中国における政務公開
中国共産党第十五回全国代表大会では、現在と今後の一時期における政治体制改革の主な課題は、民主制度を発展させ、法制整備を強化し、民主的監督制度をさらに充実させることである。政務と財務の公開を実行し、大衆を末端の公共事務と公益事業の討議および決定に参与させ、幹部に対し民主的監督を実行しなければならないことが指摘されている。その後、十年間試行された「中華人民共和国村民委員会組織法」が改正されて一九九八年下半期から実施され、八億余の人口を擁する農村部が率先して政務公開実行のモデルとなった。それと同時に、都市部の党・政府機関は改革のテンポを速め、北京は全国の政治的中心として全国の先頭に立っている。
北京市の政務公開
北京市人民代表大会常務委員会の責任者はこう語っている。政務公開の実現は重要な出来事を人民に知らせ、人民を重要な政策決定に参与させるべきである。政府の重要措置は、まず人民代表大会代表の意見を求めなければならない。これは政務公開の重要な道筋である。
この面について、北京市人代は立法を通じて準備を行っている。一九九六年、北京市第十期人民代表大会常務委員会第三十一回会議で「市人民政府が市人民代表大会常務委員会に重要事項を報告することに関する若干の規定」が一致して採択され、初めて立法の形で、市政府が重要な政策決定を行う場合、市人代常務委に報告するよう要請することになった。市政府が市人代常務委に重要事項を報告することを地方的法規として確定したのは、政務の透明度を高めるためである。それと同時に、市人代常務委の監督活動を強化し、政策決定の民主化と科学化を促進する。その後、市人代常務委は「北京市予算監督条例草案」、「北京市人民代表大会常務委員会司法監督活動条例」、「北京市予算監督条例」などの地方的法規を次々と採択し、北京市の政務公開のため法律の面で確固とした基礎を築いた。
法規に基づき、市政府の関係部門の責任者は毎年市人代に年初の活動計画と年末の活動の総括を含む活動状況を報告しなければならない。定期開催の人代常務委会議も関係部門の責任者を招いてそれまでの期間の作った重要な政策を共同で討議させる。こうして、各重要政策の科学性と民主化を保証すると同時に、政務公開に雰囲気と道筋をつくり出した。
政務公開の実施をさらに保証するため、市人代は人代代表の視察、法律執行の点検の形で、市政府が公約した政治、経済、司法、教育、科学技術、医療・衛生などいろいろな面の活動を監督し、これらの問題は往々にして大衆が関心を持ち、解決しにくい問題である。うまく解決できなければ、政務公開政策の執行に影響を与えるだけでなく、人民大衆の政府に対する信頼にも影響が及ぶものとなる。北京方荘団地はアジア最大の住宅団地で、設計案ではグラウンドの造成が計画されていたが、完工後、グラウンドに使われるはずだった用地は占用されてしまった。市人代代表は視察の際、これに気づき関係部門に意見と提言を行った。何カ月も経たないうちに、用地を占用していた倉庫は徹底的に整理され、バスケットボール、サッカー、ゲートボール、競技などの設備を備えたグラウンドが建設され、使用に供された。人代代表の監督・検査、人代と政府の相互支持、適時交流を通じて、政府活動の透明度を高めただけでなく、政務公開の実施のための準備が行われた。
最近、北京市政府は「北京政府ネットワーク」を開設し、先進的な情報手段で政府と市民とのコミュニケーションを強化し、政府事務の透明度を高めた。
民主政治の実現をめざす政務公開
政務公開の意味について、中国共産党中央党学校の侯少文教授は次のように語った。いわゆる政務は公務である。公務は公開しなければならない。広義に言えば、政務公開は政府の事務の公開に限られるだけでなく、国の権力機関、権力機関の設立した行政機関、司法機関、監察機関および党の指導機関の重要な決定を含む中国の重要な政治的活動、政治的決定は広範な人民大衆に公開し、人民大衆の監督を受ける。狭義に言えば、政務公開は政府事務の公開であり、人民大衆が国の主人公として事情を知る権利を持つことは当然のことである。レーニンが述べたように、公開性がないのに民主を語るのはおかしいことで、公開は民主が当然持つべきものであり、民主を実現する条件の一つでもある。
張樹義中国政法大学教授は次のように語った。アメリカはわりに早く政務公開の面で立法を行った。一九六六年に制定された「情報自由法」、一九七六年に制定された「 日光のもとでの連邦政府法」という二つの法律は内容が整い、その他の西側諸国にとってモデルの役割を果たした。各国の政務公開活動の深化に伴って、政務公開の実行は大勢の赴くところとなった。
中国の状況から見て、長年来、計画経済の典型的な特徴は政府による社会資源の独占である。その中には、情報の独占も含まれる。計画経済から市場経済へ転換するにつれて、中国は政府公開の面で試行を行った。一九八九年に制定された「中華人民共和国行政訴訟法」では、行政機関が下した政策の拠り所を公民に公布し、公民はこれらのよりどころを知る権利がある。昨年「中華人民共和国契約法」を制定するに当たり、公衆の意見を広範に求めた。これも政務公開の方式の一種である。
政務公開は民主的政治を実現する効果的な方途である。政務公開は政府に対する大衆の理解を強化し、大衆が国の重要な決定に参与する意欲の向上に役立ち、政府の政策決定をより合理的なものにする。
その次には、政務の公開は腐敗反対・廉潔政治提唱に役立つ。侯少文教授は政務公開の最大のプラスの面は、公共権利の行使を人民大衆の監督の下に置き、腐敗の抑制にプラスとなっていることだと見ている。
政務公開は既存の情報資源を効果的に利用できる。張樹義教授の話では、統計によると、中国には現在、千余のデータベースがあり、そのうち、五百余は政府機関が握っており、三百余は科学研究機構が握っている。情報が失効すれば価値を失い、情報資源の浪費をもたらす。一方では、政府が握っている情報は十分に利用されないことになり、他方では情報を求めている人は情報を入手できなくなる。政務公開は情報の独占を緩和し、情報の交流を促すことになった。