「法輪功」は邪教
周 文
中国科学院理論物理研究所の研究員で博士課程指導教官の張肇西さんは、今でも自分が担当するある学生に対して深い同情を禁じ得ないでいる。その学生は数年前に南京大学物理学科を優秀な成績で卒業し、推薦されて入試免除の形で大学院生となり、張さんの研究室に来た。そして一年目の終了時には審査を経て、修士・博士両課程連続で張研究室に所属することになった。こうして張研究室に来てからの最初の二年間、その学生の成績は研究室でもずっとトップだったのである。
残念なことは、この学生が大学院入学後一年目のある時期から始まった。そのいきさつについて、張さんは次のように語る。「その時から彼は『法輪功』の修練を始めて、いつも事務室で『座禅』を組み、『法輪功』の本を片時も手放さないというようになりました。三年生になったころ、その学業と研究作業の進み具合がはっきりと低下したのですが、その時はまだそれが『法輪功』の修練と関係があるとは思っていなかったのです。そして九七年の暮れになって、わたしや別の学生が彼の異常に気づきました。彼は途切れることなく修練して座禅を組み、何日も飲まず食わずで、口も利かず、睡眠さえとらないで、人が邪魔することを決して許しませんでした。わたしが飲み物や食べ物を取るよう言おうものなら、いらいらした様子で怒りだすのです」
あの手この手で説得しても効き目はなく、張さんと学生たちはもはやすでに幻聴などの症状が出始めていたこの学生を精神病院に入れるしかなかった。医師の診断によると、学生にはすでに精神分裂症を患っており、しかもその誘因は「法輪功」の修練であると考えられるとのことであった。張さんはその学生を北京の有名な精神科の専門病院で数カ月間治療を受けさせた後、実家に送り返した。その学生の学業はそこで中断されることになり、博士号取得の夢は幻と消え去ったのである。
過去の数年間に多くの「法輪功」の修練者が「頭がおかしくなって病みつき」の状態となり、ひいては精神に異常を来して、大きな代価を払った。北京の二カ所の精神病院が収容した「法輪功」が原因の精神異常の症例だけでも、一九九六年は九例、九七年は十例、九八年は二十二例、今年上半期には十六例と年を追って増える傾向にある。
この数カ月中に、一九五二年に吉林省公主嶺市で生まれたトランペッターの李洪志は自らが不法にも操り画策してつくり上げた組織「法輪大法研究会」と共に中国各界の一致した憤慨の的になった。李洪志とその組織は、迷信や邪説をまき散らして人々を惑わし、暴利をむさぼり、社会に危害を加えたからである。このペテンがすべてさらけ出されると、中国の各界の人々と善良な一般の人たちは驚きを禁じ得ず、大多数の「法輪功」修練者はきっぱりと目を覚まし、後悔してやまなかった。七月二十二日、国家民政部は「法輪大法研究会」およびそれが操る「法輪功」組織が非合法組織であって、法によって取り締まると正式に発表した。国外逃亡中の李洪志は、現在国家公安部門によって指名手配中である。
中国社会科学院宗教研究所の研究員で、前所長の呉雲貴氏は、「明るみに出た大量の事実から見ても、『法輪功』はただの非合法組織ではなく、邪教である」と見ている。呉氏の分析によると、同組織の化けの皮がはがされた後も、ごく少数の人はまるで悪魔に取りつかれて魂を奪われたかのように、学会や世論の忠告にも耳を貸さず、引き続き李洪志の遠くからのコントロールのなすがままとなり、李洪志のために教えを守って命まで投げ出そうとしているが、こういったマインドコントロールの膨大なエネルギーやこんなにも大きなよこしまな力は、邪教のみが発揮できるものであるという。
人類社会の悪の根元
宗教学の研究に長年従事してきた呉雲貴さんは、かつてアメリカのハーバード大学世界宗教研究センターとイギリスのロンドン大学オリエントおよびアフリカ研究院でそれぞれ客員教授を務めたことがある。その呉さんの話では、宗教学の研究において、学者たちの間に宗教を伝統宗教と新興宗教に区分する習慣があるという。前者は成立の時期が比較的古い仏教、道教、キリスト教(プロテスタントとカトリックを含む)、イスラム教を指し、それらが成立した背景には濃厚な歴史的、文化的伝統がある。一方、新興宗教は成立が比較的新しく、最も早いものでも前世紀であり、それらのうちの多くは善良なものであるが、一部には怪しげな邪悪な目的を持った組織もあり、それらがすなわちカルト教団である。
伝統的宗教体系は、人びとを真実や善へといざなうものであると呉氏は言う。それらには皆次元が高くて手が届かず、現世の汚れから逸脱した崇拝対象があって、これらの対象は人間ではなく、完全無欠の存在で、美しい願いや崇高な理想に対する人類の追求の化身である。それに対してカルト教団の教祖の場合は悪行の跡が点々と見え、ひどい時には違法犯罪行為があったりする。
さらに呉氏の説明によると、七〇年代以来欧米からアジアに至るまで、カルト教団の組織は一連の集団自殺や反社会的事件を起こして、世界を驚かせてきた。アメリカでは「人民寺院」の九百人余りの信者および「ブランチ・デビディアン」の八十人余りの信者が自殺し、日本の「オウム真理教」は東京で地下鉄サリン事件を起こして千単位の人数を数える死傷者を出し、カナダ、スイス、フランスなどでも数十人の「太陽寺院」の信者が相次いで自殺した。こういったことが絶えず発生するにつけ、それらは国際社会の幅広い関心と極めて大きな憤慨を引き起こした。
実際にその行為から見ても、カルト教団はすでに宗教の分野における教派の問題から逸脱しており、不法犯罪に手を染め、社会に対して深刻な脅威となる邪悪な勢力となっていると呉氏は言う。現在の世界では、カルト教団は常に存在し、人類社会の邪悪の根元となっている。カルト教団の破壊活動を防止し、この社会の公害を根こそぎ取り除くことは、国際社会が共通で請け負う責任となっている。
国家宗教局の職員王作安氏の説明によると、中国の歴史上にもカルトの温床となる土壌があった時期があり、特に明・清の時代には現代でいうカルト教団、すなわち邪教の活動はかなり活発であったという。清の第二代皇帝の世宗(雍正帝)(位一七二三―三六)は、次のように語った(意訳)。「邪教とはすなわち宗教の名義をかたって宗教の経典をねじ曲げ、迷信と偽の科学の内容をごちゃ混ぜにし、教義を寄せ集め、中心人物を神格化し、布教の方式で信者を拡大し、でたらめな邪説を作り上げてはまき散らし、人びとをだまし、脅し、脅迫するものである」。一九四九年の新中国成立後、一切のカルト教団と反動的な民間信仰団体はすべて取り締まりの対象となったが、カルトが芽吹く土壌を徹底的に取り除くためには、まだ任重くして道遠しである。
うそ八百の祭壇
カルト教団の一大特徴は教祖崇拝で、ただ教祖にのみ従い、死ぬも生きるも教祖のためであると呉氏は言う。七〇年代のアメリカで発生したカルト教団「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズ、「ブランチ・デビディアン」の教祖デビット・コレッシュ、日本のカルト教団「オウム真理教」の教祖麻原彰晃など、いずれも自分を神あるいは神の化身と吹聴していた。
李洪志とて例外ではない。一九六〇年から六九年まで吉林省長春市で教育を受けた李洪志は、中学校卒業後はトランペット奏者、公用簡易宿泊所である招待所の職員、会社の職員などを転々としたごく普通の平凡な男であったが、九四年には長春市公安局緑園分局の派出所で自分の生年月日を伝説中の釈迦の誕生日と同じ日付に書き換え、このころから自分が「釈迦の転生(生まれ変わり)である」と公言するようになり、併せて「幼年より全覚大師より独伝修練法門を伝授され、八歳にして修練によって円満の域に達し、後にまた何度も仏教や道家の大師が伝授する大法と拳法(けんぽう)を習得した」という経歴をいいかげんにでっち上げた。
この事実上のペテン師は、自分に自分は「物質移動、マインドコントロール、姿を隠すなどの力を持ち」、地球爆発の時間を先送りする神通力があり、「人々を天国に送り」、「全人類を苦しみから光明の世界へと救済する」救世主であるとほらを吹いた。また、「現在の世界で正法を伝えるのはわたしだけだ」、「わたしによって救われない人は、救われる道はない」と称し、自分は老子、釈迦、キリストよりも上であって、その教えはすなわち「経文」であると吹聴した。さらに、万能の教祖である自分を信奉し、自分に従って「法輪功」を修練するよう人びとに要求し、それによって「法輪功」修練者をマインドコントロールし、それによって人々を思いのままに操ろうとした。
マインドコントロールはカルト教団の教祖がその「神聖」な地位を強固にし、その信徒をして自分に忠誠を尽くさせる基本手段であると呉氏は説明する。一九九二年に非合法組織の「法輪大法研究会」が結成されて以来、李洪志は一貫して誘惑、脅しなどの手段でだまされてわなにかかった「法輪功」修練者に対してマインドコントロールを行ってきた。
気功は中国の古代の人たちが長い間観察し考えた末に編み出したところの、体を健康にして生気を養う方法で、少なくとも三千年の歴史がある。気功では導引、吐納、行気、食気、煉丹などの動作があり、特殊な呼吸方法があり、心の動きがある導引術を通して経絡を通じさせ、内臓にマッサージに等しい力を与え、それによって体を健康にすることが強調され、そこには何ら迷信的な内容はない。
呉氏は、李洪志は気功の名義を盗用したと見ている。このカルトの教祖は、自分は多くの種類の気功ができ、病気になっても医者も薬もいらず、他人の病気さえ治せると豪語していたが、自分や家族が病気になるといつも医者にかかっていたということがつい先ごろ明らかにされた。しかし長きにわたって李洪志は、病気治療と健康な体をえさに、徹底的に修練して「法を学」び、繰り返し暗唱し、繰り返し書写することを修練者に要求し、その他の教えの一切を捨てることやその他の考えにけりをつけることを必要条件として、修練者を「法輪功」でなければ修練せず、「法輪大法」でなければ信じないといった無我夢中の状態に追い込んでいったのである。李洪志は自分の「法身(ほっしん)」は限りがなく、「法身」は遍在し、多次元空間への出入りも可能で、信徒たちを守り一人一人の思想と言行を見守ることができると吹聴し、それによって「法輪功」修練者に従うものは栄え、逆らうものは滅びるといった畏敬(いけい)と恐怖の念を抱かせ、「円満」「仙人になる」「悪霊払い」あるいは「罪業」の清算という結果を得るためその教えに絶対服従させたのであった。
こういったマインドコントロールは修練者に対して一分のすきもない組織的コントロールと残酷な身体的コントロールを行う目に見えない足かせであることが、その後の多くの事実によって明らかにされた。そのマインドコントロールによって修練者は気力をなくし、精神がまひし、社会と家庭に対する責任感を失い、それでいて「修練」や「弘法(ぐほう・法を広めること)」といった言葉に対してはほとんど病気ともいえる執着と熱狂ぶりを示したのである。一部の修練者はそれが原因で精神に異常を来し、自殺あるいは他人を傷つけるに至った。
一九九八年七月四日、海南省海口市の「法輪功」修練者が「弘法」のため三亜市に行く途中で交通事故を起こし、七人の死者と一人の負傷者を出した。このことを知った李洪志は、後になって言った。「大法の弟子の中でも法輪世界に赴いたもののみが、転生した体で円満となることができるのである。わたしはあなたがたの心は知っているが、実際にあなたがこの手紙を受け取った後に、わたしの八人の弟子はすでに彼らのさまざまな世界で円満になっている」。こういったマインドコントロールのよこしまなテクニックによって、一部の善良無知な人びとはペテンにかけられてだまされ、「法輪功」という伝染病はこうしてまん延し始めたのであった。
邪説をねつ造して金銭を搾取
「虚偽と邪説のねつ造は、すべてのカルト教団の教祖が人々をペテンにかけ、ひどい目に遭わせるために用いる手段であって、これらの虚偽と邪説はいずれも『世界終末の恐怖論』を主とし、その右に出るものはほとんどない」と言うのは、中国社会科学院宗教研究所キリスト教研究室主任の任延黎氏である。氏は二十年以上にわたってキリスト教理論の研究に携わり、イタリアのミラノ・サンタクレオ・カトリック大学の客員学者だったこともあって、現在その研究室ではアメリカ、フランス、イタリアなどの国と地域から来た宗教学者や神学者が幅広く学術交流を行っている。
任延黎氏は、李洪志も「世界終末論」や「地球爆発論」など一連の虚偽と邪説をねつ造し、人びとの恐怖心をあおって恐ろしい雰囲気を作り出し、それによって修練者たちが熱狂的かつ盲目的に自分を追従するように仕向けたのであると語る。李洪志は、「人類社会が文明以前に毎回さまざまな周期で滅亡したのは、いずれも人類のモラルが最も堕落した状況下で発生した……」ということをでっち上げ、人類が「堕落」しており「救いようがない」とののしり、「人類の大災難」と「終末の来臨」というたわごとをまき散らした。また、「人類は八十一回にわたって完全な壊滅状態になったことがある」とし、現在もまた地球は爆発しようとしていて、自分だけにそれを先延ばしする力があり自分だけが人々を天国に送ることができ、「法輪大法」だけが全人類を救うことのできる「超常大法」であるとも言いふらした。李洪志は宗教と現代科学に関しては全くの素人であるにもかかわらず、仏教、道教、キリスト教などの宗教と現代科学のいくつかの専門用語を盗用し、それらをごちゃ混ぜにしてうそ八百をでっち上げたのである。
これら「法輪大法研究会」の虚偽と邪説のつじつまを合わせ、自分が「病気治癒と悪霊払い」の力がある神通力者であることを証明するため、李洪志は信徒をそそのかして「一万人を超える人たちへのアンケート調査」をでっち上げたレポートを作らせ、「病気治療の効能」のありもしない事例をいいかげんにでっち上げ、修練者を扇動して「信じれば効き目があり、修練すれば病気は治る」といった偽の心得の言葉を毎日互いに言わせた。
こういった邪説にだまされて、一部の修練者は病気にかかっても自分で「治った」と思い込んで他人にもそう信じ込ませ、また一部の修練者は病気になっても医者にかからず薬も飲まず、多くの人が医療を拒否するか手遅れになったために「法輪功」のせいで命を落とし、さらには「世界終末論」と「地球爆発論」の脅しを受けて自殺したり精神異常者となるものが相次ぎ、家族や友人および他人を殺害するものさえ出た。大まかな統計によると、「法輪功」の修練が原因で死亡した人は全国で千四百人以上に達し、北京、天津、河北、山東の各省・直轄市の七つの医療機関だけでも「法輪功」の修練によって精神に障害を来した百人余りの人を収容した。
現代のカルト教団の教祖の大部分は不法なやり方で金銭をかき集めた成り金であり、李洪志とて例外ではないと任延黎氏は説明する。
「法輪功」幹部たちは、「法輪功」組織は金もうけを考えておらず、営利は追求しないと公言していたが、実際のところ「法輪功」組織は書籍、ビデオ、オーディオ製品、修練のための「法衣」、バッジ、修練用座布団など「法輪功」関係の製品の非合法製造、販売を大量に組織し、信徒から金銭を巻き上げ、さらには脱税し、巨額の富を築いて成り金となったことが判明した。関係部門の初歩的な調査によると、李洪志および「法輪功」組織の幹部たちはここ数年来、別荘を建て、高級車を乗り回し、アメリカの永住許可証であるグリーン・カードも手に入れ、外国のいかがわしいカジノに出入りし、金を湯水のごとく使っていたという。さらに調査では、一九九二年五月から九四年末まで、李洪志は他人とグルになって五十六期「法輪功」セミナーを開催し、三百万元以上をかき集めていたことも明らかになった。「法輪功」武漢支部の責任者が設立した武漢深深公司は「法輪功」関係の書籍やオーディオ資料の不法出版で九千万元以上の売上を上げたが、李洪志はその中から膨大な金額を原稿料およびリベートとして自分の懐に入れていた。最近調査されたこの一件と別の二件の「法輪功」の違法産業設立の事件だけでも、非合法経営額は一億六千万元に、不法に取得した利益は四千万元以上に達する。海外の銀行における李洪志の巨額の預金は、現在調査中である。
呉雲貴氏の話では、氏が知り合った中国の宗教界のトップクラスの人々は前記の「法輪功」の事例とは全く正反対で、大体にして心が清らかで欲も少なく、豊富な内面を持つ崇高な精神的境地を追求し、物質的な楽しみをむさぼることはしないという。それぞれの宗教協会は非営利団体で、長期にわたって中国の被災地域や貧困山間地域の教育事業およびその他の慈善事業あるいは公益事業に義援金を送り、金を集めて私腹を肥やすことを目的としたことはこれまで一度もない。呉氏の紹介によると、江蘇省南京市のキリスト教愛徳基金会は長年にわたり、地元の医療・衛生事業と中国の宗教学術研究事業に資金援助してきたということである。
社会に危害を及ぼす秘密結社
任延黎氏の説明では、カルト教団には一般的に教祖を中心とする厳密な組織があってなぞめいた活動が行われ、それが極端な手段で現実社会と対立し、社会に危害を加えているという。
李洪志は何度も、「法輪功」に組織はなく「修練者が勝手に集まっているだけだ」と公言していたが、李洪志を頭目とする「法輪大法研究会」は実際は厳密な組織があり、全国各省・自治区・直轄市に三十九カ所の支部、千九百カ所の指導所、二万八千二百六十三カ所の修練所が設置され、二百十万人の修練者を操っていたことがあると任氏は言う。
関係部門が公表したところによると、「法輪功」組織のシステムには完備された組織制度があり、李洪志は「中国法輪功規則」を、続いて「法輪功指導所に対する要求」、「法輪大法弟子の伝法伝功についての規定」、「法輪大法修練者の心得」を制定したという。また、内部にもはっきりとした分掌制度があり、「法輪大法研究会」は対外連絡班、功理功法班、翻訳班、運営班などが設けられ、また特別に「老公務員活動班」も設置された。さらには、「法輪大法研究会」が各地の支部の設立、統合、閉鎖、および支部長と副支部長の審査と任免を指示することを含む厳格な管理規制があった。指導所の所長は李洪志が開催する養成セミナーの参加者に限られると、李洪志は規定した。「法輪功」組織はすべてがなぞめいており、連絡も秘密裏に行われ、活動も秘密で、かく乱行為の計画も秘密であり、外からその内部をのぞいても実態が分からないだけではなく、一般の修練者にもその詳細は知らされていなかった。李洪志が外国で秘密の「指令」を発すると、数日中にはすべての修練者に伝わるようになっており、それはインターネットなどの現代的通信手段によるばかりでなく、こういった厳密な組織のシステムによるものだったのである。
説明では、「法輪功」組織のトップと幹部は公安機関の捜査に対抗するための特殊な手段を用い、意識的に走行中の車の中で重要事項の密談をするなどして捜査を逃れようとしたという。党・政府機関を包囲しての非合法活動の計画にはさらに細心の注意を払って組織し、各地の互いに面識のない「法輪功」修練者は胸の「法輪功」バッジや手に持った「法輪功」の書籍を目印に、互いに言葉を交わすこともなく誘導して、決められた位置に立つことができたのである。
カルト教団の「教祖」はおおかた政治的野心を持っていると、任延黎氏は言う。その中には、初めから政治的たくらみを明らかに持っているものもあれば、勢力が拡大してから政治的野心もそれに伴って膨らんでいったというものもある。教祖たちは「秘密の王国」で神としての権限に教義上の権限を加えた統治を行うだけでは飽き足らず、全国ひいては全人類に神としての権限に教義上の権限を加えた統治を行おうとするようになる。その政治的野心実現のため、教祖たちは信徒の命をいけにえ、もしくは政治的なかけのための元手とするか、あるいは反社会的、反人類的な狂気じみた行動に出て世界を驚かすものである。
氏が例として挙げたところによると、日本の「オウム真理教」の教祖麻原彰晃は選挙戦に勝つことによって日本の政界の中枢に進出しようとしたたくらみが挫折した後、地下鉄サリン事件を起こして狂気じみた報復を行い、五千五百人の死傷者を出した。
李洪志と「法輪功」の一部の幹部も同じような行動に出た。彼らは「法輪功」修練者に働きかけることによって思想上、行動上から次第に現実社会と隔離させ、ひいては社会に反抗する道を歩ませたのである。一九九六年八月に李洪志が「法輪功」組織を指揮して光明日報社を包囲して以来、三百人以上を集めた不法デモ事件は七十八回に達した。そして四月二十五日には、李洪志はこともあろうに全国各地から来た多くの「法輪功」修練者を指揮し、国の最高機関である中南海を包囲させた。マスコミの報道によると、「法輪功」組織のある幹部は事件の前に「少しくらい血を流すくらいでなければだめだ」とはっきりと言い放ったという。
「諸悪の根源」を取り除け
呉雲貴氏の説明によると、七〇年代以来、西側諸国にはカルト教団が次々と出現して猛威を奮い、世界を驚かせた一連の事件を起こし、社会に深刻な危害を加えてきており、カルト教団に対する取り締まりを要求する声は日増しに高まっているという。責任を重んじるいかなる政府も、カルト教団がほしいままに人々の生命の安全に危害を加え、公共の秩序と社会の安定を破壊するのを許すはずはない。
呉氏はアメリカの「ブランチ・デビディアン」を例に挙げる。信徒を集団生活に導き同時にそれを強制したこの悪名高きカルト教団は、その出現以来アメリカ社会の各界の人々の警戒心を引き出し、政府が関与するよう次々に呼び掛けが行われた。連邦捜査局(FBI)が同教団に対して行った恒例の捜査の折には、同教団の武装組織が略奪してきた武器で自分たちが集団生活をしている地域の周囲を一週間封鎖し、そのためGメンたちは近づくことができなかった。アメリカ政府は後に、この地域で集団生活する教徒たちを武力で一掃した。
「法輪功」組織は宗教、気功あるいはその他の名義をかたって結成され、その首謀者を神格化し、迷信や邪説を作り出して広めるなどの手段で他人を惑わしてペテンにかけ、メンバーを増やしてそれを操り、社会に危害を加えてきたことは、多くの事実によって証明されていると呉氏は見ている。同組織が説くのはでたらめな邪説であり、行うのは誤った邪道であり、集めたのは邪悪な勢力であって、徹頭徹尾の非合法組織であるだけでなく、徹頭徹尾の邪教であって、中国政府と人民はこれに対して決していいかげんな態度を取ることはできない。
「邪教に対して慈悲深くすることは、公民の人権を踏みにじることになる」と、最後に呉雲貴氏は言った。