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原子と原子核


国際単位系 (SI) においては、大きすぎる単位や小さすぎる単位にSI接頭語を付け加えることができる。 長さの単位 オングストローム (Å) は 1 Å = 10-10 m = 100 pm (ピコメートル) で、原子の大きさにほぼ等しい。

原子核の大きさは 10-1510-14 メートルである。 フェルミ (F) と ユカワ (Y) はどちらも同じ長さで、 1 F = 1 Y = 10-15 m であるが、同じ長さのSI単位 フェムトメートル (fm) の使用が推奨される。 原子核の大きさに相当する面積の単位として バーン (b) がある。 1 b = 10-28 m2 (平方メートル) = 100 fm2 (平方フェムトメートル) と定められる。

SI接頭語
  接頭語 (拡大)     接頭語 (縮小)  
da デカ (deca) 101 d デシ (deci) 10-1
h ヘクト (hecto) 102 c センチ (centi) 10-2
k キロ (kilo) 103 m ミリ (milli) 10-3
M メガ (mega) 106 μ マイクロ (micro) 10-6
G ギガ (giga) 109 n ナノ (nano) 10-9
T テラ (tera) 1012 p ピコ (pico) 10-12
P ペタ (peta) 1015 f フェムト (femto) 10-15
E エクサ (exa) 1018 a アト (atto) 10-18
Z ゼタ (zetta) 1021 z ゼプト (zepto) 10-21
Y ヨタ (yotta) 1024 y ヨクト (yocto) 10-24


原子番号が違っても原子の大きさはほとんど変わらない。 正の電荷をもつ原子核と、負の電荷をもつ軌道電子がクーロン力で引き合っており、大きな原子核をもつ原子ほどその引力が強く働くためと考えられている。 次の表は常温での密度をもとに原子の大きさを求めたものである。 空間の体積を原子数で除算して求めた。 計算結果を見ると、液体と固体では、2~3倍以内の散らばりである。 原子番号に依らず一定の大きさといってよい。 気体の数値が大きすぎるのは、原子間の隙間が考慮されていないからである。 隙間がある場合、この方法では原子の大きさはわからない。 (表中「状態」を省略したものは固体である)

原子の大きさ
物質 原子量 状態 密度
(g/cm3)
原子の直径
(10-10m)
水素 1.00794 0.0899 (g/L) 32.8833
ヘリウム 4.002602 0.1785 (g/L) 41.4303
リチウム 6.941 - 0.534 3.4544
ダイヤモンド 12.0107 - 3.513 2.2133
黒鉛 - 2.25 2.5677
窒素 14.0067 1.2506 (g/L) 32.8717
酸素 15.9994 1.4291 (g/L) 32.8673
ナトリウム 22.989770 - 0.971 4.2188
アルミニウム 26.981538 - 2.6989 3.1650
カリウム 39.0983 - 0.862 5.2396
カルシウム 40.078 - 1.55 4.3445
55.845 - 7.874 2.8228
63.546 - 8.96 2.8228
107.8682 - 10.50 3.1939
タングステン 183.84 - 19.3 3.1144
196.96655 - 19.32 3.1858
水銀 200.59 13.546 3.6079
207.2 - 11.35 3.8686
ラドン 222 9.73 (g/L) 41.6706
ウラン 238.02891 - 18.95 3.4153


原子核の大きさは原子全体の約1万分の1で非常に小さいが、原子の質量のほとんどすべてが原子核に集中している。 原子核を構成する陽子と中性子のことを核子という。 核子の重さは、電子の重さの 1800 倍あまりと非常に重い。 原子中の陽子の数を原子番号、陽子数と中性子数の合計を質量数という。 天然の炭素には質量数が 12 のものと 13 のものが混じり合って存在している。 質量数が12である炭素原子 (12C) の質量の12分の1を原子質量単位 (u) という。

質量とエネルギーは相互に変換ができ、等価な量であることが示されている。 質量 m (kg) とエネルギー E (J) の間には E = mc2 の関係がある。 c = 2.99792458 x 108 (m/s) は光速度である。 また 1 個の電子が 1 (V) の電位差を移動するときのエネルギーは電子ボルト (eV) という単位で表される。 電気素量が e = 1.6021765 x 10-19 (C) であるから、 1 (eV) = 1.6021765 x 10-19 (J) である。 次の表は粒子の質量を3種類の単位 (キログラム、原子質量単位、メガ電子ボルト) で比較したものである。

核子の質量
名称 記号 kg u MeV 電子=1
電子 e- 9.109 x 10-31 0.00055 0.511 1
陽子 p 1.673 x 10-27 1.00728 938.272 1836.15
中性子 n 1.675 x 10-27 1.00866 939.565 1838.68
炭素12原子 12C 1.993 x 10-26 12 11177.930 21874.67
12Cの12分の1 - 1.661 x 10-27 1 931.494 1822.89


炭素12の原子中では、核子1個の質量 (エネルギー) が約 930 MeV であるのに、原子に束縛されない単独の核子は約 940 MeV の質量をもっている。 原子に束縛された核子は、単独で存在する核子よりも軽いのである。 原子核中にあって失われた核子の質量のことを質量欠損という。 質量欠損は原子核の結合エネルギーとして使われている。 次の表は質量欠損を質量数で除した値を比べたものである。 これは核子1個当たりの平均結合エネルギーを表す。

核種の平均結合エネルギー
元素名 原子番号 質量数 原子量
(u)
質量欠損
(u)
平均結合
エネルギー
水素 1 1 1.007825 -0.000548 -0.000548
炭素 6 12 12 0.095647 0.007971
ナトリウム 11 23 22.989770 0.194248 0.008446
硫黄 16 32 31.972071 0.282989 0.008843
スカンジウム 21 45 44.955910 0.404849 0.008997
26 56 55.934942 0.514188 0.009182
ガリウム 31 69 68.925581 0.629249 0.009120
クリプトン 36 84 83.911508 0.766351 0.009123
ニオブ 41 93 92.906376 0.842525 0.009059
パラジウム 46 106 105.903484 0.951117 0.008973
アンチモン 51 121 120.903822 1.073808 0.008874
バリウム 56 138 137.905242 1.212747 0.008788
ジスプロシウム 66 164 163.929171 1.400218 0.008538
ルテチウム 71 175 174.940768 1.476991 0.008440
オスミウム 76 192 191.961479 1.596639 0.008316
タリウム 81 205 204.974412 1.689406 0.008241


原子番号で26番 (つまり鉄) 、質量数で56番のところで結合エネルギーが最大となる。 したがって鉄よりも小さい原子核は融合して大きくなった方がより安定し、鉄よりも大きい原子核は分裂して小さくなった方がより安定する。



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引用・参考文献
理科年表
単位の辞典
放射線取扱の基礎

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