中国の経済運営の回顧と展望

 国家統計局の大まかな統計によると、昨年、中国の国内総生産(GDP)の増加額は八兆三千百九十億元に達し、不変価格で計算すれば、前年同期より七・一%伸びた。その内訳は、第一次産業は二・八%増の一兆四千四百五億元、第二次産業は八・五%増の四兆七百六十三億元、第三次産業は六・九%増の二兆八千二十二億元であった。 

マクロ規制に確たる効果

 昨年の中国の経済情勢はほぼ安定した正常なものであった。金融引き締めの現象はまだ著しく改善されていないが、経済運営の結果は予期以上だと多くの経済学者が見ている。すなわち、マクロ規制にさらに力を入れ、拡張的なマクロ経済政策を施行し、積極的に内需を促し、消費を刺激するといった政府の政策決定が成果をあげたことである。

 二番目の大手信託投資公司が倒産を申請

 昨年初め、広東国際信託投資公司が期限がきても債務を返済できなかったため、やむなく裁判所に倒産を申請した。公表された帳簿の中味から見ると、同公司の債務総額は百四十六億九千四百万元にのぼるものであった。中国で二番目の信託投資公司であり、海外で最も活発に動いた中国への融資の窓口でもあったが、今では市場の準則に従って倒産を申請した最初の企業となった。戴相竜中国人民銀行行長は、同公司の倒産は中国当局が金融機構に対する管理が厳格なものであることを表しており、金融企業全体の資金信用を向上させることにプラスとなり、中国の信用度を下げることはない、と語った。

 再度の利子引き下げ

 昨年六月十日、中国人民銀行は再度金融機構の預金・融資の利子を引き下げることを公表した。これは一九九六年五月一日以来七回にわたる利子引き下げのうち下げ幅最大のものであり、大幅な利子調整によって消費を刺激し、経済を促そうとする政府の姿勢を示している。

 今回の利子引き下げでは次の二点が注目されている。一つは預金利子の下げ幅が融資利子のそれを上回り、その前の数回の利子調整によって明らかに縮小された両者の格差がやや回復するようになったこと。もう一つは利子引き下げによって、住民の消費が促され、企業の投資意欲が向上し、より多くの就業機会がつくられたことである。

 「証券法」の公布

 昨年五月十九日から、中国滬深(上海、深せん)株価は急騰し、株価指数は上がる一方で、一日の出来高は史上最高を記録した。六月三十日の株式市場が引ける前までに、やはり二百余りの株がボードにかかげられ、滬株と深株の出来高は八百億元にも上った。

 七月一日に「証券法」が正式に実施されるようになった。「政策的株式市場」と呼ばれている中国株式市場はそれによって好転することはなく、当日の後場が引ける前に、ボードにかかげられた株は三百余りであった。株の取引をしている人たちはまたも株式市場の乱高下の苦杯ををなめた。人々は七年にわたって下準備された証券法に大きな期待を寄せていた。証券法がなければ、投資者は公開、公正、公平の条件のもとで、規範的で、秩序立った、合理的な市場の中で自らの投資価値を実現することができないからである。長い目で見れば、「証券法」の実施は、中国の株式市場の持続的で、安定した、健全な発展を促すことに必ず重要な影響を与えることになろう。

 中国で「フォーチュン」グローバル・フォーラム

 九月二十七日、「中国、未来の五十年」をテーマとする「フォーチュン」グローバル・フォーラムが上海で開かれ、世界の大手多国籍企業の総裁および世界の著名な政治家、科学者たちが一堂に会した。一年一度の「フォーチュン」グローバル・フォーラムが昨年度の会場として中国を選んだのは、政治が長期にわたって安定し、社会が全面的な進歩を遂げた中国が全世界の経済巨頭の興味をそそったからである。米ゼネラル・モーターズ社の総裁を代表とする多くの来賓は、十数億もの人口を有する中国は大きな魅力のある巨大な市場だという考えを表した。実をいうとこのフォーラムの開催は中国の企業家に国外の先進的な経験を学ぶ絶好なチャンスをも提供した。

 利子税を徴収

 九月三十日、朱鎔基総理は「預金利子に対する個人所得税徴収の実施方法」という国務院令に署名した。同法は十一月一日から実施され、税率は二〇%となっている。

 この「実施方法」によれば、預金によって利潤を獲得するという人々の在来の観念を変え、貯金の他への使用を加速し、都市・農村住民が消費を増やすように導き、個人投資を促すことが政府の狙いである。

 統計によると、昨年十一月以来、預金の増加の勢いが明らかにスローダウンし、国債市場では熱気を帯びた場面が現れ、不動産市場が繁栄し、商品の販売も好転するところがあり、一部の資金が引き続き株式市場に流入している。これらすべては利子税徴収の政策が所期の成果を挙げたことを示している。

 中国のWTO加盟についての中米交渉が妥結

 十一月十六日、十三年間にわたる困難に満ちた交渉は人々がなが年来待ちこがれる中でとうとう結果が出た。中国のWTO加盟問題についての中米両国の交渉は北京で妥結した。

 中国の発展を世界が必要とし、世界経済の繁栄も中国を必要としている。WTO加盟は、中国経済がさらに世界とリンクし、中国市場がさらに世界に開放されることを意味している。

 竜永図対外貿易経済合作部副部長は、交渉の成果は中国が改革・開放を堅持し、世界経済の主流に合流しようとする中国の決意を世界に示すものであり、間もなく始まる新しいラウンドの多国間貿易交渉は新たな国際的経済・貿易のルールを多く制定し、中国の参与は発展途上国の声を大きくし、新たなゲーム・ルールをよりバランスのあるものにし、発展途上国にとってさらに有利なものになると考えている。

 金融引き締めも発展の必然的段階

 中国の小売物価指数は一九九七年十月以来二十数カ月続いて低い水準を保っていると同時に、従業員の一時帰休の状況は深刻になり、商品生産が過剰となり、一部製品の供給が需要を上回り、通貨供給量の増加も数年続いて低い水準をはいかいしている。それによって、中国では一九九六年にインフレ抑制の「軟着陸」が実現された後、通貨引き締めの現象がまたも現れたことが明らかになった。

 一九七九年に改革・開放が実行されて以来、中国経済は二十年間にわたる高度成長を経て、一九七九年から一九九八年までに、GDPの年平均成長率は九%を上回った。急成長にともない、重複した建設、盲目的投資、商品過剰などの現象も現れた。国家統計局が一九九七年に公表した二十八種の主要工業製品の生産能力には四〇%の過剰が見られた。

 金融引き締めにならないようにするため、昨年、中国政府は内需を刺激し、拡大させるため、非常に大きな努力を払った。

 二〇〇〇年の見通しは全般として楽観

 マクロ経済情勢がまだ望ましいと思われていた昨年の経済情勢は二〇〇〇年の経済成長のために基礎を固めた。著名な経済学者の劉国光氏らが編纂した『二〇〇〇年の中国経済情勢に対する分析と予測』の中で、中国社会科学院経済学科課題グループの学者たちは今年の経済情勢について次のような分析と予測を行っている。

 GDP

 政府が昨年にとったマクロ規制政策には今年も大きな変化がなく、拡張的財政政策が引き続き実行され、同時に、国際経済環境にも大きな変化が起こらず、国内には大きな自然災害と他の重大事件がなければ、中国のGDPはなおも七%以上の伸び率を保つ。すなわち、農業の伸び率は三・五%増くらい、第二次産業は九%増くらい、重工業の伸び率は軽工業の伸びよりやや速く、第三次産業は七%伸びよりやや高い水準を保つというわけである。

 固定資産投資

 今年の社会全体の固定資産投資は昨年より八%以上増える。

 消費の面で、社会商品小売総額の名目的伸び率は九%以上に達し、いくらか回復の動きが現れる。

 価格指数

 昨年、各種価格指数の下げ幅はすでに緩やかになり、今年は下がる動きが止まり、回復が見られる。マクロ規制が適宜に行われれば、価格の上昇幅は大きくならない。今年の社会商品小売価格の変動率は数年連続のマイナスからプラスに変わる見込みがある。

 住民の所得

 政府が昨年七月に国家公務員の賃金基準と都市部の中レベル所得層と低所得層に対する分配政策を調整したため、八千四百余万人は直接の恩恵を受けた。都市部住民の所得は今年また向上するといわれている。

 しかし、農村住民の収入増は都市部住民より低く、そしてさらに低くなる可能性がある。

 財政収入

 拡張的財政政策を実行しているため、今年の財政収入と財政支出の伸びはもっと接近するであろう。住民の預金はいくらか増えることになるが、伸び率はこの数年より低くなる。これは銀行の連続の利子引き下げ、利子税徴収などの金融政策の調整の結果である。

 貿易

 今年、輸入の伸びは輸出の伸びより速くなるが、輸出はなおもプラス成長を保つ。そして貿易全体は依然として一定量の出超となる。

 また、学者たちは中国経済の発展を制約する「ボトルネック」について分析し、関係部門に注意を払うよう呼びかけた。

 ――新技術開発の能力が不足。中国の新技術開発は大きな度合いにおいて国外に頼り、国内の新技術開発の能力はまだ生産発展の必要を満たしていない。企業のイノベーション能力が不足することが、産業のモデルチェンジが遅くなり、就業問題が効果的に解決されない重要な原因の一つである。従って、技術導入と開発を拡大し、国の新規増加した財政支出の大部分を研究と開発に投入し、それを向こう五年間にGDPの一・五%を占めるようにする。同時に、企業の新技術開発能力の向上を国有企業改革の重点としなければならない。

 ――人的資源の資質が低い。中国では長い間人的資源の資質が低かったので、国は新規増加した財政支出から教育、とりわけ基礎教育への資金投下を増やし、人間の資質の向上を急ぐ。

 ――都市化と工業化の発展がアンバランスである。工業化の発展に比べて、都市化の発展が立ち遅れている。これは都市と農村の労働力が自由に流動できず、労働力市場で効果的な競争が足りず、農民の収入増が相対的に遅い重要な原因の一つである。同時に都市化の進展が遅いことは第三次産業の発展に影響を及ぼす原因でもある。したがって、中国全体のマクロ経済レベルを高めるため、中国のマクロ経済問題を解決する努力を都市化の進展を促すことと結びつけ、主として農民の収入の不足と第三次産業の発展が遅いなどの問題を解決しなければならない。

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