サオ握る人、握らぬ人

エロ系ライター・安田理央さんのブログを見ておりましたら、「ハマジム問題」がまた熱くなってきていました。
最近、データ類もAVレビューもめっきり更新が滞り、更年期障害の愚痴に終始している当HPでありますが、一応「AVファンサイト」の顔も持っておりますのよ゚・*:.。. .。.:*・゜ということで、私なりに思ったことをちょっと書いてみようかな、と思います。思えば、遠藤遊佐というHNは「エンドユーザー」のもじりだったりするわけですし。(ああ、恥ずかしい……)

えー、いきなり「ハマジム問題」と言われても、安田さんを始めとするAVライターさんたちのHPを読んでいないと何のことだかサパーリわからないと思いますので、私なりにものすごーく省略して説明してみます。
作年の5月にカン松さんやバクシーシ山下さんや平野勝之さん(先日亡くなった林由美香さん主演の「由美香」を撮った監督さん)といった、監督さんらのAVをリリースする「ハマジム」というメーカーができたんですよ。で、HPを見てもらえるとよくわかると思うんですが、このメーカーは他のエロビデオメーカーとはちょっと違う、すごく短絡的に言ってしまうと「サブカルっぽい」雰囲気の作品を出してきたんですね。パッケージも既存のAVとは違ってCDのジャケット仕様でオシャレな感じ。作品の内容も、本当にアテネまで行ってアテネマラソンに出たり、在日問題に触れたり、レディコミで募集した本物の人妻をハメ撮ったりと、エロを抜きにしてもかなり面白そう。にもかかわらず売上不振で1年ほどで新作のリリースが凍結してしまったと。
で、そこで、Web上に発言の場を持つAVライターさんたちの間で「ハマジムのビデオは面白いのに、何故売れないのか」「売るためにはどうすればよいのか」という論争が始まったんです。

遠藤が観た限りでは「ハマジムのAVは面白い」ということに関しては、文句なしに意見は統一されていました。
でも、そこに「AVとしてどうなのか」「AVとして売れるのか」という視点が入ってくると、ライターさんの中でもいろんな意見が出てきます。
「お金を払わずサンプル品を貰って観ているから面白いといえるけれど、今のAV=オナニーツールという状況の中で売上げを伸ばしていくのは難しいんじゃないか」
「いや、そんなことはない。ハマジム作品はちゃんとAVとしてエロいし、ライターとしてこういった作品が売れる努力をしていくべきだ」等々、論争は白熱しました。端で見ていて、どちらも納得できる意見ばかりでした。

実は、そのとき遠藤も、いちユーザーとしてなんとなく思うところはあったのですが、最終的に「監督(というか、ライターさんも含めてのクリエイターさん)は、物を創る快感を信じていくしかない」というような方向に話が進んでいったため、その「ユーザーとしての思うところ」というのを言いそびれてしまったわけです。 で、的はずれかもしれないんですが、遅ればせながらここでちょっと書いてみます。

えーと、まず基本的に、一般ユーザーにとってAVとはオナニーツールだと私は思うんですよね。
もちろん、ハマジムのAVがエロくないといっているわけではありませんよ。カン松さんのハメ撮りは天下一品にエロいと思いますし、「サブカル」といっても、その昔にっかつロマンポルノの結末がものすごく後味悪かったり、逆にやたらパロディだらけだったみたいな、エロの皮をかぶりさえすれば何でもできるというような意味じゃありません。エロだから面白い、エロあってこその面白さだと思います。
でも、オナニーをするためのAVに一番重要なのは「確実にヌケる」ということなんですよね。
極端に言えば、「ヌキたい」と思ってAVを買うユーザーにとっては、カラミ以外の部分は早送りの対象になってしまうのは仕方がないし、私自身も、ものすごくいいアイデアで作りこまれたAVよりも、いかにも安い予算で作られた裏ビデオ(しかもコピってもらったやつ)で何度もオナってしまったりします。
ヌケるか、ヌケないか。それだけが全てだとは言わないけれど、ユーザーの価値基準は絶対的にそこにあるわけです。 やっぱり一般ユーザーはお金を払ってAVを買うわけですから、買ってみたら全然ヌケなかったというような失敗はしたくない。すこぶる真剣なのですよ。

安田さんのブログを見ると、はみーさんという方が「私は毎月1万円の予算でAVを購入しています」とコメントなさっていますが、セルAVをコンスタントに買っている人、つまりセルAV業界を支えているのはそういった家計の中に「エロ費」をきちんと入れている立派な人たちだろうと思うのです。
遠藤は一応女子なので、AVを買うときはショップよりもネット通販を多く使ったりするのですが、やっぱり「予算1万円で何本買えるかな」とか思いながら選びますもん。
1万円でよりたくさん、いい射精(射精?)をしたい。そうすると、3本よりは4本買えたほうがいいだろうということになる。似たような内容だったら、90分のものより120分のほうを買ってしまったりもする。ああ、せちがらい……。
でね、安田さんのブログにも書いてあるように、ハマジムのAVの値段は、大手メーカーの2980円とかに比べると若干高いのです。すると、これを買ってしまうと、4本が3本になっちゃうなあ……とか考えちゃうわけですよ。節約主婦みたいだけどしょうがないじゃない! 貧乏ですし! ニートですし!!
で、さらに言うと、ハマジムのAVは入手できる場所が限られているようなのですね。公式HPからの通販なら確実に買えるのですが、安売りDVD通販サイトなんかには置いていない。そうすると、定価で買うしかないからちょっと旗色は悪くなりますし、ハマジム作品だけを別のサイトから買うという手間の面から考えても「1万円で買う今月の数本」の中に入る確率はさらに低くなってしまいます。

販売戦略みたいなことについてはよくわからないのですが、もしかしたら、敢えてそういう販売方法をとっているんでしょうか。
個人的なイメージですが、AVというくくりで見ると、ハマジムのDVDは少々スペシャルで、お高い感じがします。
完成度が高くて面白い。だから、消耗品としてなんとなく買う人たちではなく、 「ハマジムのAVが欲しいから、手間をかけてでも買いに行く」という明確な意志を持ったユーザーを対象に売ろうとしているとか。 (そんなことはないか……) でも、こういう販売方法だと、今のAV業界の中で多くの数を売るのはやっぱり難しいように思えます。

ハマジムを応援するAVライターさんたちは、ハマジムのAVの良さを伝えるために、いろんなエロ雑誌に頑張って思いを込めた紹介原稿を書くでしょう。しかし、AV誌を参考にしてAVを選ぶユーザー、オナニーのためにAVを買うユーザーに、値段や手間の問題をクリアしてまで買おうという気を起こさせるには、「100点満点! 10回はヌケる! 2本分の値打ちアリ! ギリギリモザイク!」とか、そういう書き方をしないと無理なんじゃないでしょうか。
確かに面白いしエロいかもしれない。買って実際に観てみたら、他のどのAVよりも繰り返し観てヌクかもしれない。AVとかエロとかじゃない感動があるかもしれない。でも、まずユーザーの手元に届かなくてはそれはわからない。
実際、私がAV誌を見るときはやっぱり点数とかカラミの回数とかを最初に見てしまいます。その次に「どのライターさんが褒めているか」ということでしょうか。ああ、いじきたなくてすみません。

安田さんは、ブログのコメントで「エロ専門誌の中でいくら叫んでも、こりゃダメだなと思ったので、『BUZZ』などの一般誌で書いた」 と言っていますが、私も、現時点ではそれしかないんじゃないかなあと思います。
「ヌケる」ということに絶対価値をおかない層にアピールする。もしくは、「エロ費」ではなく「サブカル費」を狙う。
仮に私のその月の「エロ費」の1万円からハマジムのAVを買わなくても、「サブカル費」の1万円にはアキがあるかもしれない。うまく言えないのですが、CD買ったり映画を観たりする感覚だったら、逆にそんなに悩まずに買うような気がするんですよ。少なくとも私は。
かっこいいパッケージを部屋に飾り、充分時間があるときに早送りなんかせずにじっくり観る。そしてもよおしてきたらオナニーする。気分がのらなくてオナニーできなくても、それで損したとは思わない。
「どうやったら売れるか」という問いに対して「どうだったら買うか」と考えてみたら、そんなふうに思いました。
セルAVとして売るのであれば、もう少し安く、手に入りやすくしてほしい。そうでなかったら、AV誌だけでなく一般誌に紹介文を載せてヴィレッジバンガードとかで売る。

「ハマジム論争」を見ていると、ハマジムを応援しているAV関係者は「サブカル」という言い方に抵抗があるようですが、むしろ私はサブカルという言葉にはわりと肯定的なイメージを持っています。
「『わくわく不倫旅行』は見ていないけど『由美香』は観た、とても面白かった」という人は、私のまわりにはたくさんいます。しかもわりと老若男女問わず。
それはいわゆるサブカル的な興味からかもしれないけれど、それと同じように、ハマジムのビデオを観て面白いと思った人が他のAVにも興味を持つ入り口になればいい。なんかキレイ事に聞こえるけれど。

あ、あと余談ですが、 こういうHPをしていると、たまに「女性にもAVを見てほしいんだけど、どうすればいいか」というようなことを聞かれたりします。思うに女子の場合、サブカル好きと、自腹切ってでもAVを買う層っていうのはけっこうかぶるんじゃないでしょうか。(あとやおい系腐女子もかぶる。) 
女性の市場を考えるなら、サブカル好きからAVユーザーに移行していくというパターンはアリなんじゃないかと。 (ていうか、それ以外、コアな女性AVファンてどういうわけかあんまりいない。)

 

あ、そういえば、昨日AVメーカードグマのHPを観ていたら、D1クライマックスの参加ビデオの予告編が出揃っていました。早速メディアプレイヤーで観てみたところ、カン松様の作品は他の名だたる監督の作品と並べてもすごく面白そうでした。 かっこよくて切なくて、エロだけじゃない何かがありそうで、わくわくしました。
このラインナップの中から3本自腹で買えといわれたら、間違いなく買いますよ。