農業と農村経済構造の調整

 今年年初に開かれた中央農村工作会議は、農業と農村経済発展の新しい段階の要請に適応するため、農業と農村経済構造の戦略的調整を大いに推し進め、全面的に農業と農村経済の質と効率を高め、農民の収入を増やさなければならないことを打ち出し、これは中国農業と農村経済の発展の新しい段階における中心課題であると指摘している。

 農業と農村経済の構造に対し戦略的調整を行うことは、農産物が相対的に過剰になり、市場による制約が大きくなったという状況のもとで提出されたものであり、何を多めに作付けをするのか、何を少なめに作付けをすればよいのかという簡単な問題ではなく、農産物の品質を全面的に高め、農村の区域配置を最適化し、農業の持続可能な発展を実現し、都市と農村経済のバランスのとれた発展を実現するためである。そのため、農産物の売れ行きが悪くて農民の収入増が困難であるといった当面の問題を解決するだけでなく、農業と農村経済の長期的発展に立脚し、農業と農村の自らの発展に目を向け、さらに国民経済発展全般を念頭に置かなければならない。それゆえに、今回の調整は全局的意義のある戦略的調整である。

 農業の情勢

 農業部の大まかな統計によると、昨年の穀物の総収量は五億トン前後で、史上最高の一九九八年よりやや少なかった。綿花は同一四・九%減の三百八十三万トン、製糖原料としての作物は同一二・八%減の八千五百三十五万トンになり、その他の工芸作物の収量は増加の勢いが保たれている。肉類は同四%増の五千九百五十三万トン、水産物は同六%増の四千百万トンになった。郷鎮企業の生産額は約一四%伸び、経済効果は前年よりよい。農業開墾部門の国内総生産(GDP)は六・三%伸びて、農業機械総動力は六・八%伸びて、農民の一人当たり純収入は実質的には約四%増の二千二百五元になり、八百余万人の貧困人口が最低生活保障基準に達する見込みである。農村経済の発展全般は望ましいものがあり、農村社会全体が安定していると言える。

 昨年は、売れ行きのよくなかったオカボ、南方の秋まき小麦、北方の質的にはよくない春まき小麦などの作付け面積は大幅に減少し、上質のオカボ、専用小麦、トウモロコシの作付け面積は拡大した。綿花、製糖原料作物の栽培面積は減り、搾油原料、野菜の栽培面積は増え、牧畜業、水産養殖業の構造はいくらか改善された。

 昨年は、農民の収入増に影響を及ぼすことが目立ち、農産物市場が軟調で、売れ行きが悪く、郷鎮企業の発展がスローダウンしたため、農村の余剰労働力を吸収する能力が低下した。こうした状況に対し、農民の負担をさらに軽減するため、中央は農民の収入増を農村活動の重点とすることを打ち出し、引き続き保護価格で農民の余剰食糧を無制限に買い上げ、農民が市場のニーズに合わせて農業構造を調整、最適化するよう導くことを要求し、農村の基盤施設と貧困脱却扶助に対する資金投下を大いに増やし、プロジェクト建設に農民労働者を吸収するようにした。前述の措置の実施によって、農民の労務収入、郷鎮企業の収入、良質農産物の販売による収入が増え、農産物の価格の低下によって農民にもたらされた損害が多少補われた。

 陳耀邦農業部長は、昨年の農業と農村経済の成果は並々ならぬもので、国務院が農業発展の成り行きに応じて、適時に一連の政策措置をとった結果であり、関係部門と各地が力を入れて農村政策を貫徹し、基盤としての農業の地位を強化し、積極的に農業市場を発展させた結果であると見ており、また、政府の農業部門に二つの主要な問題が存在していると指摘した。

 問題の一つは農産物の段階的、構造的過剰が顕在化しているのに、それに対処できる措置が追いつかなかったことである。この数年、中国農業の総合的生産能力は大きく向上し、食糧などの農産物は数年続いて豊作を収めた。供給が増え続ける同時に、国内の消費需要が大幅に下落し、国際市場の農産物価格は持続的に不振であるため、国内の農産物輸出は制約された。また、供給と需要の伸びが同時進行できなかったので、昨年の農産物の段階的、構造的過剰の特徴はさらに明らかになり、食糧と綿花の備蓄が引き続き増え、多くの農産物の売れ行きが悪く、価格が下がった。ところが、いかに農産物市場を開拓し、いかに生産と売上をつなぎ、供給構造を最適化させるかなどで経験が不足し、善処し得なかった。

 問題の二つは農業と農村経済のマクロ規制がさらに難しくなった状況のもとで、いかに農民の組織化の度合いを向上させ、農民に対する情報サービスに力を入れ、いかに有限なコントロール手段をうまく利用するかは余り知られていない。とりわけ、農業の規制目標は農産物収量の増加が農民の収入と農産物収量の増加に変わった後、いかに農民を導いて収入増の新たなルートを切り開くかということに戸惑ったことがあげられる。

 今年の目標

 今年の農業生産の目標について、陳部長は次のように述べた。

 農業部は農業の構造調整、農民の収入増、農村の安定という三つの重点をめぐって農業と農村経済全般の運営の質と効率を全面的に高める。所期の目標として、農業は三%伸び、そのうち、穀物の総収量は四億九千万トン、綿花は三百二十万トン、肉類は六千万トン、水産物は四千万トン以上に達し、郷鎮企業の生産額は一四%以上伸び、農民の一人当たり純収入は四%の伸びとなり、農村の貧困人口が千万人減少することがあげられる。

 今年は農業と農村経済の戦略的調整を立派に行うことがカギとなる。農業と農村経済の構造を調整することは、農業の枠を乗り越えて、郷鎮企業と小さい都市・町の発展に力を入れ、農民の就業ルートを開拓し、農村の余剰労働力の移転を急ぎ、農村における第一次、第二次、第三次産業の発展と都市・農村経済のバランスのとれた発展を促さなければならない。食糧を主とすることと在来の農業の枠から抜け出し、農産物の精加工を大いに発展させ、農産物の加工・転化のレベルを高める。区域的発展の中で自らバランスをとる限界を突き破り、農産物の区域的構造を調整し、各地の資源の強みを十分に生かし、強みのある産業を発展させる。また、不足経済の下でひたすら農産物の量を追求してきたことを変え、効果的な供給を安定させるとともに、国内外の二つの市場に目を向け、市場に良質で多種多様な農産物を提供し、需要に応じて生産し、売上に基づいて栽培量を確定する。農業資源の過度の開発を防止し、農業の総合的生産能力の向上に着目し、農業の基本建設と生態環境の整備を強化し、農業の持続可能な発展を促す。

 構造調整の過程で、農業の総合的能力を向上させ、穀物生産能力の保護に力を入れる。中国は人口の多い国であり、毎年千万人以上の人口が増えるため、食の問題は終始変わらず第一義的な問題として解決せねばならず、いかなる時も農業の総合的生産能力を弱め、穀物の生産能力を破壊するようなことがあってはならない。これは農村の経済構造を調整する前提である。構造調整では、一部の耕作に適しない土地を林地、牧草地、湖に戻し、それによって、耕地がいくらか減ることはあるが、生態環境は改善され、自然災害も少なくなるから、全般的には農業の総合的生産能力を向上させることになる。経済が発達した地域では、市場の需要と区域的強みによって適当に穀物の生産を減らし、効率のよりよい農業を発展させる。しかし、耕地を保護し、基本的生産能力を保たなければならない。食糧の主要産区の強みを発揮し、総合的生産能力を絶えず向上させる中で、市場に順応し、品種と品質の構造を調整し、農産物の品質の向上から効率の向上を目指し、農産物の加工・転化から効率を目指す。

 政府と農民の関係を適宜処理しなければならない。構造調整の主体は農民であるので、構造調整は必ず農民の意志と経営自主権を尊重しなければならない。政府は活動の重点を企画・誘導とサービスに置き、先進的経験を総括し、普及させ、良好な市場環境をつくり、科学技術と情報などの面でのサービスを立派に行う。

 調整の措置

 農業構造の調整は農産物の品質と効率の向上を目標とし、そのため、農業部は農業構造調整について次の諸措置を打ち出した。

 ・ 栽培業の地域的配置と作物の構造を鋭意調整

 地域的配置においては、東部沿海地区と大中都市の郊外は輸出志向型、都市郊外型の現代化農業を大いに発展させ、付加価値の高い工芸作物と特色のある輸出農産物の生産を拡大し、良質の農産物の輸出基地を作り上げる。中部地区は穀物生産の強みを発揮し、品質が良く、収量が高い大型の商品食糧、加工用食糧、飼料食糧の生産基地を作る。西部地区と生態が破壊されやすい地域は、国が西部大開発の計画を実施するタイミングをとらえて、生態環境の保護にプラスとなる特色のある高効率農業と畑地節水農業の発展を急ぐ。

 作物の構造では、綿花、製糖原料作物とタバコの栽培面積を適当に減らし、食糧・綿花・砂糖の基地と多収穫作物の面積を安定させ、低収穫地区と零細な土地の栽培面積を重点的に圧縮し、売れ行きの良い工芸作物と高価な作物を大いに発展させ、工芸作物の産業ベルト地帯、産業区を逐次作り上げる。

 ・牧畜業を大産業として力を入れる

 東部地区と大都市の郊外は規模化生産と畜産業の生産物の精加工を積極的に発展させ、牧畜業の集約化経営を推し進め、畜産業の現代化を急ぐ。中・西部地区は飼育方式を改革し、生産コストをダウンし、生産の効率と経済効果を向上させる。放牧地区は牧草地の改良に力を入れ、単位面積当たりの家畜量を増やし、牧草地の牧草カバー率を回復させる。養豚と家きん・卵の生産を発展させ、上質な肉の牛、羊、家禽の飼育を加速し、乳類と羊毛の生産を重点的に発展させる。

 ・ 漁業構造を最適化

 水産養殖業を積極的に発展させ、品種構造を最適化し、ブランド品・特産物・新品の生産シェアを高め、養殖法を改革し、生産物の品質と生産効果を向上させる。漁業資源の保護に力を入れ、漁獲量を厳しく制限し、作業法を調整し、引き続き漁獲量の「ゼロ増加」の計画を実施する。漁業の技術・装備のレベルを大いに高め、遠洋漁業の構造を調整し、公海漁業を積極的に発展させる。水産物の精加工を大いに発展させ、水産物の付加価値の向上に努める。それと同時に、観光漁業の発展を積極的に誘導し、漁業の発展空間を広げる。

 ・ 農業機械化を推進

 農業機械業種は当面の農業構造調整と農民が差し迫って農業機械を必要とするチャンスをつかんで、農業機械製品の構造を調整し、装備のレベルアップに努め、重点的作物、重要な部分の機械化生産の問題を解決するため、作物収穫機械、食糧乾燥設備、農産物の精加工設備をはじめ、農業機械の新しい技術、設備の開発を加速し、コストを引き下げ、大中型トラクター及び付属機械の更新にさらに力を入れ、大中都市の郊外と東部沿海地域などの条件の備わった地域で率先して農業機械化を実現するよう促す。

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