WTO加盟後の対応策について
世界貿易機関(WTO)加盟後において、いかにそれに対応するかという問題は、経済界の人たちが長年にわたって議論してきた課題である。今、それは確かに中国企業が直面する問題となった。
不動産業
WTO加盟後、中国経済は世界経済といっそう密接につながり、世界経済あるいは地域経済には変化が生じ、その中国経済への影響はますます大きくなると思われる。不動産業の発展が経済の発展に密接にかかわるものであるため、中国の不動産業はさらに世界経済の影響を受けることになるに違いない。
国家発展計画委員会の一九九八年度に対する予測によると、中国経済の調整期は二〇〇〇年末あるいは二〇〇一年初めに終わる可能性がある。WTO加盟のプラス要因を加えると、中国経済の調整幅はいっそうスローダウンし、調整期が適当に繰り上げられる可能性もある。WTOに加盟し経済調整が終了して回復した後の数月間に、まず投資の増加によって、住宅以外の不動産に対する需要が増え、続いて住宅類不動産の需要もいっそう増えるものと思われる。
中国の不動産業は、外国の先進的な考え方、技術と管理を学び、変化する市場状況(競争の相手の状況を含む)をよく把握し、不動産開発投資の盲目性を軽減し、不動産の開発コストを減らし、市場における位置づけの正しさを重視すべきである。まもなく中国市場に進出する強大な競争の相手に直面し、中国の不動産業は一日も早く相応の対策を制定し、出来るだけ早く建設コストが高すぎる問題を解決し、価値増加の潜在力がなくなり、売れ行きがよくない建売り住宅在庫物件を早急に処理しなければならない。
通信業
最近、朱鎔基総理は中国の通信運営市場を開放し、外国業者が通信運営企業に投資することを認め、株式保有額は三五%に達することができ、しかも数年後、株式保有額を引き続き緩和することを明らかにした。WTO加盟後、電信分野の貿易障壁はさらに除去されることになろう。品質と性能の面で外国の製品に及ばない中国の通信設備製造業は厳しい試練に直面することになると思われる。
情報産業部の関係筋によると、ここ数年来の急速な発展を経て、中国の郵便・電信・電話の基盤施設整備は安定発展の段階を迎え、需要量はいくらか低下するが、国内の関連企業の数と生産量はいっそう増えると思われる。供給が需要を上回る市場の情況によって、中国の通信企業間の悪性的な競争が現われるのは必至であり、これは国内の通信製造業の健全な発展に影響を及ぼすに違いない。
現在、国内の通信製造業に存在する問題は主として製品構成の同一性であり、ほとんどの通信企業の主要製品は皆自動交換機で、その他の製品は依然として開発段階に留まり、生産スケールがまだ形成されていない。例えば、携帯通信設備製造分野では中国の企業は外国の同業者よりはるかに立ち遅れている。
そのほか、高い負債を抱えた経営は、国内の通信企業に大きな圧力をもたらしている。ある環に問題が生じると、企業の生存に影響を及ぼす。また、ブランドが多すぎることによって、地方保護主義と悪性的な競争が現われている。しかも、重複建設が国の限られた資金を浪費しているばかりでなく、企業の市場参入にもマイナスとなる。技術備蓄の不足、生産コストが高すぎることなどの問題によって、国有ブランドの市場開発の能力が大いに弱められるようになった。
喜ばしいのは、意思決定者と管理者たちがすでにこれらの問題を認識し、国産通信設備製造業の発展をサポートする政策を絶えず制定し、関係部門が国産自動交換機ユーザー協調会議を数年連続して開催し、国産設備の使用を奨励していることである。
国は新たな経済成長要素となった携帯通信設備の生産と開発をも大いにサポートしている。業界筋はこう見る。中国の通信生産企業はたえず自身の科学研究への取り組みに力を入れ、知的所有権を持つ第二世代と第三世代の携帯通信設備を開発すると同時に、全力あげて生産コストを引き下げ、積極的に国際市場を開拓しなければならない。
紡績業
現在、中国の紡織品市場は日本、アメリカ、EU、香港特別行政区の四大市場に集中している。欧米の紡織品市場は中国がWTOに加盟してからかなり大きな変化が現れるものと思われる。欧米市場は二国間の商談を踏まえた割当市場だからである。中国はWTO加盟後、もとの二国間貿易体制から多角的貿易体制に転換することになると思われる。これは中国がより高い待遇、より安定した貿易面での優遇を獲得することに役立ち、さらに中国の紡織品の輸出に役立つことになるはずである。
しかし、短期的に見れば、状況はそれほど人々に喜ばれるものではない。WTOウルグアイ・ラウンドの紡織品・アパレルについての取り決めに基づいて、紡織品の割当制限は十年延ばすことができる。すなわち、一九九五年一月から二〇〇五年一月にかけて、四つの段階に分けて廃棄されることになる。また、WTOの最恵国待遇の例外規定に基づいて、国境貿易、自由貿易区及び関税同盟は例外の状況として処理されることができ、そのため、二〇〇五年まで、自由貿易区などの最恵国原則の例外条例を生かして、欧米諸国は紡織品貿易の区別された対処の面で弾力的政策を引き続き保つことができる。
もちろん、WTO加盟は中国の紡績業にとって、メリットが弊害より大きい。これは主として次の二つの面に体現される。一つは、WTO加盟後、中国は紡織品貿易の面で年間割当増加において安定した増加率を享受することができることである。もう一つは、貿易紛争がかなり大きく改善されることである。現在、多くの国は何かというと中国に対して制裁措置をとることになっており、その結果、中国の紡織品は多くの市場を失った。WTO加盟後、WTOの仲裁メカニズムを生かして、中国の企業は申し立てのルートを獲得することができる。
発展の角度から見れば、WTO加盟は、中国紡織品の輸出市場の拡大、紡績工業の調整及びアパレル業のより高い次元へのシフトに役立つ。
自動車産業
貿易、技術、価格などのさまざまな角度から見れば、WTO加盟後、中国の自動車産業はいろいろなマイナスな競争要因に直面することになろう。貿易について言えば、中国の自動車取引にはかなり大きな赤字が現れる。一九九七年を例にとってみよう。中国の自動車輸入総額は二十一億ドル、輸出総額は十億ドルで、輸入額は輸出額の倍以上となった。技術開発の角度から見れば、中国の乗用車産業の開発能力は相対的に立ち遅れており、現在、乗用車の独立した自主開発能力を持つものは第一自動車製造グループだけである。価格の角度から見れば、乗用車の価格は普遍的に同類の輸入乗用車より低いが、実質的な価格の強みを持っていない。WTOに加盟すると、関税は数年間逐次大幅に引き下げられ、国産乗用車の価格の強みはますます小さくなる。上記の三つの要素をまとめると、幼年期の段階にある中国自動車産業はやはり保護を必要とする。
保護の主な措置は高額の自動車輸入税を徴収することである。中国の自動車輸入税はずっと高く、WTOの基本的要求に達するため、ここ数年来、中国は自動車関税水準を逐次引き下げている。一九九二年から一九九七年にかけて、合わせて五五%引き下げ、現在、自動車の平均関税は八〇%〜一〇〇%にとどまっている。中国の自動車産業は今なお幼年期にあり、保護の必要があるため、自動車関税は長期にわたってだんだんと引き下げられるべきである。このほか、非関税の面でもいくつかの保護措置もあり、非関税障壁が緩和されてからも、いくつかの潜在的な障壁が依然としてかなりの期間に存在することになるからである。
WTO加盟は、中国の自動車産業の構造調整を促すことになるはずである。それは次の二点が挙げられる。
一、自動車メーカーの構成について、中国は一九九二年に自動車産業政策を公表して以来、経済的自動車と大型自動車のメーカーの育成を重視している。WTOに加盟してから市場が開放されるにつれて、フォルクスワーゲン、ゼネラル・モーターズ、ホンダなど世界の大手自動車グループはさらに中国市場に進出することになる。それが国内のメーカー構成の変化をもたらすのは必至である。しかし、こうした変化は限られたものであり、国内の大型自動車グループが主体を占める枠組が大きく変わる可能性はない。国外の大手自動車メーカーは合弁の形で中国の大型自動車グループと密接な関係を樹立することになるからである。
二、製品構成の面では、一部の付加価値の高い製品は大きな衝撃を受ける。完成車については、主として中高級の乗用車を指し、部品については、主に乗用車の部品を指す。注意しなければならないのは、相対的に言って、長期にわたって中国は完成車の製造を重視し、部品製造を無視してきたことである。そのため、乗用車メーカーは合弁やスケールの強みに頼って激しい淘汰の中でかなりのシェアを占められるかもしれないが、しかし、立ち遅れた部品メーカーの一部は衝撃を受け、併合の対象となる可能性がある。