エピローグ
ラグランジュポイントから半径4000万kmの宙域。中継ゲート事故で想起すら困難になった事象の陥穿。未来と過去へ奔流する時間線の始原。その一点にアーカイヴされた、解凍はできないが二度と失われない、そして実存か空想か、その問いかけすら成立しない風光で――。
佐織は洗濯物を「えいっ」と広げた。晴れた日は彼女の家事労働欲を否応なく刺戟する。
たいへんに美少女なる娘がのこのこと出てきて、母に問いかけをする。
「ママのお父さんとお母さんって、どんな人だったの?」
佐織は夢見る乙女な声色で応じる。
「ママのお父さんとお母さんはね、地上に降りた天使さんだったよ」