天然に存在するウランの同位体には、ウラン234、ウラン235、ウラン238 の3種がある。 同位体の存在比率は下表「天然比ウラン」、「天然ウラン」のようである。 ウラン238、ウラン234はウラン系列に属し、娘核のトリウム234やプロトアクチニウム234m等とともに放射平衡を保っていると考えられる。 アクチニウム系列のウラン235は、娘核トリウム231とともに放射平衡を保っている。 これらの娘核は半減期が短いため、取り除いてもすぐに増えて放射平衡に達する。 下表は3つの娘核の影響を考慮して、ウランの放射能を求めたものである。 「天然ウラン」だけは系列の娘核すべての放射能を加えてある。
ウラン235は連続的な核分裂反応を起こすことができ、原子力発電や原子爆弾はこれを利用する。 発電等に利用するためには予めウラン235の濃度を高めておかなくてはならない。 この過程を濃縮という。 発電では濃縮度(ウラン235の濃度)は3%程度、爆弾の濃縮度は90%程度である。 ウランを濃縮した後にはウラン235が少なくなった残りかすができる。 濃縮度が0.3%未満のウランは劣化ウランとよばれる。 下表「天然比ウラン」は濃縮操作をくわえないウランのことである。
「劣化ウラン」、「天然比ウラン」、「濃縮ウラン」の放射能はほとんど差がない。
濃縮度 | 同位体存在比 | 比放射能 | 系列娘核 | |||
U234 | U235 | U238 | (Bq/g) | 倍率 | ||
天然比ウラン | 0.0055 | 0.7200 | 99.2745 | 50537 | 1 | 234Th, 234mPa, 231Th |
天然ウラン | 0.0055 | 0.7200 | 99.2745 | 179181 | 3.55 | U系列, Ac系列全核種 |
劣化ウラン | 0.0055 | 0.3 | 99.6945 | 50074 | 0.99 | 234Th, 234mPa, 231Th |
濃縮ウラン | 0.0054 | 3 | 96.9946 | 53049 | 1.05 | 234Th, 234mPa, 231Th |
高濃縮ウラン | 0.0006 | 90 | 9.9994 | 148906 | 2.95 | 234Th, 234mPa, 231Th |
引用・参考文献
理科年表
日本原子力文化振興財団