二十一世紀初めの中国の安全環境

 九〇年代最後の数年、国際情勢に二つの大きな激動があった。一つは東南アジアの金融危機を主とする経済的激動であり、一つはコソボ戦争を主とする安全上の激動である。前者は経済グローバル化の過程に内在する矛盾の深刻な反映で、後者は政治の多極化過程に内在する矛盾の深刻な反映であった。この二つの歴史的事件に代表される二つの大きな激動は新世紀の国際関係の動向に対し重大な影響を生じる。そのため、二〇〇〇年から二〇一〇年までは中国の安全にとって極めて重要な十年となる。

 この十年はちょうど世紀の変わり目にあたり、世界の主要国が二十一世紀の国家戦略の調整を速める、国際関係の一つの重要な調整期であり、世界の新しい枠組みが形成されるカギとなる時期でもあり、直接中国の新世紀における役割、根本的利益とかかわりがある。

 この十年は中国の現代化建設と発展のカギとなる時期である。まずまずの生活という目標を初歩的に実現した後、中国は中進国にすすむスタート段階に入り、台湾の祖国復帰をメルクマールとする祖国の完全な統一事業は重要な時期に入って、国防の現代化もこの時期に重要なステップを踏み出す。この十年に、中国は相対的に緩和した安全環境を獲得し、それによって機会をつかみ、精力を集中し、発展をはかり、国を強大にする必要がある。

 江凌飛国防大学国際関係教学研究室副主任は、中国の二十一世紀の安全環境に影響する主な要素は以下のようなものがあるとしている。

 一、国際経済

 金融危機で大きな衝撃を受けたアジア、特に東アジアの経済が回復し、健全に運行するには二、三年はかかる。この過程で、アメリカをはじめとする西側先進国と多国籍企業は、アジア諸国の経済力が弱いという機会を利用して、資本を拡張し、倒産に追い込まれているアジアの企業を安く買い入れ、再び経済的にこの地区をコントロールする度合いを強めるであろう。

 経済情勢の悪化はアジアのいくつかの国の政局に変化を引き起こしている。例えば、インドネシアでは民族主義の騒乱が発生し、アジア・太平洋地域の安全環境に不利な要素をもたらした。

 江沢民主席は、「だから、わたしは未来の中国の安全はアジア経済の成長によるところが大きいと思う。もしアジアの経済が速やかに回復し、経済構造問題の解決が急速に進展し、健全な発展の軌道に乗るようになれば、アジア地域は平和と発展の勢いを回復することができ、中国の安全環境も一定の保証が得られるだろう」と述べている。

 世界経済も中国の安全に影響を及ぼしている。アメリカの経済はここ数年、ハイテク産業の発展と拡張に頼って、百六カ月の持続的成長を実現した。未来の十年の経済発展の勢いから見ると、アメリカの世界のハイテク産業におけるトップの地位は引き続き維持され、発展途上国とのギャップはいっそう大きくなるだろう。しかし、アメリカ経済も確かにバブルの成分が存在している。

 アメリカは地域的な金融危機から巨大な利益を得ており、外部資金の大量の流入がアメリカ経済と株式市場の高まりを大きく推進し、コソボ危機はまたユーロの為替相場を持続的に弱め、東ヨーロッパ諸国の為替相場の下降と西欧の株式市場の激しい変動をもたらし、それによって米ドルの為替相場が持続的に強くなり、アメリカが資金利益を得てリスクを避ける重要な市場となっている。そのほかに、過度の消費と先取り消費による生産過剰の危機が現れるだろう。

 江沢民主席は、「したがって、世界のその他の経済が回復するにつれ、アメリカ経済に一部の問題が現れる可能性を排除することはできない。問題が深刻であるかどうかを問わず、あれこれの形で全世界の経済に波及し、中国経済の安全に対し新しい衝撃と影響をもたらすことになろう」と述べている。

 二、大国間関係

 ここ数年、大国の力関係がバランスを失ったことは経済の発展と直接関係がある。

 アメリカの経済は持続的に上昇し、世界で横暴にふるまい、その経済力と軍事力の優位によって、今後多極世界に挑戦する行動の中で、より攻撃的と冒険的になるだろう。ロシア、日本とヨーロッパの経済回復の面での努力は、全世界の金融情勢の影響を受けて挫折し、中国の経済もここ二年は調整をすすめている。そのため、大国間の開きは大きくなるだろう。

 このほか、欧米と日米は戦略面でいっそう関係が密接になった。これは主にNATOと日米の安全保障同盟の強化に現れており、大国間の力関係の変化をもたらした。ロシアのエリツィン大統領は昨年十二月に訪中した際、ロシア側は中国に六十機のスホーイ30を売ることを約束した。これはロシアが軍事的に中国との戦略的協力パートナーシップを強化しようとしていること、ロシアがコソボ戦争以来、西側諸国からの圧力を打破しようとしていることを示している。東アジアの二強である中日の矛盾はいっそう表面化してきている。日本は、経済・社会発展の面で引き続き中国と幅広い協力を行うとしているが、政治と国防の面で引き続きアメリカに追随し、暗に中国を牽制する立場をとっている。ASEANがアジア金融危機で勢いがそがれた機に乗じて、アメリカ、日本などの西側諸国が手を伸ばし、それを分化し、制御し、丸め込むことに力を入れ、ASEANを政治面で西側に傾くようにさせた。したがって、未来のアジア太平洋地域は米日中の不等辺三角形を核心として、関係が相対的に安定するものの、重心がアメリカに傾く大国間関係の枠組みを形成する可能性が大きい。

 三、民族分裂主義

 冷戦後、旧ソ連周辺と東ヨーロッパ地域に民族分裂主義の波が現れ、この波はソ連とユーゴスラビアの解体によって、世界のその他の地域に広がり、中国でも一つの「小気候」を形成した。今回NATOがコソボに武力干渉した事件も、西側諸国は民族分裂問題を利用して、他国の主権に干渉し、アメリカの反中国勢力は中国の民族分裂勢力を中国の発展を圧制、牽制するための重要なカードとしている。

 江沢民主席は、「アメリカをはじめとした西側諸国はコソボ事件に干渉する中で『人権が主権より高い』ということをうち出した。これは、世界で国から分離しようとする大小さまざまな民族勢力に一面の旗を提供して、その活動に法理的口実を提供した」と述べている。

 そのため、コソボ事件後、世界のいくつかの地域の情勢が悪化し、中国の周辺地域も安定しなくなってきた。例えば、インドネシアのアチェ州はインドネシアから分離することを要求しているが、これはコソボ事件と金融危機によってインドネシアの国家政権の統治が弱体化したことによるものである。中国の民族分裂勢力もその活動を強化している。「中国の安全に直接影響を与えている問題は台湾問題だと言える」と江沢民主席は述べている。

 一九九九年七月初めに、李登輝が両国論をうち出してから、彼はこの論調を国民党の決議に盛り込んだだけではなく、それを未来の「国家」の骨組みにしようとし、「一国二制度」と祖国の平和統一事業に障害をつくった。

 「もし台湾が独立を公然と宣言するならば、われわれは必ず軍事行動をとるであろう。しかし、これはきっと台湾海峡の情勢を激化させて、アメリカの軍事介入と西側の共同制裁を招くかも知れない」と江沢民主席は述べている。ひとたびこのような局面が現れると、中国の生存、発展、統一の三つの利益に影響し、中国の安全もきわめて厳しい情勢に直面するであろう。そのため、中国は、冷戦後の民族、宗教、人権などの問題が国際安全に影響を与える深刻性、広範性、長期性に対して十分な見積りをし、アメリカなど西側の敵対勢力が中国の民族問題を利用して中国を分裂させ弱体化させようとすることに高度の警戒心を持つべきである。今後十年、分裂と反分裂の闘争は中国の安全環境に影響を与え、中国安全の主なホット問題の一つになるだろう。

 四、軍事安全

 冷戦終結後、経済要素が上昇し、経済の安全問題が突出してきているが、軍事安全の国際政治と国家安全における重要性は弱まっていない。世界のいくつか重要な国は大規模の軍縮をすると同時に、軍事的質を強化する歩みを速めて、近代経済力を基礎として、ハイテクに推進される新たな軍事変革が再び国際的近似実力対比を作り、大きい程度において未来の国際安全の動きを決定する。

 アメリカは最近、今後五年の国防予算を大幅に増加し、先端兵器の開発に力を入れ、軍事科学技術の高地を制することに努めることにしている。軍事面でのハイテク力は、アメリカが国際実務でいっそう冒険を冒し、いっそう干渉を行うようにさせる。

 アメリカは絶えずその軍事行動力を高めると同時に、また単極覇権のグローバル的軍事システムを構築し支えることに力を入れ、武力を使用する最も便利な方式を探している。アメリカはユーラシア大陸をアメリカがコントロールし、主導し、改造し、強化したNATOと米日安保同盟の監視・管理下に置くことを企み、ある種の軍事同盟「新概念」を確立することを通して、一に成員を拡大し、二に機能を拡大し、台湾を事実上その同盟体系に組み入れて、中国に対処する傾向が明らかに増えた。

 「したがって、軍事は二十一世紀に依然として中国の安全に影響を与える重要な要素である」と江沢民主席は述べている。

 上述の四つの要素のほかに、江沢民主席はその他の要素もあるとしている。

 国連が中国の安全に果たしている意義について、江沢民主席は次のように述べている。冷戦期間、国連は基本的には米ソが世界の覇権を奪い合う道具であった。冷戦後、政治の多極化と経済のグローバル化の進展に伴って、国連の役割はますます積極的なものとなってきているが、そのためにアメリカが自分の意志通りに事を進めることに対する障害となっている。そうしたことから、アメリカは国連を無視し、より多く単独で行うことを願っている。

 中国が国際的に自らの役割を発揮しようとするならば、大きい程度において国連に頼る必要がある。一、安保理の拒否権が中国の大国としての主な表現形式の一つであるからであり、もし国連の役割が弱くなれば、中国の大国としての役割も弱まることになる。二、中国が国連憲章に頼るところが大きいのはそれが国家の主権は干渉を許されないという原則を強調しているからである。もしこの精神が損なわれるならば、中国が国家主権を守る問題で依拠している根拠が弱くなる。現在、新干渉主義は人権が主権より高いということを打ち出している。将来もしこの思潮が国連で主流となるならば(今確かにこのような傾向が存在している)、アメリカは中国の民族問題と台湾問題に干渉する理由を持つことになる。こうなると、中国の国連の舞台での闘争は不利な地位に置かれる。

 このほか、昨年十月から中国の指導者である江沢民国家主席、李鵬全国人民代表大会常務委員会委員長、朱鎔基国務院総理、李瑞環全国政治協商会議主席がアジア、ヨーロッパ、アフリカの国々を訪問した。江沢民主席は、これらの指導者の訪問に一つの特徴があり、それは発展途上国とヨーロッパをわりに強調したことである、と述べている。

 現在、世界の政治は多極化し、経済はグローバル化し、この二大動向の中で、西側諸国内部の矛盾がさらに激化してきており、発展途上国の経済グローバル化の過程で利益が損なわれ、政治多極化の過程で、一極世界を確立しようとするアメリカの覇権行為が発展途上国の利益に大きな脅威を与えている。そのため、中国は安全と経済利益の面で、発展途上国との共通点が増えてきているので、これらの国との関係をよくするのは非常に重要である。

 中国の安全にとって、ヨーロッパはつねに味方になることができる要素であり、中国は将来自国の切実な利益にかかわる問題を解決する際、ヨーロッパ諸国の理解を得られることを望んでいる。それによって、アメリカが他の国と提携して制裁を加える局面を組織できなくなるようにさせる。そのため、中国はヨーロッパを経済利益の面でさらに中国と結びつくようにさせるべきであり、これは大きな意義がある。

 江沢民主席は「十月から始まった中国の指導者の大規模な外国訪問は中国の安全を守ることを十分に意図した行動である」と述べている。

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