十字路にさしかかった非拡散を目指す国際努力
最近、『北京週報』記者周慶昌は非拡散を目指す国際努力について、外交部軍縮司の沙祖康司長にインタビューした。次はその一問一答である。
問 非拡散に関する中国政府の政策と実践は何か。
答 中国は大量破壊兵器の非拡散を目指す国際努力を断固支持し、国際法律文書を基礎とするすべての多角的非拡散メカニズムに積極的に参加し、それを断固擁護している。中国は一九九二年に「核拡散防止条約」(NPT)に加入し、一九九五年には同条約の無期限延長の実現に貢献した。中国は積極的に「化学兵器禁止条約」についての交渉に参加して一九九三年に同条約に調印し、一九九七年に同条約を批准し、同条約の最初の締約国となるとともに、忠実に条約の義務を履行している。中国は一九八四年に「生物・毒素兵器禁止条約」に加入し、今は同条約の有効性を強化するための議定書についての交渉に積極的に参与している。一九九六年第一陣の調印国として、中国が「包括的核実験禁止条約」に調印し、同条約発効準備委員会の積極的なメンバーである。中国は国際原子力機関(IAEA)の加盟国であり、自ら進んで自国の民間の原子力施設をIAEAの保障監督の下に置き、一九九七年十月に「サンゴ委員会」に参加し、一九九八年末にはIAEAの保障・監督システムの強化を目指す「九三+二」付加議定書に調印した。このほか、中国は中南米とカリブ、南太平洋、アフリカなどの非核地帯条約の関係議定書に調印し、同時に「東南アジア非核地帯条約」の改正後の関係議定書に調印することをはっきりと約束した。
こういったことから、中国がほとんどの国際法律文書に参加しているのを見て取るのは難しくない。中国は多角的な非拡散努力に積極的に参与するほか、敏感物質と技術の輸出抑制メカニズムを絶えず整備し、一連の法律と法規を公布した。一九九五年十二月、中国政府は「監視化学品管理条例」を公布し、一九九六年には同条例に基づいて「各種監視化学品目録」と「条例実施細則」を公布した。一九九七年九月、中国政府は「核輸出管制条例」を公布し、同年十月に「軍用物質輸出管理条例」を公布し、一九九八年六月には「核両用物質及び関連技術輸出管制条例」を公布した。
これらの事実は、大量破壊兵器の非拡散問題に対する中国政府の立場がはっきりしたものであり、中国が大量破壊兵器の拡散に反対する政策を断固実行していることを物語っている。この政策は今後も変わることがない。
問 昨年の北大西洋条約機構(NATO)の対ユーゴスラビア爆撃は、国際軍縮と非拡散の努力にどのような損害をもたらしたか。
答 コソボ戦争は国家安全面における軍事要素の重要な役割を際立って顕示した。このため、各国は自国を取り巻く国際安全環境を改めて考慮せざるを得なくなった。これは必ず各国の軍事力発展の緊迫感を強めるだろう。人々はNATOの侵略行為に憤慨を示した後、ミロシェビッチが核兵器あるいはその他の大量破壊兵器と効果的な運搬手段を持っていたなら、NATOがこのようにほしいままに振る舞うだけの勇気があっただろうかという疑問を提起するのは自然である。
コソボ戦争はまた少数の国の軍縮・不拡散政策の偽りの本質をも暴露した。さまざまな先進的巡航ミサイルと爆弾がユーゴスラビアにもたらした損害を見れば、ある一部の国が極力実行しているミサイル拡散防止政策が自国の軍事面の優位を守るためではなく、国際社会の平和と安全を擁護するためのものであると信じる人は恐らくいなくなるだろう。
問 非拡散分野における国際協力をゆゆしく妨害するマイナスの要素は何か。
答 これらのマイナスの要素は主に次のいくつかの面に存在している。
一、国際協力の代わりに単一主義を実行することは、国際軍縮と非拡散の好ましい発展をひどく妨げるだろう。
大量破壊兵器の非拡散は、国際社会の共同の努力がなければ実行できない。それは協力と安全の枠組の中においてのみはじめて成功を収めることができる。いかなる国も、その国がどれほど強大であるかを問わず、その他の国、特にその他の軍事大国の呼応がなければ、自国あるいは少数の加盟国の力に頼って非拡散の目標を達成するのは難しい。単一主義と非拡散は根本から相容れないものである。
しかし、ある大国は世界で覇を唱えるため、こうした国際協力を意識的に破壊している。この大国は一方では、他国の内政に干渉し、軍事同盟を拡大、強化するなどの手段をとり、主観的な臆測に頼って、勝手気ままにそのいわゆる「相手」と「潜在する相手」を「指定」し、同時にそれに対し弱体化と封じ込めの政策をとって、その他の大国の堀起を妨げ、自国の世界に一つしかない超大国の地位を維持し、他方では、自国の超強大な経済力と科学技術力に頼って、本土ミサイル防衛システムの発展に力を入れ、これによってグローバルな戦略的均衡を打破し、絶対的な安全を求め、全世界で覇者の地位を確立しようとしている。
周知の通り、「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」は冷戦時期にグローバルな戦略的安定を守る礎であり、米ソの間に攻撃的戦略兵器を制限・削減するために必要な条件を整えた。冷戦終結後、国際情勢に大きな変化が生じたとはいえ、「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」の上述の役割は変わっておらず、核兵器を全面的に禁止し、徹底的に廃棄する前にも変わることがない。その前に、同条約に対するいかなる実質的な修正も、必ずグローバルな戦略的安定を損なうであろう。
なるほど、「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約」を守るのは「恐怖の均衡」と相対的な安全にすぎず、理想的ではない。しかし、ある超大国に重大な尚武の傾向が存在する状況の下では、「恐怖の均衡」は「均衡でない恐怖」より良く、相対的安全も絶対的な不安全に勝っている。したがって、同条約に違反するいかなる行為もかならず関係諸国の強い反対に遭い、しかも軍縮と非拡散分野における国際協力に重大な影響を及ぼす。
二、非拡散問題の上で利己主義と二重の基準をとるやり方は、必ず非拡散についての国際努力の公正さと厳粛性にゆゆしく損害するであろう。
非拡散の目的は世界各国の普遍的安全を増進するためである。このような非拡散のみはじめて長続きし、生命力をもつことができる。しかし、一部の国はこの問題の上で全く自国の好き嫌いに基づいて非拡散政策の方向を決定している。自国の同盟国、友好国または重大な戦略と経済的利益をもっている国が大量破壊兵器およびその運搬手段を発展させることを見て見ぬ振りをし、黙認ひいては扇動の態度をとっているが、自分が好きでなく、または文化的伝統、イデオロギーの異なる国に対してはややもすれば制裁を加え、ひいては武力を行使すると脅しまたは行使している。これらのやり方はこれらの国が非拡散問題の上で極めて短視的で、長期の戦略を欠いていることを表し、非拡散についての国際努力に極めてよくない影響を及ぼしたばかりでなく、最終的にはこれらの国自体の利益を損なうであろう。
三、条約義務履行の面で他人に対して厳しく自己に対して寛大な態度をとるのは、国際軍縮と非拡散条約の厳粛性を破壊するであろう。
法律の前では一律平等であり、条約の義務は履行しなければならない。これは文明社会の基本的原則であり、順守されるべきである。しかし、極少数の国は国際軍縮と非拡散条約および自国がこれらの条約に基づいて担っている法的義務に対しては、ふまじめな態度をとり、人々を憂慮させている。条約についての交渉に対しては、厳しい上に厳しく、速い上に速くという立場を取っている。条約締結後は、その他の国の条約履行の状況を密接に注目し、その他の国が条約に違反することだけを恐れている。自国はいろいろな口実で遅々として条約を批准せず、ひいては条約の批准をはっきりと拒否する。たとえいやいやながら条約を批准しても、条約の規定に違反して、国内立法の方式で、条約の一部の重要な条項に対し保留の態度をとる。これでは、人々はこのような国の国際軍縮と非拡散条約およびその交渉に対する誠意を疑わざるを得なくなる。その振る舞いは、世界の指導者をもって自任する同国が、その他の国のために法律を制定しているのであって、自己は遵守する必要がないことをはっきりと世人に告げている。これは明らかにいかなる民族自尊心を持つ国が受け入れられないものである。
四、軍縮と非拡散分野における多国間条約に対し軽視と信用しない態度をとるのは、国際非拡散メカニズムの権威性と普遍性の向上に役立たない。
一部の国は一方では各種の軍縮と非拡散条約の締結を積極的に推進し、他方では非拡散の面における多国間条約の役割に対しある種の軽視と信用しない態度をとっている。
このような軽視と信用しない態度は主として次の二つの面に表れている。まず、ある国が条約に違反していると懐疑する状況の下で、彼らは条約の規定した正常のルートを通じてはっきりさせるか査察するのではなく、マスメディアか両方に圧力を加えるやり方で問題を解決しようとしている。
次に、条約の発効後、条約の規定に合わない輸出規制ブロックを引き続き保持するとともに、ブロックを国際条約の関係規定の上に置いている。それよりひどいのは、関係輸出規制ブロックの存在する合理性に影響を及ぼさないようにするため、一部の軍縮条約についての交渉、例えばBWC議定書についての交渉は、輸出規制問題に言及するのを全然認めていない。
問 どうすれば大量破壊兵器の拡散を防止できると考えるか
答 大量破壊兵器の非拡散は長期にわたる事業である。科学技術の飛躍的な発展、経済の更なるグローバル化およびインターネットの普及に伴い、非拡散の目標を実現する難度は絶えず大きくなるであろう。非拡散問題を徹底的に解決する根本的な活路は、すべての大量破壊兵器を全面的に禁止し、徹底的に廃棄することにある。
その前に、国際社会は二つの方面から着手すべきである。一つは国際安全環境の改善に力を入れ、公正かつ合理的な国際政治経済新秩序を確立するように努めることである。こうしてのみはじめてすべての国は大小、貧富、強弱、大量破壊兵器の有無を問わず、安全感があり、一部の国が大量破壊兵器を獲得し、発展させる動因を根本からなくすことができる。もう一つは非拡散分野における国際協力を強化し、現有の非拡散条約とメカニズムを踏まえて、情勢の発展に合った新たな解決策をいちだんと模索することである。この分野においては、少数の国の「封じ込め」と「抑えつけ」に頼るだけでは何の役にも立たず、非拡散の目標を実現できるのは国際社会の共同の努力だけである。