝にリスク投資者という鳥がいっぱい停まっているべきである。彼らは四六時中目標を捜しており、よいプロジェクトを発見すると、飛びついていく。ある意味から言って、リスク投資は科学技術革新と産業化の前提条件である。しかし、最も早く設置された北京市ハイテク産業開発試行区でさえ、今に至ってもリスク投資公司が二社しかないという状態である。

 リスク投資と関係ある中小科学技術企業の株式上場問題も、ハイテク開発区の発展を制約している。説明によると、当面、全国のハイテク開発区に、上場の条件に達している中小科学技術企業は少なくとも一千社ある。しかし、いろいろな原因で、国内の株式市場は今なお「中小企業創業プレート」を掲げていない。このため、この一千社の企業が上場できないばかりでなく、投資にも十分なリターンがなく、リスク投資者の投資の熱情が抑えられた。

 立法が遅れていることも、中国のハイテク開発区が直面している非常に大きな問題である。ハイテクゾーンを設置する世界のほとんどすべての国はまず立法し、その後で開発区を設置しているが、中国はこれと違ってハイテク開発区が設置されてから十年間たっても、「ハイテク開発区法」がまだ制定されていないのである。。。

第二次創業

 いろいろな困難があるとは言え、同業界の人たちは一致して、中国のハイテク産業開発区が第二次創業を迎えていると見ている。

 今回の創業は八月末に全国技術革新大会が開かれた時から始まった。この会議では政府は技術革新を強化し、ハイテクを発展させ、産業化を実現する決定を重ねて明らかにし、国は基礎、条件、強みを持つ少数のハイテク産業開発区を選んで、扶助政策を実行し、大胆に模索し、率先して新たな投融資メカニズムと激励メカニズムを構築し、国際上影響力を持つハイテク産業化基地をできるだけ早く形成し、全国のハイテク産業開発区の建設とハイテク産業の発展に有益の経験を提供するよう奨励することを表明した。

 新たに画策、位置付けされた北京ハイテク産業開発実験区の中関村地区が盛大裏に発表された。計画によると、全国のハイテク開発区の建設と発展を促すため、北京はほぼ十年の時間をかけ、力を集中して中関村地区を世界一流のハイテクゾーンにつくり上げることになっている。

 専門家たちの分析によると、今後の五年ないし十年は、中国のハイテク開発区が計画通りに、科学技術革新のシステムとメカニズムを構築し、良好な創業環境をつくり出し、科学技術産業化の能力を高め、独自の知的所有権をもつハイテク産業を発展させ、ハイテク開発区の発展レベルを高める重要な時期である。国家科学技術部の計画によると、この段階の初期にあたる二〇〇〇年に、五十三のハイテク開発区の技術・工業・貿易総収入の目標は五千億元であるが、二〇一〇年は一兆七百五十億元に達するという。

 

 

 

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