憲法改正に関する検討
中国共産党中央は今年（一九九九年）一月二十二日、憲法の一部内容の改正に関する提案を全国人民代表大会常務委員会に対して行った。一月末、この提案が公表され、全国人民の関心を集めた。それと同時に、中国共産党中央は党外の人たちの座談会を開き、全国人民代表大会常務委員会は憲法改正をめぐって意見を求める座談会を開いた。参会者は憲法改正に支持と理解の意を示した。
なぜ憲法を改正するのか
江沢民中国共産党中央総書記・国家主席は党外の人たちの座談会を主宰し、談話を発表した。江沢民主席は、憲法は国家の根本的大法であり、国の生活の中で、非常に重要な役割を果たしている。客観的現実の変化により、憲法そのものも前向きに発展を遂げる必要があるとし、国の政治、経済、社会生活など各方面の発展の必要によって、改革・開放と社会主義現代化を目指す建設の発展の実践の経験を総括し、憲法と現実との食い違っている部分の内容を改正することは必要であると述べた。
李鵬中国共産党中央政治局常務委員・全国人民代表大会常務委員会委員長は、憲法改正についての意見を求める座談会で次にように述べた。
一九八二年に採択された現行憲法は、八八年と九三年の二回にわたって改正された。これは中国の国情に合致した素晴らしい憲法である。憲法は中国の根本的制度と根本的任務を規定し、四つの基本原則と改革開放の基本方針を確立し、新たな時期において国を治め民が幸せに暮らせるようにする全般的規約である。中国共産党第十五回代表大会（一九九七年九月）以降、中国の改革・開放と現代化建設の事業には新たな局面が現れた。中国共産党は国を治める面で、新しい経験を蓄積した。例えば、鄧小平理論とマルクス・レーニン主義、毛沢東思想をともに中国各民族人民の指導思想として、法によって国を治め、社会主義法制国家を建設するということを国を治める基本的戦略として、社会主義の初級段階の基本的経済制度と分配制度を新たに認識し、非公有制経済の地位と役割を肯定するなどがそれである。これらの重要な原則問題は、憲法を通じて反映されなければならない。そのため、憲法の個々の条文の内容を改正することは必要であり、憲法がより充実するだけではなく、実際により合致するようになり、そして、憲法の権威を擁護することに役立つ。憲法は国の根本的大法とする役割をよりよく果たせるようになる。`w・/p>
中国共産党中央は憲法改正を非常に重視し、真面目に検討し、慎重に考慮することを通じて、「憲法の一部内容の改正に関する初歩的意見と説明」が形成され、各方面の意見を広範囲に求めてから、憲法の一部内容の改正についての提案を提出し、全人大常務委が法律の手続きに基づいて憲法改正案草案を形成し、第九期全国人民代表大会第二回会議（三月五日開催）の審議に交付することになった。
人民の意志に合致する憲法改正
全国人民代表大会常務委員会の座談会において、法曹界と経済界の専門家や学者は鄧小平理論、法によって国を治めること、社会主義の初級段階の基本的経済制度と分配制度などの重要な条文を憲法に書き入れるべきであると見解を示している。そして中国共産党は社会主義の初級段階に対する認識が絶えず深化し、中国の特色を持つ社会主義建設についての認識が絶えず深化することを反映したものである。憲法に対して必要な改正を行い、中国共産党第十五回代表大会の精神が根本的大法に定着し、国の意志、人民の意志となって、全国各民族人民の歴史的使命感と政治的責任感をよりいっそう強め、全国各民族人民を動員、団結して、中国の特色を持つ社会主義を建設するという偉大な事業を二十一世紀に向けて推し進めることになろうとの見方を示した。
専門家、学者の発言を聴取した後、李鵬委員長は、皆さんの意見と提案は真剣に考慮するに値すると述べた。憲法改正が重大な事に関わるものである。今回の憲法改正が必要で、成熟した部分内容を改正するだけであり、改正の必要がなく、或いは異議のある問題に対しては改正を行わない。憲法は全国人民代表大会に憲法解釈の権力を与えており、そのため、ある問題は将来、全国人民代表大会常務委員会の憲法解釈を通じて解決されることができる。
非公有制経済の発展を促進する憲法改正
憲法改正の提案によって「非公有制経済は社会主義市場経済の重要な構成部分である」という提起の仕方を憲法に書き入れることになった。それに対して全国の民営企業の間では大きな反響があった。北京市商工連合会は一部の民営企業家を招いて、憲法改正をめぐって懇談し、それぞれの見方を明らかにしてもらった。
数多くの企業家は非公有制企業発展の困難な歴程を振り返り、個人経済の地位のたえまない向上について特に深い感慨を覚えた。企業家たちはこれまでにずっと「補足」の役を演じ、社会的地位が低く、経営活動の中ではいつも軽蔑されていた。今回非公有制経済を重要な構成部分として憲法に書き入れ、実際には、非公有制経済全体にわりに高い政治的地位を与えるものとなった。これは疑いなく非公有制経済の発展に積極的かつ促進的な役割を果たすことになる。
粛鳴中国東方文化発展センター常務副理事長は、次のように見ている。
今回の憲法改正は非常に適時のものであり、非常に必要でもある。世界的範囲から見れば、百％国による独占の形を取って経済を発展させることはますます潮流に合わなくなり、国民経済は異なった、さまざまな種類の経済の要素の実体によって構成されるものである。これらの経済実体の活動を保護してはじめて経済は生命力を持つことになる。
李少華北京三替サービス総公司経理は、次のように見ている。
憲法の中で、非公有制経済の法的地位を明確にすることは中国の政治、社会と経済の発展が新たな一ページを開いたことを示すものである。非公有制経済は一部の業種の発展の面で独特な強みを持ち、より多くの就業の機会をつくり出し、憲法の中でその地位を明確にすることは国が開放をいっそう拡大することであり、この道に沿って歩むことにより、非公有制経済にﾍ大いに希望があり、国民経済にも同じように大いに希望があることを意味している。非公有制経済が国民経済発展の計画に組み入れられ、国有経済と平等の競争地位を享有できる日もいつか来ると思う。
陳金飛北京通産投資グループ董事局主席はこう語った。非公有制経済の地位の確定にはこれまでずっと立法プロセスを欠き、今回の憲法改正は細かさには欠けるが、私はこの大法が確立された後、次いで細則が公表されるようになっている。これまでの各部門からの支持や援助と比べてより現実的なものとなっている。これは法律であり、法治や人治ではなく、人情ではなく、より保障がある。
恵潔北京葉氏グループ副総裁は、次のように述べている。
かつて創業のときに、私営企業が人々に理解されていない。数年来、われわれは、自分の実力に頼って絶えず自らの存在を証明し、絶えず勉強し、絶えず進歩し、社会に貢献してきた。今日、非公有制経済が「有益な補足」から「重要な構成部分」となったことは、国が民営企業を認めたことである。
二億五千万ドルの資産がある李暁華さんは中国の知名な私営企業家である。氏はこう述べた。われわれは現在、安全感を持ち、われわれの合法的権利は保護されており、過去においては、自分の畑を耕することは不可能で、売買もなおさらできなかった。今回の憲法改正が私営企業の地位を肯定したことは、われわれにとって一種の励ましである。
憲法の実施を保障
江沢民主席は、憲法の尊厳を擁護し、憲法の実施を保護することは非常に重要であると強調した。まず、憲法の実施を保障する法律体系を確立し、健全化する必要がある。憲法の一連の原則的規定が立法を通じて実施に移され、立法活動をいっそう強化し、立法の質を向上し、二〇一〇年までに中国の特色を持つ社会主義の法律体系を確立するためにたゆむことなく努めている。
江沢民主席はこう述べている。中国の社会の民主法制の建設は絶えず発展を遂げ、立法は著しい成果を挙げているだけでなく、法律執行活動も大きな進歩を遂げ、法制の社会環境が次第に形成された。「文化大革命」期（一九六六ー一九七六年）に発生したような、憲法を公然と踏みにじることはすでに二度と起こらないのである。しかし、現実の生活の中で、憲法の権威は全く具現されていない。憲法の実現にはあれこれの問題が存在されていることをもはっきり見て取らなければならない。一部の地方と部門では法律があるのにそれに従がわず、法律を執行するのに厳格でなく、法に違反しても追究しない現象がかなりひどく、ごく少数の幹部は憲法と法律を無視し、自分の意志で法律に取って替わり、権力で法律を抑え、私的な利益のために法をねじ曲げ、法を執行する身でありながら法を犯し、一部の地方と部門の保護主義も台頭し、ひどい腐敗現象と行為が存在している。これらの現象と行為は憲法と法律の尊厳に損害をもたらし、改革・開放と現代化建設を妨げている。人民大衆はこれに不満の意を示し、これらの問題を真面目に解決しなければならない。