西 安 実 情
西安はハイテク産業の育成に力を入れています。その背景には、西安の地理、歴史的や中国政府の政策などがあります。西安の中国文化に対する影響力、或いは、中国大陸の中心に位置する西安の交通、通信における重要性、などは容易に想像がつくと思います。 西安産業事情 : 内陸都市の制約:物資の輸送手段に海上輸送が使えないという地理的制約のため、材料や製品の大量輸送を必要とするような産業には成長を望めない。従って、輸送に依存しない産業を成長させる必要がある。そして、近年のアメリカ内陸都市の発展が、インターネットの普及によるインフラ整備とソフトウェア開発の恩恵によることが大きいことを参考として、西安では情報通信産業の重要性を認識し、発展計画の中核を成す産業と位置付けている。 700万人都市:西安は人口700万人を超える大都市であり、隣接する都市と併せると1500万人以上である。他の大都市と同様、西安ではサービス業が発展している。今後も多様なサービス業が発達し、都市機能としてのサービス業を支えるために情報産業を育成することが望まれる。 東西の中継点:西安は物流において東部地域と西域を結ぶ重要な中継基地である。西安には生産物を取り扱う会社が多数あり、中国各地で生産された産品は西安を経由して中国各地へ運ばれていく。当然、交通、情報、金融の要所でもある。したがって、西安は経済都市としての機能を果たすために、インフラ整備に力を入れている。 政府の政策:現在、中国政府は中西部の発展に力を入れており、その中心地となっているのが西安である。また西安は東西だけでなく南北を結ぶ要所でもある。そのため、政府の中西部発展政策の第一が、西安にハイテク産業を育成し、内外の企業投資を促進し、高度情報都市とすることである。そのために、政府は西安西部に国家級のハイテク産業の開発区を建設した。 西安投資事情 : 外資企業 :近年、海外の企業の西安に対する投資が目覚しい。また西安のソフトウェア会社の対外受注も増加している。ビジネスの相手として最も多いのはアメリカで、アメリカ留学の経験がある西安の技術者や西安出身のアメリカ在留技術者の仲介により、アメリカ向けのソフトウェア生産が活発におこなわれている。 ドイツ企業:今、最も中国に注目している国はドイツと思われる。アメリカやイギリスが同じ英語圏であるインドにソフトウェア生産基地を確保しているのに対し、海外にソフトウェア生産基地を持たなかったドイツは西安に注目している。現在、西安の会社の多くがドイツ企業と合弁、提携関係にあり、その多くはファームウェア系である。 台湾企業:同じ中国語を使用し、中国人の考え方を知り尽くしていることもあり、台湾企業の動きは速い。会社設立や生産開始までの期間が短く、社員を集めるのも早い。台湾企業の特徴は、西安の安い人件費と大量の技術者を確保することで実現した人海戦術を使った開発で、高度な技術力は必要としないものが多い。画像、地図、データベース関連が多く、殆どがアメリカと日本向けである。 日本企業:西安に進出している日本企業も僅かであるが、存在する(NEC、東芝、富士通、ダイキン工業、ブラザー工業など)。日本から委託開発を行っている会社は多いが、簡単なものが多く、高度で大規模な開発を期待する会社は多い。 西安人材事情: 高度な技術力:西安には約50の大学、500の大中型研究機関(その中の30は国家級)がある。これらに携わる技術者の数は38万人で、これは北京、上海についで中国第3位であり、人口比では中国第1位である。また、西安は中国で最初の国産コンピュータ、最初の民間用飛行機、最初の集積回路、最初のカラーブラウン管、最初の電子顕微鏡などが開発されたところであり、西安の技術が中国に果たしてきた役割は大きい。 大学教育:西安にある約40の大学(西安交通大学、西安電子科技大学、西北工業大学、西北大学、第四軍医大学のような名門国立大学や、中国建国後初の私立大学、初の女子大学でもある西安培華女子大学など)がある。そこからは毎年3000人以上のソフトウェア技術者が卒業している。さらに中国各地の大学を卒業したソフトウェア技術者の多くが西安に集まってくる。中国の大学のコンピュータ教育は即戦力として使える技術者の養成に力を入れており、市販の開発ツールなど、実践的なことに重点を置いて教えている。従って大学を卒業したばかりの即戦力としての能力は高い。 教育レベル:西安は歴史的にも中国の文化の中心として、古代より教育に力を入れてきた地域である。現在も教育に対する熱の入れ様は相当なもので、中国トップクラスの教育水準を誇る。さらに、この地域のモラルが非常に高く、優秀で真面目な人材が多い。 賃金:西安の物価は中国全体から見ると下の方で、食料品、家賃、給料、交通費などは北京や上海の約半分である。このため、近年では人件費の低さに注目した外国企業の西安進出が目立っている。特に台湾、ドイツの進出が著しいが、日本企業がほとんど進出していないことは残念である。 |