上空の放射線レベルは地上よりも高く、航空機の飛ぶ高度では地上の100倍以上にもなる。 上空の宇宙線が原因であるが、宇宙線の実体は多くが陽子線や重陽子線といわれている。 (一次)宇宙線が上空大気の原子と核反応を起こして、別の粒子を放出する。 これを二次宇宙線という。 二次宇宙線の中には中性子線も含まれる。 大気中の窒素原子に中性子が衝突して、炭素原子と陽子に変化する場合の核反応を下に示す。 2行目は簡略化した表記である。
14N + n → 14C + p
14N (n, p) 14C
中性子線が衝突して陽子線が飛び出す反応であるのでこれを簡単に (n,p) 反応ということもある。 このようにして、窒素14原子から (n,p) 反応によって炭素14原子が生成される。 炭素14原子は他の炭素原子と同じように二酸化炭素などを構成して地上までたどり着く。 炭素14原子は放射性であり、β壊変を起こして窒素14原子に変化する。 半減期は5730年である。 植物は大気中の二酸化炭素から炭素を固定して生体を作っている。 植物が死ぬと炭素原子の移動がなくなるので、体内の炭素14原子はその半減期にしたがって減少を続ける。 動物の場合も食物から炭素原子を取り入れるが、死亡すると同時に炭素原子の移動が止まる。 その時点から体内の炭素14は半減期5730年で減少していくのである。
もし数万年にわたって炭素14の存在割合が変化しなければ、炭素14の存在割合を計測することにより、年代測定を行うことができる。生物体を使った遺物なら炭素14を調べることによって遺物の製造年代を知ることができる。 この「炭素14法」は炭素交換が停止した年代を推定する手法であるから、炭素を含んだ遺物でないと推定できない。 炭素交換が停止した年代しかわからないことにも注意する。
炭素14の現在の存在割合はおよそ1兆分の1である。 非常に精密な測定が必要で、測定したいものだけを丁寧に採取しなければならない。 現在ではこの割合 (1兆分の1) であるが、過去にも同じ割合で一定したという保証はない。 地磁気の影響などで宇宙線の流れが違っていた可能性もある。 炭素14だけでは信頼に足る年代推定は困難かもしれないが、他の手法を併用して過去の炭素14の存在割合を求めておけば信頼性が高まる。 実際、他の年代測定法と併用して精度を高める工夫がなされている。
引用・参考文献