MP3とは(1999年5月26日、朝日新聞抜粋)
音声デジタル信号の圧縮方式の一つ。人間の耳に聞こえない音を カットするなどして、データ量を10分の1から12分の1に減らす。再生しても CDとの音質の差はほとんど感じられないとされる。こうした圧縮技術の出場で、 インターネットの音楽配信が簡単になった。アーティストが直接、自分の曲をリスナーに 配信出来る利点が生まれる一方で、無断複製がはびこる一因にもなった。ただ、 著作権法上、自分の持っているCDをMP3方式で個人的に複製し、再生するだけなら 違法ではない。
この日の紙面上では、警察庁で、インターネットによるMP3無断配信を摘発していく方針が決定されたことが1面で伝えられていた。そしてその翌日、札幌の18歳の少年が、自分のホームページでJASRAC(日本著作権協会)が著作権依託を受けている音楽データを公開していたことにより逮捕され、取り調べを受けることとなった。その後も、現在に至るまでに、似たような摘発が数度にわたって行われ、それが報道されてきた。これが影響して、MP3自体が様々な誤解を受ける結果となっている現状がある。
元々、MP3は音楽でなく映像を主体とした情報を圧縮するために作られた規格(mpegという)の一部を音声データに応用したもので、正式には”MPEG1 Audio Layer-3”という。つまりMP3というのは、圧縮規格の一種であって、これに違法性は全くない。最近騒がれ出したMP3であるが、この規格自体は別に新しいものというわけでもない。ただ、昔のパソコンで扱うには少し荷が重いというだけのことで、マシンパワーが向上した現在のパソコンで人気が出たというのは、むしろ必然であったのだろう。Windows標準の無圧縮音声データであるWaveファイルとサイズを比較すれば、その効果は一目瞭然である。何しろ、音質はほとんど損なわず、サイズだけ10分の1以上になるのである。最近の流行歌1曲でWaveなら40〜50メガバイトなのが、MP3なら4〜5メガバイトですんでしまう。こうした利点をうまく利用して、最近ポータブルMP3プレーヤが発売されたり、アーティストが直接音楽配信するなど、次世代のメディアを築き上げる一番手としてMP3は期待されていた。
しかし、それは同時に、著作権無視の違法コピーを助長する1面も持っていた。基本的にデジタル技術というのは、オリジナルの音質を損わずに無限にコピーをする事を妨げるのが非常に困難な性質を持っており、これがインターネットと結びつくと、現在の約束事が未整備な状態では、違法コピーの温床となってしまうのである。せっかくの素晴らしい技術なのだから、それを殺す結果になってしまうのは非常に惜しい。重要なのはMP3の違法性でなく、使用者の意識の問題だということである。しっかり考えた上で、誤解することなくMP3とつきあっていきたい。
上のページに戻る |
---|
TOPページに戻る |
---|