中国文化と日本文化
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中日文化交流史に新視点
(『
出版ダイジェスト』2002年

泉 博幸(農文協 編集部)が語る
『奈良・平安期の日中文化交流』

 農文協は1986年以来、農業技術と学術文化の2つの分野で中国との交流活動を展開している。浙江大学日本文化研究所はそうした学術文化交流におけ る拠点の1つである。

 1997年と98年、まだ同所が前身の杭州大学日本文化研究所であった頃、「東洋的環境思想の現代的意義」(同名で農文協刊)のテーマで国際シンポジウムが開かれた。筆者が本書の編者である王勇所長にお目にかかったのはそのときであった。

 王勇所長は「南王北馬」と併称される中国の代表的な日本研究者の1人。機知に富む流暢な日本語と卓抜な学識、細やかな心遣い、人を惹きつける温顔にすっかり魅了されてしまった。

 その後、同所の創立10周年を記念して1999年に開催された国際シンポジウム「清朝における中日文化交流」(『江戸・明治期の日中文化交流』として農文協刊)でも旧交を温めることができた。

 この間、先生は日本の大学や研究機関に客員教授として招聘され、念願の書き下ろし作品『中国史のなかの日本像』(農文協刊)の編集も担当させていただくことができた。

 このとき先生は多忙を極めており、とうとう最後の段階では拙宅までお出でいただき、徹夜で校了していただいたことまであった。

 今回上梓された『奈良・平安期の日中文化交流』は、先生が主宰された「東アジアのブックロード」と「ブックロード中日書籍交流のメカニズム」の2つの研究プロジェクトの成果をまとめたもの。

 ブックロードとは、先生の創見にかかるもので、漢字文化圏における漢籍を媒介にした文明の伝播・変容・成熟とその還流を内容とし、物質文明の交流を象徴するシルクロードに対置される精神文明の伝播・変容・交流を象徴する概念である。

 本書には斯界を代表する大家から新進・気鋭にいたるまで、日本側12名、中国側5名の多彩な研究者が論考を寄せている。テーマも奈良・平安期における遣隋・遣唐使にはじまり、江戸期の文人や近代の宮沢賢治いたるまで、じつにバラエティーに富んでいる。

 先生は、この種の出版が困難なことに配慮され、読みやすい丁寧な概説を各部の冒頭に書いてくださったり、追い込みが猛暑の季節に当たるので、わざわざ疲れ目によいという菊花茶や中国の緑茶を送ってくださるなどのご配慮までいただいた。

 多忙で遅れがちな先生の中国語による論文の翻訳を買って出た筆者の不遜な申し出も快くお聞き入れくださり、翻訳までさせていただくことができた。まことに編集者冥利に尽きる思い出の作品となった。

 

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