中米が中国のWTO加盟に関す
る取り決めに調印した重要な意義は何か
一九九九年十一月十五日、中米は中国の世界貿易機関(WTO)加盟について合意に達したが、これは重要な現実的意義と深遠な歴史的意義をもつ出来事である。この取り決めの調印は、中国が二十一世紀に向けて改革・開放と社会主義現代化建設事業を一段と推し進めるのに有利であり、中国のWTO加盟のプロセスを加速するのに有利であり、中米関係の安定と発展に有利であり、また世界経済の発展と繁栄に新たな原動力を注ぎ込むであろう。
一九八六年、中国が中国のガット(一九九五年にWTOに改称)締約国地位回復を正式に申請して以来、中米は十三年もの長い交渉を行ってきた。一九八六年から一九八九年までに、中国はアメリカを含む主要締約国と二国間交渉を頻繁に行った。一九八九年以後は、アメリカをはじめとする西側諸国が中国に対し経済制裁を実施したため、中米間の中国のガット締約国地位回復についての交渉が中断された。一九九三年に交渉が再開してから、中国が多くの面で大きな努力を払ったにもかかわらず、アメリカ側の言い値が高く、それにアメリカ国内の政治面の影響を受けたこともあって、交渉は数々の困難にぶつかり、アメリカ側は中国と合意に達する機会を何回も失った。
一九九九年五月八日、アメリカが中国駐ユーゴスラビア大使館を爆撃し、中米がこの交渉を続ける雰囲気がなくなったため、中国側は中国のWTO加盟に関する二国間交渉を中断した。その後、アメリカ側は何度も交渉の再開を提出した。そのような状況のもとで、中国の指導部は時機と情勢をよく観察した上で、適当な時に交渉を再開することを決めた。九月十一日、江沢民国家主席とクリントン大統領はニュージーランドのオークランドでAPEC非公式首脳会合に出席した期間に会談したのをきっかけに、中米は二国間交渉を再開した。十一月十日、中米双方は北京で最終段階の交渉に臨み、六日間も夜を日に継いで困難に満ちた交渉を行った末、相互理解・相互譲歩と平等互恵を踏まえて合意に達した。取り決めの調印後、中米各界と世界各国はぞくぞくとそれを高く評価し、これは「ウイン・ウイン」の合意であることを広く認めた。全体から見て、中米が中国のWTO加盟に関する二国間取り決めに調印した重要な意義は、主として次のいくつかの面に表れている。
一、 中国が二十一世紀に向けて改革・開放と社会主義現代化建設事業を一段と推し進めるのに有利である。
中国のWTO加盟は、中国の大きな発展戦略にかかわる問題であり、つまり中国がいかに一段と開放を拡大し、改革を深化させるかという問題である。WTO加盟は中国の改革深化に強大な原動力を提供し、構造調整と技術進歩を促進し、経済発展の質と効益を高めることができる。WTO加盟は中国の経済発展に必要な相対的に安定した外部環境を改善し、国際規則の制定に直接参与し、中国の権益を守るのに有利であり、中国がより広く、深く国際分業と国際協力に参与し、外資利用と輸出を促進するのに有利である。
アメリカと二国間合意に達したことによって、中国は世界に強力なシグナルを出した。それはつまり中国が多国間貿易規則の順守を約束し、市場の逐次開放を約束し、引き続き確固として変わることなく改革・開放を推し進めることである。これは中国の改革・開放と責任を負う大国のイメージを樹立するのに有利である。とう小平氏はかつて「中国は国際において改革・開放のイメージを樹立しなければならない」と指摘したことがある。中国は発展途上の社会主義大国であり、対外開放は中国の社会主義現代化を実現するための基本国策である。経済のグローバル化という大きな趨勢のもとで、中国は積極的かつ効果的に経済グローバル化のプロセスに参与しなければならない。中米が今回の交渉で合意に達したことは、中国が改革・開放を続けることに対する世界各国の自信を一段と強めた。われわれは、中国の対外開放が中国に対する国際社会のさらに大きな開放を迎えるものと信じている。
当然のことながら、中国はWTO加盟申請国として、その権利を享受するには、相応の義務を履行しなければならず、市場開放によって受ける可能性のあるリスクとプレッシャーに耐えなければならない。市場の開放と保護の減少に伴い、中国の一部の産業に挑戦をもたらすかも知れないが、これはわれわれがWTOに加盟し、より多くの利益を獲得するために払わなければならない代価である。これらの挑戦は改革を通じて発展の原動力に変えることができる。中国の二十年にわたる改革・開放の実施によって総合国力が増強され、国有企業の改革が進展したことから、われわれはこの挑戦に立ち向かう自信と能力を完全にもっている。
二、中国のWTO加盟のプロセスを加速するのに有利である。
アメリカは世界最大の先進国で、世界経済と貿易の中で重要な位置を占めており、中国の二番目の大貿易パートナーでもある。WTOの主要加盟国として、アメリカは国際貿易規則の制定と実施の面では重要な影響力をもっている。そのため、中米が二国間合意に達したことは中国のWTO加盟のプロセスを加速するのに有利である。WTOのメンバーは百三十五あるが、中国と市場参入について二国間交渉を行うことを要求しているメンバーは三十七ある。現在までのところ、十六のメンバーはすでに中国との二国間交渉を終えたが、欧州連合(EU)など二十一のメンバーと中国との交渉がまだ終わっていない。中米が二国間合意に達した後、これらのメンバーは中国をWTOに早期加盟させるためにも、中国との交渉のプロセスを加速したいと表明した。
三、中米経済貿易協力の全面的発展を促進するのに有利であり、中米関係全体を健全と安定の軌道に沿って前進するように推し進めるのに有利である。
中米国交樹立の二十一年来、両国の経済貿易関係は長足の発展を遂げた。二十一年間に、両国間の貿易額は五十倍増え、昨年の一月から十一月までの金額はすでに五百五十五億四千九百万ドルに達した。現在、アメリカは中国の二番目の大貿易パートナーであり、中国はアメリカの四番目の大貿易パートナーである。近年、米国企業の対中投資額が持続的に拡大され、投資プロジェクト件数は累計二万八千件を上回り、契約ベースの金額は各国を抜いてトップに立っている。アメリカはすでに中国が対外経済技術協力を行う主要な相手国の一つとなった。中米経済貿易協力は両国関係の重要な土台と原動力となった。中米両国の産業構造が違い、経済の相互補完性が強いため、両国の経済貿易、科学技術の交流と協力の発展に大きな潜在力がある。
しかし、中米経済貿易関係はさまざまな制約と影響を受けて、何回も起伏と曲折をたどり、とりわけここ十年間に摩擦が絶えなかった。その中で、米議会が年度ごとに中国最恵国待遇(今は正常貿易関係に改称)問題を審議することは、長年来中米経済貿易関係を妨害する不安定な要素であり、両国の政治関係を覆う暗雲でもある。一九九〇年から、米国会は毎年のようにこの問題を利用して中国の最恵国待遇にいろいろの厳しい条件を付けた。実際にはこのような年度ごとの審議はとっくにさまざまな反中国勢力が中国を攻撃、中傷し、中米関係の発展を妨げる「フォーラム」になり下がっている。アメリカ政府は交渉の中で、中国に永久の正常貿易関係の待遇を与える問題を全力挙げて解決すると中国側に明確に約束した。われわれはアメリカ側が約束を守り、中国に対する永久の正常貿易関係問題をできるだけ早く迅速かつ徹底的に解決するよう望んでいる。これは中米経済貿易協力の拡大ないし両国関係全体の改善と発展に対しかならず積極的かつ深遠な影響をもたらすであろう。
四、世界経済の発展と繁栄に新たな原動力を注ぎ込む。
中国のWTO早期加盟は各国・各地域の貿易パートナーにいっそう緩やかで透明した投資環境といっそう広く安定した市場参入の機会を提供する。これは疑いもなく新世紀の世界経済貿易の繁栄と発展に有利である。中国の経済総量は世界第七位、貿易額は第十位を占め、しかも長年連続して世界で外資導入が二番目に多い国となった。中国は世界経済の成長を推し進める重要な力となった。中国のWTO加盟によって、WTOはいっそう完全なものになり、国際貿易の安定と発展に有利である。中国が地域経済と世界経済を促進し安定させる上で果たす役割は、ここ二年来のアジア金融危機の中で十分に体現されている。同時に、WTO加盟後、中国は真剣に中国の対外約束を守り、公認の多国間貿易の規則を順守し、積極的に国際貿易規則の制定に参加し、公正かつ合理的な国際経済新秩序を構築するためにいっそう大きな貢献をするであろう。われわれはWTOにおいてアメリカを含むすべての加盟国と密接に効果的に協力し、WTOの健全な発展と国際貿易の持続的繁栄を促すためにともに努力することを望んでいる。
中国のWTO加盟についての中米交渉は経済貿易問題ばかりではなく、政治問題でもある。江沢民主席と中国政府は、中米両国が高所に立ち、遠くまで見通し、戦略の高度と二十一世紀を展望する角度から中米関係および中国のWTO加盟についての中米交渉に臨むべきだと度々アメリカ側に強調した。この中米交渉が曲折と困難にみちた道をたどったにもかかわらず、双方はついに双方の利益に合った合意に達し、双方とも満足を覚える目標を実現したのである。これは喜ばしいことである。このことからわれわれは重要な啓発を得た。つまり、中米両国は国情が違い、政治体制、イデオロギー、価値観が異なっているため、両国の間に若干の食い違いが存在するのは自然なことであり、中米関係は艱難困苦を経てきたし、今後も順風満帆とはいかないであろうが、中米双方は高所に立って遠い将来まで見通し、平等互恵、相互尊重、相違点を残して共通点を求めるという精神にのっとりさえすれば、両国人民の根本的利益と世界の平和、発展にかかわる重要な問題をめぐって効果的に協力を行うのは全く可能であり、両国関係を絶えず前進させることが必ずできるというのがそれである。