テースト・オブ・苦虫 T

と思ってやってきました。教えて下さい。

普通さあ、本を読んだりすると、読後には色んな印象があるわけよ。面白かったなあとかつまんなかったなあとか、そこからもうちょっと進んで悲しかったとかハートウォーミングだったとか。でもって、あそこらへんはどうだったとか、あの部分のここが心に残ったとか。しかし、敢えて誤解を恐れずに言おう。この本で私の心、及び記憶の片隅に焼きついたのは、
「ピジャマ」
以上。
……いやさあ、ホント、印象が強すぎるんだよ。こんな心に深く刻み込まれるような言葉を聞いたのは久々だ。
「それに引き比べてこの僕ときたらどうだ。やはり人間としての格が違うというか、実に落ち着いたものですよ。祭礼など無視して部屋の中でピジャマを着て泰然自若、心静かに書見など致しておるのであり実に渋い」(39ページ)
そうかそうか。ピジャマを着て泰然自若なわけだな。なんか、時代劇に出てくる譜面台みたいなのに本を置いて読書してる侍を連想するな。しかし着てるものはピジャマなわけだな。
「いつも通り機嫌よく「磯釣り音頭」かなにかをくちずさみながら横になったのだ。ピジャマ姿の愉快なおっさんであったのだ。わたしは。私の場合は」(129ページ)
磯釣り音頭を口ずさみながら横になるピジャマ姿のおっさん……ピジャマという言葉がおっさんを、途端になにかファンシーな生き物に変えてしまいますな。
ピジャマ……パジャマの事なんだろうとは容易に予想がつきますが、しかしピジャマとは此れ如何に。と、思って国語辞典なぞを紐解いてみたわけですよ。そしたらどうよ。確かに載ってるじゃないの!!
どうやら、ピジャマとはフランス語らしいです。パジャマのフランス語読み。はい、勉強になったね。 ついでのようではありますが、内容なんかにも触れておきますと、まあエッセイと小説の中間のような読み物でしょうか。書き出しはエッセイのようなんだけど、読んでるうちに小説になる。そんな不思議な構成。そして毒舌町田節。好きな人はハマるけど、嫌いな人はとことん嫌いでしょうな。まあ私は好きだけどね。「俺様が、この偉い俺様が言っているのだ」とか言っちゃうのはね(笑)。あ、蛇足だが「サムライチャンプルー」というアニメの第22話「努髪衝天」に出てくるシゲというキャラクターは、この町田康がモデルだとかいう噂を小耳に挟んだが真偽のほどは定かではありません。
ちなみに我が母君に、
「我輩はピジャマというフレーズにいたく感銘を受けたッ!!パジャマではなくピジャマ……これほど洗練されており、スマート、かつキャッチーな寝間着の別称があろうか。よって我輩は今日この時より寝間着をピジャマと称する事にする!!するったらする!!」
と熱弁を奮ったところ、
「勝手にすれば」
との冷たい反応を頂いたのでありました。くわっ!!


テースト・オブ・苦虫 T    町田康 著    中央公論新社



R・I・P

逃げたんじゃない。・・・・・・・・進んだだけだ。

ちょっと邪道だけど漫画です。いや、別に漫画が本として邪道だというんじゃなくて、「本」というカテゴリに全部の書物をぶっ込んじゃうのがね。まあその辺は何となく分かってね。
で、このR・I・P。Requiem In Phony Brian の略です。作者は三原ミツカズ。ゴスロリとか好きな人にとってはお馴染みの人でしょう。登場人物が着てる服とか、凄く特徴的で格好良いよね。
漫画と小説。どっちが優れてるかとか、そういう下らない事をここで取り立てて書く必要も無いとは思うんだけど、敢えて一言だけ書くとしたら、まあやっぱり私は一長一短だと思いますよ。確かに小説はページ数も多いし、細々した事を直接説明出来るわけだから、物語をより深く掘り下げられますな。「行間を読む」なんて言葉もありますし。それに比べると、同じ内容を同じだけ表現しようとなると漫画は難しいだろう。私は漫画は描けないから偉そうに言えないけど、例えば金田一の「犬神家の一族」とかを詳細まで忠実に再現しようとなると、かなりホネなんじゃなかろうか。人物相関とかさ、図示出来るのは良いと思うけど、あの話を漫画となると百科辞典みたいな厚さになりそうだ。
それにひきかえ、漫画はビジュアルで物事が理解出来るのがいいですな。登場人物にしても、文字で書くとそのイメージを読み手に起こさせるだけでかなりの字数を必要とするわけでしょ?それが漫画だと1コマで済んじゃう。となると、ストーリーのテンポが早いし、何より分かりやすい。読んでる方としては飽きないし、そりゃ「漫画で覚える○○」とかが一杯出るわけだ。よく、漫画は内容が軽薄で訴えかけるものが無いなんて言われますけども、私は種類によりけりだと思います。小説だって軽薄なのは一杯あるし、逆にとても考えさせられる漫画だってあります。この「R・I・P」然りね。ただし、残念な事に小説は文学にはなっても、漫画は文学にはならないんだな。確かに手塚治虫は神様なんて呼ばれてるし、作品もかなり内容の濃い、良い物がたくさんあるけれど、彼の呼称はあくまで「漫画家」という職業名であって、「文豪」とかではない。まあ私は「自称文字書き」ではあっても絶対に「自称漫画描き」にはなれないので、どちらかと言えばちょっとだけ小説派なんですが、漫画はもしかしたら、まだ未開発なだけなんじゃないかなと思います。小説は太古の昔から書かれてきてるけど、漫画は最近拓かれてきた、言わば新ジャンルでしょ。これからも漫画というものがずーっと続いていくとしたら、それこそ素晴らしい作品を残した人には何か特別な呼称が付くのかもね。
・・・・・・一言のつもりが長くなってしまいました。
前置きはいいとして、この「R・I・P」は、恋人の後を追って自殺した男と、彼を自分の片腕にした天使の話です。どうですかねえ。例えば自分の恋人が死んだ時、あなたなら後を追えますか?
私はこんなような経験をしてるので、ぶっちゃけ後を追った男、アンダーティカーの気持ちはよく分かります。周りは、「あの人は死んでも、あなたが忘れない限りあなたの心の中で生きているんだから」とか言うけど、私の心の中で生きていられても無意味なんだよね。ちゃんと目の前にいてくれて、手で触れる事が出来て、笑ってくれないと。心の中で生きてるなんて奇麗事にしか聞こえないし、それこそそんなのは、テレビの中の俳優に恋するようなもんです。どうせ実現のしようが無いんだから。だから、アンダーティカーの行動は解らないでもありませんでした。病死した魂を専門に救済する天使に、「この世が嫌で逃げた弱っちいヤローに」と言われたアンダーティカーが言った、「逃げたんじゃない。・・・・進んだだけだ」という台詞も。これはあくまで私の想像ですが、後追い自殺をした人は、皆「逃げた」とは思っていないと思います。この世が嫌だから死ぬのではなく(もっとも、その人間がいない世の中が耐えられないというのもあるだろうけど)、その人がいるかもしれない世界に「進む」。死んだ人間が戻ってこられないというんだったら、再び会うにはどうしたらいいか。それは自分がその人の所まで行くしかありません。アンダーティカーも、そういう気持ちだったんじゃないかな。
「君のいない80年より、君といる1分を。君のいない天国より、君のいる地獄を選ぶよ」
キモがられるかもしれませんが、そう言ったアンダーティカーを凄く自分と重ねて見てしまいました。

R・I・P    三原ミツカズ 作    飛鳥新社



いなか、の、じけん

あの「ドグラ・マグラ」やら「瓶詰地獄」を書いた人ですからね。面白いと噂を聞いて、どんだけ怖いのかと期待して読んだこの「いなか、の、じけん」ですが、怖くはなかったです。何だよ!!怖くねえじゃんかよ!!期待させやがって!!と、情報源を軽く恨んだりしてみたんだけども、よく考えたら「面白い」とは聞いてたけど、「怖い」とは聞いてなかったんだよね。くそう。間違った事は言ってないな。率直に言って結構面白かったです。
ところでこの作品、実は小説というよりかは、どっちかって言うとショートショートに近い感じです。20の短編で構成されているわけですが、夢野久作の郷里、北九州で起こった事件を筆者が伝聞して、それを作品という形に纏めたそうですよ。昔の北九州というお国柄か、起こる事件はどれもこれも他愛の無いもので、非常に牧歌的。でも、その一つ一つにどこか笑えるところやゾッとするところがあったり、はたまたちょっと切なくなるようなところがあるのです。まあ現在でも穏やかでない事件が多いわけですが、地方紙の三面記事なんかを読むとこれに近い感じが味わえるのかもしれませんね。しかも、こちらは夢野が事件の背景や登場人物の心情なんかを付加して読み物として書いているので、余計にそういう印象を強く受けます。中でも私が気に入ったのは「スウィートポテトー」、「郵便局」、「古鍋」、「X光線」ですかね。
ところで、この作品とは直接の関係は無いんだけども、皆さんは夢野久作というとどんな印象を受けますか。やっぱり幻想的で、またどこかサイコっぽい作風からか、夢野自身狂人っぽいイメージがあるんじゃないでしょうか。少なくとも私は色んな意味で、夢野はどこか「ボーダー」を歩いていた人なのではないかと思います。実際、夢野久作にまつわるエピソードとして、彼は知人を家に招き入れ、その挨拶の最中に 「今日は、良い日で、あは、は、は、―」と笑ったかと思うと急に倒れて亡くなったというものがあります。何か、ちょっと背筋が寒くなりませんか?
この「いなか、の、じけん」は、青空文庫というサイトで無料で読む事が出来ます。これを機に、夢野の狂気の世界に触れてみては如何でしょう。

いなか、の、じけん    夢野久作 著     青空文庫












「十角館の殺人」の面白さがイマイチ分からない。

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