File No.045
ニガクリタケ
Naematoloma fasciculare (Hudson: Fr.)
(ハラタケ目モエギタケ科)
別の項で、「きのこ記録用にはうってつけ」というような、デジカメを絶賛する文章を書いたが、実は弱点もある。
もっともこれはデジカメ一般の弱点ではなく、私の使っている機種(ソニーDSC-30)だけのことかもしれないが…。
「弱点」というのは他でもない、ニガクリタケなのである。
ニガクリタケは季節を問わず、場所を問わず、樹種をあまり問わず発生するありふれたきのこである。
かじったときの強烈な苦さを別にすれば、鮮やかな黄色の傘と柄、オリーブがかった色のひだなど、
色彩に特徴があるといっていいだろう。
ところがどうしたわけか、デジカメでニガクリタケを撮ると、ただの白いきのこになってしまうのである。
いろんな条件下で何度か撮っても同じ具合だったから、光線の影響でたまたまというわけでもなさそうである。
デジカメは、限られたデジタル情報の範囲内で、できるだけ自然な感じに色を再現するために、
記録時にいろいろと工夫された情報処理をおこなっている(らしい)。
まったくの想像であるが、ソニー技術陣が開発にあたってさまざまに想定したであろう色の中に、
「ニガクリタケ色」が思いがけずもれていたということなのだろうか。
どこにでもあり、苦くてしかも毒なので食えないニガクリタケ。
しかしそれは、実は最先端映像技術も及ばない奥深い色をたたえたすごいやつなのかもしれない。
[データ]
採集日:2000年11月25日
発生地:兵庫県山崎町