チャンスは挑戦より大きく 希望は困難より多い
世紀の変わり目を迎えた重要な時点に、唐家せん外交部長は記者のインタビューに応じて、過ぎ去った一年の国際情勢と中国外交の成果について次のように語った。
。。めまぐるしく変わる国際情勢
昨年の国際情勢の変化は注目すべきものである。世界および中国周辺で起こった一連の重要な出来事は、世界が深刻な変革を経ていることを示している。情勢の発展は、世紀の変わり目における世界がまだまだ太平ではなく、覇権主義と強権政治が新たな発展を見せ、軍事同盟の強化と軍備競争の激化の勢いが激しくなり、国際実務の中で武力の行使か武力による威嚇の傾向が明らかに頭をもたげたことを示している。
それと同時に、人種、宗教、領土などの問題によって引き起こされた武力衝突と局地戦争は、こちらで落ち着いたかと思うと、あちらでまた火がつくというありさまであった。コソボ戦争のぼっ発が人々に深刻な警告を与えた。人々は、「国連憲章」が確定した宗旨と精神、バンドン会議が唱道した国際関係の準則は新しい国際政治、経済、安全の秩序の基礎であり、世界の恒久平和の希望のよって立つところである、ということを認識するようになった。世界の力がアンバランスである現実を前にして、主権を堅持する原則はさらに必要であるように見える。いわゆる「人権は主権より上にあるもの」、「人権擁護には国境がない」といったことは実は強国が弱国をいじめるために口実を与え、大国が小国をコントロールすることに根拠を与えるものである。国連の役割と権威は必ず尊重されなければならない。主権国家の連合体としての国連は地域の衝突の緩和、軍縮の促進、世界の平和、協力、発展の推進に対し重要な責任を負っている。国連と安保理をよけてほしいままにふるまうならば、必ず国際安全システムの支柱を弱め、国際秩序に混乱をもたらすであろう。
国際経済分野において、グローバル化の動きが加速しているが、国際経済関係の中の不公平と不合理の現象はまだまだ取り除かれておらず、先進国の貿易保護主義がつのる一方であり、政府の開発援助額が持続的に低下しており、発展途上国への援助と技術移転の条件が厳しくなり、発展途上国はより厳しい挑戦に立ち向かうことになっている。貧富の格差がいちだんと大きくなり、南北の矛盾が日増しに顕在化している。
しかし、国際情勢全般は何といっても緩和に向かいつつある。平和と発展は依然としてこの時代のメーン・テーマである。主権平等擁護、内政不干渉など公認される国際関係の準則、公正かつ合理的な国際政治・経済新秩序の構築などは、国際社会の共通の願いと努力する目標である。
変化の中にあっても驚かない中国
国際情勢に大きな変化が起こっているが、中国は終始変わることなく独立自主の平和的外交政策をとり、広範な発展途上国の根本的利益を擁護し、国際社会の普遍的尊重を得ている。
国家の独立、主権と民族の尊厳を断固として守ったこと。昨年五月、アメリカが主導する北大西洋条約機構(NATO)があろうことか在ユーゴ中国大使館を爆撃し、世界外交史上まれに見るゆゆしい事件をつくり出した。中国政府はすかさず強烈な反応を示し、断固とした、力強い闘争を進め、国際社会から広範囲な支持を得た。
七月には、李登輝が「二国論」を持ち出したことで、中国政府はまた「台湾独立」の勢力に対し力痛い打撃を与え、国家の主権を守った。これまでのところ世界で、一つの中国の原則・立場を堅持することを公に表明した国は百余りに達している。
中国は国際実務において正義を主張し、公正を主張し、覇権に反対し、平和を守っている。コソボ戦争では、中国はずっとアメリカの主導するNATOが主権国に対し軍事力を行使することに反対し、国連の役割と権威を揺るぎなく擁護し、ユーゴスラビア連邦の主権と領土保全を尊重し、コソボ各民族の合法的権益を保障することを踏まえて紛争を政治的に解決することを主張した。
西側諸国が提出した「人権は主権より高い」、「人道的介入」、「国連の役割には限度がある」などのデタラメな論調に対し、中国は世界の演壇で主権平等と内政不干渉など一連の国際関係の基本的準則を揺るぎなく守り、広範な発展途上国の普遍的な称賛を得た。広範な発展途上国の支持のもとで、いわゆる「中国人権状況議案」という反中国の提案がまたも打ち砕かれた。
昨年、関係諸国が自らの戦略的利益と軍事的優位をめざすため、すでに合意に達している国際軍縮条約の権威性を無視し、「弾道弾迎撃ミサイル制限条約」を修正しようとした。中国とロシア、ベラルーシは国連でともに「弾道弾迎撃ミサイル制限条約」を守り、それを遵守する決議を提出し、それぞれ国連政治と安全委員会と国連総会で圧倒的多数で採択された。中国が国際平和と安全を守る努力は国際社会の広範囲の支持を得た。
中国は平和共存五原則を堅持し、世界各国との友好協力関係を一段と発展させた。昨年は中国の周辺環境に多くの新しい変化と新しい状況が現れたが、中国は引き続き善隣友好の政策を堅持し、ハイレベルの往来を積極的に展開し、相互信頼を増強し、疑問を解くための互恵協力を大いに強化し、相対的に安定した周辺環境を守り、維持し、善隣友好協力関係は一段と強固になった。
新しい情勢のもとで、中国と発展途上国の政治、経済などの各分野における友好協力関係に新たな発展が見られた。一年来、中国と発展途上国は重要な国際実務をめぐって互いに支持しあい、密接に協力しあい、ともに正当な権益を守り、公正かつ合理的な国際政治・経済新秩序の構築を積極的に推し進めた。
引き続き安定を保つ中国と大国との関係
中米関係は起伏があって曲折しているが、双方の共同の努力によって、正常な関係の枠組みが保たれている。昨年四月、朱鎔基総理はアメリカを成功裏に訪問した。しかし、アメリカの主導するNATOが在ユーゴ中国大使館を襲撃したため、中米関係はゆゆしく破壊された。中国側はアメリカ側の中国主権侵害、国際法準則違反の行為を強く非難し、アメリカ側が中国人民が満足のいく釈明をするよう要求した。アメリカ政府とクリントン大統領本人は何回か中国政府と人民に謝罪し、アメリカはすでに在ユーゴ中国大使館襲撃によって中国側にもたらした人員の死傷と中国側の財産損失問題について中国側に賠償をした。中国側はアメリカがさらなる確実な措置をとり、爆撃事件が中米関係にもたらした消極的な影響を徹底に取り除くよう要求した。江沢民主席は昨年九月にオークランドで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議に出席した期間に、クリントン大統領と非公式会合を行い、中米関係の回復と改善に大きな役割を果たした。その後、中米のハイレベルの接触が多くなり、関係分野の交流と協力が積極的に推し進められた。とりわけ、両国の指導者自らの配慮のもとで、中米両国が平等互恵と相互理解、相互譲歩を踏まえて成功裏に中国のWTO加盟についての中米両国の交渉を妥結させ、両方とも勝ちという結果になった。これは中米関係を安定、発展させる上で重要な意義を持っている。
台湾問題は依然として中米関係における最も重要で、最も敏感な核心問題である。中国側は、アメリカ政府と指導者が李登輝の「二国論」は米中両国にもトラブルをもたらすものとし、そして一つの中国の政策を堅持し、中米間の三つの共同コミュニケを厳守し、「台湾独立」、「二つの中国」、「一つの中国、一つの台湾」を支持せず、台湾が主権国家しか参加できないいかなる国際機構に加盟することをも支持しないむねを何回も表明したことに留意している。しかし、また一方では、アメリカ政府と議会の一部のやり方、とりわけアメリカ側が絶えず台湾に先進的な兵器を大量に売却、移転し、クリントン大統領が台湾の世界保健機構(WHO)参加を支持する議案に署名したことなどは、われわれが断固反対し、絶対に受け入れられないことである。
中米双方は戦略的次元と長期的な角度から中米関係をよく考察し、それを処理し、中米間の三つの共同コミュニケとアメリカ側の関連ある約束を遵守しさえすれば、中米関係は新しい世界において戦略的パートナーシップの構築に努めるという目標に向かって絶えず進展を遂げることができるのである。
中ロの戦略的協力パートナーシップがさらに充実し、豊富なものになった。昨年以来、中ロの高級指導者が密接な接触を保ち、戦略的な協力パートナーシップは着実に発展を遂げている。昨年の初めに、朱鎔基総理はロシアを訪問し、両国首相は第四回定期首脳会合を行い、両国関係、とりわけ経済・貿易協力関係のさらなる発展を促した。両国間の歴史的に残された問題はすでに解決された。双方とも多極世界をつくることを主張し、国際実務における話し合いが引き続き強化され、一連の重要な問題で著しい成果のある協力を進めた。十二月九、十の両日、エリツィン大統領は四回目の訪中を行い、江沢民主席と二回目の非公式会合を行った。これは成果に富む会合であり、世紀末の中ロ関係のために円満なピリオドを打つものであった。中ロ両国が各分野で協力を強化することは、両国の根本的利益に合致するだけでなく、地域および世界の平和と安定の維持にもプラスとなる。われわれには、中ロ関係の新しい世紀における発展の展望がより明るいものになると確信する理由がある。
中国と西ヨーロッパ諸国及び欧州連合(EU)の関係が新たな進展を遂げた。江沢民主席は昨年二回西ヨーロッパ諸国を訪問し、李鵬全人代委員長らの指導者もヨーロッパを訪問した。西ヨーロッパの指導者も相次いで訪中した。これらのハイレベルの相互訪問は相互理解を深め、共通認識を拡大し、双方の互恵協力強化のための道を切り開き、中国とEUとの新しい世紀に目を向けての建設的パートナーシップを発展させるために望ましい基盤を築いた。中国とヨーロッパの経済・貿易関係が安定して発展し、双方の科学・技術、教育、文化などの分野における協力と交流が絶えず拡大し、国際実務における話し合いと協力が日増しに強化されている。中国とEU首脳の第二回年次会合が北京で行われることは、必ずやいちだんと中国とヨーロッパの関係を次の世紀において健全に、安定して発展するのを促すことになろう。
中日関係は全般的に安定して発展する勢いを保っている。江沢民主席の一九九八年末の訪日の成功を踏まえて、小渕首相は昨年七月招きに応えて中国を公式訪問し、両国の指導者はいまいちど一九九八年に達成した一連の重要な政治面の共通認識を確認し、いちだんと実務重視と協力の重点および方向を明確にした。両国政府と各界は両国首脳の訪問成果を全面的かつ着実に実行し、平和と発展に取り組む友好協力関係の内容を絶えず充実させ、両国関係が各分野において積極的な進展を収めることを促している。先般、李瑞環中国人民政治協商会議主席が日本の招きで訪日し、双方の理解を増進した。もちろん、両国関係にはなお一部ではあるかゆるがせにできない問題が存在し、両国関係が次の世紀においてより大きく発展することを確保するためにも、双方はそれにまじめに対処し、適切に処理しなければならない。
発展途上国との連帯と協力が強化された
三十余カ国の首脳との相互訪問は中国と発展途上国の理解と信頼を強化し、重要な国際問題をめぐって話し合いと相互支持を強化し、経済・貿易分野における互恵協力を密接にした。先般、江沢民主席はアフリカ首脳に書簡を送り、「中国とアフリカ協力フォーラム 北京二〇〇〇年閣僚会議」の開催を提案し、各国政府の熱烈な呼応を得た。世界最大の発展途上国としての中国は、発展途上国との連帯と協力を強化することを終始変わらず外交活動の基本的な立脚点としている。
周辺諸国との善隣友好を強化することは中国政府の基本的国策である。中国の周辺外交の目標は引き続き善隣友好と相互信頼を強化し、平和と安定を守り、ともに発展を促進することである。昨年の中国と周辺諸国の関係の主な特徴は、ハイレベルの相互訪問が頻繁になったことである。アジアと中央アジアの十数カ国の首脳が訪中し、中国の指導者も前後して十いくつもの周辺諸国を訪問した。中国と周辺諸国との善隣友好、相互信頼の協力関係が一段と強固になり、強化されている。昨年、周辺情勢にいくつかの新たな複雑な要素が現れたが、全般的には、現在は依然として五十年来周辺環境がわりに良い時期にあると言える。
中国と朝鮮、韓国との関係は新たな進展を遂げた。昨年上半期、金永南朝鮮最高人民会議常任委員長が訪中し、双方は引き続き両国の伝統的友好関係を発展させることで一致を見た。中・韓の二十一世紀に向けての協力パートナーシップは一段と発展を遂げた。朝鮮半島問題についての四者会談で、中国は朝鮮半島の近隣として、半島の平和と安定維持に積極的かつ建設的な役割を果たしており、国際社会で好評を博している。
中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の関係は新たな発展段階に入った。江沢民主席は九月にタイを訪問した。先般、朱鎔基総理は第三回ASEAN―中日韓非公式首脳会合及び中国・ASEAN非公式首脳会合に出席し、会合の前後にマレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナムを歴訪し、中国とASEANとの善隣と相互信頼のパートナーシップをいちだんと発展させた。中・越両国は陸上国境問題の全面的解決について合意し、実質的な交渉を終結した。ワヒド氏がインドネシア大統領に当選した後、中国を公式訪問の最初の国として訪れ、中国とインドネシアの関係によい展望が現れた。
中国とパキスタンとの友好関係は引き続き発展を遂げ、インドとの関係は引き続き改善し、いくらか発展を見ている。歴史、宗教、民族などのさまざまな複雑な原因によって、南アジア諸国の間には短い期間には解決できない問題が存在しており、これは客観的な事実である。南アジアの近隣として、中国は南アジア諸国が戦略的な長期的視点から出発し、平和の方法で、話し合いによって、互いの食い違いを適切に解決し、ともに南アジアの安定を守り、南アジアの繁栄と発展を促すよう切実に望んでいる。
中国と中央アジア諸国との友好関係は一段と強固になった。昨年、江沢民主席は中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン五カ国の第四回首脳会合に出席し、四カ国の首脳と世界情勢、地域安全、地域経済協力などの問題をめぐって広範囲において共通認識に達した。五カ国の首脳が発表した「ビシケク声明」は、五カ国の善隣友好協力関係を強化し、ともに民族分裂主義勢力に打撃を加えるうえで重要な意義を持っている。タジキスタン共和国大統領、カザフスタン共和国大統領、ウズベキスタン共和国大統領がそれぞれ訪中した。中国とカザフスタンは両国が国境問題を全面的に解決したことについての共同コミュニケに調印した。
過ぎ去った一年は、中国の対外関係が厳しい闘争を経てきた年であるとともに、著しい成果をあげた年でもあった。希望にも満ち、数多くの挑戦にも直面する新しい世紀において、中国は引き続き重要な国際問題で建設的な役割を果たすであろう。中国が地域の平和と安定を促す重要な要因であることは事実によって証明されており、そして今後もそれは証明されつづけるであろう。中国の安定と発展は、引き続き十二億の中国人民に幸福をもたらすだけでなく、世界の平和と繁栄をさらに促すであろう。