本選を前に、パチスロは悩んでいた─。 予選は勝ち上がったものの、何の策も施していない今の状態では、 一回戦敗退は間違いない─…。 そこへ現れた正体不明の男・他板。 彼の忠告に従い、まずは共に戦う仲間を作ることに決めたスロ。 そんな彼の元に、三戦との協力話が舞い込む。 三戦からの使者が来る日─。生真面目と評判の三戦をからかおうと 待ちかまえるスロの前に現れたのが ─彼の運命の人となる、弓タンであった… 心優しく純粋な弓タンの微笑みに、一遍で魅せられてしまったスロ。 弓タンが履いてきたという燃えるように赤い勝負パンツが、 お遊び気分だったスロの闘志に文字通り火を点けた。 何が何でも勝つ!応援してくれる弓タンのために─… 決戦当日─。 戦局はまさに熾烈を極め、一進一退の攻防が続く。 ガムシャラに戦うスロの姿に、観客は皆心を打たれ、 喝采(一部生暖かい笑い)を送る。 強大な相手・株、SFを向こうに健闘を続けるスロを 三戦・少年漫画・少女漫画・801等、数多くの仲間達が 一斉突撃で援護する。そして運命の23:08、発表された結果は─ 2位惜敗─… 茫然自失のスロの元に、弓タンが労いに訪れる。 優しく慰めてくれる聖母の如き弓タンの胸で、男泣きに泣くスロ。 涙が枯れるまで泣いた後、スロは心に誓う。 弓タンのために、三戦を絶対優勝させる! そして三戦が優勝したら、弓タンに告白するんだ! ─と…。 しかし、それにはまだ力が足りない。 愛する人のために、何か出来ることはないのか…? 思い悩むスロの脳裏に、ある人物が思い浮かぶ。 それは生き別れになった兄・パチンコだった。 パチンコも予選を突破して、本選を控えている身。 兄と組めば弓タンの力になれるかもしれない。 そう思ったスロは、いきなりパチの元に乗り込む。 ほとんど乗っ取り同然の振る舞いだったが、度量の大きいパチは スロを快く受け入れ、ここに兄弟の新たな絆が誕生する。 今や2ちゃんねるトーナメント一の注目株となったスロ。 彼の人柄に惹かれた多くの仲間達と共に、 そしてスロの2ちゃんねる中認定パシリとなった他板改め もう一回パン買ってきますを従えて、 スロの愛をかけた戦いは新たなスタートを切る。 兄・パチンコの決戦日5月29日 そして三戦の決戦日6月4日を目指して─…。 ドアの前で弓兵は立ち止まる。 ふぅっと一呼吸して自分を落ち着けようとするが、 高ぶる胸はその程度では治まりそうにない。 それでも意を決してドアをノックする。 ガチャッ。 弓兵がドアを開けた途端、大勢の人間が弓の元に駆けつけた。 「ゆ、弓タンーー!!ウワァァァァン・゚・(ノД`)・゚・負けちゃったんだよぅ〜!」 「ゆみたんゆみたんがんがったけど駄目だったの。 ないていい?ウワァァァン・゚・(ノД`)・゚」 「・(´Д⊂ヽ弓タン弓タン。弓タンに会うまで泣くの我慢してたんだよ。 もうないていい?」 「・゚・(ノД`)・゚・ウェェェェン・゚・(ノД`)・゚・負けちゃったよ〜 応援してくれたのにごめんよ〜・゚・(ノД`)・゚・ 」 弓兵は込み上げるものをグッと堪えて、精一杯微笑んだ。 「泣きたいときは、思いっきり泣きましょう! 今日だけは、泣いてもいい日なんですから。」 弓兵の言葉と優しい笑顔に、皆が一斉に泣き出す。 今日のパチスロの頑張りは凄かった。 今まで三戦の武将として数多くの戦に出陣したが、 こんなに胸が熱くなったのは初めての事だ。 だからこそ勝ちたかったし、勝って欲しかった。 「泣くなおまいらまだ三戦がある。弓たんがいる」 「弓たん 三戦優勝までがんがろうね 」 「うちらは負けちゃったけど弓たんはずっと支援するぞ」 「三戦の時は全力で逝きます。」 涙をポロポロ零しながらも、 パチスロ達は口々に弓兵に決意を語る。 「どうもありがとう。一緒に頑張りましょうね。 これからもどうぞよろしくお願いします。」 最後まで笑みをたたえたまま、弓兵はパチスロ板を後にした。 「(参ったなあ…。せっかく我慢してるのに、 あんな嬉しい事言うんだもん…。)」 弓兵は勢いよく顔を上げて夜空を見る。 今日は絶対に泣かないと心に決めていた。 自分がすべき事は、共に泣く事ではなく、 彼等の涙を笑顔で受け止める事─、そう思ったからだ。 成り行きで突然始まったパチスロとの交流だったが、 もうずっと以前からの仲間のような、そんな強い絆を感じている。 「(もし三戦が勝ったら…。今度は自分がみんなの前で 泣かせてもらおうかな…。それまで涙は取っておかなきゃ…。)」 両頬をパンッと叩いて「よっし!」と一声上げ、 弓兵は家路を急いだ。 この素晴らしい出会いを神様に感謝しながら──。 |