近代遠隔教育を発展させる
清華大学生涯教育学院遠隔教育部の四十人収容の教室で、数人の学生が数学の講義を聞いている。それと時を同じくして、全国各地にある三十カ所の校外視聴教室でも、百人近くの学生がビデオ会議システムを利用して講義に耳を傾けている。これらの学生は教師と遠く離れてはいるが、北京にいる学生と同じように、教師に質問し、その場で答えてもらうことができる。
これは現段階では国内の最も先進的な遠隔教育である。清華大学が教育部から近代遠隔教育の試行大学の一つに指定された昨年八月から、この遠隔教育が同大学に本格的に導入され、しかも良好な効果を上げている。コンピュータ・ネットワークの助けで、学生たちは教室で教師と直接対話できるばかりでなく、授業が終わったあともEメールで引き続き教師と討論、交流することができる。こうして教師と学生の間の時空距離が大幅に短縮された。
「それは本当の意味でのインターネット大学とはまだかなり大きい格差があるとはいえ、以前のテレビ大学と比べてかなり進歩した」と、清華大学生涯教育学院副院長の孫学偉教授は語った。
清華大学が導入したこの教育方式は、すでに教育部が新たに作成した近代遠隔教育発展計画に組み入れられている。今年の上半期に国務院から正式に認可される見通しのこの新計画は、次世紀の最初の十年以内に、衛星ビデオ伝送システムとコンピュータ・ネットワークとを結びつけた多次元の近代遠隔教育網の建設をほぼ完成する。そのうち、既存の衛星テレビ教育システムを重点的に改造し、ビデオ互換式の近代遠隔教育の試行大学を逐次増やして、二〇一〇年前後にそれを中国遠隔教育システムの重要な構成部分とすることを打ち出している。
現状と模索
一九八六年、衛星テレビ教育チャンネルが開設されて以来、中国大陸部には二万カ所以上の衛星地上受信ステーションがつくられ、七〇%以上の有線テレビ局が衛星教育番組を中継している。世界最大のテレビ大学の一つとして、中国放送テレビ大学はいま一万三千を超えるクラスがあり、在校生は百万人を上回り、前後して二百十七万人の高専卒業生が巣立ち、百十万人余りの小中学校の教師とその他の在職者が同大学の師範大学と中等師範学校の卒業証書あるいはその他の課目の中等専門学校卒業証書を取得した。
教育部電化教育弁公室主任補佐の王珠珠さんは、「衛星送信のカバーする面積が広く、地理的条件の制限を受けず、それをつくるのが速く、ネットワークづくりもしやすいため、今後の近代遠隔教育にとっては依然として全国をカバーする有効な手段であり、交通が不便な僻地や貧困地区では特にそうである」と語り、さらに次のように言葉を続けた。
中国では、現在の衛星教育番組はなおも単方向放映のアナログテレビを使い、教え方が硬直化し、教師と学生は直接交流することができない。そのため、ある程度教育効果に影響を来し、またこの分野におけるコンピューター、情報技術の普及と応用にも不利である。「したがって、近代的電子情報技術で既存のテレビ・ネットワークを改造し、デジタル化を取り入れ、互換機能をもたせるとは、情勢の赴くところである」。
教育部の統計データによると、一九九四年以来、中国ではインターネットに接続する全国的コンピュータ・ネットワークが四つつくられ、昨年五月末現在の全国利用者数は百万以上を教え、インターネットに接続したコンピューターは五十五万台近くに達する。Cernetは四大コンピュータ・ネットワークの一つで、現在すでに八つの地域的ネットワーク・センターができており、七十近くの都市、三百五十の大学と接続し、ネットワークに加入したコンピューターは八万台に達し、大学教育の中で大きな役割を発揮している。Cernetに接続する多くの大学のネットワークのスピードは百bps以上に達し、いずれも大学内で互換式遠隔教育を展開する条件を整えている。
本当の意味でのネットワーク大学は、インターネットで互換式教育を主とする大学教育を行うが、中国のコンピュータ・ネットワーク施設の現状では、広範囲にわたってこのようなネットワーク教育を行うのはまだ不可能である。また、インターネットを利用する教育の費用も一般の学校教育よりはるかに高い。そのため、既存の遠隔互換教育は固定したところでしか行うことができず、コンピュータ・ネットワークは教育の補助的な手段にすぎない。
昨年、清華大学と同時に教育部から遠隔教育試行大学に指定された大学は、浙江大学、湖南大学、北京郵便電信大学がある。浙江大学と湖南大学は主として所在する省内で試行するが、郵便電信大学は郵便電信部門の従業員を対象にしている。清華大学の教育対象は全国の大手企業である。このほか、南京大学、ハルビン工業大学、上海交通大学、西安交通大学、華中師範大学、中南工業大学と衛生部も相次いで教育部に遠隔教育実行を申請したが、その中に教学実験を行っているものもあれば、準備作業を進めているものもある。
清華大学は一九九六年から遠隔教育ネットワークの建設に取りかかったが、これには主としてデジタルビデオ衛星テレビ・ネットワーク、テレビ・コンピュータ接続ネットワークが含まれる。一九九七年四月、同大学は、目下使用している、四十人を収容できる中継放送室と現場録画制御室システムを建設した。いまでは、上海宝山鋼鉄公司、遼寧石油化学工業公司、斉魯石油化学工業公司、長春第一自動車製造工場、大亜湾原子力発電所など十四の企業に単独受信ステーションをつくり、インターネットの入門と応用、科学技術情報検索、CIMS概論、管理経済学、コンピュータのマルチメディア技術など十一の課目を開設した。
方向と目標
教育部の概算によると、今回の遠隔教育施設の大規模な改造に、政府は少なくとも数億元を投じる必要がある。しかし、重要な意義は物質面の建設と改善にあるだけではない。以前のテレビ教育では主として中等と高等専門学校の学生を養成したが、今回の試行大学の養成対象は大学本科生と大学院生である。「これら学生の卒業証書、とりわけ大学院生の卒業証書の発給問題はまだ検討中だが、教育の次元を豊富にし高めることは今後の遠隔教育の発展方向となりつつある」。
新しい計画はまた、最高レベルの教育資源を遠隔教育に運用すべきだと強調している。「いかなる地方の人も、優秀な教師の講義を聞けるようにする必要がある。これは近い将来に実現できるはずである」
中国ではかなり多くの重点大学が北京、上海、南京、武漢、西安などの大都市に分布している。教育部は以前の単一の中央ステーション教育方式を改め、これらの中心都市にB級ステーションを開設し、重点大学の優秀な教師に来て講義してもらい、さらに当地の衛星ステーションから直接衛星に発信し、全国に送信することを考えている。「この措置をとれば、これまでよりも教育資源の共同享用の効率を大幅に高めることができるだろう。これと同時に、教育部は科学技術委員会と連合して、遠隔教育で科学技術の最新研究成果をできるだけ速く伝送するつもりである」
中国の学生のほとんどは参与意識と創造意識に欠けている。これは長期にわたって行ってきた、試験に対応するための詰め込み式教育によってもたらされた弊害である。近代遠隔教育自体はわりに強い互換性と個性化の特徴をもっており、学生の想像力と創造力を最大限に引き出し、学生の資質を全面的に高めることができる。したがって、教育に想像もつかない変化がもたらされる可能性がある。
清華大学の孫学偉教授はより長期の見通しを人々に示し、次のように語った。インターネット大学は生涯教育システムを確立する基礎である。二十一世紀の教育は開放的な教育である。われわれが生活しているこの時代には、毎日のように新しい職業が生まれてくるが、同時に古い職業が消え失わせている。誰でも絶えず学習する必要がある。こうしてはじめて、仕事の必要に応えることができるのである。在来の大学は生涯教育を提供することができない。しかし、インターネット大学はすべての人に開放しており、しかも教えるのは最新の知識である」
「現在のところ、家に居ながらインターネットを利用して大学の勉強をすることはまだできないが、ネットワークを通じて大学入学の夢を実現することは現実となりつつある」
『北京週報』