謎宮会 1997/10
1930年東京都生まれ。61年に〈宝石〉増刊号に「黒の記憶」を掲載してデビュー、63年に「歪んだ夜」で第2回〈オール讀物〉推理小説新人賞を受賞した。最初は社会派ミステリから出発し、64年には初の長編『四つの終止符』を刊行、更に65年『天使の傷痕』で第11回江戸川乱歩賞を受賞。以後も『ある朝 海に』(71年)『汚染海域』(同)『殺人者はオーロラを見た』(73年)など社会派ミステリを多数執筆したが、他にもスパイ小説の力作『D機関情報』(66年)、本格推理『殺しの双曲線』(71年)、伝奇推理『鬼女面殺人事件』(73年)、未来小説『21世紀のブルース』(『おお21世紀』改題/69年)、クライム・ノベル『悪への招待』(71年)、他にも時代伝奇小説『無名剣、走る』などその作風は幅広く、特に『名探偵なんて怖くない』(71年)を筆頭とする名探偵パロディ四部作は本格ミステリの楽しさに満ちたものとして評価が高い。67年には〈21世紀の日本〉をテーマとする総理府主催の小説コンテストに『太陽と砂』を投じ入選した。その後、73年の『赤い帆船』で十津川警部を初登場させる(この時点では警部補、のち『イヴが死んだ夜』(78年)で警部に昇進)。以後、『華麗なる誘拐』(77年)『ゼロ計画を阻止せよ』(同)など私立探偵左文字進の活躍譚を執筆する一方で、『消えたタンカー』(75年)『炎の墓標』(78年)など十津川警部が登場する海洋ミステリを次々と発表。そのため十津川警部は一時〈海の警部〉と称されたが、78年の『寝台特急殺人事件』でトラベル・ミステリーに進出してからは全国を縦断する日本で最も忙しい警部になった。『終着駅殺人事件』(80年)で第34回日本推理作家協会賞を受賞。以後執筆作品は十津川警部のトラベル・ミステリーに絞られ、一大ブームを招来した。最近では久しぶりに非シリーズ作品『浅草偏奇館の殺人』(96年)を発表するなど、旺盛な作品執筆は現在も衰えることを知らない。
(以上、葉山響作成)
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