謎宮会 1997/10

自己中心的毒書日記 −1997.10−

浅井 秀明


 急遽転勤しました。車で移動するのに、途中で仮眠取ったけれども12時間。いやあ、疲れた、疲れた。引継などでごたごたしていたため、今月はほとんどと言っていいほど本を読んでいません。つくづく、通勤時間というのは貴重な読書時間であることを認識しました。
 まあ、今月本を読まなかった理由の一つは、今頃買った『プルミエール2』にはまってしまったこともあるんだけれどね。いやあ、難しいんだ、これが。なかなか全員を攻略できません。この手のゲームって、ゲームファンにとっては馬鹿にされるかもしれないけれど、なかなか奥が深いと思うんだけどなあ。過去のファンとしては、『PRIMO』を待とう。『スペリオール』もWindowsで復活しないかな。復活といえば、『ガイルバン』の新作もお願いしたい(メーカーが違ったな)。
 全くジャンルが違うけれど、この時期になって『ほっとすたっふ88』を読めるとは思いませんでした。やっぱり、このころの絵の方が好きだな、高河ゆんは。あとは『超進化エナス』を出してほしいね。そうそう、やっぱり『REN-AI』も完結してくれ。


○月○日 森博嗣『幻惑の死と使途』(講談社ノベルス)。脱出を得意とする天才マジシャンが衆人環視の脱出ショーの最中に殺される。しかも葬儀中の棺の中から遺体が消えた。この謎に犀川と萌絵が挑む。
 事件そのものは安っぽい本格ミステリの作り。たぶん処女作でこんな謎を書いたって誰も買わないだろうし、本にもならない。ということで、読ませようとしている部分はやはり犀川と萌絵の関係。この二人、ホントにじれったい。だいたい犀川、35歳だろう。あれだけ露骨に態度を示している女性に対して、態度も決めずに何もしないというのは相手に対する拷問じゃないのか。それにしても、二人の関係のシチュエーションが一昔前の少女マンガの世界に近づいていっているのは笑える。
 森博嗣の頭の中にある“ミステリィ”っていったいどういうものなのだろう。このままじゃ、ちょっとした謎のあるキャラクター小説のままで終わってしまうんじゃないだろうか。少なくとも本作品のような小説なら、世間からずれている助教授と教え子の恋愛小説でしかない。“ミステリィ”の部分が二人の恋愛のためのスパイスにしかなっていない。別にヒューマニズムをかざすつもりはないし、本格ミステリは“知的ゲーム”だとも思っているけれども、登場人物までそのような態度をとるのは不快である。
 次作の『夏のレプリカ』が同時期に進行するため本作品は奇数章しかないとのことだが、なんらかの仕掛けがない限り、このような手法は無意味だろう。最後の台詞の“ひき”だけのためにこのような仕掛けをしたというのなら、読者を馬鹿にしているとしか思えない。また、わざわざ時系列の事件設定を書く必要もない。このシリーズで何をやりたいんだろうね、森博嗣は。  いろいろ書いたけれども、とりあえずシリーズが完結するまで読み続けることになるだろう。一応気になるからね、犀川と萌絵の関係は。そういう意味ではすごい作家なのかもしれない。退屈だけれども購入させ続けさせようとするんだから(こんなこと思うの私だけ?)。★☆。


○月○日 『このミステリーがすごい! 傑作選』(宝島社)。祝10周年(誰が祝うんだ?)ということで過去の8年のベスト20と「覆面座談会」を完全収録。
 いやあ、これほど安上がりな本はないだろうな。文春ベストの本も相当だったけれど、それよりすごい。もっとも、過去の本が手に入らなかった人には嬉しい本なんでしょうね。全部持っている私だが、「ボロダス」と「覆面座談会に対する作家のアンケート」をじっくり読みたいがために、つい買ってしまった。
 ということで、面白いのはその「作家」側からの反響。作家側から好評な意見が多いのは意外。もっとも、元々ファンだった人たちが中心だからね。「リーグが違う」作家や「草の根読者」Only作家からのアンケートを取らないところがせこい。たとえ出したとしても答えが返ってこないだろうけれど。
「草の根」問題や「リーグが違う」問題の頃はとても楽しかった「覆面座談会」だけれども、最近はすっかりマンネリ。そろそろ担当を変えてみるのもいいんじゃないかな。大体、【覆面】を被らなければいけない評論家を使うから、だんだんと発言がおとなしくなっているんだよね。ここは一発、素人を使ってみるのも面白いんじゃないかな。
 花村萬月が書いているように、今度は小説家が評論家を批評してほしいよね。そうすればネタ晴らし確信犯の某とか、社会的背景を書かないと全く評価しない某や、おちょくった解説しかできない某などは相当たたかれるだろうなあ。宝島編集部には是非とも実現してほしい企画である。
 こんな本で1295円も取るんだから大したもんだ。テレビのNG大賞と同じくらい「あきれたモンチッチ」企画。評価するほどの本でもないね。


○月○日 野間美由紀の『アトモスフィア』の2巻が出ていたので読んでみたけれども、どうも今ひとつだなあ。一応天気を扱った日常ミステリマンガになっているけれども、この作家にはねちっこいラブシーンを希望する(ってなにを言っているんだ、私は)。


○月○日 たまたま手に取ってみることがあるよね、こんな本は。ということで『完全保存版 名探偵大百科』(エニックスミニ百科)。エニックスがどんな本を出したのだろうと思って期待して読んでみると、ここに出てくる“名探偵”というのは、アニメ・テレビドラマ(国内、海外)・コミックスの名探偵。それも名探偵だけでなく、怪盗や相手役の警官、探偵なども収録。さすがゲーム本で有名なエニックスらしく、頭脳、能力などのパラメータ付き。
 アニメ・テレビドラマはすべてビデオ化されているもの。「江戸川乱歩の黄金仮面」(当然天知ね)や「探偵物語」、「ブルームーン探偵社」や「ウェクスフォード警部シリーズ」など、コンセプトを全く無視したファイルには笑えてしまう。しかしこんな本もあるんだよ、という意味では持っていてもいいかな。作り方があまりにも小中学生向けだけれども。
 最後の方にはおすすめゲームやワードファイル、おすすめ小説ガイドベスト36が収録されているが、これもどういう基準で選んだのかさっぱりわからない選定ぶりだ。「Yの悲劇」や「そして誰もいなくなった」と「ロートレック荘事件」「三姉妹探偵団1」が同列に並べられているガイドなんて始めて見た。
 この程度の作りで933円はちょっと高いけれども、洒落で持っていてもいいかもしれない本。★☆。


○月○日 今月はこれだけ。他に読んだのは中島らもの『ガダラの豚』(実業之日本社)くらい(ちなみに★★★★☆)。本当に読んでいない。忙しかったけれども、読書意欲をわかすような本がなかったのも事実。来月はもう少しがんばろう。しかしこのままではあまりにも寂しい。ということで、ミステリとは全然関係ないが、今月面白かったマンガを1冊挙げよう。毎月面白いのがあれば、ワンコーナーとして勝手に続けて行くつもり。

【今月のマンガ】早稲田ちえ『NERVOUS VENUS-1』(講談社 Amieコミックス)

 この手の恋愛もの、好きなんです。Amieはなかなかいい作品、そろえているよね。


to be continued.

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