謎宮会 2001/7-8

探偵漫画日記（2001年9月分）

廣澤吉泰

「月刊ドラゴンマガジン」でミステリー特集号が出る――ということで勢い込んで買ったら、ミステリー小説の特集号であった。はずれ、である（笑い）太田忠司の書き下ろし（100枚）や上遠野浩平といったところに加えて「富士見ミステリー文庫」の執筆者――南房秀久、舞阪洸、水城正太郎、谷原秋桜子――といった面々の短編作品が掲載されているので、ＹＡの分野でのミステリー事情を一覧するのには最適な一冊かもしれないが（繰り返していうが、私にはあまりメリットはなかった……）

さて、気を取りなおして、まずはいつも通り雑誌のレビューから。

「月刊サスペリア」は11月号から「月刊ミステリーサスペリア」（秋田書店）として新装刊された。「名探偵がいっぱい!!」という特集のもとに、前号から継続の浅見光彦物の『薔薇の殺人』（原作・内田康夫　漫画・鳥羽笙子）に加えて、読み切りでは「待合室の冒険」（原作・恩田陸『象と耳鳴り』所収　漫画・服部あゆみ）、森江春策の活躍する「深津警部の不吉な赴任」（原作・芦部拓　漫画・宗美智子）、ボクちゃん探偵シリーズの「消えた裁縫道具」（原作・二階堂黎人　漫画・河内実加）、狩野俊介シリーズの「人が歩む、すべての道は」（原作・太田忠司　漫画・大塚あきら）、そして亜愛一郎物の「双頭の蛸」（原作・泡坂妻夫　漫画・たまいまきこ）といった漫画化作品に、オリジナル物の「逆襲のスナーク」（原作・金子レミ　漫画・井澗千代美）が加わった充実したラインナップである。さらにいえば、綾辻行人『眼球奇譚』の漫画化を手がけた児島都が「嘘と誠」という16頁物を発表しているのだが、これがなかなか面白い。ネタの根本は、昔からある「嘘付き村・正直村」のパズルなのだが〈つまんない依頼お断り〉という高飛車な名探偵・鬼瓦嘘次郎のキャラクターがよい。これに加えて別冊付録で「少女名探偵　橋本千晶の事件簿」（原作・内田康夫）がついているのだから税込み６５０円は非常にお得といえるのではないだろか。

「ミステリーＤＸ」１０月号（角川書店）には、『黒猫の三角』（原作・森博嗣）の連載と、『エキストラ・ジョーカー』（原作・清涼院流水　漫画・蓮見桃衣）が掲載されている。『朱色の研究』（原作・有栖川有栖）は今月もお休み。しかも、次号予告には「待望の読み切り作品登場」とうたわれている……。連載は一体どうなるの？　と、非常に気になる１１月号だが、次号には「爺さんと僕の事件帖」「心理捜査官・葵」「建築探偵桜井京介の事件簿」といった人気シリーズの登場に加えて新シリーズも開始されるようで、かなりの充実ぶりである。

「Ｈｉミステリー」１０月号（宙出版）では、特集１「女の仕返し」として新津きよみの短編集『彼女たちの事情』からの漫画化作品２編（「返す女」漫画・井上洋子、「ずっとそばにいて」漫画・秋乃ななみ）と、はやさかあみいのオリジナル作品「欲望の鏡」を掲載している。また特集２「病む女　乃南アササスペンスシアター」として乃南アサの短編集『花盗人』から６編（「脱出」漫画・北川玲子、「留守番電話」漫画・篠崎佳久子、「向日葵」漫画・光崎圭、「花盗人」漫画・秋乃ななみ、「愛情弁当」漫画・橋本多佳子、「寝言」漫画・浅野まいこ）を漫画化して掲載している。また、特集以外でも「傑作サスペンス劇場」として坂田靖子「孔雀の庭」を再録しており非常に読み応えのある一冊となっている（西澤保彦氏のホームページを見たら、氏も毎月「Ｈｉミステリー」を愛読しているようである。安武わたるの「ぶたぶた」（原作・矢崎在美）がお気に入りのようだ）

と、いったところで単行本のレビューに移ることにしたいところだが、実は８月分でとんでもない忘れ物をしていたので、まずはそちらから。

『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』　
有栖川有栖・編
角川書店　角川文庫　 2001年８月２５日刊行７０５円（本体）

【内容紹介】ミステリ作家であり、かつ希代のミステリ読みでもある有栖川有栖が選び抜いた作品を収録した本格ミステリのアンソロジー。同時刊行された『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』（そういえば、こちらには、吾妻ひでおがイラストを描いた「ライツヴィル殺人事件」が収録されている）とともに「これは知らないでしょう」というような本格ミステリを拾い上げた作品集である。

【評価など】白峰良介氏が学生時代に即興で書いた犯人当て「逃げる車」や、名のみ知られていながら実物にふれることは難しかったロバート・アーサー「五十一番目の密室」など秀作が目白押しであるが、本コラムでとりあげるのは、つのだじろうの「黄金犬(おうごんいぬ)」である。「少年」の68年２月号の付録に掲載されたこの作品が「自分が読んだ最初のミステリ」と有栖川有栖は、巻末の北村薫との座談会で語っている。少年探偵・ジョニー弘田が鶴丸家に起った遺産をめぐる連続殺人に挑む作品である。「金色の犬」は、あるときは窓越しに姿を見せたかと思えば、次の瞬間に廊下で人をかみ殺し、またあるときは襲撃の後、二階の窓から消えうせる――という神出鬼没ぶりを見せ付けるのである。「作中出てくる現場の図に手がかりがちゃんと含まれてい」るので、見取り図も真剣に検討していただきたい作品である。

さて、それではここからが９月分の新刊レビュー。今月も刊行作品が多くて非常に大変であった。それから「刊行日」は「奥付け」の記載に基づいているのだが、それが販売日とは一致していない（場合によっては一ヵ月先のものもある）　その点はご留意いただきたい。

また、今月は『多重人格探偵サイコ』の第７巻が刊行されたが、しばらく読んでいない間にすっかりストーリー展開から取り残されていたので（渡久地が都庁を占拠した辺りまでは借りて読んでいたのだが……）、こちらはまた第１巻から読み直して来月とりあげることとしたい。

『エキストラ・ジョーカー』　ＪＯＥ
原作・清涼院流水　漫画・蓮見桃衣
角川書店　あすかコミックスＤＸ　 2001年９月１日刊行５６０円（本体）

【内容紹介】京都市北部の山中にある、欧州の古城を模した館――幻影城。ここで年に一度の合宿を開催していた「関西本格の会」のミステリ作家たちが次々と殺されでいく。現場に残された「」と名乗る犯人の声明文。挑発的な犯人を日本探偵倶楽部（ＪＤＣ）の名探偵たちは追いつめることができるのか……。

【評価など】97年に発表した『ジョーカー　旧約探偵神話』を、清涼院流水自らが漫画用にリメイクしたものが『エキストラ・ジョーカー』である。したがって、原作を既に読んだ私のような人間にとっても、真相は不明であるため下巻が非常に楽しみである。本書で、ついに九十九十九が映像化されたのだが、絵を見ても「卒倒」はしませんでした（当たり前か……）ちなみに、本書の「ＪＯＥ」は「ＪＯＥとついているのは『上巻』を意味」するそうで、そうすると、下巻は「ＫＥＲ」（下(かー)）なのだろうか。

『姫神町リンク　神ＫＡＫＵＳＨＩ』　第１巻
著者・紫堂恭子
角川書店　あすかコミックスＤＸ　 2001年９月１日刊行５２０円（本体）

【内容紹介】母の故郷の「姫神町」で暮らすこととなった妹尾七海。級友の天堂守里の笹姫神社に赴いた際に、七海は塚に差されていた小さな白い旗を抜いてしまう。それから数日後、彼は神隠しにあったように姿を消してしまう。鍵を握るのは、小旗を抜いた時に七海を嗜めたおばあさんか。また、七海の母の過去も事件に影を落としており……。

【評価など】神隠しの真相は、七海の母も加わっていたグループのいじめが原因で事故死した息子の命日前にお百度を踏んでいた母親（七海を嗜めたおばあさん）に七海がであって、というもの。転校前はいじめを傍観するだけだった七海が、守里たちとの出会いで、母親の「罪」を受け止めるまでになる、という成長物語的側面が心に残る。

『大正小町事件帖　櫻の一番！』壱ノ巻
著者　影崎由那
角川書店　ドラゴンコミックス　2001年９月１日刊行９００円（本体）

【内容紹介】舞台は大正。櫻ノ塚女学校に転入するために上京した日ノ森朝見(あさみ)は、雑踏で出迎えの兄・幾郎とはぐれてしまう。そのとき出会った三条西操もろともに誘拐されてしまう――「朝見、上京」　他に「帝都の切り裂きジャック」「月下の少年」を収録。

【評価など】華族の子女を中心とした女学校に平民の活発な少女が転入してきて……というのはよくある設定だが、「剣道が得意」というのがちょっと違うところかな。具体的に流派の設定（二段）があるのもポイントが高い。「帝都の切り裂きジャック」で朝見が真剣を持った犯人と立ち回りを演ずるあたりは、設定を生かした秀逸な場面である。「月下の少年」に登場した二重人格の美少女・月子（景次）が、朝見・操のコンビにどう絡んでくるのか。今後の展開が楽しみである。

『なんてっ探偵　アイドル』第５巻
著者　北崎拓　原案協力　井上敏樹
小学館　ヤングサンデーコミックス 2001年１０月５日刊行５０５円（本体）

【内容紹介】トリコロールの出演する歌番組のリハーサル中、セットのスポーツカーが落下。人気ユニット・エアロのメンバー大介が下敷きとなって死亡した。当初は事故かと思われたが、被害者の顔に火傷の痕があったことから他殺の疑いが……（「クロス・ファイア」）他に、アキラたちの事務所に新メンバー・山吹美奈斗が加入することとなる「ホワイト・シャドー」と、トリコロールが出演する映画のロケ現場（孤島）で事件が起こる「ブラッディ・アイランド」を収録。

【評価など】本シリーズは、以前にも述べたが、トリック（特に機械的なもの）が中心の作風である。個人的には「トリックよりロジック」の人なので、その点で違和感を覚えていたのだが、今回の作者の言葉で「推理系にはトリックがつきものだ」と述べているから、北崎氏はそういうミステリ観だと納得するしかない、と悟った次第である。

『犬神家の一族』
原作　横溝正史　漫画　つのだじろう
講談社　講談社漫画文庫 2001年９月１２日刊行６００円（本体）

【内容紹介】犬神財閥の当主・犬神佐兵衛の遺言状が公開された。それは全財産を野々宮珠世に贈る、ただし珠世は佐清・佐武・佐智のいずれかと結婚しなければならない、というものだった。その候補者の一人、佐清は顔が焼け爛れて常に仮面をつけているような状態だ。そして佐武が殺され、生首が菊畑で発見される。それが犬神家に起こる連続殺人の最初の事件であった……。

【評価など】犬神財閥を（原作とは異なり）秘密めいた呪術を行なう〈犬神族〉とすることでオカルトに造詣の深いつのだ氏の独壇場となっている。ただし、〈犬神族〉という設定を持ち込むことで、一族が殺し合うような遺言状を佐兵衛が残した意図が（原作よりも）明確になっている（それにしてもマッシュルームカットの松子は不気味だ……）

『探偵学園Ｑ』　第１巻
原作　天樹征丸　漫画　さとうふみや
講談社　講談社コミックス　2001年９月１７日刊行４１９円（本体）

【内容紹介】「世界一の探偵」になるのが夢だというキュウは、それを実現するために「団探偵学園」を受験する。「団探偵学園」は日本でただ一人拳銃の携帯を許された名探偵・団守彦が校長を務める学校だ。キュウは、団校長が直接指導する「特別クラス」――Ｑクラスへの入学を目指し、受験会場で出会った仲間とともに難問を突破していく。

【評価など】大ヒット作『金田一少年の事件簿』をてがけた、天樹・さとうコンビが送り出すミステリ漫画。「この作品は、ミステリーを漫画にしたのではなく、漫画から出発したミステリーです」という天樹の手になる「作者のことば」の意図を、第１巻から推測すると、漫画という媒体を意識して、視覚的な伏線を張るということなのか。その答えは本巻から始まる「切り裂き島の惨劇」が完結したときに明らかになるだろう。

『警察署長』第４巻
原案　たかもちげん　脚本　高原泉　漫画　やぶうちゆうき
講談社　モーニングＫＣ 2001年９月２１日刊行５０５円（本体）

【内容紹介】警視庁本池上署の署長・椎名啓介は、キャリアとしては異例の出身地勤務を10年間も続けていた。警察大学校を主席で卒業しながらも、昼行灯――と揶揄される啓介だったが、その実力はなかなか端倪すべからざるものがあった。たかもちげんの急逝にともない未完となっていた『警察署長』が、新しい原作者・作画者、そして前田刑事や相馬刑事といった新しいキャラクター得て、ここに甦った。

【評価など】異例ずくめの啓介の人事の秘密を、たかもちは説明しないまま他界した。それが今シリーズで明らかになったのだが、同期生から送られた手紙、っておいおい『新宿鮫』かよ。まだ、以前からにおわされていた「本庁幹部の娘との見合いを断ったから」の方がマシだったのではと思うのだが……。本書中では、公園の覗き犯を啓介が巧みに活用するエピソード（「のぞき」）が秀逸である。

『火星人刑事』第５巻
著者　安永航一郎
集英社　ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ 2001年９月２４日刊行５０５円（本体）

【内容紹介】小田川がスペインからスカウトをしてきたイザベル。そのイザベルになぜか栗瀬は歯が立たない。弱点を克服すべく湖南山にある道場で特訓に励む栗瀬は、長老たちから火星人殺法の重大な秘密を打ち明けられる……。

【評価など】「重大な秘密」っていうのは、栗瀬たちが体得した「火星人殺法」は、実は「インカの戦士が（手枷をつけたまま）足だけで戦うためにあみだした闘技！」だったということ（第１巻から読んでいるが、そんな設定は初めて聞いたぞ！）インカはスペインに征服されたため、栗瀬はイザベルに勝てないのだ。実に論理的でしょ（？）

『青迷宮　―君は晴れた空の下で―』
著者・神谷悠
白泉社　花とゆめＣＯＭＩＣＳ　2001年９月２５日刊行３９０円（本体）

【内容紹介】父親が目の前で母親を刺殺する光景を見たため、心を病んだ少年・冬樹。冬樹は、里親の上嶺家と養子縁組をすることとなったが、その前に気持ちの整理をつけるため実父・大沢隆との自分を再会を望んだのだ。ところが、隆には強盗事件の容疑がかかっていて、という「迷宮・聖夜の少年」をはじめ「迷宮・愚かな賢者」「君は晴れた空の下で」といった上嶺家の人々の絡む一連の作品を収録。

【評価など】記憶を失ったまま、上嶺ハジメとして暮らす、西城円花の夫（アキラの父）小太郎。強烈な経験から逃れるため、上嶺家の里子となった冬樹。天ノ郷村で肩を寄せ合っている、この擬似家族のそれぞれの決断が描かれるのが本書である。冬樹は大沢冬樹のままで、上嶺家に残ることを決断した。それでは、小太郎は？　それは本書を読んでいただきたい。

『死神探偵シリーズ(1)　死神探偵と憂鬱温泉』
著者・斎藤岬
ソニー・マガジンズ　バーズコミックス　2001年９月２８日刊行５２０円（本体）

【内容紹介】やたらと殺人事件に遭遇することから“死神”と呼ばれてきた男・鹿神(しかがみ)孝。新婚の妻・みちると後輩の刑事・関とともに訪れた温泉でも、またまた事件に遭遇する。吹雪で温泉宿は孤立し、その中で第２の殺人が発生する……（「死神探偵と憂鬱温泉」）他に、同じく探偵・鹿神が活躍する「変わらぬ娘」と、華族探偵・池田素成のシリーズ「華族探偵素成の華麗な冒険」を収録。

【評価など】名探偵は、ゆく先々で事件を招き寄せるものなので、その意味では鹿神孝は充分に“名探偵”の素質を持っている。ミステリとして見た場合、「死神探偵と憂鬱温泉」では第２の事件で犯人がアリバイトリックを弄する必然性が全くない、という欠点があるが、キャラクターのユニークさで通し、という感じである。あとがきによれば、初めて描いたミステリ物、ということなので、今後に期待することにしたい。

『すべてがＦになる』
原作　森博嗣　漫画　浅田寅ヲ
ソニー・マガジンズ　バーズコミックス　2001年９月２８日刊行６２０円（本体）

【内容紹介】三河湾に浮かぶ小島にある真賀田研究所。15年間閉じこもった天才プログラマ・真賀田四季博士に会うため、研究所を訪れた犀川創平と西之園萌絵は、連続殺人事件に巻き込まれることに……。巻末に原作者・森博嗣の解説「すべてが絵になる」と、浅田寅ヲの手になるキャラクターデザイン設定集を収録(原作の『F』には登場しない喜多の設定もあるのでファンは必見！)。

【評価など】同題の森博嗣のデビュー長編を漫画化したもので、「月刊コミックバーズ」の2001年３～８月号に掲載された（同誌では11月号から『女王の百年密室』（漫画・スズキユカ）の連載が開始されている）この漫画を読んで「そうか『すべてはＦになる』はこういう作品だったのか!!」と、改めて原作への理解が深まった次第である。森博嗣にとって小説の執筆とは「頭の中で自分が描いた漫画を読みながら、それを何とか相手に文章で説明しようとする」ものだそうで、そのイメージが浅田寅ヲの手によって（文章という媒介を通さず）直接的に表現されたため、非常に分かりやすかった（あくまでも私にとってだが）ということなのだろう。そして最後に、浅田寅ヲの漫画が絵柄や画面構成が先鋭的で非常に心地よいものであることは強調しておきたい。

『臨床犯罪学者・火村英生のフィールドノート②　朱色の研究　夕陽丘殺人事件』
原作　有栖川有栖　漫画　麻々原絵里依
角川書店　アスカコミックスＤＸ　2001年１０月１日刊行５２０円（本体）

【内容紹介】火村はゼミの生徒・貴島朱美から２年前に発生した殺人事件の再調査を依頼される。関係者・宗像正明から事情聴取した火村は、その帰途有栖川有栖のマンションに立ち寄る。その夜、火村は謎の電話により、幽霊マンション「オランジェ夕陽丘」に呼び出される。そこで二人が遭遇したのは朱美の叔父・山内陽平の死体であった……。

【評価など】有栖川有栖の同題の長編ミステリを漫画化したもの。本巻では「オランジェ夕陽丘」で、六人部が自分の入った部屋を錯覚するトリックが解明され、舞台が２年前に殺人事件が起きた和歌山県・周参見へと移るところまでが描かれている。ほとんどの部分で原作に忠実な漫画化作品である。

ここまでで、今月の新刊はおしまい。あと、先月の宿題となっていた森素子の『探偵は夢を見るか』（小学館）の第１、２巻の紹介を行ないたい。奥付けの刊行日のデータを見ると、少なくとも第２巻については「日記」の１月号では取り上げていないといけなかったようである……。

『探偵は夢を見るか』
著者　森素子　小学館　プチフラワーコミックス　各巻３９０円（本体）
第１巻　２０００年９月２０日刊行　
第２巻　２００１年２月２０日刊行　
第３巻　２００１年９月２０日刊行（実際の発売は８月）

【内容紹介】長身（２メートル）・ハンサム・頭脳明晰と３拍子揃った元検事の私立探偵・八奈巳武。人は、彼を“フェロモン探偵”と呼ぶ。ＮＹで消息不明となった恋人の弁護士・麻生伊織を探すため渡米した武。伊織は救出できたものの、彼女に岡ボレしたフランク・一馬・ローデンバーも日本にくっついてきてしまう……。

【評価など】先月の日記に「このシリーズは『探偵は笑わない』という全12巻の作品の続編らしい。評価は、それを読んでからということで……」と書いたものの、そうなるといつになることか分からなくなるので、とりあえず『探偵は夢を見るか』全部読んだところでの評価としたい。

『探偵は笑わない』では武と伊織の関係がけっこう不安定で、ミステリの味付けをした恋愛漫画といった趣があって、その辺が読ませ所だったかもしれない。しかし、本シリーズでは二人はしっかりと“恋人”になっており、かつ八奈巳武が完璧なキャラクターであるため、今シリーズから登場の一馬も“ライバル”というよりは“お邪魔虫”程度にしか機能しない。そのため、前回紹介した第３巻の「指輪にさよなら」のエピソードで、少し波乱が起こったが、それ以外では物語に起伏を持たせられないでいる。

　と、いったところで、今月はここまで。

[UP]

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