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クワガタを養殖する上で最も重要なのは幼虫期における飼育である。大きな成虫は 大きな幼虫からでしか発生しない。では、幼虫を大型にする条件とはなんだろうか。 大きな個体を得るためにには遺伝が重要であり、大型成虫でしか大きな子孫は残さ ないという説があるが、実際は幼虫に与える餌、気温、湿度が重要な条件となるので ある。確かに遺伝子のような先天的要素も無関係とは言えないが、より影響をおよば すのはやはり後天的なことなのである。 フレークとその作り方 幼虫の餌となるのがフレークであるが、フレークとは朽ち木をミキサーなどで砕いたも のである。フレークの条件として発酵していなければならないことがあげられるが、その ために朽ち木を使用するわけである。ここで注意していただきたいのは枯木と朽ち木 は違うことで、朽ち木とはキノコなどの菌糸類や細菌によって木を構成する物質が分 解されたものであり、したがって、木が枯死していなくても朽ち木にはなるのである。 ただし、細菌によって作られた朽ち木は幼虫飼育に不適なことが多く、菌糸類とくに カワラタケ菌によって朽ちた木を使用するのが最良といえる。 カワラタケ菌を使ってフレークを作ることはそれほど難しいことではないが、カワラタケ の養殖が一般的ではないため、市販されているフレーク材を使い、それに手を加える 方法を紹介する。市販されているフレークはデパートやペットショップなどで簡単に手 に入る。フレークを用意したらフレークの量に対して3%くらいの割合で薄力小麦粉を 混ぜ、最低ひと晩放置する。出来上がったフレークをビンに入れて、すりこぎ棒などで 上から圧力を加え、最初に入れた容積の半分以下まで圧縮し、その上に小麦粉など を添加しないフレークを同じ要領で固く詰め込む。以上の手順を行えば後は幼虫を 入れるだけである。本来幼虫が朽ち木の中に住んでいることを考えると、フレークを 固く詰め込み木の密度に近付けてやることは当然であり、詰め込み方が緩いとうまく 育たない。 幼虫を移動させるときの注意 孵化直後あるいは脱皮直後の幼虫はすぐに新たな飼育ビンには移さず、2週間から 1ヶ月くらいはそのままで様子をみる。また、幼虫が新たなフレークの中で安定するか どうかをやはり最低2週間は監視する。もしフレークに食い込まなかったときは餌の状 態を調べ、腐敗・過剰発酵をしているものは交換する。また底の混合餌に食い込まな い場合は餌の上部と下部の温度を調べ、温度差があるようなら餌を交換してやる。 幼虫移動のさいに特に注意すべきことは、人間の手についた雑菌が感染することであ る。それほど頻繁に起こることではないが、手に触れた幼虫がわずかな時期の間に体 が黒ずみ死んでしまうこともある。このようなことを防止するためには手をよく洗浄する か手袋を着用する。手袋は清潔かつ気密性の高いものがよい(ゴムやナイロン製)。 天敵について もちろん大クワガタにも天敵はおり、とくに幼虫期に多い。代表的なものが寄生蜂とコ メツキムシの幼虫である。天然の幼虫を採取して飼育しているといつの間にか蜂の幼 虫に変わっていることがあるが、これは幼虫の体に親蜂が卵を産みつけ、その後孵化 した蜂の幼虫に食べられてしまうためである。コメツキムシの幼虫は枯れ木内に侵入 して他の幼虫を捜し回り見つけしだい食べてしまう獰猛な昆虫である。 大クワガタの養殖をするとき、室内での飼育は天敵に襲われることはあまり考えられな いが、野外で採取した産卵木や朽ち木を使用する場合は、コメツキムシの幼虫など肉 食性の昆虫には注意が必要である。また、室内飼育でもあまりに開け広げだと蜂の侵 入を許すこともある。成虫飼育でも幼虫飼育でもフタには必要以上の通気孔を開けな いことである。以上のことを考えれば、野外で採取してきた産卵木や朽ち木を使用する ときは殺菌・殺虫が必要となる。方法としては、電子レンジを使う。蒸す、水につける、 といったことが挙げられるが、これらの方法とだと木が持っている栄養が抜けてしまった り、有益なバクテリアを必要以上に殺してしまうことになる。これらより有効な方法として 使い捨てカイロを使用する方法がある。まず殺菌を行う木をビニール袋の中に使い捨 てカイロとともに入れ、袋内の空気をできるだけ抜いて口をしっかり閉じる。次にカイロ を発熱させれば袋の中の酸素は消費され、木についている害虫などは酸欠により死亡 する。カイロの発熱が止れば酸素がなくなったことになり、発熱が終わった後、少しして から袋を開ければよい。 ただし、一番よいのはこれらの処理をしなくて済む木材を選別して使用することである。 温度と湿度について あたりまえであるが、幼虫にとっての理想的温度は「高すぎず、低すぎず」である。我が 国には四季があり、大クワガタも四季の中に生きていることを考えると1年中一定の温度 に保つことはかえって逆効果である。したがって冬にはある程度の低温が必要であり、 うかつに温度を与えてやると変態が早まり、個体が大きくならないので注意する。だが、 基本としては夏にはなるべく涼しいところ、冬にはなるべく暖かいところで飼育すること であり、過剰に温度を与えたり、奪ったりすることが悪いのである。もちろん、エアコンな どで温度調節をする必要はない。 ビンに入れて飼育しているときには湿度は一定に保たれているが、それでも水分は逃 げるもので、たまには様子を見て表面が乾燥しているときは少し水分を加えてやる。 乾燥したフレークは幼虫が食べなくなるので注意が必要。 |