澳門問題と香港問題との違い
澳門問題と香港問題はともに祖国への復帰という問題に属するが、両者の間には非常に大きな違いがある。
まず、ポルトガル人が澳門に上陸して高度の自治権を獲得したのは、武力行使ではなく、贈賄を通じて得たものである。一八八七年に結ばれた「中国・ポルトガル和好通商条約」は、中国側から言えば騙されたものである。香港はイギリスが一八四〇年から一八四二年にかけて、当時世界中の文明国が許せないと考えていた罪悪的商品のために引き起こされた「アヘン戦争」が、砲艦を後ろ盾として中国政府に迫って割譲させたものである。イギリス人は自ら香港の主権を擁していると考えているが、中国政府は終始その有効性を承認したことがない。したがって、主権問題は澳門と香港の前途問題における最も重要な本質的違いである。
次に、中国とポルトガルとの間に主権紛争が存在していないため、双方の交渉の重点は「いつ支配権を引き渡すか」、「どのような方式で支配権を引き渡すか」という問題である。
また、香港に住んでいるイギリス人は終始少数であり、しかも停年してからイギリス本土に帰っていき、香港に永住することがなかった。しかし、澳門にいるポルトガル人は四百余年にわたって中国人と往来し、中国人と結婚して、人数がかなり多く、「馬交仔」(つまり混血児)階層が形成された。この階層には現地生まれのポルトガル人とポルトガル国籍をとった中国人が含まれ、彼らは澳門の公務員の職務を独占し、柱となる一部の商工業を独占している。そして、イギリスは香港イギリスの旅券を所持する香港人が完全な資格を持つイギリス公民であることを承認しなかったが、ポルトガルはずっと「馬交仔」をポルトガルの最も忠誠な公民と見なし、彼らに完全な公民権を与えるとともに、彼らが澳門に利益をもたらす最も重要な人たちと見なしている。現地生まれのポルトガル人とポルトガル国籍をとった中国人の問題は、澳門にしかない問題、香港には存在しないことである。これはいま一つの澳門と香港との本質的な違いである。