関心を集める「老人問題」


 六十六歳の女性張鳳琴さんは定年退職して十年余りになるが、この十年は張さんにとってまるで新しい生活がスタートしたかのようであった。かつて北京首都鉄鋼公司の会計係であった張さんは糖尿病や高血圧などを患っていたが、何とか仕事を続けていた。そして定年後は、自分の一生もこのまま終わりになるのかと一時期気持ちが落ち込んでいた。張さんのこういった精神状態を見て、娘はその母親のために『中国老人報(新聞)』と『中国老年雑誌』の購読を申し込み、また頤和園など北京の十六カ所の公園の一年間有効の入場パスを送って励ました。「お母さん。まず九十才までは生きるつもりでね。それから体が丈夫な二十年間の老後のプランを立てるのよ。定年退職はただ生活が切り替わっただけで、新しい仕事に就いたと思えばいいじゃない。それに今度の仕事は何から何までお母さんの自由、したいことをしていればいいんだから」。言うまでもなく、この言葉は張さんを大いに啓発するところがあった。ここ数年、張さんは北京の公園を一通り歩きまわり、多くの新しい友達もでき、老人大学に入って絵や社交ダンスも学んでいる。

高齢化社会に入りつつある中国

 現在、中国における六十歳以上の高齢者人口は約一億二千万人で、毎年の出生率をはるかに上回る年平均約三・二%の割合で増え続けている。さらに二〇〇一年までに中国の高齢者人口は一億三千万人に達すると予測され、そのため中国は国際的にも高齢化社会の仲間入りをしようとしている。二十一世紀の中ごろまでに、中国の高齢者人口は全人口の約四分の一を占める四億人に達するものと思われる。

 こういった状況は中国経済の発展、産業、消費、、市場の構造などに重大な影響をもたらし始めているし、今後も影響していくものと専門家は見ている。高齢化問題は二十一世紀の中国の社会発展の中で、大きな問題となるはずである。

老人を社会へ

 昨年十二月上旬のある日、子供も連れ合いもなく北京市海淀区のアパートで一人暮らしをしていた七十歳の呉景生さんは、突然体の不調を覚えた。呉さんはただ事ではないと予感し、何とか力を振り絞って姉と弟に電話をかけ、来てくれるように頼んだ。そして姉と弟が到着してすぐに、呉さんは息を引き取った。後で呉さんのかつての同僚は顔を曇らせ、もしあの時呉さんに電話をかける力すらなくひそかに死んでいたら、遺体は部屋で腐っていたかもしれないと語った。

 住宅条件が改善されるにつれ、アパートでの近所付き合いは以前より大きく減った。そして一人暮らしの老人が増えて社会問題になっており、政府の関心を引いている。

 老人が外の社会と断絶した状況になり、そのためひそかに死亡して数日ないし数カ月たってから発見されるといった事態も発生している。こういった状況が起こるのを未然に防ぐため、北京市西城区の福綏境の町内の居民委員会は、一人暮らし老人緊急通報システムを導入した。老人が体調を悪くしたり手助けを必要とする時に通報ベルを押すと居民委員会のベルが鳴り、すぐにヘルパーが駆けつける仕組みになっている。

 老人同士の交流と娯楽専用のさまざまな活動施設を設けることも、老人たちが定年後にできるだけ早く新しい社会での交際圏を打ち立てるのに役立っており、各クラスの政府と企業および地域社会が老人のために最も数多く行ったのも、そういった活動施設の設置だった。北京首都鉄鋼の生活エリアには、このような活動拠点が数カ所もある。老人たちはそこでトランプで遊び、将棋を指し、習字の練習をし、太極拳を学び、時にはさまざまな競技も行われる。「今は食うに困ることもなく、老後を楽しんでます」と、定年退職者で活動施設の常連の劉方明さんは言う。

 中国は経済があまり発達していない状況で、高齢化時代を迎えることになる。そのため、一部先進国のような高度な老人福祉政策を短期間のうちに実現させることは不可能で、国、社会、家庭、個人の共同負担の形で解決するしかない。「中華人民共和国老人権益保障法」では、老人福祉センター、老人ホーム、介護施設、老人アパート、老人医療リハビリセンター、老人文化スポーツ活動施設などを社会が組織し、あるいは個人が運営することを国は奨励し、援助すると明確に規定されている。

社会全体が関心を寄せる事業

 社会的力にも、老人サービス事業への参加の情熱が確実に存在する。一九九五年、北京市海淀区民政局は、定年退職者の姜佩珍さん夫婦による北京初の民営老人ホーム「同心敬老院」設立を認可した。民営老人ホームは国と困難を分かち合うということばかりでなく、就職のチャンスをつくることにもなると、同区民政局の宋偉副局長は語る。現在、海淀区は毎年三千万元を老人ホームや老人の活動施設への手当てとして支出している。

 北京市における六十五歳以上の高齢者人口は、約三百万人である。北京市全体に民営老人ホームは合計十一カ所あり、三十以上の部門や個人が申請準備中である。このほど、北京の東岳グループ公司が二千六百万元を投じて建設した民営老人ホームが、入居者の受け入れを開始した。宋副局長によると、現在老人ホーム建設の申請や相談のための人々が毎日のように民政部に押し寄せており、民営老人ホームは企業家投資の注目の的になっているという。石景山区にある老人ホームのうち公営は一カ所だけで、あとの三カ所はいずれも企業か個人の経営によるものである。

 中国の各大、中都市で毎年億単位の数で発売されている社会福祉くじは、その売り上げ収入の一部が老人福祉事業に充てられている。他に先駆けて高齢化社会に入った福建省福州市では、昨年くじ販売によって得られた一千万元を資金にして老人アパートが建設された。基本的に自活が可能な老人は、同アパートに一カ月三百九十元から七百二十元の家賃で入居でき、老人の世話をすることができない家庭から広く歓迎されている。アパートには昨年三月に受け入れを開始して以来、すでに百三十人の老人が入居している。七十六歳のある老人はアパートに二日間試しに住んでみて、出たくなくなったという。自宅はアパートから百メートルも離れていないのに帰りたくなくなった訳は簡単で、アパートは環境がよく、施設はすべてそろっており、世話をしてくれる人もいて、食事も遊びも皆が一緒であり、生活が楽しくて快適だからということである。

 北京市政府の大々的な支援のもと、北京の宝氏華商グループの出資によって建設される中国最初の民営モデル老人アパートが今年五月に着工される。「太陽城(サン・シティー)」という名のこの高齢者向け住宅エリアは、北京北郊外の空気がきれいで温泉が豊富な保養地の小湯山に造られ、総投資額は四億五千万元で、計画では三期に分けて建設される。第一期工事の建設面積は九万平方メートルとなっており、そのうち居住面積は六万平方メートルで、医療リハビリ、娯楽とトレーニング、文化教育、家事サービス、ショッピング、会議などを含む付属施設の面積は三万平方メートルであり、一年半後の完成が予定されている。エリアには北京の伝統的な四合院、現代的コテージ、アパート、一万五千平方メートルの人工湖が設けられ、緑化面積は六五%に達する。室内外には段差のないバリアフリー化された廊下が設けられ、老人同士の交流の便宜のためエリア内をどこでも乗り降り自由な八人乗りのバッテリー・バスも運行する。

主流はやはり家庭介護

 都市や農村における現代の中国の家庭構造に大きな変化が生じ、一組の夫婦が双方の四人の老人ひいては祖父母の世話までするといった家庭がますます一般的になり、伝統的な家庭介護のスタイルは日増しに現実的試練の前に立たされている。しかし、都市であれ農村であれ、老人の大多数はやはり子や孫と共に生活しており、互いに助け合い、互いに頼りにしている。家庭介護は今でも老人介護の最も主流となるスタイルである。。。

 民政部の関係者は、中国は今後とも家庭介護を主体するよう強調し、その勢いに乗じて家庭と社会的介護とを互いに結び付ける道を提唱して、新しい在宅介護環境を積極的に創造し、形作っていかねばならないと語る。その一つは、既存の家庭介護の状況を改善し、制度上から家庭介護を奨励して、老人の生活保障、世話、心の慰めなどの面における家庭の役割を発揮させることである。もう一つは、社会化された介護サービスシステムを確立して、老人福祉施設を増やし、社会的サービスを拡大することである。

老人社会保障制度を完備

 中国の老人社会保障は、国が法によって高齢者の基本的生活を保障する社会保障制度である。その中には老人社会保険(養老保険、医療保険)、老人社会福祉、老人社会ヘルプサービスが含まれ、これら三者によって完ぺきな老人社会保障制度が構成される。中でも老人社会保険が、その核心となるものである。中国は二〇〇〇年までに、社会基本養老保険、企業が補充する養老保険、個人の積み立てによる養老保険を結び合わせた多重養老保険体制をとりあえず確立しようとしている。基本養老保険は国、団体、個人の三者が合理的に負担するものである。農村では、個人の積み立て方式による養老保険を主体とし、それと国や団体が必要とする支援を提供する社会保険と家庭保障とを合わせた農村養老保険体制が次第に確立されつつある。都市や町では最低生活保障ラインが実施され、生活保障ラインより低い老人に地元政府が救済金を支給し、農村では子供がなく、働く力がなく、収入源がないいわゆる「三無老人」に集体経済組織の負担で、衣・食・住・医療・葬儀の五つを保障する「五保」のケアが行われている。

 一九九六年、中国は「中華人民共和国高齢者権益保障法」を公布した。これは老人の合法的権利と利益を中国で初めて全面的に保障した重要な法律である。この法律は、家庭生活における老人の権利とその保障、社会生活における権利とその保障、老人の社会発展に参加する権利および法的責任と処理手続きが規定されている。その制定と実施は、老人の安定した老後の生活に、適切な法的保障を提供するものである。この法律によればこれからも、老人福祉法、老人保険法、老人保健法など関係する老人法規や、高齢化産業、老人施設、老人採用規定などの政策条文が確立され、整備されていくことになる。

『北京週報』

 

 

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