謎宮会 2000/ 5

非古本系乱読派日記その一（試験的公開）

葉山　響

　さまざまな事情があって読書日記を閉鎖、同時に井戸端ミステリ会議からも完全に手を引きましたが、それでも何とかこういったものを続ける道は無いものかと考えて、今回このような形態の日記を試験的に公開してみることにしました。みなが書くにっきというものを、われもしてみんとてするなり。はい。

４月５日（水）

　眠い。生活習慣を根本的に改めなければならないと痛感する。
　ブックオフでは小池真理子『美神』（講談社）、安部龍太郎『神々に告ぐ（上）』（角川書店）、斎藤栄『乱歩幻想譜』（光風社書店）を各100円で買う。小池真理子は先日読んだ新刊『ノスタルジア』（双葉社、秀作です）効果。遂に買ってしまった斎藤栄は、１００円でなければ絶対に手を出さなかっただろうなあ。安部は上巻しかなかったが、面白かったら下巻を捜そう。戦国時代前夜の朝廷の左大臣を主人公にした小説で、矢張りこの人の作品設定は群を抜いて面白い。
　驚天動地のトリック（？）が冴える谷山浩子『ユキのバースデイシアター』（サンリオ）読了。ｋａｓｈｉｂａさんから戴いた本。実はこの本、以前にも一度読んだことがあるのだけれど、印象的には矢張り怖い。谷山ファンタジーは何故か僕にとっては怖い本なのです。

４月６日（木）

　夕刻、取り敢えず池袋サンシャインの古本市（二日目）へ落穂拾いに行ってみる。めぼしいものは何も無かったが、一冊だけ個人的に嬉しいものあり。
　藤原審爾『ろくでなしはろくでなし』（角川文庫）
　藤原ハードボイルドの代表作のひとつということで探していた本。あとは持ってなかったエドワード・Ｄ・ホック『ホックと13人の仲間たち』（ハヤカワポケミス）を安かったので拾ってみる。その後新刊書店に行って山田風太郎・高木彬光共著『悪霊の群』（出版芸術社）を購入。更にブックオフでジョゼフ・ウォンボー『ハリー・ブライトの秘密』（早川書房）、ディレク・ヴァン・アーマン『必殺の時（上）』（ＴＢＳブリタニカ）を各100円で買う。たしかこれは下巻だけ買って実家に置いてある筈。読んだ人はみんな褒めているのに、読んだ人の絶対数が少ないために話題にならなかった本……らしい。ちなみに宮部みゆき絶賛。
　大谷羊太郎『虚妄の残影』（徳間文庫）読了。読みやすい佳作だが、どうして密室を作り上げなければならなかったのか、という点に対する考察がどうも作者の頭から抜け落ちているような気がして、積極的にはお薦めできない。しかし戦争を絡めたプロットは健闘していると言えるのではないか。

４月７日（金）

　今日のお買い物は倉阪鬼一郎『ブラッド』（集英社）。わざわざ三省堂本店に行って買ったのは勿論サイン会目当てだが、果して金曜六時に会場に行けるのか、ということは取り敢えず考えないようにする。それにしても驚いたのが山下実『桜木物語　大江戸写楽失踪事件』が出ていたこと。出版元は三一書房。三一って新刊を出せる状態にあったのか!?
　山田風太郎・高木彬光『悪霊の群』、島田一男『夜の指揮者』（光文社文庫）読了。読後、即座に島田一男『悪魔の系図』に着手する（電車移動用）。
　『悪霊の群』は「つまらない」と言われ続けていた小説なので、そうかそんなにつまらないのかとわくわくして読み進めたら、予想外にも楽しめてしまったのでちょっと拍子抜けという感じ（笑）。いや、勿論読めて嬉しかった、荊木歓喜がこんなにたくさん出てくる話だとも思っていなかったし。大通俗スリラーに御興味がおありなら読むべきでしょう。
　北川歩美も買わなきゃなぁ。鯨統一郎はスルー。鯨よりも先月の楠木誠一郎がなんだか気になる今日この頃。『満州探偵』という響きは実に心惹かれるものがある。

４月８日（土）

　本日はＳＲの会繋がりでＳ氏邸訪問……の筈だったが、起きたら十一時。一時に集合場所に辿り着ける訳がない。矢張り前日、（飲めないのに）無理矢理お酒を嗜んだのがいけなかったらしい。見送って、以前から誘われていた千代田ミステリークラブの例会に向かう。お久しぶりです綱島さん、武田さん。二次会お茶の水カプリチョーザから参加、久しぶりにパスタなど戴きながらお話をする。ネットとは全く縁の無い人ばかりの集まりだと思っていたのに、初対面のＴさんから「謎宮会の葉山さんなんですか」と言われ意表を突かれる場面あり。お話はクロフツ、高木彬光、森博嗣、佐野洋、戦前のメロドラマ小説、映像化ミステリ、アイリッシュなどなど。綱島さんから早瀬詠一郎『萩大老』（新潮社）が面白いと聞く。いかん、あれはノーマークだった！　帰りはＫ野＠『夢の断片、悪夢の破片』担当さんと一緒に倉阪作品のお話など。楽しゅうございました。
　ついでなので乗換駅にあるブックオフに寄り道し、ジャン＝パトリック・マンシェット『殺しの挽歌』（学研）、ガイ・バート『体験のあと』（集英社）、高橋義夫『闇の葬列　広沢参議暗殺犯人捜査始末』（講談社文庫）を各100円で購入。ガイ・バートは読んではいたが持っていなかったので嬉しい。あ、外出先の丸善で殊能将之『美濃牛』（講談社ノベルス）と古処誠二『ＵＮＫＮＯＷＮ』（講談社ノベルス）も買いました。篠田作品は実家の母が「先に読みたい」と言うので、母が読み終わったら他の荷物と一緒にこちらへ送ってもらうことにする。
　これで今日は終わりかと思ったが、ヘレン・ケラ一さんからお電話をもらい二時間ほど深夜の歓談。ヘレンさん以外からは全く聞けないような話を楽しむ。井上靖とか獅子文六とか久世光彦のドラマとかフラン・オブライエンとか。
　読書のほうでは角田喜久雄『姫夜叉行状記』（春陽文庫）を読了。数時間楽しめたが、角田時代伝奇長編ではそれほど出来の良い作品ではなかった。読むなら『酔いどれ牡丹』や『花太郎呪文』をお薦めします。『影丸極道帖（上）（下）』も押さえておきたい大長編。長いのが面倒ならば入門編として『雪太郎乳房』とか『神変八咫烏』といった短め長編でも可。代表作との誉れ高い『風雲将棋谷』は後回しにしたほうが良いのでは？あれは最初期の作品だけに、プロットの広げかたにまだ未熟なものを感じてしまったので。

４月９日（日）

　矢張り十一時に起床。まあ、昨日寝るのが遅かったので。
　会社から持ってきた仕事を淡々とこなす。その傍らでワープロにも向かい次回の謎宮会原稿の序盤を書いてみる。仕事と趣味の区別がついていない。というか殆どサラリーマンになった実感が無いわたくし（←わたくしの年齢を五、六十歳代と勘違いされている方もいらっしゃるようですが、わたくし二十代で「つい最近就職」組です）。
　赤江瀑『星踊る綺羅の鳴く川』（講談社）読了。芝居国での魔物の宴。其処に現れる劇場国からの闖入者。両者を結ぶのは巨大な鯉と芝居への執念。泉鏡花を意識した、新たなる赤江の代表作と言える。絢爛たる世界は赤江作品の中でもベスト級。
　数ヶ月間引っ張っている黒木曜之助原稿、早く完成させなければならないとちょっと焦り気味。もう謎宮会は更新されてしまったので、焦る必要は全く無いのだが、心情的に。
　みすべすが二十万アクセスの快挙。ともさん、おめでとうございます。

４月10日（月）

　母から電話。話のついでに、平岩弓枝の御宿かわせみシリーズ最新刊『横浜慕情』（文藝春秋）が刊行されたことを伝える。ちなみに母は今頃修道士カドフェルにはまっているらしい。『聖女の遺骨求む』を読んだ時は「つまらない」とか言ってたのにね。「買ってあるのは十一巻までだけど、まだ続きが十冊くらい出てるよ」と言ったら早速買い求めそうな雰囲気。これでカドフェルも完集なるか（他力本願）。
　メフィスト賞の古処誠二『ＵＮＫＮＯＷＮ』を読了。閉ざされた場所・自衛隊で起きた盗聴騒ぎ。この現代的な“雪の山荘”的シチュエーションが素晴らしい。これでミステリとしても印象に残る仕掛けがあったならばもっと良かったのだが、正直言ってそういった部分は殆ど印象に残らないのが残念。但し、かなりの常識人が書いた作品という安定感が心地好かったので、次回作が出たらそれも読むでしょう。

４月11日（火）

　仕事で相模大野まで行く。そのついでに町田で降りて高原書店とブックオフへ。疲れ気味ではあったのだが、こんな遠方は滅多に来ないので頑張ってみたわたくし。しかし収穫は殆ど無し。誰か根こそぎ引き抜いて行ったな。それでも取り敢えず買ったのはこんなところ。中川裕朗『ロートレックの処刑台』（文藝春秋）、三上宥紀夫『ハミングバードはもう鳴かない』（カドカワノベルズ）、早見裕司『夏街道［サマーロード］』（徳間アニメージュ文庫）、藤桂子『逆回りの時計』（講談社）、阿部智『消された航跡』（角川書店）、同じく阿部智『復讐の海線』（角川書店）。横溝賞受賞作『消された航跡』は昔読んでつまらなくて処分した本なのだが、もう一度確認してみたくなったので100円で購入。中川裕朗は一応捜していた本。三一書房から出ていた『キャンパス殺人事件』があまりにも酷かったのだが、『猟人の眠り』の作者ということで取り敢えず押さえる。『逆回りの時計』は田中さん＠日本暗号協会の探求本。漸く見つけました田中さん。
　佐竹一彦原作のドラマ『ショカツ』（フジ系）開始。松岡昌宏・田中美佐子・橋爪功というキャストは個人的には見て然るべきものだが、原作を読んでからにしたいので取り敢えず見送る。佐竹一彦なら読んでおいて損はないだろう。あ、でもビデオ録るの忘れた……

４月12日（水）

　研修会一日目。眠い。講演を聞きながら、そういえば読みかけていた関川夏央『水の中の八月』（講談社文庫）はいま何処にあるんだろう、などと脈絡の無いことを考える。眠い。終了後は書店に向かうが、取りたてて欲しいものは別に無し。まあ、あってもお金が無いから給料日まで買えないんだけど。眠い。
　ついでだからシリル・ヘアーの『自殺じゃない！』（国書刊行会／世界探偵小説全集32）の感想を書いておこう。ヘアーは名手だ、という思いがこちらにあるので――どうしてこんな書き方しか出来なかったのだろう、と不思議に感じられてしまう箇所が二つある。それが転じて「もしかするとこういう書き方しか出来なかったのには何か理由があるのではないか」という推測に変わる。そうなると結末が大体予想できてしまい、真相を読んだらまさにその通りだった。プロットを成立させるために弱点も残しておくしかなかったミステリ。意外性に賭ける作者の気持ちは判るし、この完成度なら褒める人も当然いるだろうが、僕は『英国風の殺人』のほうが好きだった。但し、動機の設定に漂うあまりにも強い皮肉は流石ヘアーと言えるもので、見事。

４月13日（木）

　研修会二日目。眠い。別室に用意されてあったチキンソテーのトマトソースチーズ掛けを食べた後、バス移動でとあるセンターへ。おお、“物流”を目の当たりにした思い。
　またしても本は買わず読めず。東野圭吾とかＣ・デイリー・キングとか辻真先の『あじあ号』とか『ハンニバル』とかを確認しても、買えなくては仕方が無い。さみしいようひもじいよう（ちょっと違うか）。
　帰ってきてワープロに向かうが、真面目な原稿を書けなくなっている自分に直面する。どうやらここに来て最悪のコンディションになってしまったらしい。深刻。足掻いても駄目なことは自分のことだけによく判っているから、今日は早く寝よ寝よ。
　島田一男『悪魔の系図』（光文社文庫）読了。電車移動中にしか読んでいない所為で矢鱈と時間がかかってしまった。

４月14日（金）

　仕事で鎌倉へ。詳細は書かないが、しかしこれって仕事か趣味か判らない。いややっぱりお仕事です、ああ仕事って辛いなあ（詳細を知られたら叱られそう）。しかし痛かったのは数日来楽しみにしていた倉阪鬼一郎サイン会に間に合わなかったこと。あとでＴ中さんから当日の詳細を聞くと知人や業界人が多数来場していたらしい。フクさんと石井さんもいらしておられたそうな。ああお会いしたかったです。
　原稿書きコンディション不調継続……その中で読書は何故か戸川昌子『美しき獲物たち』（徳間文庫）再読。何回読んでも「プラタナスの葉っぱ」なお話ですね。心あるミステリファンは絶対に此処から戸川に入ってはなりません。これは後から読むべき本です。
　鮎川哲也“鬼貫警部全事件”の三冊、『碑文谷事件』『不完全犯罪』『夜の訪問者』（出版芸術社）を貰い受ける機会に恵まれる。幸せ。最初から全部読み直そうかな。
　え？　「ＱＵＩＺ」って今日からだったの？　見損ねた……

４月15日（土）

　終日布団の中で過ごしてしまう。雨だし。
　芸術選奨受賞作、日野啓三『夢の島』（講談社文芸文庫）読了。東京都のゴミ集積場が無機質のエロスに溢れる夢の島へと逆転する、蟲惑的な幻想世界。文芸評論家の福田和也にボロボロに貶されていたが、そこまで言うほどの駄作とは思えない。『抱擁』（集英社文庫）以来久しぶりに読んだ日野啓三は矢張り楽しめた。導入部が晴海のコミケ会場だったのにはやや驚かされたが。
　次いで多島斗志之『マリアごろし異人館の字謎』（講談社）読了。第一作品集にして多島版時代ミステリ集成（但し「マリア観音」のみ現代もの）だが、残念ながらやや器用貧乏の感が無くもない。中では「マリア観音」が余韻を残す味わい深い短篇に仕上がっており、次いで清水次郎長の妻・二代目お蝶の死の謎を取り上げた「お蝶ごろし」が達者な筆致で書かれていて、時代小説もそつ無くこなす作風の幅の広さに感心させられた。但し、「井筒屋の字謎」などは非常に面白い着想で書かれた作品なので、もう少しプロットを練り込んでから書いて欲しかった、と惜しまれる。

４月16日（日）

　さすがに二日続けて寝て暮らす気にはなれず、軽くお昼を食べた後に雑貨の買い物がてら古本屋巡り。買った本は以下の通り。高木功『百年、風を待つ』（東京創元社）、矢作俊彦『ヨーコに好きだと言ってくれ』（光文社）、沙藤一樹『Ｄ‐ブリッジ・テープ』（角川書店）、山際素男『カーリー女神の戦士』（三一書房）、ヘンリイ・セシル『法廷外裁判』（ハヤカワ・ミステリ文庫）、サラ・コードウェル『かくてアドニスは殺された』（ハヤカワポケミス）、ピーター・ディキンスン『盃のなかのトカゲ』（ハヤカワポケミス）、トーマ･ナルスジャック『贋作展覧会』（ハヤカワポケミス）、ユベール・モンテイエ『殺しは時間をかけて』（ハヤカワポケミス）、ジョイス・ポーター『ドーヴァー１』『ドーヴァー２』（ハヤカワポケミス）、ジェフリー・ディーヴァー『静寂の叫び』（早川書房）以上全て100円。あとは黒川創『若冲の目』（講談社）を700円で。
　この中で一番嬉しいのは矢張りディキンスンの『盃のなかのトカゲ』。『贋作展覧会』も100円で手に入ったのは嬉しい。既に所有しているが『法廷外裁判』も思わず買ってしまう（これはしょーじくんに嫁いでゆきました←後日譚）。黒川創の作品は前々から気になっていたものだが、定価2800円のためブックオフでも1400円の値が付いていたもの。持ち合わせが少なくとも、四分の一の価格で見つけてしまっては買わない訳にいかない。沙藤一樹の作品（日本ホラー小説大賞短篇賞受賞作品）は単行本刊行時に読了済だが、もう一度手に入れたのは日野啓三と比較してみたくなったから。
　というわけで、沙藤『Ｄ‐ブリッジ・テープ』再読。東京都ゴミ処理場で起きたひとつの悪夢的な奇蹟――日野啓三『夢の島』と似た点は特に無いけれど、ゴミ処理場をどのように扱っているか、という点を比較しながら楽しんで読んだ（矢張り読書の楽しさはこういうチェーン・リーディングにもあると思う）。なお、ゴミ処理場を舞台に据える必然性という点では沙藤のほうが日野を超えているように感じられる。一行文の羅列が印象的な、突然変異的秀作。沙藤の新作（角川ホラー文庫書き下ろし）もいずれ読まなくてはなるまいな。
　続いて三好徹『乾いた季節』（河出書房新社）読了。何故か現在に至るも文庫化されていないようだが、誘拐事件を扱った、三好の初期の代表作に数えられる作品。登場人物の造形に関する注文もあるが（つまり、新聞記者の立場に対して全く批判的な視線が向けられていない。これはかつて新聞記者だった経歴を持つ三好ならではの欠点とも言えそうだが、根本的に彼の作品には主人公を突き放す視線が薄い――という点が、三好と結城昌治との文学的評価を分けた最大の要因なのではないかと思う）、しかしこのストーリーの疾走感と危なげの無い文章力は評価されて然るべきものではないか。たとえミステリ的にはプロットがやや散漫であったとしても、その点は認めるべきでしょう。

４月17日（月）

　Ｃ・デイリー・キング『タラント氏の事件簿』（新樹社）を購入。古本屋でも赤江瀑『アポロン達の午餐』（文藝春秋）を500円以下で買うことが出来て、憂鬱だった気分が少しすっきりとする。赤江作品を必死になって集めるつもりは無いけれど、見つけると大抵買っています。あとは『原生花の森の司』（文藝春秋、未文庫化）と『海贄考』（徳間文庫）さえ手に入れば、初期短篇集二十冊は全て手に入ったことになるのだが、何処かで安く売ってませんか？
　政宗九さん、松本楽志さんのお二人が日記に取り上げておられた福田和也の採点形式ブックガイド『作家の値うち』（飛鳥新社）読了。此処に書かれている作品評価を僕は全く信用するものではないが（日野啓三や船戸与一の評価が異様に低かったり、逆に九十年代以降の石原慎太郎の著作を「世界文学水準」とするのは僕の想像を絶している）、但し試みとしては非常に面白く、「八十点以上の作品は読んでおかなければ」と思わせる力は持っている。加えて、純粋なミステリ読みではない批評家がミステリを批評する、という点も実に新鮮だった。――しかし一冊の読み物としては正直言って点数だけざっと参照すれば良いだけの本であり、文章まで丁寧に読み込もうという気にはなれず、また点数だけを見るという読書法に切り替えても途中で飽きてしまった。辛口コメントに芸があれば面白い本になっただろうと思うと残念。才気を前面に押し出しすぎた、インパクトだけで勝負した本という印象。まあそういう目的の本なのではあるが。

４月18日（火）

　長部日出雄『ハードボイルド志願』（河出文庫）、ジョイス・ポーター『案外まともな犯罪』『殺人つきパック旅行』（ともにハヤカワポケミス）をそれぞれ100円で買う。『ハードボイルド志願』は以前手に入れているが、激烈に汚い本しか持っていなかったので改めて購入。これの元版であるトクマノベルズの『夜は口笛を吹くな』のほうは見たことさえありません。
　遂に決心して幻想文学掲示板オフ「恐怖の会」参加を決める。金曜日、倉阪サイン会に間に合っていたら参加は控えていただろうが、さて、どうなるでしょうか。どんな雰囲気のオフ会になるのか全く見当がつきません。とはいえ幹事のフクさんから送られてきた当日の詳細メールを見ると、何故か矢鱈に顔見知りが多い。というか萩原くん怪奇小説好きだっけ？
　原稿を書きながら同時に読み進めていた森真沙子『総統の招待者』（祥伝社ノン・ノベル）の再読を終える。続いては、その原稿でもうひとつのネタとする本を読まなければならない。

４月19日（水）

　ちょっとした事情があって岩崎正吾『風よ、緑よ、故郷よ』（東京創元社）を再読。ミステリとしての出来を云々するよりもまず、暖かな郷土色がとても快く、秀作と言っても良いだろう。七十を過ぎた老人たちが十五年前の出来事を――当日出された茶菓子まで――細かく覚えているという展開上の不自然さも無い訳ではないが、十二年前にハードカバーで刊行されたままになっているのはやや気の毒。文庫化の価値はあるだろうし、『探偵の夏あるいは悪魔の子守歌』と並ぶ岩崎正吾の代表作なので。
　夕食。わーいお寿司。
　家に帰ると郵便物が届いている。おお長野のＭ島さんからではないか。封を開けたら山田智彦の『蜘蛛の館』（角川文庫）が。わぁ、探していると言っていたのを覚えていてくれたのですね。ありがとうございます。Ｍ島さんの探求本、安く探すのは難しそうですけど頑張ってみます。
　そうですか、森雅裕『化粧槍とんぼ切り』は今年のベスト候補ですか。読まなきゃなぁ。

４月20日（木）

　ドラマ「アナザヘヴン」をさっと見てみるが、正直言って「なんだこれ？」状態。映像・音楽に凝りすぎるあまりストーリーの緊迫感がまるで失われてしまっているし、（映画のほうのキャストも含めて）役者の選びかたにも疑問を感じる。矢鱈と妖しい篠井英介だけが収穫か。原作は97年度（単行本刊行年）のエンタテインメントを代表する傑作だったが、あれが傑作に仕上がったのは矢張り飯田譲治ではなく、共作者の梓河人に才能があったからなのだろうと思う。
　途中で見るのを止めて「どっちの料理ショー」へ。ワンタンメン美味しそう。
　ともさかりえのドラマもちょっとだけ見てみる。落ち着いた作りに好感を持つ。おお真行寺君江も頑張っているではないか。カゴメリゾットのＣＭでも独特の存在感を醸し出している彼女の健闘に期待。
　あとは特に記すべきこと無し。よって寝ます。

４月21日（金）

　幻想文学掲示板オフ「恐怖の会」参加。しかし恐怖関係の話など全然していない自分に気づく。良いのかこれで。メンバーは多様。オフ会とＳＲの会と東京分科会に一気に出ているような不思議な感触あり。一次会ラストは千街さんと石井春生さんとおーかわさんと僕という取り合わせでお話。森真沙子とか。その前は戸川昌子のお話だったので一次会は「まさこ」の話で終始という印象。『幻影家族』の話をする日が来るとは思いませんでした（読まなくて良い本のひとつだと思う）。あ、石井さん、忘れておりましたが『強制結婚』というのがまたこれが（笑）。鷹取さんと半年ぶりの対面を果たすことができて嬉しかったし、岩井志麻子さんにちょっとだけ御挨拶できたのも快挙。ところで『ぼっけえ、きょうてえ』は何故直木賞候補にならなかったのだろう？　候補になっていたら『赤目四十八瀧心中未遂』に続く文学系作品の受賞ということになっただろうと思うのだが。
　それにしても体力の無くなった自分を痛感。会社帰りなこともあって二次会で早くも疲れが全身に回り、ちょっと虚ろモードに入り込んでしまう。おーかわさんすみませんぼけーっとしてしまいまして。以前から何度か遠くからお姿だけは拝見していたＧＡＫＵさんと初めてお話しさせて戴く。これからもいろいろ教えてください。という訳で若者三人衆の隣で話を聞いて楽しむ。草野唯雄『甦った脳髄』面白そう（←まだ読んでない）。他にもこの場でしか聞かないような作家の名前を大量に聞く。というかおーかわさんはなぜこんなにＢ級作家の著作情報を把握しているのだろう。凄すぎる。しょーじくん、頑張って集めてくださいね。

４月22日（土）

　間羊太郎『ミステリ百科事典』（現代教養文庫）読了。矢張りこの博覧強記ぶりには驚かされるものがある。中学生の頃、友人に貸してもらった時以来本当に久しぶりに手に取ったが、流石に懐かしかったし、昔読んだ時よりも遥かに面白かった。あの頃はミステリのブックガイドにミステリ以外の本が挙げられていると不純なような気がしたが（笑）、いま読むと其処がまた楽しかったりする。

４月23日（日）

　梶龍雄『殺人リハーサル』（ケイブンシャ文庫）読了。好感は持てるが不満を感じる出来映え。詳しい感想は、いずれ公開する機会があるだろうからカット。
　本の整理は五分で挫折。もともと収納スペースが絶対的に不足しているから部屋が乱雑なのであって、決して僕が怠惰だからではないのだ――と心の中で言い訳してみる。本棚買わなきゃなぁ。
　ブックオフに行って少しだけお買い物。森真沙子『青い灯の館』（角川書店／マスカレードロマンミステリー２）、都筑道夫『悪意銀行』（角川文庫）、有明夏夫『大浪花諸人往来』（角川文庫）、戸川昌子『蒼い蛇（下）』（太田出版）、加納一朗『パリ殺人事件』（トクマノベルズ）、以上全て100円也。『青い灯の館』は文庫で（たぶん高校生あたりの頃に）読了済だが、懐かしのマスカレードロマンミステリー版を持っていなかったので思わず購入。『悪意銀行』は買っておいた筈なのだが、以前家を捜しても全く見当たらなかったため重複覚悟で入手。『パリ殺人事件』は徳間文庫から『蜘蛛たちの夜』と改題され刊行されているが、『蜘蛛たち……』の美本にいつまで経っても巡り合わないため、業を煮やしてノベルズ版を購入してみた。それにしても『パリ殺人事件』というタイトルを加納に強要した編集者のセンスは凄すぎる。

４月24日（月）

　電話で母と会話。結局カドフェルの残りを全部注文したそうだ。わーい。それが終わったらマイクル・Ｚ・リューインも読んでみてくださいね、おかーさん。という訳で久しぶりに母とまとめて「最近なに読んだ？」話をする。母は決してマニアな人ではないので、話していると新鮮。ドロシー・ギルマン（「おばちゃまスパイ」シリーズの作者）のノンシリーズ長編翻訳情報を伝え、篠田真由美『仮面の島』（講談社ノベルス）の序盤を読んでの母の感想を聞くなどしたあと、池波正太郎と隆慶一郎の話題で締めて電話を切る。『アルスラーン戦記』の新刊は挫折したとか。そりゃそうでしょう、僕だってこれまでのストーリーを全部忘れているので読めなかったのだから。「まあ、いつまでも『創竜伝』の続きを書かれるよりは良いんだけどね」と、これは僕ではなく母のコメント。
　高野史緒『ウィーン薔薇の騎士物語１　仮面の暗殺者』（中公Ｃ☆ノベルスファンタジア）読了。誤解が誤解を生んで大ドタバタのクライマックスへと雪崩込んでゆく、愉快極まりないサスペンス・コメディ。『カント・アンジェリコ』（講談社）などとは意識的に文体を変えているのに驚かされる、結構器用な人なんだな高野史緒って（はーとまーくまで飛び交うし）。第二巻への期待が高まる。
　ついでといっては失礼だが、同傾向の作品ということもあって積読だった木村玉絵『霊感の泉　新ホフマン物語』（講談社）も片づける。プレイボーイの詩人と、真実の愛を成就させなければ魔女の呪いで死んでしまう美青年（彼が告白した相手がプレイボーイの詩人だったというドタバタコメディ風の味付け）の二人が次々と厄介事に巻き込まれる連作西洋幻想譚。高野に比べるとおとなしいが、こちらも胃にもたれずさらりと読み終えることが出来ました。才能あり。次作が出たらたぶん読むだろうな。

４月25日（火）

　ＨＭＭ６月号の「隔離戦線」では書評家・茶木則雄が福田和也の『作家の値うち』を取り上げ批判を加えているが、その内容にはやや異議を感じてしまう。茶木氏は『作家の値うち』がワイン批評本『ボルドー』を意識した構成になっているのに擬え、ハードボイルドや本格ミステリ、純文学などの文学のジャンルをアルコールに喩えつつ、「いくら酒好きでも、同じ種類ならともかく、ビールもワインも日本酒もウィスキーもすべて含めて、銘柄ごとに厳密な採点などできるはずがない」としているが、ジャンルごとの厳密な評価を福田に求めても意味が無いのではないか。「評価が偏るのは当然である」という指摘は正しいだろうが、この本に関してはむしろ、ジャンルに精通していない評者の意見が読める（ジャンルという「強み」をある程度剥ぎ取った上での評価を読むことが出来る）という点こそが新鮮で面白いと僕は思ったのだが、どうなのだろう。あまりにも評価が偏っているならともかく、福田は偏狭な文学主義者ではないし、また救いようもないほどミステリの読み方を知らないとも思えない。福田の採点に納得できるかどうかは別として、その点は評価しても良いのではないかと思うのだが、どうだろうか？
　この本の問題は（18日に書いたことは除く）まず『作家の値うち』というタイトルであって、タイトル通りに作家を評価する本であるのなら、『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』を採点せずに田中芳樹の作家的価値を云々するのは面妖しいと思うし、最高傑作『風紋』（およびこれと同傾向の作品、例えば『殺意』）を省いて評価された乃南アサも気の毒。作家論を目的とした本ではないことは判っているが、そういう意味で『作家の値うち』というのはやや誤解を招き易いタイトルだと感じる。
　そしてもう一つは船戸与一の箇所に顕著だが、結局この本は点数とコメントを並べたもので「論」は展開されていないため、船戸が何故ここまで救い難いマイナス評価を受けたのか、コメントを読んでもいまひとつ腑に落ちない（まあ、なんとなく想像はできるが）。やや消化不良気味な印象が残り、矢張り批判は言葉を尽くして行って欲しい、と思ってしまった。
　それはさておき、給料日なので気持ち良くブックオフでお買い物。中薗英助『密葬者たち』（毎日新聞社）、北野勇作『クラゲの海に浮かぶ舟』（角川書店）、松木麗『紫陽花の花のごとくに』（読売新聞社）、成井豊『銀河旋律　広くてすてきな宇宙じゃないか』（白水社）、深谷忠記『男＋女＝殺人』（実業之日本社）ここまで100円。以下は半額。谺健二『殉霊』（講談社）、松村光生『悪い夏　アーマゲドン2000』『目醒めの時　アーマゲドン2000』（共にハヤカワ文庫ハイ！ブックス）、フリーマン・Ｗ・クロフツ『ホッグズ・バッグの怪事件』（創元推理文庫）。松村光生はそろそろ買っておかなければと思い購入したが、二番目の長編『怒りの日』が無かったのでこれから捜さなければならない。心ならずもまた探求本を増やしてしまった気分。松木麗は一応気になる作家なので押さえておく。もともとこの本、横溝賞候補になった作品でもあるし。深谷忠記は、キャリアが長い割に短篇集の著作はこの本も含めて二冊しか無かった筈（もう一冊は徳間文庫『虹色の罠』）。たとえ深谷と言えども作品集の文庫化は怪しいのでこれも押さえておいた。『銀河旋律……』は人気劇団キャラメルボックスの成井豊が書いた戯曲の単行本で、なんとなく琴線に触れるものがあったので購入してみたところ、家に帰ってよく見てみたらサイン本だったので驚く。

４月26日（水）

　ＪＲ池袋駅のワゴンから二冊拾う。フリーマン・Ｗ・クロフツ『スターヴェルの悲劇』（創元推理文庫）、ルース・レンデル『偽りと死のバラッド』（角川文庫）。じわじわとクロフツを買い求めるわたくし。全部揃えようという野心（？）は持っていないけれど、少なくとも代表作は読んでおきたいと思うので。ウェクスフォード警部シリーズはどうしようかなあ、一応買っておいたほうが良いのかしら。新作も出たことだし。『指に傷のある女』（角川文庫）傑作だったし。Ｐ・Ｄ・ジェイムズばかり読んでいてレンデルは代表作しか押さえていないという状況は矢張りまずかったか、と今更ながら思い始める。
　更に池袋の新刊書店で散財。北川歩美『影の肖像』（祥伝社）、ミステリー文学資料館編『「探偵趣味」傑作選』（光文社文庫）、米山圭伍『退屈姫君伝』（新潮社）、宮部みゆき『ぼんくら』（講談社）。黄金週間には時代小説を読んで過ごそうかな。
　陳舜臣『月をのせた海』（徳間文庫）読了。陳舜臣は気の強い女性をメイン・キャラに据えることが多いのだが、本書はとりわけそういったキャラクターの印象が強いミステリで、登場する二人の女性の肖像が圧巻、しかもミステリ的構成がそのキャラ造形と強く結びついている。小品だが案外強烈な長編でした。

４月27日（木）

　早速、昨日買った米村圭伍『退屈姫君伝』（新潮社）を読了。『風流冷飯伝』（新潮社）で小説新潮長編新人賞を受賞しデビューした新人作家の第二作で、今回初めて手に取った作家だが、まあなんともくすくすと笑いながら読める楽しい時代小説でした。陸奥磐内藩五十万石から突然、二万五千石という全く釣り合いの取れない小藩に嫁に出された姫君が、暇にまかせて嫁入り先の藩の謎を調べてみると、いつのまにか藩お取り潰しの陰謀と直面していた――という内容だが、そんな内容にも関わらず、緊張感の無いこと夥しい。なにせ主人公の姫の名前が「めだか」である。緊張感など薬にもしたくないという作者の姿勢が透けてみえるではないか。陰謀のスケールが非常に小さいのでやや拍子抜けするところもあるが、終盤、日影丈吉の某短篇を思わせるコンゲーム・トリックが登場するところなどわくわくさせるし、何よりこれだけ愉快なキャラクターが一堂に会すると矢張り問答無用で楽しい。講談社の時代小説大賞は今年で終了してしまったが、時代小説界もこういう新人の登板で元気になって欲しいなあ、と思う。

４月28日（金）

　森雅裕『化粧槍とんぼ切り』（集英社）読了。今までの森雅裕は会話、小道具、資料などの細部に非常に凝る作家だったと思うが、今回の作品は細部への拘りを見せつつも、しかしもっと大きなもの、時の流れという非常にスケールの大きなものを丸ごと掴み取ろうとして書いている印象を受けた（ここでは主要登場人物の生涯すら傍系の物語となる）。この姿勢は今までの森作品にはあまり見られなかったことではないか。それは昔からのファンから見ればアクが薄れたとも言えるのかも知れないが、しかし結果としてこの作品は悠然とした、スケールの大きい味わい深い作品に仕上がった。森雅裕は飽くまで自分の方法を貫きながら、自分の流儀で更に高いレベルの作家へと成長しつつあるのかも知れない。時代の変遷を描き切った内容の面白さもさることながら、そういった可能性を感じさせるこの作品、けだし傑作と言えるだろう。ウェットな描写をしない、乾いた筆致も実に効果的。そして静謐な余韻を残すラストシーンの素晴らしさ！　まさに第一級の傑作。

４月29日（土）

　創元推理倶楽部東京分科会例会日。一次会から参加するつもりだったが、気づいたら家で本を持ったまま寝ていたので二次会から参加。初めて石井さんとやよいさんのお越しを戴く。しかし二次会の天狗では大学生の歓迎会が行なわれていて五月蝿いこと限りなく、三十分で声が枯れて疲れてしまう。渋谷嫌いなんだよなーうざったくって。動きは取れないし良い本屋は少ないし料理は不味いしおまけに値段が高い（だって他の天狗で三千円以上払ったことなんてないですよわたくし）。スペイン坂を亀のごとく歩むハイヒール女なんて邪魔なもんだから蹴倒したくなるし。ああ、会場が飯田橋だった頃が懐かしい。まあ東京分科会の集まりはむやみに声の大きい人が多いので、残念ながら五月蝿いのはいつものこと。あれこれ話したいが声の細い僕は喋るだけで一苦労、もっと静かにお話ししたい……　
　円谷夏樹さんから『刑事コロンボ／二枚のドガの絵』（二見書房サラ・ブックス）を貸してもらう。故・瀬戸川猛資が別名義でノベライズを担当した作品だと最近知り、慌てて捜したが見つからないので先に誰かから貸してもらおうと思って円谷さんにお願いしたのだ。それにしてもコロンボのノベライズを担当した作家さんからコロンボの本を借りるというのはなかなかに不思議な感触。大切に読みます。
　松本健一『真贋　中居屋重兵衛のまぼろし』（幻冬舎アウトロー文庫）読了。幕末の豪商・中居屋重兵衛に関する資料は偽作であり、巷間伝えられる“歴史的実像”は虚像に過ぎない？　資料は本当に偽作か。ならば誰が何故そんな膨大な資料を作り上げたのか。評論家・松本健一が謎を追い求めた迫力あるノンフィクションで、ひとりの人間の、あまりにも人間的なエゴ（或いは心の暗部）を見事に切り出している。著者の、ある意味で容赦の無い追求の姿勢と、その謎の追求にまとわりつく一種の沈鬱さが本書を更に印象的なものにしていると言えるだろう。但し最後の段階において、やや自説に対する客観的視点が失われてしまっているような印象を受けるのが残念。

４月30日（日）

　初めての駅に降り立ち、初めての古本屋さんに向かう。特に収穫といったものは無かったが、初めての古本屋さんに行く時の気持ちは特別なものがある。伴野朗『三十三時間』（講談社文庫）を一応押さえておき、あとは何も無いと思われたその瞬間、今まで何故か一度も見たことが無かった本を発見。徳岡孝夫『横浜・山手の出来事』（文藝春秋）。状態は決して良くないが、今逃したら今度いつ見つけられるか判らないので購入してしまう。あ、「またそんなマイナーな本を」と思っている人がおられるかも知れませんが、これはマイナー作品ではありません。第44回日本推理作家協会賞（評論その他の部門）受賞作です。ミステリ的ノンフィクションが好きな僕にとっては大きな収穫。昨日読み終わった『真贋』が呼び水になってくれたのか。
　『刑事コロンボ／二枚のドガの絵』（二見書房サラ・ブックス）読了。別に大したトリックや犯罪計画が描かれている訳ではないのだが、面白いなあ。シンプルな構成と展開が却って絶妙の効果を挙げているように思われた。文庫化希望。
　テレビをつけたら思いがけず、先日買った成井豊の『広くてすてきな宇宙じゃないか』の舞台化（初演）を放送していた。一応途中から録画しておく。戯曲を読み終えたら見てみよう。それにしても若いなぁ上川隆也。

　つづく。

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謎宮会 webmaster:meikyu@rubycolor.org(高橋)

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