陰陽師

安部晴明、源博雅のコンビが活躍する人気シリーズ第一弾!

↑つうのが腰巻(文庫本の表紙にくっついてくる宣伝の紙ね)に書いてあった煽り文でした。コンビってのは非常にコミカルな響きでいいよね。何かいかにも仲良しっぽい感じだし。実際夢枕氏の晴明と博雅は、よくホームズとワトソンに例えられたりしてますし、いい得て妙なのかもしれません。・・・・・・っにしても、「夢枕獏」ってのもなかなかポエマーなペンネームではあるなあ。
さて、今巷では陰陽師がブームになってるわけですが(さすがに一波過ぎたような気もするけど)、その立役者はこの夢枕氏であると言っても間違いではないでしょうな。何っつっても漫画にも映画にもなってるわけだし。
漫画版は絵が凄く綺麗で、晴明が格好良く、博雅が好い漢に描かれていてなかなかイイと思います。特に博雅の好い漢っぷりに比べた晴明の腹黒っぷりが、小説版よりも強調されてる感がありまして、晴博スキーなら揃えないわけにはいかないシリーズですな。・・・・が、最近はどうにも精神世界に偏っている気がして、読んでても意味が解らなかったり・・・・。せっかくの理解者である博雅の存在が薄くなってきて、もう前半のように二人で酒飲んでたりするシーンは見られないんだなあと思うと哀しくなってきますね。今の漫画版の展開を、夢枕氏はどう思ってるのかなあなんて思ったりします。
一方、映画版の野村晴明と伊藤博雅も捨ておけませんよ。晴明役に野村萬斎。これは大当たり。
詳しくは映画の方のレビューで書いちゃったので書きませんが、まさにイメージ通りの配役でした。他の人だったらこうはいかないだろうなあ。野村晴明の他に稲垣晴明、三上晴明を見た事がありますが、やっぱり萬斎さんのが一番だと思いますよ。・・・・が、続編は一作目を越えられないという罠がやっぱり陰陽師にも・・・・・・。2は2で良いと思うんだけど、どうにもストーリー的に大風呂敷広げすぎな気がするんだよねえ。それに今井絵理子とか、深田恭子とかの大根役者はいらないんだ。正直な話。
それを思うと、やっぱり原作である小説が一番だと思います。あくまで飄々としてる晴明と、彼と同じくらい重きを置かれた博雅。のんびり展開していくストーリー。そして一番大事な、晴明と博雅のコンビネーション。あくまで私の意見ではありますが、これぞ「陰陽師」って感じですね。せっかくオムニバスになってるので、個々の感想を書いてみようかと思います。

玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること
記念すべき初晴明&博雅コンビですな。蝉丸の元に3年も通っちゃったり、「怖いよ」と言いつつ平気で朱雀門に単独潜入する博雅の人となりが素敵すぎ。それから、自分の力を試されてかなり意地悪な方法をとる晴明も男前。冒頭の夢枕氏の前説みたいなのも面白いと思います。
梔子の女
文字が化けて出るという発想がいいですね。で、その対処の仕方もスマート。しかし博雅じゃないけど、晴明先生の呪講座はややこしいなあ。
黒川主
結構好きな話です。漫画版では、烏帽子を被っていない姿を見られるのを恥じる博雅と、アレの最中でも烏帽子だけは被ってる黒川主に、平安人にとっての烏帽子の重要性を学びました。結局綾子さんと黒川主には子供が出来てたわけだけど、晴明に「自分の子は可愛いかろう」と聞かれて頷いたり、綾子さんが産気付いた後ではもう逃げなかったりした黒川主にちょっと男を見たね。悪役ではあるけど憎めない感じです。

ストーリー的には可もなく不可もなく。そんな塩梅ですわ。でもこの話で博雅は、自分は妖物であるかもしれないという晴明に、例えそうであっても自分はお前の味方だと言うんですね。・・・クッ・・・滅茶苦茶イイ奴だなあ。
「だから晴明、お前が妖物であるにしてもだよ、おれに正体を明かす時にはだな、ゆっくりと、驚かさないようにやってもらいたいんだよ。そうしてくれるんなら、おれは大丈夫だ」
・・・・・・・もしかしたら、博雅のこの台詞がシリーズ通して一番好きかもしれません。
鬼のみちゆき
ラブレターを貰っちゃった博雅君。オロオロしてる様子がいいですな。博雅の前だから帝を「あの男」呼ばわりする晴明も、何気に博雅を特別扱いしてるのを表現してて微笑ましいです。
白比丘尼
「おれの初めての女だ」とかさあ、そんな生々しい事言わせなくていいんだけど・・・・・・・。

・・・・・・む・・・気付けば小説の感想より、漫画とか映画の感想の方が多いかもしれんが・・・・・・まあいいか。

陰陽師    夢枕獏 著     文春文庫



陰陽師 飛天ノ巻

名コンビの活躍、すがすがしくて、いと、おかし。

シリーズ第二弾。小説版はやっぱ一定のテンションが保たれてていいなあ。安心して読む事が出来ます。
天邪鬼
あんまり特筆すべきところは無いかな。オーソドックスに楽しめる作品。
下衆法師
ホラーの色が強い話です。しかし、戸を開けるなって言われてるのに、晴明の声だと安心して開けちゃう博雅・・・・・・油断しすぎっつうか気を許しすぎっつうか・・・・。個人的に、冒頭でワインを飲んでる晴明先生と博雅が好きです。
陀羅尼仙
年をとっても仙道に入っても、なかなか俗というのは捨てられないらしいです。・・・そりゃそうだわな。欲望とか執着が無くなったら、生きていく事の目的すらも無くなってしまうような気がします。
「仏の道、仙の道・・・・・・・・極めようとしたあげくになれたのは・・・・・・・」
「何ですか」
「人ですよ」
う〜ん、深いなあ。
露と答へて
みんな一度は古典とかで習う題材でしょう。「あずさ弓」、「筒いつつ」と並んで「芥川」として教科書にも載ってる伊勢物語のあの逸話です。それにしても、この話にこんな後日談があろうとはねえ。
これもストーリー云々より、博雅のイイ奴っぷりが面白い話ですね。「みんな、お前の事が好きなのだ。兼家殿も、超子殿も、そして、おれもだ。好きだったからお前に甘えて、お前を利用しようとしただけだ」とは晴明先生の弁ですが、良い事言ってる割にはバッチリ「利用させてもらった」って言ってますね。まあ、それも博雅が無邪気でイイ奴だからか。
鬼小町
女の、「美」とか「若さ」に対する執着ってのは凄まじいもんだ、って話です。特に、一度春の季節を味わった者なら特にね。その執念は、かの小野小町を鬼にすら変えてしまうほど強いものですが、女なら皆こういう側面を持っているんじゃないでしょうか。若い頃はちやほやされていたのが、年をとって美しくなくなっていくにつれ、男にも相手にされなくなる。その寂しさ、悔しさ。これは、今から想像するだけでも恐ろしい事ですよ。
この話で上手いなあと思ったのは、結局小野小町は鬼に憑かれていたのか、それとも発狂していたのか今ひとつ判別しにくいところです。まあ、そんなのはでも、どっちでもいいんだろうね。要は、執念というのは時として人を鬼にも変えるって事だ。
桃薗の柱の穴より児の手の人を招くこと
普通に面白い話。博雅の言う通り、鬼が人を食う話より、ある意味子供の手が柱から出てただひらひらしてるそれだけの方が怖いかもしれんな。
源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと
一巻、玄象のエピソードと同じく、冒頭に夢枕氏の前書きが載ってます。作者自らが語る博雅のイイ奴っぷり。折に触れ夢枕氏は博雅を「好い漢だ」「可愛い漢だ」と書いてるんですが、晴明についてはそこまでの言及は無いんだよね。この小説のタイトルは「陰陽師」なわけだが。そういうのを見てみても、ああ、夢枕氏は博雅の事大好きなんだろうなあと思います。

この巻では、博雅の優しさ、無私、そんなのがクローズアップされてて良かったです。それにしても、こんなに好漢として書かれてる博雅の、実際のところはどうだったんでしょうね。まったく的外れな人間をわざわざ古典でこんなふうに書いたりはしないと思うんだけど・・・・。

陰陽師 飛天ノ巻    夢枕獏 著     文春文庫



陰陽師 瘤取り晴明

晴明と博雅、百鬼夜行す!

「こぶとりせいめい」ってのを変換すると、案の定まず出てくるのは「小太り晴明」なのね。まあどうでもいいけど。
さて、陰陽師シリーズの番外編ぽいこの「瘤取り晴明」。文春文庫から出てる本編とは違って、装丁ももうちょっとデラックスな感じです。しかもフルカラーの挿絵がふんだんに入ってて、丁度絵本と小説の中間とでも言いましょうかね。話の設定としての季節は秋なんですが、その情景が水彩で(・・・多分水彩だろうと思うよ。絵画の事はよく解らんけども)綺麗に描いてあって、腰巻に書いてある「フルカラー絵巻」なる文句にはなるほどなと頷けます。ただし、「自分の想像する晴明と博雅は、岡野玲子が描いてるようなあんななんだ(もしくは野村晴明と伊藤博雅)。それ以外は認めん!!」という人は読んじゃダメー。
さて、この話では博雅が大活躍です。と言うより今回晴明はセッティングしただけで、実際の功労者は博雅なんですねー。
しかも、晴明独壇場じゃないだけでも異種な感じがして面白いのに、今回は本編の方に過去登場した鬼達が出てくるんですよ。酒呑童子や黒川主が大好きな私にはかなり嬉しい展開でした。しかも、昔の事を恩義に感じて、今回は彼らが晴明達を助けてくれるんですね。そういうのっていかにも日本人的だなあ。
どうでもいい事なんですが、やっぱり私も例に漏れず、そういう日本人が好みそうな展開が大好きです。過去敵だった奴が、最終的には味方になっちゃうみたいなね。何つうの?拳で語るっつうの?そういうの、皆さんも覚えがある感覚なんじゃないでしょうか。ほら、ベジータやピッコロが仲間になってくれた時、嬉しかったでしょ?きっとそういうのと一緒なんだよ。
・・・・・話が逸れてしまいました。
「瘤取り晴明」というタイトルなだけあって、話の大筋としては「瘤取りじいさん」をモチーフとしているようです。ただ、やっぱりそれも晴明と博雅のコンビなら一味違ったものに。安倍晴明、ただで瘤を取ったり貰ったりはしませんよ。しかも、ラストは博雅の笛で締めてくれるんですが、これが鬼の目にも涙の管弦の漢の楽。あまりにもピュアな博雅の演奏に、鬼達は「半年に一度でよいから、朱雀大路を笛を吹いて歩いてくれ」と頼むのです。しかも、その時ばかりは鬼が博雅を喰らうどころか、もし盗賊等の類が博雅を襲おうとするなら、それこそ鬼達が食い殺してくれると約束するんですね。う〜ん、さすが博雅。笛の音ひとつで数多の鬼を従えてしまうあたり、ある意味晴明より凄いかもしれません。この時ばかりは晴明も、博雅の隣で苦笑していたんじゃないでしょうかね。「やれやれ、おれの見せ場を奪われてしまったな」、なんて。
文章と絵の量が丁度半々のこの作品。行間も広めにとってあって、文庫本を一冊読むのはちょっと・・・という人にも丁度良いんじゃないでしょうか。あと、黒川主スキーは是非読むべし。

陰陽師 瘤取り晴明     夢枕獏 著     文藝春秋



陰陽師 首

怖い。けれど美しい。

瘤取り晴明に続き、フルカラー絵物語第二段。さて、まずこの本を読んでの感想ですが、内容云々よりも何よりも。賀茂保憲は実はイイモンだった!!これに尽きると思います。寧ろそれが全てだと言ってもいいよ。この際。
賀茂保憲っつうのは御存知安部晴明の兄弟子なんですが、漫画のイメージが強いのか、どうもいけ好かない印象が強い損な役回りの人です。漫画版では性格の悪さが顔に表れちゃってる感もあって(と思うのは私だけかもしれんが)、おまけにどうも過去晴明に手を出した事があるような書かれ方をしているんですな。で、晴明に「俺に触れるな!」とか言われちゃってんの。だから私の中で賀茂保憲という人は、根はクソ真面目な堅物。本当は晴明の事大好きなんだけど、生意気でしかも自分よりも才能のある弟分に可愛さ余って憎さ百倍。このもどかしい気持ちをどうしてくれようかッ!!みたいな人だったのです。
----------っが。
この「陰陽師 首」ではどうよ。漫画版とは別人のような、何だかぽや〜んとしたお兄ちゃんっぷり。保憲はフツーに弟の事が可愛くて、晴明もフツーにそんなポカンとした兄弟子が好きな様子なのです。何?今回はナゴミ系なの!?大体にしてストーリーが、
・出勤したら何か困ってるっぽい人発見。死相が出てるっぽいので放って置く事も出来ず、仕方なく声を掛ける保憲。

・案の定困ってる。しまった。話し掛けるんじゃなかった。

・こっちから話し掛けといて何だけどさあ、面倒だし、晴明んとこ行ってくれない?……え?……あ、そう。デートなの、博雅と。

・渋々途中までは力になってあげるものの、やっぱり面倒に。あ〜、もういいや!!晴明に押し付けちゃえ!!
てなわけで保憲が晴明を尋ねるところからストーリーは始まるのですな。何か……凄い愛い奴じゃんか!!ダメ兄っぷりじゃんか!!この話だと、保憲よりも晴明の方がしっかりして見えるのが不思議です。いやあ、お兄ちゃんの見方が変わっただけでも読んだ甲斐があったってもんだね。
さて、いつまでも保憲兄ィの事ばっか言ってるのも何なので、そろそろ内容についても触れてみよう。
今回は前回よりもホラー色がアップ。タイトル通り、首が舞い人の肉を喰らう正統派怪異譚なんですが、やっぱり絵のおかげで怖くない。いや、怖くないことはないんだけども、おどろおどろしさとか生臭さとか、そういうのが無いんですな。話の中で賀茂忠行(保憲と晴明の師にして保憲の父親)が、自分達がこの世に存在するのと同じように、化物もまたフツーに存在してるんだよ、みたいな事を言うのですが、我々には我々の生活があるように、化物には化物の生活があるのかもしれません。
ぶっちゃけ、ストーリー自体には特筆するような点も無く、何か淡々と妖怪退治は終了するのですが、 まあそんなところもご愛嬌か。……そうだ。今思いついたんだが、親戚の小さい子に贈るクリスマスプレゼントには、この「陰陽師 首」を差し上げるというのは如何なものだろうか。ほら、絵も綺麗だしね。もしかしたら保憲スキーが育成できるかもしれんではないか。

陰陽師 首     夢枕獏 著     文藝春秋





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