国有企業の経営難脱却のための債務株式化

 債務の株式化は最近、中国の企業界と金融界の注目を集める焦点となっている。中国政府は、一部の重点的国有大中型企業に対し債務株式化を実行することを決定した。

 債務の株式化は、銀行と企業間の債権・債務関係を金融資産管理公司と企業間の株式保有と持ち株の関係に変え、元利償還を株式に基づく配当に変えることである。こうして、金融資産管理公司は実際には企業の段階的に株式を保有する株主となり、法によって株主の権利を行使し、公司の重要な事務の決定に参与するが、企業の正常な生産経営活動には参与しない。

 四月二十日、国務院の認可を経て、中国最初の金融資産管理公司――信達資産管理公司が北京で設立された。最近、国務院はまた金融資産管理公司三社の設立を認可するとともに、「債務の株式化実施に関する若干の意見案」を原則的に認可した。

 王万賓国家経済貿易委員会副主任は「債務の株式化の実施は、国が金融リスクを解消し、企業の債務負担を軽減し、国有企業の三年内の経営難脱却を促すためにとった重要な戦略的措置である」と語った。

債務の株式化を実行するのはなぜか

 国有企業の三年内の経営難脱却の目標は、早くも昨年初めに打ち出されたものであるが、国有企業の資産負債率が高すぎ、利子負担が重すぎ、現代企業制度の確立がなおも時間がかかるなどの要素によって、国有企業が改革を行うのは困難であった。国有企業の利子負担が重すぎることは、国有企業の苦境脱却を阻害したばかりでなく、銀行の不良資産の比率を上昇させた。

 統計が示しているように、改革・開放以来、国有企業の平均資産負債率はずっと上昇の勢いを呈しており、一九八〇年は一八・七%だったが、一九九三年は六七・五%に上昇した。このほか、一九九三年の企業の平均流動資産の九五・六%は銀行から来たものであり、一九九四年、国有企業の平均資産負債率は七九%以上に達した。

 早くも一九九六年に、経済学者が「中国の国有企業は空前の債務危機に直面している」と警告した。

 四大国有銀行の融資対象は主に国有企業であり、国有企業の不良債務問題と銀行の不良債権問題は実際には同じ問題の二つの側面となっている。

 一九九三年と一九九四年、債務の株式化はホットな話題であったが、その後に実行された「商業銀行法」が、銀行の企業株式保有を禁止したため、うやむやになってしまった。現在、国有企業の経営が困難にぶつかっており、銀行の不良資産がなかなか減らないため債務の株式化は銀行をこのような悪質循環の債務チェーンから脱却させる考え方として、再び人々に思い出された。今年の春に、「『世界経済フォーラム』 中国企業サミット会議」で、中央銀行の戴相竜行長は「国有企業は普遍的に資本金が不足し、負債率が高すぎる問題に直面しており、これらの問題を解決するとともに、社会の資金を企業の資本に効果的に転換させなければならない」と語った。六月十七日、江沢民国家主席は西安で西北地区五省・自治区国有企業の改革と発展に関する座談会を主宰し、「マクロ経済環境と国家資金の可能性に基づいて、積極的な措置をとり、異なる状況を区別して、企業の資本金が不足し、負債率が高すぎ、社会負担が重いなどの問題を逐次解決しなければならず、企業の資金増加、債務軽減という効果的なメカニズムを構築しなければならない」と強く指摘した。

 国家経済貿易委員会の関係筋は、債務の株式化を実施するのは、主として次の三つの目的を達したいからであると語った。

 第一は銀行の資産の質を高め、金融リスクを防止することである。企業負債の中の不良部分を分離させて資産管理公司などの機構に入れ、相対的に良好な部分は銀行が引き続き保有する。こうすれば、銀行の資産の質を大幅に高めることができる。

 第二は国有企業の経営状況を改善することである。多くの国有企業は設立されたばかりの時に、資本金が非常に少ないかまたは全然なく、ほとんど全額負債であった。これは企業経営に困難をもたらした非常に重要な原因の一つである。企業の負債率を引き下げれば、その財務負担を軽減し、企業の経営改善に大きな可能性を提供することができる。

 第三は企業の株主権の構成を改め、現代企業制への転換を推し進めることである。債務を株式化させた後、企業の株主権構成に変化が生じ、現代の有限責任公司に転換し始め、経営メカニズムも相応に転換を生ずる。債務株式化のあと、資産管理公司は株主であり、株主は投資のリターンを追求する。この状況の下で、経営者が企業の経営状況を改善できなければ、株主は「公司法」に基づいて経営者を更迭することができる。

 国家経済貿易委員会の関係筋によると、債務の株式化は「双方に有利な」政策である。企業にとって、債務の株式化の実施後、債務は資本金に変わり、多額の元利償還金が減少し、企業の債務償還圧力が小さくなり、財務状況が改善され、企業の経営難脱却に役立つ。銀行にとって、商業銀行の不良資産を活性化させ、不良資産の回収を加速し、資産の流動性を増加し、金融リスクの解消に有利で、国有銀行の商業化にも役立つ。

債務の株式化をどう実施するか

 債務の株式化には二つのルートがある。一つは企業に対する銀行の債権を直接企業の株主権に転化させることであり、もう一つは銀行が債権を第三者(例えば金融資産管理公司)に売却し、第三者がこの債権を株主権に変えることである。

 国有企業の債務株式化の具体的なやり方は次の通り。

 まず国家経済貿易委員会が企業名簿を提出し、資産管理公司が確認する。資産管理公司は企業の具体的状況に基づいて、株式化の債務額を確定し、債務者と債務の株式化の転換比率を確認する。資産管理公司は市場状況に基づいて、株主権を直接内外の投資者に譲渡することができる。債務の株式化を実施した企業も条件に合致すれば、上場することができる。

 これを見ても分かるように、資産管理公司は重任を背負っており、商業銀行の不良資産を経営する公司として、金融資産管理公司の性質は独立法人格を持つ国有独資金融企業である。

 その他の金融機構と比べて、資産管理公司は業務と運営の面で多種の資本市場手段という機能的な強みを持っている。業務範囲には、金融機構の不良資産の買収、売却、譲渡、買収した不良資産の経営と管理、閉鎖された金融機構の委託管理、金融機構資産の価値保持と価値増加に必要な融資、再編などサービスの提供、金融債券の発行、商業融資、担保の提供が含まれている。

 理論上から言えば、資産管理公司の役割は、債権者を株主に変え、正々堂々と企業経営の政策決定に参与し、効果的な監理を実施し、債務企業に対する制約力を増強することができ、また債務の株式化を契機として、国有企業を再編し、その管理強化、経営改善を促して、企業の債務償還能力を高め、企業に良質循環の発展の道を歩ませる。

 しかし、資産管理公司の運営が今後、順風満帆であるかどうかについて、学術界の見方はまちまちであり、企業管理者が観念を改めず、経営メカニズムを改めず、従業員がリスク意識を改めなければ、債務の株式化は企業にあまり生気をもたらさないと見る人もいれば、具体的な運営の過程で、関連法律の支持がなければ何もすることができないと見る人もいる。

 伝えられるところによると、金融資産管理公司の経営期限は十年であるが、中国人民銀行の認可を得れば、適度に延長するかまたは繰り上げて終わらせることもできる。企業の経営状況が好転すれば、管理公司は上場、譲渡、企業の買い戻しなどの方式を通じて、株主権を企業に返すことができ、存続する期間内に完全に処理できない不良資産は、一定の比例に基づいて金融機構に返還し、貸し倒れとして相殺することができる。

 債務株式化の政策が制定された後、多くの企業家は自分の企業で試行することを望んでいる。このため業界筋は、債務の株式化が国有企業のすべての問題を解決するのは不可能であり、企業自身の構造調整と経営管理向上がなければ、たとえ債務の株式化に成功しても、その高すぎる融資コストは再び企業をつぶすことになると忠告した。

 このため、国は第一陣に債務の株式化を実施する企業に厳しい選択条件を提出した。債務の株式化を実施する企業は次の五つの条件を備えていなければならない。

 一、 製品の品種がニーズに合い、品質が要求に合致し、市場競争力がある。二、プロセスと装備が国内と国外をリードする水準を持ち、生産が環境保全の要求に合致している。三、企業の管理水準がわりに高く、債権と債務がはっきりし、財務行為が規範的である。四、企業の指導グループが有能で、董事長、総経理が経営と管理に長じている。五、企業経営メカニズム転換案が現代企業制度の要求に合致し、各種の改革措置が有力で、人員整理による収益増加、一時帰休と分流任務が実施に移される。

 具体的に言って、債務の株式化実施の重点は次の三種の企業に置かれる。第一は国民経済発展の中で重要な地位を占める大型、特大型国有企業であり、第二は近年、国の重点的建設プロジェクトを引き受けた企業であり、第三は全国の六千五百九十九社の欠損企業の中の条件を備わっている企業である。

 現在、国家経済貿易委員会などの部門は、債務の株式化を実施する企業の名簿を篩にかけている。信達、華融、長城、東方などの金融資産管理公司は今、中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行の現有の不良借款に対し剥離を行っている。

国際協力を求める信達

 最初の金融資産管理公司である信達資産管理公司は、四月二十日にオープンした。公司の登録資本金は人民元百億元で、財政部が全額支出した。その業務には、建設銀行から剥離された不良資産の買収と経営、債務追償、資産の置換と譲渡と売却、債務再編と企業再編、債務の株式化と段階的持株、資産証券化、直接投資、債券発行と商業借款、金融機構からの借款と人民銀行への又貸し申請、投資と財務と法律の諮問と相談、資産とプロジェクトの評定、企業の会計核査と破産・清算、金融監理部門の認可したその他の業務が含まれている。

 信達公司は中国建設銀行から剥離された不良資産を買収、管理、処理し、最大限に資産を保全し、損失を減少する。公司は中国人民銀行が責任を持って監理する。中国人民銀行の監理範囲外の金融業務は、関連業務主管部門が監理し、財務部門が責任を持って財務を監理する。

 六月末現在、公司本部で実際に働いている従業員は三百八十八人である。

 同公司の黄志凌博士は、次のように説明した。

 現在、公司はスタートしたばかりであり、必要な組織の枠組みを構築し、必要な規則と制度を制定し、従業員がほぼ所定の位置に着いた。不良資産の引受と評価の前期準備作業はほぼ軌道に乗った。資産処理の面では、債務の株式化は一部の部門で試行を始めた。

 公司は帳面面の価値で建設銀行の不良融資を受け入れ、建設銀行、信達公司、社会の仲介機構は建設銀行の不良資産の純価値を確定し、道徳リスクを防止するため、不良融資を審査、評定することになった。公司は債務の株式化、企業の再編を資産処理活動展開の突破口としている。現在、一部企業の資産再編はかなりの進展を遂げ、そして、再編作業案を確定した。次の段階では、公司はこれら企業の資産剥離と制度改革を通じて、これらの企業を規範的に運営する現代企業に改造する。

 九月二日、信達資産管理公司と北京セメント工場の親公司である北京建材グループは北京で債務の株式化契約に本調印した。北京セメント工場は最初の債務株式化の企業となった。九月七日、信達資産管理公司はまた上海焦化有限公司の二大株主である上海華誼グループ、上海都市建設投資開発総公司と債務株式化の取り決めを結んだ。これは、国務院の定めた国有大中型企業活性化の重要な措置が正式に実行に移されたことを示している。

 公司は積極的に国際協力を求め、国際業務を着実に展開している。双方が会談を行った結果、アジア開発銀行の代表はこのほど、アジア開発銀行が信達公司に技術援助を提供する覚書に本調印した。

 中国最初の資産管理公司としての信達公司は、試行の性質を帯び、斬新な業務に直面し、多くの仕事は絶えず模索、研究する必要がある。

 資産管理公司の設立は、銀行の不良資産を処分し、中国の金融リスクを防止、解消する必要な手段であり、金融改革を深化させる重要な措置であるが、存在している不良資産を解決する唯一のルートではなく、資産管理公司がすべての問題を解決するのを期待することができない。

 まず、四つの資産管理公司を設立しても、四行の国有商業銀行の不良資産しか処理できず、政策的銀行、その他の商業銀行、信託公司、証券公司、信用社などの金融機構は依然として多くの不良資産を抱えており、金融リスクが依然として存在している。次に、資産管理公司が四行の国有商業銀行の不良融資しか処理できず、経済過熱時期から残されたコールローン、直接投資などによって形成された大量の不良資産が依然として銀行内部に残っている。第三に、国有商業銀行の不良融資も全部資産管理公司に移して処理するのではなく、移されるのは一九九六年以前に行った期限切れの不良融資であり、かなりの不良融資が依然として銀行内部に残っている。このため、資産管理公司がすべての問題を解決することに大きな期待をかけることができず、かなり多くの問題は、国が商業銀行に一定の政策を与え、商業銀行が自ら解決しなければならない。

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