ＷＴＯに歩み寄る中国
中 和
十一月十五日午後三時五十分、六日間の苦難に満ちた夜を日に継いでの交渉の末、石広生中国対外貿易経済合作部部長とバーシェフスキ米通商代表部代表は北京で中国の世界貿易機関（ＷＴＯ）加盟に関する中米の合意書に署名した。国際世論はこれに速やかに反応し、この交渉結果はビジネス上の重要性を持つだけでなく、グローバル経済の発展にとってもかなり重要なものであると見ている。
江沢民国家主席――「志あれば、必ず成功する」
江沢民国家主席は十五日午後、中国のＷＴＯ加盟問題に関する中米の二国間交渉に参加するため北京を訪問していたバーシェフスキ代表とスパーリング大統領補佐官・国家経済会議事務局長をはじめとするアメリカ政府代表団と、中国政府機関所在地の中南海で会見した。
その際に江沢民主席は、ここ数日来アメリカ代表団と石広生部長をはじめとする中国側代表団が中国のＷＴＯ加盟問題について夜を日に継いで交渉を続け、双方の共同の努力によって話し合いが最終的合意に達した、これは喜ばしいことであると次のように語った。
両国の代表団の粘り強い取り組みと、勝ち取った成果を高く評価する。「志あれば、必ず成功する」と言われるように、中米双方は今日ついに「中国のＷＴＯ加盟に関する中米二国間取り決め」に署名したが、これは重大な現実的、歴史的意義を持つ。この合意文書への署名は中国のＷＴＯ加盟のプロセスの加速にとっても、また中米間の経済貿易協力の全面的な発展の促進にとっても、さらには中米関係を改善し発展させることにとってもプラスとなり、世界経済の発展と繁栄に新たな原動力を注ぎ込むものであると信じている。
今回合意に達したことは、われわれ双方が戦略的な次元や二十一世紀を展望する角度から、両国人民と世界人民の根本的利益にかかわる重要事項をよく見て処理すべきだということを如実に物語っている。一九九三年のシアトルにおけるクリントン大統領との最初の会談以来、われわれ二人は関税貿易一般協定（ガット）すなわち後のＷＴＯへの中国の加盟問題について常に意見を交わしてきた。十一月七日、わたしはクリントン大統領と再度電話を通じて話し合い、中米交渉のプロセスを加速して妥結へともっていき、互いの利益となる好ましい合意に達することを決定した。今回の合意は、双方が大局から着目し、平等互恵および互いに配慮して譲り合い、小異を残して大同に就くという精神に基づいてたゆまぬ努力をし、それによってさまざまな困難を克服し、双方の食い違いを適切に処理、解決し、「双方の勝利」という結果を勝ち得たものである。このことからも、中米双方が両国国民の根本的利益をしっかり把握し、互いに尊重し、誠意をもって接しさえすれば、両国関係を絶えず前進させることができることが分かる。
石広生部長――ＷＴＯ年内加盟に期待
「中国のＷＴＯ加盟に関する中米二国間取り決め」に署名したばかりの石広生対外貿易経済合作部部長は興奮を隠しきれぬ様子ですぐ談話を発表し、「交渉のプロセスの中で、双方は互いに配慮して譲り合い、平等に話し合うといった精神、および『双方の勝利』という原則にのっとって、ついに双方が満足のいく合意に達した」と述べ、次のように語った。
この交渉のプロセスと合意の達成は、両国の指導者自らの配慮と指導のもとで進められ、合意の達成は中米両国の利益に合致し、中米関係の安定と発展および中国のＷＴＯ早期加盟にとってプラスとなり、世界の経済貿易の発展を促進するものである。
われわれは中国が今年中に、ＷＴＯに加盟できることを期待している。ＷＴＯの加盟国の資格で、世界経済貿易の発展に重要な貢献をすることを願っている。中国は世界最大の発展途上国であり、中国のＷＴＯ加盟は必ずや世界貿易の発展と世界貿易の新秩序確立と改善を促進するに違いない。中国はＷＴＯに加盟してからは、この機関の加盟国としてその権利を享受すると同時に相応の義務も果たし、同機関の各加盟国・地域と積極的に協力し合って、世界経済貿易の繁栄のために共に努力していく。この機会を借りて、中国のＷＴＯ加盟を支持してくれた世界各国に感謝する。
バーシェフスキ代表――これは歴史的瞬間
石広生部長と同様、アメリカの交渉責任者のバーシェフスキ代表も興奮冷めやらぬといった感じで、次のように情熱にあふれて語った。
わたしが言いたいのは、これは紛れもなく歴史的瞬間であり、米中両国が合意に達したことは、両国の貿易を正常なものにし、中国の改革・開放を助けるであろう、これはまさに中国の今期政府の特色の一つでもある。われわれ両国の関係は長年来ずっと非常に複雑で、多くの困難にぶつかってきたが、今日署名された合意によって、両国関係はより安定し、世界の貿易に新たな繁栄と新たな安定がもたらされることになろう。
双方が合意に署名する前、私はクリントン大統領に電話でこのグッド・ニュースを知らせた。クリントン大統領は、江沢民主席が戦略的次元から中国のＷＴＯ加盟交渉問題に取り組んだからこそ双方は最終的に合意に達することができたと見ている。わたしはクリントン大統領に代わって、江沢民主席と朱鎔基総理の苦労に満ちた努力に感謝し、またわたしの古くからの友人である石広生部長および中国代表団のメンバー全員にも感謝する。
スパーリング大統領補佐官――両国の指導者に拍手
バーシェフスキ代表に継いで、スパーリング大統領補佐官も次のように述べた。
米中両国は極めて大きな誠意によって合意に達したが、これは双方にとって素晴らしい合意であった。また歴史的意義を持つ合意でもあり、必ず米中関係発展の歴史に書き記されるであろう。わたしはここでクリントン大統領、江沢民主席、朱鎔基総理に拍手を送りたい。この方たちは大局を配慮し、短期的な政治上の便宜的措置はさておき、二十世紀にわれわれが食い違いを見せた事柄をするのではなく、二十一世紀のより自由でより開放された世界経済のために努力した。
米中両国には今なお食い違いが存在しているとはいえ、われわれ両国は協力の精神にのっとって、より緊密な関係とより素晴らしい未来を確かに創造できることが、この六日間の体験で十分明らかになった。
この合意は「三つの勝利」の合意である。すなわちアメリカの輸出の促進と就労人口の増加が一つの「勝利」、中国の経済改革が一つの「勝利」、グローバル経済の発展がもう一つの「勝利」である。
アメリカ大統領、副大統領、バーシェフスキ代表とわたしは必ずや全力を尽くして議会に働きかけ、中国の正常な貿易関係待遇の恒久的解決のために努力する。
竜永図対外貿易経済合作部副部長――中国のＷＴＯ加盟にとって最大の障害を一掃
笑顔をほころばせた石広生部長、バーシェフスキ代表、スパーリング大統領補佐官と比べ、交渉の中国側首席代表で対外貿易経済合作部副部長の竜永図氏の表情は一貫して落ち着いたものであり、厳粛でさえあった。もしかしたら交渉中に何度もくり返して困難を経験してきたこの人であったればこそ、成果が現れたときの感慨もひとしおであったのかもしれない。
交渉が終わった後、竜永図副部長はすべてのマスコミの取材の標的となった。
取材に対し、竜永図副部長は次のように語った。中米両国が二国間の合意に署名したことは、中国のＷＴＯ加盟の最も重要な一歩である。なぜならＷＴＯには百三十五の加盟国・地域があるが、その中でアメリカが全局面を左右する立場にあり、アメリカとの交渉が妥結したことが中国のＷＴＯ加盟にとっての最大の障害が一掃されたことを意味するからである。
（「交渉において中国はなぜこんなにも『粘り強かった』のか。中国はなぜＷＴＯに加盟する必要があるのか」という質問に答えて）まず中国は、二十年余り前に国連で議席を獲得しなければならなかったように、一大国としてＷＴＯという経済の国連の中で必ずしかるべき地位を得なければならない。一中国人としてわたしは、何度もＷＴＯのオブザーバーの席に座ってきたが、気持ちはとても重かった。長期にわたって中国を世界経済の主流の外に排斥してきた時代は、もはや幕を閉じるべきである。また、世界経済がグローバル化し、国と国の間の経済と貿易の関係がますます緊密になるにつれて、中国は世界経済の大潮の中で必ず衝撃と洗礼を受け入れていかなければならない。そうしてこそ中国は、二十一世紀に真の経済大国となることができるのである。
（「ＷＴＯへの加盟は、中国の民衆の生活にとって何を意味するか」という質問に答えて）中国のＷＴＯ加盟によってもたらされる影響のより多くは中・長期のもので、一夜にして重大な変化が発生することはあり得ない。例えば、自動車の関税にしても、中国は毎年一〇％余りずつ下げることに同意し、自動車の輸入価格が毎年約一〇％下がるので、緩衝期間が長く続く。だがこういった中・長期の影響は重視すべきで、中国企業にはより強固な国際競争力と国際間の決まりに従って事を運ぶのを身につけることが要求される。十年ないし二十年後になれば、中国のＷＴＯ加盟によって生じる影響が表れてくるはずである。
今回の中米両国交渉の焦点となった問題は、市場開放の問題である。中国は改革・開放を堅持している国で、市場開放はわれわれの基本国策によって決定されたものである。アメリカは中国という潜在的な大市場に極めて大きな関心を抱いており、そのため中国市場に参入したいと思っている。この問題の上で中米双方に共通はあるが、問題はその共通点がどこに位置づけられるかということである。中国は発展途上国であり、中国の開放は政府の管理下で、漸進的、段階的に行うものでなければならない。