ますます発展する私営企業
中国では、「民営企業」とか「私営企業」とか、あるいは「個人経済」と言われている企業があるが、それらはすなわち非公有制経済である。
一九八四年四月十三日に国家工商行政管理局が大連市の個人経営者である姜維一さんに営業許可証を発給したことから、三十年ぶりに私営経済が復活した。昨年末までに、中国の個人・私営経済の従業員数は七千八百万人余り、登録資本金は一兆一千億元余り、総生産額は一兆千八百億元に達し、国民経済の中の大きな活力を持つ構成部分となっている。
「資本主義のしっぽ」から「重要な構成部分」へ
私営経済は中国では紆余曲折な発展の道をたどってきた。一九四九年中華人民共和国の成立後、官僚資本が没収され、外国資本が締め出され、民族資本が回復、発展した。だが、五〇年代中頃に、社会主義的改造が進むにつれて、国は八万八千社の私営工業企業の九九%、二百四十万社の私営商業企業の八五%に対し、公私合営、またはその他の形態の再編を行い、国営経済、合作社経済、公私合営経済からなる社会主義経済が国民経済に占める割合が九二・九%に達した。「文化大革命」(一九六六〜七六年)には、私営経済は資本主義の代名詞となり、「資本主義のしっぽ」として切り捨てられた。
七〇年代末期になって、中国は改革・開放政策をとり始め、私営経済が発展してきた。一九八八年の第七期全人代第一回会議で、憲法が初めて改正され、「私営経済は社会主義公有制経済の補充である」、「国は私営経済の合法的権益と利益を保護する」などの内容が書き加えられた。今年三月、第九期全人代第二回会議はまた憲法を改正し、個人経済、私営経済などの非公有制経済は社会主義市場経済の重要な構成部分であると明確に規定した。これによって、私営企業と国有企業の平等な地位が憲法で保障されることになった。
「禁止」から「許可」へ、また「補充」から「重要な構成部分」へ、私営経済の天地はますます広くなっている。経叔平全国工商連合会主席は、私営経済の発展は中国の二十年にわたる改革・開放の重要な成果の一つだとし、国は外国投資企業を含む各種の企業に対し逐次内国民待遇を実行し、国が禁止している産業と商品の生産を除き、いずれも私営経済と個人経済の参入を許すべきであると提議した。
制限をさらに緩める
憲法改正案が採択された後、個人・私営経済は新しい発展段階に入った。国家経済貿易委員会のある責任者は、改革・開放以来、個人・私営経済の発展環境は緩やかになり、法律・法規面で重視されるようになったと語り、同時に、融資、租税、輸出入、土地使用、出国などの具体的面においてはまだ確かに不公平の現象が存在しているとも指摘している。市場進出制限を取り消すことは個人・私営経済がずっと求めている声である。事実、個人・私営経済は発展の中で少なからぬ問題にぶつかっている。例えば、一部の法規はすでに時代遅れで、私営経済発展の障害となっている。また管理体制が充実していない、社会的サービスが行き届いていない、観念の転換が難しい、私営経済の発展激励政策・措置が不十分であるなどの問題がある。そのため、国家経済貿易委員会は個人・私営経済発展状況に対し調査を行い、全国工商連合会などの部門とともに、個人と私営の経済の公平な競争促進、健全な発展についての指導意見を提出した。この意見の起草作業はすでに終っている。非公有制経済の発展により緩やかな発展空間を切り開くには、産業制限をいっそう緩め、今もまだ制限を緩めていない産業分野を整理し、緩めるべき分野をできるだけ早く緩め、その発展を健全な軌道に導き、まだ緩めることができない分野に対しては試行を行い、経験を積んで少しずつ緩めていくべきである。このほか、断固として個人・私営企業の不合理な負担を減らし、さまざまな不合理な費用徴収を取り消し、公平な競争の環境を作り出さなければならない。
憲法改正案の公布後、各地は続々と新しい政策を打ち出し、大胆に私営経済を発展させている。江蘇省は個人・私営企業の設立条件に対する制限を緩め、経営分野を広げ、融資、都市・農村建設企画、輸出入経営権などの面で私営企業が国有企業、集団企業と同じような待遇を享受できるなどの一連の政策を公布した。新疆ウイグル自治区も個人工商業者と私営企業に対する二十四項目の行政事業的費用徴収を取り消した。浙江省最大の私営化学工業企業の浙江伝化グループは中国農業銀行浙江省分行から一億元の融資を獲得し、その後間もなく、同省工商連合会と中国工商銀行浙江省分行は、工商銀行が今年浙江省の私営企業に四十億元の融資を増やすことについて協力取り決めをまとめた。
国際競争に参与
全国の年間輸出額千八百億ドルからすると、七十八万五千ドルはほんの一部にすぎないが、その意義は大きい。これは中国の私営企業が今年一月に輸出入権を獲得して以来、三月に初めて大型貿易交易会において成約した最初の契約額である。江西省液体化学工業原料公司は展覧に参加した私営企業として、率先して韓国のLG化学有限会社と化学工業原料の輸出契約を結んだ。胡政武董事長の話によると、企業創設十四年来初めての外国人の注文契約に署名したとのことである。
今年初め、国家対外貿易経済合作部は所有制の制限をいちだんと突き破り、三つの条件に合った私営企業に輸出入権を与えるようにし、そのうち第一陣に輸出入権を獲得した二十社の私営企業の登録資本総額は十三億六千二百万元に達し、一社当たりにすると、六千八百万元である。これらの企業は飼料、食品、農業開発、医薬、金属精錬、建材、紡績、服装、軽工業、機械・電子製品、コンピューター・ソフトなどの業種に及んでいる。こうして、これらの私営企業は「グループ」「合資」などの名義を使ったり、だれかを傘にするといった方法をとったり、専門貿易会社に頼って自社の輸出入業務を経営したりする必要もなくなった。対外貿易経済合作部経済貿易政策・発展司の責任者によると、私営企業はかなり多くの強みを持ち、例えば、国際競争参加に合った弾力的なメカニズムを実行し、商品生産の基本設備と条件を備え、輸出拡大の十分な保障があり、また直接国際市場に進出し、取引のコストが下げることができ、国際市場の需要にも速やかにこたえることができる。貿易の扉は条件を備えている私営企業に常に開かれるのである。
上海復星実業株式有限公司は輸出入権を獲得した私営企業であり、前記の交易会で国際的先進レベルを持つ遺伝子新薬を展示した。その目的は企業のイメージをPRし、より多くの海外代理店を引きつけるためであった。市価で四十億元を上回るこのハイテク民営企業は輸出を二回目の創業の起点としており、目下、東南アジアと南アフリカで支社を設立することを準備し、また特許授権の方式で先進国に工場を設立しようとしている。同公司の総経理は、企業が輸出入権を獲得すれば、中国市場より十数倍の空間に入ることができると語った。
新しい名称
国有、集団、私有という三種類の企業の中で、私有企業はまた私営企業、民営企業、郷鎮企業、個人企業などに分かれるが、すべての人がその区別をはっきり知っているとは言えない。
今年六月、全人代常務委は「個人独資企業法」の二回目の審議を行った。これは「私有企業」のさまざまな称呼が過去のものになることを意味し、すべて「個人独資企業」の名称となる。同企業法は全国の四十四万社の私営企業と三千百二十万戸の個人工商業者および一部民営企業と郷鎮企業にかかわっている。
憲法改正案が「非公有制経済」の法的地位が確立された後、今年四月末、「独資企業法」が正式に全人代常務委で審議された。この会議で、「独資企業法」は「個人独資企業法」に改称され、「国有独資」あるいは「外商独資」などと区別しやすくなる。
この法律が公布されれば、所有制によって企業の性質を分けるこれまでのやり方は終止符が打たれ、投資方式と責任形式によって分けられるようになる。同法律の宗旨は次の三つが含まれる。@独資企業の設立条件を適度に緩め、公民の個人投資による企業設立を奨励する。A投資者の個人的合法権益を保護し、権益侵犯行為の法的責任について規定を設ける。B独資企業にその他の企業と同じような市場主体の地位を与え、公平な競争に法的保障を与える。特別に指摘すべきことは、「個人独資企業法」は「最低登録資本金」について規定しておらず、ただ投資者に自分の申告する資金がなければならないことのみを要求していることである。これは言うまでもなく個人独資企業設立に対する激励措置である。