File No.049
ツチグリ
Astraeus hygrometricus (Pers.) Morgan
(ニセショウロ目ツチグリ科)
少し前きのこファイルで紹介した「シロツチガキ」は、ヒメツチグリの仲間である。
今回のツチグリとは、見た目も名前も似ているが、ヒメツチグリは「ホコリタケ目」なので、
ツチグリとは目(もく)のレベルで違っている。
目(もく)の違いというのは、きのこでいえばシメジとサルノコシカケの違いに相当するし、
昆虫でいえばチョウとハチの違いと同じ程度だから、
いっしょにするのは少々乱暴に過ぎるというものであろう。
生態も違っていて、ヒメツチグリはふかふかの森の中が好きなのに対し、
ツチグリは切り通しの道端とか、公園の中などからからの場所が好みのように見える。
さて、私の家の前のH小学校の教頭先生は、いわゆる「アウトドア」系--というより、
「狩猟採集文化」系の方である。
いちばん年季が入っているのは海の魚介類らしいが、きのこもたいへん好きとのことで、
一昨年、学校の近くで大量発生したマントカラカサタケを私が食べてだいじょうぶだったという話をしたら、
「焼いて食べたらなかなかいける味だった」とおっしゃっていた。
先日、その教頭先生とある会合でお会いする機会があり、姫路のきのこ展の話から始まってきのこの話をしていたところ、
「ヤッコタケ」というきのこの名前が口に上った。
そういう標準和名のきのこは私の知る限りなく、西播磨地域の方言名と思われる。
きのこ展のパンフレットの写真に載っていたヒメツチグリに似ているけどちょっと違う、という説明だったので、
たぶんツチグリかヒメツチグリの仲間のことだろうと思ったが、残念ながら、他の図鑑がそのとき手元になかったので、
それ以上は確かめられなかった。
どっちでもいいかと一時は思ったのだが、両者は目(もく)レベルで違うということを思い出し始めたら、
やっぱりどっちなのか知りたくなってしまった。
家に戻ってから、松川仁著「キノコ方言原色原寸図譜」を開いてみたが、「ヤッコタケ」は載っていない。
というわけで「ヤッコタケ」の正体は、図鑑か現物を持ってもう一度教頭先生に聞きに行くまでお預けになりそうである。
[データ]
採集日:2001年3月17日
発生地:兵庫県新宮町