中学生の留学フィーバー
九〇年代に入ってから、ますます多くの親たちは自分の子供を外国の中学や大学に入学させることを立世のためのいま一つの「登竜門」だと思い込むようになっている。その結果ちびっ子留学生の出国ブームがホットな話題となった。
最近上海の十四歳から十七歳までの中学生三十二人がグループでアメリカに留学したことが各方面の人々の間で注目を浴びている。
子供を外国へ留学させることは、今や子供の立身出世を切望する親たちの最大の念願となっている。多くの実業家、芸能人は次々と子供を外国に送り勉強させているが、これといった経済力がない親たちも前半生にためてきたお金をはたくことさえ惜しまずに、「登竜門」のため子供を外国へ送り出している。広州市出国留学サービスセンターのデータによると、最近出国・留学の相談のために訪ねてきた人たちの中に、中学生とその親たちが三割以上を占めているという。中国の一部大都市で開催された国際大学教育巡回展では、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、スイス、スウェーデン、日本などの大学と中学校(高校も含む)は中国の中学生とその親たちが競って選択する対象となった。
比較教育を研究している北京師範大学教育学部の史靜環教授はこう見ている。学校の教育では、中国とアメリカを例とすると、両国の教育理念にはかなり大きな違いが存在している。中国の学校では、教員と保護者の教育面の責任が強調されているので、教員側と生徒側はともに大きなプレッシャーに直面している。一方、アメリカの学校では、子供の成長が本人の成長の過程として扱われ、よく勉強するかどうか、成績がよいかどうかは本人自身のことだ、と見なされている。教育の方法ではアメリカの方法はより活発なもので、自主的に活動し、進んで発言し、間違っても構わないことが強調されている。宿題の面では、手を使う能力が重視され、創意に富む能力の養成が強調されているが、中国では学校の宿題のほとんどはペンを使うもので、しかも正解の答案があるものだ。
中学の教育については、史静環教授は中国の教育の質を評価して次のように語った。
「私の子供は北京市のあるエリート中学校の生徒である。中学時代は青少年に独立した人格が形成され、成長する重要な時期であるため、環境からのプラスの影響は何より重要である。中国の学校では管理が厳しいが、アメリカの中学校の管理はあまり緩すぎて、まだ成熟しておらず、身周りに保護者の監視・保護がない少年にとっては、独りでさまざまな誘惑に対応するのは難しく、とりわけ生徒同士の相互影響はなおさらそうである。自制力があまり強くなく、いったん悪習慣に染まったら、それを改めるのはなかなか難しい。青少年には安定した成長の環境が必要であり、真に成熟してから独りで複雑きわまる生活に対応する方がいい」。
最近、一部のマスメディアは、アジアの親たちが子供をアメリカに送り留学させていると報じたとき、これらのちびっ子留学生のことを「パラシュートで降下した子供たち」と称していた。大ざっぱな統計によると、台湾からアメリカに行ったちびっ子留学生は四万人ぐらいで、北京と上海からのちびっ子留学生も増えている。独りで外国へ留学したこれらちびっ子留学生は環境に適応できないという問題を抱えている。国内で一時期の教育を受けた少年は、アメリカに着いてからすぐに次のことに気付いた。アメリカの学校では生徒に対する評価基準が中国のそれとかなり違い、国内で優秀と評価されている生徒はアメリカの学校で必ずしも重視されるとは限らず、とりわけアメリカの中小学校では生徒の活動能力、表現能力、リーダーシップ、スポーツ面の才能などが重視されているが、国内で甘やかさてきた中国の「良い子」はアメリカでぞんざいに扱われ、のけ者にされたり、ひいてはいじめられていると感じるありさまである。
これらちびっ子留学生がぶつかったもう一つの問題は、面倒を見てくれる両親がそばにいないから、一般の場合は二人か数人の生徒が集団生活をし、長期間親からの愛を受けられず、問題にぶつかった場合、言いたいことがあっても打ち明ける相手がいないため、一部の少年は麻薬吸引、不良仲間に入るなど誤った道へ踏み入ってしまった。一部の人はこう見ている。もしも責任感のある親友が面倒を見てくれるだけでなく、若干の必要な心理面でのアドバイスをしてくれれば、事はかなり違うものになるはずである。だから、条件がまだ熟していない場合、熟考する必要があり、むしろ数年間遅らせて留学した方がよく、ちびっ子留学生にならない方がよいように思われるのである。