謎宮会 1997/10

ゆうきのミステリ紹介

森高 有紀

今月のテーマは、「少年が主人公・編」です。

 今回は全部国内の作品になります。海外物は、最近主人公の年齢が高くなっている 気がするのは、私が読む作品に偏りがあるのか、はたまた少年が主人公になるものは 、ジュブナイル作品になってしまっているからでしょうか。
 出来るだけジュブナイル作品に当てはまらないものを選んでみようと思います。

『狩野 俊介』 「月光亭事件」他 太田  忠司 トクマ ・ノベルズ

 さて、私が最近一番大好きな少年の登場です。現在中学生の狩野君は、育った環境 もあるのでしょうがとても純粋で、優しくて、シャイで、そしておとなしい少年です 。
 私の周りには中学生の少年なんていないので、今の中学生が私の中学の頃と 違うのかどうかさえ分からないのですが、想像する中学生とは全然違うように思えま す。
 私の中学時代は校内暴力が多かったころなので、狩野君のような純粋さは あまりもっていなかったように思えるなぁ。逆に妙に大人びたところがあったし。だ から、今狩野君がとてもうらやましいのかもしれないけれど。
 飼い猫のジャン ヌと、狩野君の関係もうらやましいと思います。一心同体とも思える行動するジャン ヌ。狩野君に対して、敵意をもつ相手に対しては、牙をむき出しにして、対抗しよう とする。最初は、ジャンヌしか友達のいなかった狩野君も、作品を追うごとに、自分 という殻を打ち破り、友人が増えていきます。そんな狩野君の性格の変革も、楽しみ な作品です。
 「狩野俊介の冒険」(トクマ・ノベルズ)では、青年の狩野君が 一作掲載されていますが、この狩野君は『少年狩野君』が成長した姿だとは限らない そうで、シリーズのこれからがとても楽しみな少年です。
 でも、狩野君の成長 した姿ってもしかしたら金田一耕助に近いものがありそう。ということは、本当の孫 は、狩野君だったりして。わぁ、それってすごい想像ですね。

『渋柿』 「私が捜した少年」 二階堂 黎人 双葉社

 めちゃめちゃハードボイルドな少年の登場です。彼が少年だという以外は、この作 品をご自分で読んで判断してください。
 日ごろは、二階堂蘭子作品の様ながち がちの本格推理を書く著者が、自ら楽しんで書いていることが、読者にも伝わってく る作品です。
 ハードボイルド作品が好きな方には、いろんな作品のパロディが 入っているので、パロディとしての楽しみ方もできると思います。
 この「私が 捜した少年」の中には、短編として5作入っていますが、それぞれの題名も、有名な 作品のパロディとなっています。本屋の棚を見ていることが多い方であれば、「ああ 、あの作品だなぁ」と分かることでしょう。
 (未読のかたもいると思いますの で)この少年については、あまり語りたくはないのですが、まだ結婚もしていず、子 供を生むなんてことも考えたことのない、私にとって、将来自分が子供を生んだとき に、渋柿君のような子供が、自分の子供であったら、どうしよう?と、思ってしまい ます。
 悪い子では無いのだけれど、「子供って何を考えているのか、わからな いじゃないの!!」なんて思ってしまいます。育てている子供だって別人格なのだか ら、しょうがないかも知れないけれど。
 この本を読んで、こんなことを考えて しまうなんて、私くらいでしょう。
 こんなことなど思い出さずに、この作品は もっと気楽に、肩肘張らずに、読んでください。パロディではありますが、推理部分 はきっちりとした本格物です。「二階堂蘭子物は読んでいても、他の二階堂黎人はな ぁ。」と食わず嫌いをしている人にも、こちらはお薦めです。

『岩井 信一』 「遠きに目ありて」 天藤 真 創元推 理文庫

 語り手は、この少年を訪ねてくるようになった、成城署の真名部警部。ふとしたこ とから担当の事件を話し、信一少年が名推理を披露するようになります。脳性マヒの ため外に出ることもままならない、そんな少年アームチェア探偵です。
 めった に外で出ることのない信一少年ですが、自分の推理を確認したい時に、警部の部下が 手伝って、現場を見たりするようにはなっていくので、探偵としては、ミス・マープ ルが一番近いのではないでしょうか。
 言葉を話すことが不自由なために、一生 懸命一言一言を話そうとする姿、左手でタイプを打つ姿には、無駄な言葉を消費して いる私にとっては、頭の下がる思いがします。
 へたに、日本語をいっぱい知っ ているばかりに、無駄な表現を私達はしています。でも、表現がストレートであれば あるほど、言葉は心に染み入りやすいような気がします。
 もっと、信一君のよ うにストレートであり、人を傷つけない表現をしていきたいなぁと、ついつい(この 様な場を使う表現者としては)思ってしまいます。
 わたしも、もっと日本語を 勉強しないといけないですね。
 それにしても、真名部警部の情報だけで、推理 をしてしまう信一君は素晴らしい。警部としての勘を磨いているはずの、真名部警部 を追い越してしまうのだから。
 警部と信一君の会話の姿も、微笑ましく、感動 的です。信一君のように、素直な少年は(前出の『狩野君』以外には)、あまり見か けなくなりましたね。実際の、少年達にもこんな素直な少年はどのくらいいるのでし ょう?
 人の言うことを無条件に聞きなさいとはいいませんが、もっと人の意見 に耳を傾けてみてはどうかな、と思うことがよくあります(少年に限ったことではな いのですが)。自分の意見ばかり押し通そうとして、人の意見も聞かずに意固地にな ったり、反論意見に対しても、嘲笑してみたり...、そんな人間には、ならないよ うに気をつけなければね。

 「少年編」の作品を読みつつ思うのは、「男の子ってかわいい」ということで す。だからなのか、最近年下の男性が周りに多くなった気がします。(それって単に 、私の歳が...ってこと?)
 できることなら、自分の子供がこんな少年であ ってくれれば、と思うのですが何しろ私は独身だし、シングルマザーの予定も、結婚 の予定も、まるっきりないのだから仕方ない。君達、弟分で我慢するとしよう。みん なこれからもよろしくね。
 ところで今月、ファンレターをいただきました。ありがとうございます。こんなに うれしいものであったのなら、私も好きな作家にだすべきだったと、思ってしまいま した。
 皆さんも、好きな作家や謎宮会のメンバーにも、是非ファンレターをく ださいね。私も、まだまだご意見ご感想は募集中です。よろしくお願いします。
 ファンレターでいただきました、ご希望のテーマは来月号に載せる予定です。お楽 しみにしてください。(遅れないよう、努力いたします。)
 では、また来月お 会いしましょう。
 寒くなりつつあります。読者のみなさま、お体にはくれぐれ も気をつけて。それでは。

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謎宮会webmaster.meikyu@rubycolor.org(高橋)

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