アメリカはどのような手本を示そうとしているのか


 「包括的核実験禁止条約(CTBT)」の批准をめぐって、アメリカの共和・民主両党が激しい闘争を繰り広げ、さまざまな駆け引きの末、十月十三日ついに勝敗が決まった。上院は賛成四十八票、反対五十一票、棄権一票という結果で、世界の安全に関係するこの条約の批准を否決したのである。
 共和党の上院議員たちは、同条約がアメリカの手足を縛り国の安全と利益を損なうとして、一貫して同条約に反対してきた。共和党議員たちは一部の核兵器専門家の話を信じ、アメリカの核兵器の予算が一定ではなく、兵器は次第に老朽化し、訓練を受けた専門家が十分ではなく、それに加えて実際の核実験に取って代わる科学モデルの開発が、少なくともあと五年ないし十年たたなければ軌道に乗れないと見ている。
 それに対して民主党は、次のように強調する。条約はすべての核実験を禁止するものであるが、アメリカは一九九二年以来一貫してコンピューター・シミュレーションと爆発を伴わない臨界前核実験で核兵器の改良を行ってきた。条約は、世界のどこにでも実質的意味での核爆発を監視できるよう、世界各地に三百二十カ所の観測所を設置することができるとも規定している。つまり、条約は他を制限して自らを束縛するものではなく、アメリカにとって利こそあれ害のないものである。
 同じ条約に対して二つの政党はそれぞれ自分の言い分を主張し、どちらも国の利益を守るという看板を掲げてはいるものの、実際にやっていることは両党による派閥闘争なのである。クリントン大統領は核拡散防止をその外交政策の中で優先的に考慮する問題とし、同条約に署名するとともに議会での批准に向けて努力することによって、世界におけるアメリカの主導的地位を強化しようとする一方、個人的にも自分が内政と外交の両方で力強い大統領であるというイメージを確立しようとした。共和党がこの条約を否決した本意は、クリントン大統領の外交政策を挫折させ、同大統領がアメリカの外交を管掌する力のない「無能な大統領」という印象を人びとに植え付け、同大統領と民主党に政治的資本を与えないようにするというものである。
 当然、クリントン大統領にとって、この結果は心外なものであった。十月八日、クリントン大統領はカナダのオタワでの記者会見で、この条約に反対する上院の力は非常に強く、また公聴会も行われず、条約批准に必要な三分の二以上の賛成票を得るために努力する十分な時間がないため、上院での採決の延期を希望すると述べた。それに対しロット共和党院内総務は、条件として大統領が延期を上院に書面で要請し、任期中は批准問題を再提起しないことを約束するよう求めた。十一日、クリントン大統領はやむを得ず初志を曲げて書面による要請を提出したが、任期中に批准を求めないという要求については拒否した。その後、上院両党のリーダーによって採決を無期限に延期することが基本的に成立したが、規定では議員の一致した同意がないと上院はすでに確定した議事日程の採決を延期することはできないことになっている。だが、ヘルムズ外交委員長など少数の共和党議員が延期に断固反対し、話し合いは決裂した。
 CTBTは、一九九六年九月に第五十回国連総会で採択されたもので、その内容は核実験を禁止し、核軍縮を推し進めるというものである。現在までにイギリス、中国、フランス、ロシア、アメリカの核保有五カ国を含む百五十四カ国がこれに署名し、五十一カ国の議会がすでに批准を行った。規定によると、ジュネーブ軍縮会議の交渉に参加し、かつ原子力を有する四十四カ国の立法機関の批准を発効要件とするが、現在この条約を批准しているのは二十六カ国である。そこでアメリカが批准するかどうかが、この条約の発効にかかわると一般に見られている。
 アメリカは三年前にこの条約に署名したが、議会がそれを二年間棚上げした後で突然表決を行ったのは、三分の二の賛成票を取り付けるのは不可能であると共和党が断定したからである。これは米議会が第一次大戦後の国際連盟設立に関するベルサイユ条約の批准を否決して以来の、重要な軍縮・軍備管理に関する協定の否決となる。『ニューヨーク・タイムズ』は評論を発表し、これは八十年このかた米上院が行った国際関係に対する影響が最も大きい決定で、これによってクリントン大統領の外交政策は痛手を負い、全世界の核拡散抑制に対する努力は水泡に帰したと指摘した。
 米上院のこのような無責任な行動は、国際社会の願いに背を向けるものである。八日、ウィーンで緊急会議を開き、アメリカの条約批准について緊急に話し合っていた九十二のCTBT署名国が声明を発表し、米議会が早期に条約を批准してその他の諸国に手本を示すよう呼びかけた。それと同時に、イギリス、フランス、ドイツ三カ国の首脳も、米上院に条約批准を促す公開状を送った。しかし、米上院の採決は人々を失望させるものであった。立法の形でCTBTを否決したのはアメリカが初めてであり、とんでもない手本を示したことになる。それは引き続き核実験を行うよう奨励するのに等しく、核拡散の可能性は増えた。
 長期にわたってアメリカは核拡散防止の指導者を気取り、「平和」と「安全」のスローガンを大声で叫んできた。しかし、アメリカにとって党派争いと自国の利益のためなら、世界の平和と安全および世界の人々の利益にかかわる重要な問題はどうでもいいことなのである。今回の出来事は国際問題におけるアメリカの言行不一致、および他国に対するのと自国に対するのとではその行動の基準が違っていることを再び如実に示すものとなった。
 

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