裁判レポート・控訴審第4回(掲
載:2003年12月7日) なお、録音や裁判所の公式な速記等に基づいているものではな い為、 実際の法廷内のやりとりとは若干、異なる場合があります。 |
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――双方より準備書面・証拠資料提出。 |
裁判官「そ れでは本題に入らせていただきますが、そもそもこの裁判では何を争っていてどう言う風に捉えているのかについて食い違いがあるように思われます。最初に私 個人の考えを申し上げると、DVDに落としたものは評価は別として双方に争いが無いし、(法律の適用を巡る)テクニック論でも当事者間に争いは無いと解釈 しております。然るに(どこまでが 独創的でどこからが普遍的かと言う)『陳腐性』の議論ではないかと。そうですね、宮崎駿のアニメーションは誰が見ても宮崎駿の作品だとわか る。ところがゲームでは、そういう権利が個人が持つものなのかそれとも会社に残っていくのかどうか(なお、大半のゲームの場合は「著 作権法第29条の規定により個人でなく法人に権利が帰属する可能性が高い」と言うのが通説である)――それで、控訴人は典型的な 『共通項』をピックアップして指摘して行けば目的を達成出来るのではないかと考えている、と言う理解でよろしいかと思われますが――例えば英語の辞書でも 何万という個所をみていくわけにはいかないですから――そう、幾何学でいえば『任意の一点』ですね。(FEとTSを比較した場合に)ストーリーとキャラクターの書き方が似ているというのは間違いないと」 |
eb側代理人(以下「eb」)「い
え、ストーリーは全く違うものと認識しておりますが」 |
裁判官「ひ いてはゲームソフトの著作権帰属についてどう考えるのか……(メモを取る弁護士に対して)そんな一生懸命メモとるようなものじゃないですよ(笑) もっと も、今までにゲームの著作権という ものに関しては先例が無い」 |
任天堂側代理人(以下「任天堂」)「ですから、これで先 例を作りたいと考えております。それでは検証に入らせていただきます」 |
IS社員(?)「今回
は、これまでの資料を更に一本化して両ゲームの比較ができるようにしました。下のテロップでわかるようになっています。チャプターで選べます」 トラキアとTSの画面を分割表示 IS社員(?)「(登 場人物の)顔が似てるってことじゃないんです。全体のディテールが似ている」 裁判官「そ れでは、容貌についての主張は落とす(撤回する)、ということでいいのですか?」 任天堂「は い。容貌については書面では落としています。飽くまでもゲームとしての著作物性を問題にしています」 (以下の4点について「トラキア」と「TS」を比較し、共通性を指摘) 自分のターンになりユニットを選択して移動や戦闘、待機行動→敵のターン 攻撃して経験値が100を超えるとレベルが上がる 主人公が死ぬと主人公を悼むメッセージが出てゲームーオーバー 「おどる」と言うコマンドを使うと再行動が可能に 裁判官「ト ラキアの構成要素の一部を基に問題であると?」 任天堂「い え、全体的な構成を問題にしています。一つの場面についての主張を逐一行っている訳ではありません」 裁判官「そ れは一審での主張と違いますか?」 任天堂「い え 同じことを言ったつもりですが 『逐一の場面ごとの主張』と判断されてしまったので控訴しました」 裁判官「FE・ TSとも『視聴覚著作物』ということに関しては争いが無く、間違いは無い。ただ、これを要件として捉える場合にですね……」 eb「アイデアであって結局は映像表現の話でして、ストーリーはFEとTSで全く違うん です。「同じような」という話になると他にもある」 任天堂「こ のようなサンプルを用意しました」 トラキア・TS双方の跳ね橋を下ろす場面 裁判官「(『跳 ね橋』コマンド実行時の)メッセージはどうなってるの? 全く同じ?」 任天堂「同 じです。一連の表現はトラキアの物であり、被告側が『他にもある』といって出した証拠は(一見して全く違うゲームだとわかる)3D形式のゲームです。それ でも、頑張って探されたのだろうとは思いますが」 eb「それは『アイデアの抽出』に過ぎず、著作権法で保護される対象ではないで すね」 eb側が反証として挙げていたキングスフィールドIV(フロムソフトウェア)の一場面を再生 キャラが跳ね橋に近づき、アイテムから「鍵」を選択して跳ね橋を下ろす 任天堂「こ れは3Dの、より人間の視点に近い表現です。おまけにこのゲームの発売はTS(2001年5月24日発売)よりも後(2001年10月4日)ですね。それ に、私どもがこの部分に関して著作権を主張しているのは『ユニットを選択し、行動範囲を表示させて移動した後にコマンドを選択し、跳ね橋を下ろす。そして 待機』と言う行動の組み立てに関してです」 トラキア・TS双方のペガサスに乗り降りする場面 次に『ドラゴンクエストIV』(エニックス)の空飛ぶ絨毯に乗り降りする場面 -DVD再生は以上で終了- 裁判官「跳 ね橋は『ありふれた表現』というか……ペガサスはまだわかる。ペガサスというのは神話上の動物ですよね、空を飛ぶこともできれば地上を走ることもできる。 乗り物としては理想的である」 eb「戦 闘場面の表現もありふれていると考えます。アイデアか創作性が無い『一般的表現』かのどちらか。先ほどの例はアイデアに属するのでしょうが。控訴人が跳ね 橋の例で挙げたコマンドの組み立て方もアイデアに過ぎない」 任天堂「我 々が言いたいのは、同じ行動の描き方には色々な手段・方法があるはずなのに敢えて、何故(FEの)真似をするのかと言うことですが」 eb「結 果的に似ていない限り問題は無いと考えます」 任天堂「『組 み立て』を無視して要素を断片的に分けたのは被控訴人側でしょう」 裁判官「こ こで5分ほど休廷します」 |
-休廷- |
裁判官「それでは再開します
が、控訴人側で今日のDVDを複製して当方に提出していただけますか? 枚数は(裁判官3名に対して1枚ずつで)3枚。費用の方は問題有りませんか」 |
任天堂「(IS 社員と思われる男性に確認)はい。大丈夫です」 |
eb「私共の立場としては
正直、このような展開は想定しておりませんでしたもので――説明する機会を与えられると思って準備もしてきたのですが(苦笑)」 |
裁判官「まだね、控訴人側の
主張を完全には理解していないんですよ。それでは、被告側も証拠乙26をDVDにしてもらえませんか? やはり3枚」 |
eb「了解しました」 |
裁判官「正直に言うと、これ まで一審判決を前提に考えていたので控訴審は『増改築』のようなも のだと思っていたが、これは『建て直し』をする必要があるかも知れないですね。それで、次回ですが来月の9日か12日、どちらに 致しましょうか」 |
――協議のうえ、双方とも9日で問題無いと回答。 |
裁判官「それでは、次回は9
日に今日と同じ15時30分集合とします」 |
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