宝くじ発行業の興起

葉 楼

 今年の初め、天津市で工場から一時帰休して個人経営をしているある人が、三十元のスポーツ宝くじを買って、百五十一万元の特等賞に当たり、所得税を納めても手元に百二十一万余元の金が残った。このニュースは多くの天津人の注意を引き、その結果、天津市に宝くじを買うブームが現れた。

 数年前に株を買うことが中国で大流行したように、最近は宝くじを買うことも中国各地でブームとなっている。わずかな金で多額の賞品と賞金をもらえる。カラーテレビや乗用車などの賞品と巨額の賞金に吸引力がある。マスメディアの宣伝も効果がある。そのため、多くの人がつい宝くじに手を出す。

 民政部のある責任者によると、ここ数年、中国で宝くじがよく売れる原因は多方面にわたるが、人々の考えが変わって、福祉事業に貢献するかたわら、運を試してみようというのが主な要因である。

 政策の転換

 宝くじの発売は、中国ではスタートがわりに遅かった。それまでのかなり長い間、宝くじなど景品付きの寄付活動は消極的なもので、人々の投機心理を助長しやすいと考えられ、そのために禁止されていた。

 その宝くじが発売されるようになったのは、政府の福祉事業費が足りないからだ。これまで、中国の社会福祉費は政府が一手に引き受けていたが、中国の経済が十分に発達していないため、福祉事業費の投入が限られていた。

 八〇年代の初めに、崔乃夫民政部部長は養老院と孤児院の新設と修繕に必要な資金を出してほしいという報告を次々と受け取った。しかし、崔部長の工面できる資金はこれらの問題を解決するのにとても間に合わなかった。

 一九八四年のある日、崔部長は海外在住の中国人と話し合った時、中国の福祉事業が資金不足のため思わしくない状態にあると語った。中国の慈善事業に熱心なこの友人は崔部長に三つの提案をした。そのうちの一つはほかでもなく、宝くじを発行することであった。

 まもなく、崔部長は国務院に宝くじ発行の構想を正式に提出した。これと同時に、宝くじ発行について民政部の関係部門は全国でフィージビリティー・スタディーを始めた。

 中国のハイクラスの指導者は下相談、考察、論証を繰り返したあと、一九八六年に宝くじ発行に青信号を出した。一九八七年六月三日、国務院の認可を経て、中国社会福祉景品付き寄付金募集委員会が発足した。同年七月二十七日、中国最初の福祉宝くじ(当時は「中国社会福祉景品付き寄付金募集券」と称された)が河北省石家荘市で発売された。これは新中国で宝くじの発売が始まったことを示し、同時に数十年らいの中国の社会福祉事業費が国が一手に引きうけるという古いやり方に終止符に打ち、社会から資金を調達し、社会が社会福祉を運営するルートを切り開いた。

 各地の宝くじ発売状況

 大かがりなPRによって、宝くじ市場は徐々に開放され、九〇年代後期になると、ますます盛んになり、ブームが次々と現れた。人々の考え方が変わって、十数年前はまだよくないと考えられていた宝くじがいまでは「楽しくよいことをやり、笑って税金を納める」産業に変わった。ますます多くの人が数元ないし数十元出して宝くじを買い、よいことをすると同時に、運を試してみるようになった。

 上海市は一九九八年から「上海風采」宝くじを発売し始め、賞金は最高百万元に達し、全市に二千に及ぶ売場が設けられ、その年の十二月までに三億元近くも売れた。新華社は「上海市の宝くじを買う人は株式を買う人より多い」というニュースを流した。

 一九九九年元旦、「同心曲」という災害救済福祉宝くじも北京でブームとなり、七千万元の宝くじが一週間で売れ切れとなった。

 浙江省温州市は昨年一月九日に、初日で一億二千万元の災害救済福祉宝くじを売り、全国記録をつくった。

 説明によると、現在、中国の発行する宝くじは中国福祉宝くじとスポーツ宝くじの二種類があり、発行の範囲は全国の九五%以上の県、市をカバーしている。中国福祉宝くじを例にとってみると、十二年余りの発展を経て、全国、省、地区、県の四クラスからなる管理が厳しく、運営が柔軟な発行発売ネットワークが形成され、売上高も年を追って増え、一九八七年は千七百四十万元だったが、一九八八年は三億七千六百万元に、一九九〇年は六億四千七百万元に、一九九三年は十八億四千三百万元に、一九九五年は五十七億三千万元にそれぞれ増え、一九九六年は六十億元を突破し、一九九八年は百十億元に達し、一九九九年五月現在で、福祉宝くじの売上高は累計三百六十一億元に達した。

 宝くじをめぐる伝奇的な故事も、人々を刺激して成金の夢を見させている。

 一九九七年の旧正月の日に、安徽省宣州市水東鎮小旺村の六十二歳の身よりのない老人伍昌貴さんは村人たちと一緒に町へ行った。伍昌貴さんは町のあちこちを回り、知らず知らずのうちにある商店のそばにある福祉宝くじ売場に来た。伍さんは数枚の宝くじを買った。宝くじの一等賞はシャレード乗用車であり、一等賞抽選券に当たった人が十人出たら抽選することになっており、伍さんの買った宝くじの中に一等賞抽選券が一枚あった。靴を修理することで生計を維持し、かやぶきの家に住む伍さんは生まれて初めて他の九人と一緒に、引き台に立ったが、まだ何事であるかも分からないうちに、最高賞に当った。バスさえめったに乗らない伍さんは、マイカーの賞品を得たことを知って、どうしたらいいかわからないほど喜んだ。

 張李珠さんはずっと宝くじを買っている上海の市民である。彼女は「宝くじを買うのはあきない遊びに似ている。テレビは週に一回当選番号を発表し、年に五十六回発表するので、私は五十六回興奮し、五十六回楽しくなる。重要なのは参与することで、宝くじを買うのは一種の希望、一種の楽しみ、一種の娯楽である」と言う。報道によると、昨年一月四日現在、「上海風采」宝くじの発行で、二十三人の百万長者が生まれた。

 上海市福祉宝くじ発行センターのある責任者の分析によると、宝くじを買う人の心理状態から見て、運を試してみるもの、社会に貢献するためのもの、一種の楽しみとするものの三種類の人がいる。しかし、大金持ちと赤貧は宝くじを買わない。金持ちは宝くじで賞金を得る必要がなく、赤貧は宝くじを買う金がないからだ。しかし、大多数の人は試してみようとする。なぜなら、彼らはとても貪欲でもなければ、完全に利己的でもないからだ。このような人たちはよい事をすると同時に、自分も刺激を受けてみたいと思っている。当ったら、意外な警喜を感じ、当たらなくても、社会に貢献したのだからと気持ちもさっぱりしている。

 最大の受益者は国

 説明によると、一本二元の福祉宝くじの印刷コストは一角(一元の十分の一)足らずで、発行コストは約二十角であり、さらに賞品に使われる約一元一角を差し引いても、福祉事業に使える分は約六角ある。

 宝くじを売って得た金は新しい投資となり、わずか二元でも多くの間接効果をあげることができる。そのうち、最も人を引き付けるのは神奇的な確率の操る下での最高の予期収益であり、最大の受益者は国である。

 中国では、宝くじの発行は初めから福祉事業の発展と結びついている。

 一九九八年の夏、長江、松花江、嫩江の流域には百年に一回あるかないかの特大水害が発生した。被災地区の再建を援助するため、一九九八年十月三十日、国務院は全国で災害救済資金を調達するために五十億元の福祉宝くじを発行することを認可した。全国の民政部門のスタッフの努力の下で、五カ月後、五十億元の福祉宝くじが売り切れ、調達された資金は残らず被災地区に振り向けられた。

 説明によると、現在、福祉宝くじはすでに中国社会福祉事業発展の重要な経済支柱となっている。資料が示しているように、ここ十二年らい、中国は福祉宝くじ発行によって九十四億六千万元の福祉基金を調達し、そのうちの七十億六千万元を福祉事業に使ったが、これは同期の国の福祉事業基本建設基金の四・八七倍に相当する。政府は調達された社会福祉基金を使って福祉院、老人ホーム、敬老院、地域社会サービス施設などを八万余カ所改造、拡張、移転、新規建設した。

 大きな社会効果も、宝くじの地位を根本から強固なものにした。中国福祉宝くじ発行センターの陳群林秘書長によると、宝くじを買う人はどのような心理状態でそれを買うのかを問わず、実際には社会資金の調達に貢献し、不幸な人たちと力の弱い人たちに大きな援助を提供している。

 宝くじの発行はまた間接的な経済効果をももたらし、消費を促し、経済成長を推進している。福祉宝くじの発行規則によれば、福祉宝くじの賞金額は売上額の五〇%を下回ならないことになっている。この比率で計算すれば、全国で十二年来合わせて三百六十余億元の宝くじが発行され、一方では、百億元近くの福祉基金が調達され、他方では百八十億元以上の消費基金が市場に投入されたわけで、これらの資金はすべて全国の都市・農村住民の遊休資金を吸収したものであり、これによって経済成長が促された。

 宝くじの発行はまた多くの一時帰休者に再就職のチャンスを提供した。説明によると、現在、全国の大多数の都市は一時帰休者と貧しい学生に宝くじを売らせて、彼らの経済困難をいくらかでも助けている。統計資料が示しているように、福祉宝くじを売る人は全国に十万人近くおり、そのうち、一時帰休者はかなりの人数を占めている。

 発行方式の改革

 世界のその他の国では、宝くじの発行方式はいろいろあるが、中国では、近年、宝くじ発行市場の発展につれて、宝くじの種類にも変化が見られる。目下全国で発行されている宝くじは在来型、即時抽選型、コンピューター型の三種がある。

 在来型とは、早期のやり方に基づいて運営する福祉宝くじであり、この種の宝くじの毎回の発行総量が固定されており、番号は事前に宝くじに印刷され、賞品の等級と数量および金額は発売前に決定され、公表される。その特徴は統一的に印刷し、番号をつけ、先に発売し、後で抽選し、当たった人は当たった宝くじを持って指定された場所に行って賞品や賞金をもらうというものである。

 一九八七年から一九九八年までに中国で発行された宝くじのほとんどは即時抽選型であった。つまり、宝くじを買う人は買ったその場で抽選し、当たったら賞品や賞金をもらうのである。一九九二年の下半期から全国各地は「大かがりなPR、大きな発売場所、発売を突出させる」という発売方法をとり始めた。その結果、大きな空間と長い期間がなければ発売任務を完成できなかった宝くじは数日間で発売任務を達成した。

 より科学的かつ管理し易いのは、近年になってから実行され始めたコンピューター型宝くじ、つまりコンピューター管理在来型福祉宝くじである。それは一九九五年四月まず深ロレ市で発行された。この種の宝くじを発売する時はコンピューターで無作為に一組の番号を選び出し、それを宝くじにプリントするのである。当たるかどうかは、くじ引きで引いた一組の番号が宝くじにプリンタされた番号と完全にまたは部分的に一致しているかどうかによって決まる。賞金も、低額の賞金は固定するが、高額の賞金は固定せず、当たる人がいなければ、次回の発売に回すという方法をとっている。

 上海市はここ数年らい、市場のニーズに適応するため、新しい方式で宝くじを発行し、わりによい効果をあげた。一九九八年、上海市はこれまでの即時抽選型の宝くじの発売を踏まえて、「上海風采」という在来型の宝くじを開発し、発売網を通じて発売し、テレビで抽選を行うという方式をとり、多くの上海市民を引き付けた。昨年十月、上海市はまたも「上海風采」コンピューター型福祉宝くじを発売し、より斬新的、科学的、公開的な方式で宝くじを自然に市民の日常生活に入り込ませ、より多くの人の日常消費の一部分に変えた。今年、上海市は「上海風采」宝くじに工夫を凝らし、即時抽選型と在来型を結び付けた宝くじを開発した。

 統計によると、昨年十月から年末までの三カ月間に、上海市のコンピューター型福祉宝くじ発売額は一億八千万元に達したが、今年の最初の四週間に、「即時抽選在来型」「上海風采」宝くじの発売額は二億元に達した。

 上海福祉宝くじ発行センターの統計によると、現在、上海では福祉宝くじを買う人にも変化が見られ、これまで即時抽選型宝くじの売場で宝くじを買うのは主として他所からきた若い労働者であったが、いまは上海住民に変わっている。

 賞品が賞金に変わったのも変化の一つである。近年になってから流行り始めたスポーツ宝くじは発行の初めからこの形式をとっている。

 北京市東城区体育運動委員会の陳博軍副主任によると、北京市は一九九〇年にスポーツ宝くじ発行の試行を始めたが、いまではますます多くの市民はそれを買っている。体育施設が全市第一位の東城区は昨年からスポーツ宝くじを売り始め、昨年は全部で二百四十万元売った。スポーツ宝くじを売って調達した資金は特別資金として、体育施設や体育館スタジアムの建設に使われる。

 宝くじ発行業も若干の問題が存在している。例えば、一部の部門が国務院の認可を得ないで勝手に宝くじを発行し、発行の規模が大きすぎて、コントロールできない現象が見られるなどがそれである。そのため、関係筋はできるだけ早く「宝くじ発行法規」を制定するよう呼びかけている。

 他方では、一部の専門家は、現在発行している福祉宝くじとスポーツ宝くじはともに部門が発行する宝くじに属し、それぞれの部門の利益を代表しているが、今後は宝くじ発行の面で成功を収めた国の経験を参考にして、国あるいは政府の宝くじを発行することを考慮してもよい、国あるいは政府の宝くじは独占的なものであり、宝くじ発行市場に悪質の競争と無秩序の発行が見られるのを避けることができると見ている。

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