謎宮会 2000/ 5

亜 智一郎の恐慌 御先祖様他対応リスト

葉山 響

 僕は泡坂妻夫さんが嘘のように好きです。だからこそ、暇でもないのにこんなものを作ってしまいました。これは『亜智一郎の恐慌』に登場した人物の御先祖様(ほか関係人物を含む)対応リストです。但し、未だ全ての泡坂作品を調べたわけではないので、この登場人物関係リストは取り敢えず現時点では【未完】であることをお断りしておきます。また、第七話『大奥の曝頭』については現在のところ、御先祖様を一人も見つけることができておりません(但し、『大奥の曝頭』は単行本化のために編集部が泡坂さんに執筆を急がせた可能性が強いため、凝った趣向ができなかったのかもしれませんが)。御先祖様に心当たりのある方、また他の登場人物についても心当たりのある方は是非《謎宮会》までご一報ください。
 今回の企画は、ワセダミステリクラブの機関紙《フェニックス》の泡坂妻夫特集号がなければ考えもつかないものでした。ここで改めてワセダミステリクラブの労作に感謝を申し上げます。
 それでは、私と同じく泡坂さんを愛する方、及び物好きな方だけ楽しんでく ださい。
     

(2000.7.7一部訂正・補足 。旧版はこちらです。)

 

※表紙……泡坂妻夫作成(『家紋の話』参照)

○シリーズ・キャラクター

亜智一郎……雲見番番頭。
 →亜愛一郎……名探偵、雲を専門に撮るカメラマン。

緋熊重太郎……雲見番、元は江戸城大手門下座見役。大地震の事故で片腕を無くす。
 →緋熊五郎……事件に巻き込まれた運転手(『亜愛一郎の狼狽』/「DL2号機事件」)。
 →辺見重太郎……牛方町に住む、もと有線放送経営者。暗号研究家で奇術愛好家、他の芸能にも明るい(『天井のとらんぷ』/「カップと玉」、『花火と銃声』/「だるまさんがころした」)。
※ 『奇術探偵・曾我佳城全集』では辺見重次郎と改名された。

藻湖猛蔵……雲見番。手裏剣使いだったが、将軍家定に短筒を下げ渡される。
 →藻湖……警視庁の刑事、通称“拳銃の藻湖”。のち警視庁警視(『亜愛一郎の狼狽』/「掌上の黄金仮面」)。

古山奈津之助……雲見番。普賢菩薩の彫物がある。
 →古山奈津(新川冬子)……背中に普賢菩薩の彫物を持つ暴力団の女組長、通称“普賢の奈津”(『亜愛一郎の逃亡』/「赤島砂上」)。短編「石の棺」でも名前のみ(新川の名のほうで)登場した(『夢の密室』/「石の棺」)。

鈴木阿波守正團……老中、将軍側衆。
 →デビュー当時に筆名の由来を問われた泡坂が出した名前。「ファンクラブの質問には、家の近くは元、鈴木阿波守の下屋敷のあったところで、その前の坂を阿波坂といいます、姓はその阿波坂を取り名のほうは妻の姓……」(『ミステリーでも奇術でも』/「ペンネームの由来」)。

美也……緋熊重太郎の妻。戸村左馬之助元信の娘、元は大奥お祐筆(ゆうひつ)頭。
 →戸村美也……S79号にルビーを盗まれた美女(『妖盗S79号』/「ルビーは火」ほか)。

富本豊絹太夫(富本廓お絹)……京橋弓町の裏通り(柳町の裏通り)蛙小路に住む。雲見番に隠れ家を提供。元は富本廓で寄席に出ていた。
 →(『びいどろの筆』/「南蛮うどん」)に出てきたきぬはただの同名なだけか?

 

1 『雲見番拝命』

○登場人物

門脇杜若……歌舞伎役者。経師屋橋之助を演じた。
 →門脇杜若は言及多数(『鬼女の鱗』/「鬼女の鱗」ほか)。
 →門脇杜若(現代)……人気絶頂時に急死(『ヨギ ガンジーの妖術』/「釈尊と悪魔」)。
 →門脇杜衝(現代)……門脇流の家元、本名は健夫(『斜光』、『折鶴』/「駆落」)。
 →門脇杜衝(江戸)……大蛇丸を熱演(『自来也小町』/「自来也小町」)。
 →門脇勝右衛門(江戸)……座頭。自来也が大当たり(『自来也小町』/「自来也小町」)。
 →ほか門脇一門への言及は多い。

〈経師屋橋之助〉……神田伯馬の講釈にもなっており、橋之助の殺し場そのままの殺人が起こったこともある(『鬼女の鱗』/「経師屋橋之助」)。

青衣(葵)霧之丞……杜若の相手役。柳橋の芸者若鴫を演じた。
 →青江霧之丞……人気女形、〈自来也〉でしゃくじろのお綱を演じた(『自来也小町』/「自来也小町」)。
 →葵霧丸……葵劇団の女形(『ヨギ ガンジーの妖術』/「釈尊と悪魔」)。
 →青衣雪彦……俳優、元「実験舞台」所属(『夢の密室』/「蛇の棲処」)。
 →実験舞台……実在誠真主宰(『妖盗S79号』/「庚申丸異聞」)。

岩沢二亭……戯作者、〈吉一新過日経師〉作者。
 →岩沢二亭は宮前座に〈自来也〉を書いたこともある(『自来也小町』/「自来也小町」)。
 →岩沢一亭……首吊り桜を台本にしようとして失敗(『鬼女の鱗』/「江戸桜小紋」)。
 →岩沢二吉……葵劇団の役者(『ヨギ ガンジーの妖術』/「釈尊と悪魔」)。

宮前座……〈吉一新過日経師〉をかけた芝居小屋。
 →宮前市……九州の都市、『DL2号機事件』舞台。宮前空港がある(『亜愛一郎の狼狽』/「DL2号機事件」)。
 →宮前ビル……辺見重太郎が住むビル(上記、辺見重太郎の項参照)。

毛利大膳大夫慶親

渡辺覚右衛門……将軍拉致に失敗。

 

2 『補陀楽往生』

○登場人物

市助……日本橋の酒屋・丸竹の番頭。実は亜。

杢蔵……日本橋の酒屋・丸竹の手代。実は藻湖。

丸竹喜一郎……丸竹の主人(らしい)。

がっこの千太……浅草は菊屋橋の熊の膏薬売り。実は山師。
 →がっこの啓……掏摸(『煙の殺意』/「紳士の園」)。
 →がっこの芳……掏摸(『鬼女の鱗』/「改三分定銀」)。
 →がっこの政……掏摸(『夢の密室』/「トリュフとトナカイ」)。
 →がっこの安……丁金組のチンピラ(『旋風』)。
 →かっこみの安……掏摸(『自来也小町』/「旅差道中」)。

浮屋……楡木の宿屋。
 →浮屋章治か?……逃亡犯(『亜愛一郎の逃亡』/「亜愛一郎の逃亡」)。

片糸屋……蔓橋の宿屋。

箭島幸友……野州白杉藩三万石の藩主。

桂安寺……北契がいる寺。

北契……補陀楽往生を取り仕切る偽坊主、正体は宇都宮のへぼ占者。
 →南契(大日向南契)……藤寺の住職(『妖盗S79号』/「檜毛寺の観音像」ほか)。
 →西契……談義僧。全国の寺を渡り歩く(『鬼女の鱗』/「征木心中」「伊万里の杯」)。
 →朝契(島地朝契)……吉浄寺住職(『妖女のねむり』)。
 →玄契……昌桂寺住職(『花嫁は二度眠る』)。
 →清契……修行中の雲水(『泡坂妻夫の怖い世界』/「妖香」)。
 →弓箭筆契……黒手八幡宮神主(『ヨギ ガンジーの妖術』/「帰りた銀杏」)。
 →薬小路車契……易者。発作を起こすと予言ができる(『ヨギ ガンジーの妖術』/「ヨギ ガンジーの予言」、『奇跡の男』/「奇跡の男」)

小牧屋……下駄屋。

 

3 『地震時計』

○登場人物

珠川……本所松井町に仮宅を置いた新丸亀屋の女郎。
 →玉川……元は吉原紀の字屋の花魁、アイノ人シャクシャインの四番目の妻(『自来也小町』/「忍び半弓」)。

雛路……本所松井町に仮宅を置いた新丸亀屋の女郎。
 →雛町……吉原紀の字屋のお職女郎、無理心中(『凧をみる武士』/「幽霊太夫」)。

仁吉……珠川の客で心中(?)相手。長浜町の魚屋。

京八……雛路の客で心中(?)相手。小田原町の魚屋。

鉄五郎……新丸亀屋主人。

土牛志賀守与常……匠戸藩藩主。
 →土牛……医戸市長、新橋を余情橋と命名した(『煙の殺意』/「開橋式次第」)。

蘭田無斎……匠戸藩の時計師。
 →ランダム……スイスの時計ブランド(『花火と銃声』/「花火と銃声」、『妖盗S79号』/「ルビーは火」「メビウス美術館」「東郷警視の花道」)。
 →ランダム社……バッグのブランド(『雨女(『ぼくたちの太陽』改題)』/「ぼくたちの太陽」)。

耳成新兵衛……幕府天文方。
 →耳成……右腕中学校天文部員一年生、のち天文学助教授(『亜愛一郎の狼狽』/「右腕山上空」)。
 →※耳成神社……おまけさん祭を行う神社(『湖底のまつり』)。

安藤伯西……時計役坊主。
 →安藤伯斎……黒鷺の茶碗のことをエッセイに書いたお茶の宗匠(『妖盗S79号』/「黒鷺の茶碗」)。

押川専堂……時計役坊主。
 →押川専道……貝の蒐集家。世にも珍しい右巻きのヒダリマキオキナエビスの畸型を所有する(『妖盗S79号』/「生きていた化石」)。

上野屋……「酒 菜めし」を出す安くて旨い良心的な店。酒は〈奥のたむ〉が自慢。
 →上野屋……橋場の菜飯屋(『びいどろの筆』/「砂子四千両」)。
 →ほか、上野屋果汁株式会社なるものも存在する(『妖盗S79号』/「メビウス美術館」)。
 →奥のたむ……旨い酒(『煙の殺意』/「狐の面」、『弓形の月』)。

有江屋……看板はすっぽん料理の店。まずくて高い。
 →有江次郎……双宿署警部。次郎であるが三男(『亜愛一郎の逃亡』/「飯鉢山山腹」)。
 →有江一郎……その兄。実は次男である(『亜愛一郎の逃亡』/「飯鉢山山腹」)。
 →有江太郎……その兄、長男(『亜愛一郎の逃亡』/「亜愛一郎の逃亡」)。
 →有江屋……有江太郎と花子が経営する旅館、ホテルニューグランド宮後と改名。有江風懐石料理を亜に出した(『亜愛一郎の逃亡』/「亜愛一郎の逃亡」)。
 →有江屋……上野山下のすっぽん料理屋。『東都名物味競』で西の関脇に挙げられた。(『びいどろの筆』/「泥棒番付」)

赤染……有江屋の酌婦。怒ると訛りが出、出刃包丁を振り回す。その姉も怖い。
 →赤染明子……美人レポーター。怒ると訛る(『ヨギ ガンジーの妖術』/「心魂平の怪光」「ヨギ ガンジーの予言」、『しあわせの書』、『花火と銃声』/「だるまさんがころした」)。
 →赤染照子……スチュワーデスで怒ると訛る。もっと怖いお姉さんがいる(『ヨギ ガンジーの妖術』/「ヨギ ガンジーの予言」)。

中本安助……匠戸藩の侍。
 →中本安介……北浦組のチンピラ(『ダイヤル7をまわす時』/「ダイヤル7」)。

 

4 『女形の胸』

○登場人物

新門辰五郎……幕末の侠客。実在人物。

おみの……大奥を出て推蔵を生んだ女。嵯峨山流家元の弟子で本名はとし、安政の大地震以来行方知れず。

おまき……もと大奥お三の間勤め。

高砂屋……浅草六軒町の菓子屋、おまきの嫁ぎ先。

福山……若き日の家定付きの中臈。

彦造……おみのの父親、日本橋南、金六町の魚屋。駒形町に店を出すが人手に渡る。

嵯峨山初蝶……踊りの流派嵯峨山流の家元。
 →白蝶……嵯峨山流の踊りの師匠(『からくり富』/「小判祭」「新道の女」)。
 →双蝶……吉原岡本屋の女郎(『びいどろの筆』/「泥棒番付」)。
 →連蝶……吉原紀の字屋の遊女(『凧をみる武士』/「幽霊太夫」)。

門脇杜若……〈成田山相思鳴上〉で鳴神上人を演じる(「雲見番拝命」参照)。

青衣霧之丞……〈成田山相思鳴上〉で雲の絶間姫(「雲見番拝命」参照)。

金龍座……〈成田山相思鳴上〉をかけた芝居小屋。

津留岡……蔵前の料亭。

 

5 『ばら印籠』

○登場人物

田岡岩成……神田お玉が池に住む窮理学の先生。ときどき変な欲を出す。
 →田岡千代之助……号は岩成、自然天産物を研究。元は江戸城の天文方(『びいどろの筆』/「砂子四千両」、『凧をみる武士』/「とんぼ玉異聞」)。
 →田岡千代之介……双宿中学校教諭、コノドント(古代虫)を研究(『亜愛一郎の逃亡』/「飯鉢山山腹」)。ちなみに妻は「掘り出された童話」(『亜愛一郎の狼狽』)に出てきた千野義麿の孫の千野義子。

口をへの字に曲げた若侍……岩成に問答(光の正体は波ではないか)を仕掛けた。
 →目が吊り上がった、癇癖そうな若侍……岩成に問答(日輪は火が燃えているのではないと主張)を仕掛けた(『びいどろの筆』/「砂子四千両」)。
 →癇癖の強そうな若侍……岩成に問答(人間の先祖は猿ではないか)を仕掛けた(『凧をみる武士』/「とんぼ玉異聞」)。

連次……眼鏡職人。小舟町の眼鏡師・虎戸工造の家に住み込む。長崎で写真の技を学んできた。
 →長崎からの帰路、宝引の辰一家と出会う(『自来也小町』/「旅差道中」)。
 →蓮図明夫……スリープロダクションのカメラマン(『花火と銃声』/「七羽の銀鳩」)。
 →虎戸工造……神田の眼鏡商。所蔵する矢型連斎の蛙の掛け軸を盗まれた(『自来也小町』/「自来也小町」)。

桝金……小舟町の居酒屋。
 →桝銀……酒屋。店主銀造は通称“火事銀”(『亜愛一郎の逃亡』/「火事酒屋」)。

日暮軽太郎……緋熊重太郎が偽った名前。連次からかるた先生と呼ばれた。

藤巻蘭女……向柳原の印籠師。虫尽しのばら印籠を作成。

藤巻吉太郎……彦根藩の印籠師。蘭女の父。
 →藤巻吉三郎……入歯の技工士。根付集めが趣味。昔、田甲里(たこざと)美術塾にいたことがある(『蔭桔梗』/「十一月五日」)。
 →田甲里黒墨……画家。父の太郎は巨匠(『妖盗S79号』/「檜毛寺の観音像」)。

藤巻三右衛門……蘭女の夫で藤巻家に養子に入るが、京都で強盗まがいのことをする。

志水満之助……児小姓。彦根藩国家老の四男。
 →志水満子……元キャバレーのホステス(『ダイヤル7をまわす時』/「ダイヤル7」)。

 

6 『薩摩の尼僧』

○登場人物

上岡菊敬……芝、愛宕下の三斎小路に住む旗本。次女のお八重が行方不明になる。
 →上岡菊彦……亜、井伊と一緒に東欧医科歯科大付属病院で歯痛の診察を受ける(『亜愛一郎の逃亡』/「歯痛の思い出」)。ちなみにこの短編は井伊大老絡みの事件であり、ここでも亜、井伊、上岡は揃い踏みしていることになる。
 →東欧大学(『死者の輪舞』)、東欧大学医学部付属病院(『蔭桔梗』/「くれまどう」)、東欧大学芸術学部(『斜光』)、東欧女子学園(『妖盗S79号』/「南畝の幽霊」)ほか。

おさわ……大奥お中臈。上岡菊敬の娘。徳川家茂の寵愛を受ける。

瑜伽山権現……二月二十四日に縁日がある。

四国町の山蔵……通り名は地獄の山蔵、または地獄の親分。

久平……奈津之助を綱坂の自身番に引っ張った下っ引き。

提灯屋の六兵衛……奈津之助の偽名。。

極楽院……三田寺町の尼寺。庵主や覚心がいる。

覚心……極楽院の老尼僧。

沈林寺……寺町の寺。

西京屋……日本橋平松町の呉服屋。三女のお咲が行方不明に。
 →西京屋……駅前の商店街にある呉服屋(『蔭桔梗』/「竜田川」)。
 →京屋……日本橋の呉服屋(『ゆきなだれ』/「鳴神」)。

安蜘尼……薩摩の尼僧。タロットで占いをする。

野田屋宗七……娘のおせいが行方不明に。

門脇杜梅……本村町の踊りの女師匠。
 →門脇杜若……上記参照。

筑波外記……書物奉行。紅葉山文庫を管理。
 →筑波博士……マイクロコン太を作ったらしい(『花火と銃声』/「石になった人形」)。

 

7 『大奥の曝頭』

○登場人物

姉小路……和宮降嫁に奔走した上臈。

畠山民部少輔……姉小路の謹慎先。

煙草屋……大奥の長局で露店を張る。親切。

おふじ……町方出身の大奥お中臈、長局二の側に部屋を持つ。読書好きで柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』の続編を書いたことがある。

宿木……大奥上臈(年寄?)。

おえい……宿木付きの女中。

梅ヵ枝……大奥上臈(年寄?)。

おまつ……大奥中臈。

鍋谷朝次郎……旗本の次男。まつの一つ違いの弟。としと相思相愛。

おとし……大奥中臈。

以  上

[UP]


謎宮会 webmaster:meikyu@rubycolor.org(高橋)

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