謎宮会 1998/9
萩原 一良
どうも、広沢です。(嘘)これは2年ほど前に、1回きりで終わっ てしまった「探偵映画日記」を復活させたものです。2年前と違うと ころは、ヴィデオ、衛星放送で流された映画も扱うところです。ミス テリ映画だけでなく、その周辺の映画もとりあげたいと思っています。
弟以外の家族に誰も愛されていないと感じている少女マチルダ(ポ ートマン)は、ある日買物から戻ってきた際に、家族が皆殺しにされ たのを知る。父親は麻薬取引に手を出していたのだ。マチルダは、時 々見かけたことのあった奥の部屋に住む男(レノ)に助けを求める。 男は掃除屋(=殺し屋)だった。
ベッソンの演出の特徴としては、色の使い方、俳優のキャスティン グの妙、ユーモア溢れるシーンなどが挙げられるが、この「レオン」 もそれがちりばめられており、面白い仕上がりになっている。とにか く、「フィフス・エレメント」なんてつまらない映画を作らないよう に。
愛する人を守る方法は、たったひとつ──
ヤクザ絡みの商社を経営する伊勢(役所)には、幼い頃生き別れ同 然になった妹がいた。それだけでなく、伊勢には誰にも話したことの ない過去があった。その過去をめぐって絆が揺れ動き、殺人が起こる。 警視庁の佐古(渡辺)が捜査を開始する。
原作つきの映画は原作と比べられて大変だと思う。原作に忠実に同 じ味わいを出すのか、あるいは原作をたたき台にしてある一点を描く ことにこだわるか。この作品は前者である。しかし原作にあった“伊 勢が昔いたある場所で築き上げられた「絆」”が映画では希薄なため、 そのためにある人物が殺人を犯す――という展開に説得力がなくなっ てしまっている。後半は映画として見せ場もあったが、この欠点は致 命的だった。
人類に打つ手は無い。
原子力専門の研究をしているタトプロス(ブロデリック)は、突如 パナマに連れていかれた。そこで目にしたのは巨大生物の足跡だった。 やがて巨大生物はニューヨークに上陸した!
「あんな姿をした生物はゴジラじゃない」とか「魚は喰べない」等 批判の嵐が吹き荒れた本作だが、特撮を見てきたライターや評論家に 批判をする人は少ないようで「平成ゴジラシリーズに比べりゃまし」 (笑)だとか「別物と思って見ると楽しめる」といった評が目立った。 私は、というと結構面白く見られた。エメリッヒの演出は相変わらず でどこかからの借り物だったり、特撮なしではサスペンスが生み出せ なかったり、人物が描けていないと欠点は直っていない。ま、これが エメリッヒの持ち味なんだろう(笑)。「インデペンデンス・デイ」 (以下ID4)でも同じことを言われていた気がするぞ。ちなみに「 2」もやるらしく、キングギドラとの闘い(!)になるという噂が流 れている(本当か?!)。
かつてこれほどまでに、全米マスコミを魅了した映画があっただろう か!(第1弾)
一人の女、ひとつの真実、──男たち、野獣の輝き。(第2弾)
分科会の方々を誘って観に行った。これについてはまたじっくりと 書かせていただくため、今回ははずした。一言だけ述べると、格好い い、美しい、素晴らしいともう完璧。
はりつけにされた夫婦の惨殺死体が発見され、その妻はジャック・ コール刑事(セガール)の前妻だった。ジャックは捜査にのりだすが ……。
セガール主演のサイコ・サスペンス、と言いたいが、中味は滅茶苦 茶。だいたいこの手の話をやろうとしてセガールのアクションを中心 にもってくること自体に無理がある。ミステリの要素は、全くと言っ ていいほどない。セガールの力まかせの暴力捜査が見たい!という方 におすすめだ。なおセガール大好きOさんによれば、この作品はアク ションはかなり良いということだが、Oさんは去年のワーストにこの 作品を挙げていた。
嘘か?真か?
レニー・ゼルウィガー扮する娼婦がバラバラ死体になって発見され た。やがて事件直前まで一緒にいた男(ロス)が容疑者とみなされる。 男は刑事2人(ルーカー、ペン)によって嘘発見器にかけられるが…
一つ言っておくと、この映画を見る前に、この映画のパンフレット を読んではいけない。パンフレットの中に考えられるかぎり殆ど全て の推理が書いてあるからである。私が劇場に行った時はパンフレット に封がしてあった。パンフレットの中では、この映画について恩田陸、 霞流一、竹内祐一、茶木則雄が座談会形式で各々推理を述べているの で楽しめるぞ。構成については、この作品についてはあまり触れられ ない(ネタバレになる、というより楽しみが半減する)。しかし、少 しだけ述べておくと、中盤の構成にやや雑な箇所がある。ロス扮する 男の記憶が曖昧で、どれが本当の記憶か観客にわかりにくいのだ。犯 人当てを観客にさせるならそこらへんをしっかりしてほしい。
今日目を覚ますと、時計が午前6時10分前をさしていた。コンヴ ィニで朝6時からバイトしている私は、このままだと遅刻になってし まう。まずい。慌てて身支度して、家を飛び出した。暗い夜道を自転 車を走らせながらコンヴィニに到着した。よーし、なんとか間に合っ た!──と思ったら、5時だった(笑)。寝ぼけて1時間間違えたら しい。
スクールバスは湖に沈み、小さな町は悲しみに包まれた 喪失の日々 を乗り越えたどりつく、穏やかなその後
ある日スクールバスが事故を起こし、22人の犠牲者を出した。し ばらくして有能な老弁護士スティーヴンス(ホルム)が各家庭をまわ り、集団訴訟を起こすように説いていく。しかし各家庭には複雑な事 情があり、皆心に大きくあいた悲しみと、ぶつけようのない怒りを抱 えていた。スティーヴンスも、その行動の裏にはこじれた娘との関係 が大きく作用していた。
「スウィート・ヒアアフター」とは「穏やかなその後」の意。事故 のあとの「穏やかなその後」とは一体どんなものなのか?それは皆さ んがこの映画を観られれば確認できる。
3番目が一番こわい。
母親(黒木)から再婚する決意を告げられ、しかも東京に引っ越す と言われ、家を飛び出す良(吉沢)。夜8時、学校に集まった生徒た ちが次々と鏡に吸い込まれてゆく。鏡の向こうは、別の世界だった…。
この作品を観た理由はただ一つ、監督が金子修介だからである。一 作目は観ていたが、たいして面白くなかった。この作品は、というと これが結構面白い。断っておくが、傑作というわけではないが、それ なりに面白く観られるのだ。最初の、人体模型が歩いてくるのには辟 易したが、そのあとの妖怪たちは見ていて楽しい。特に黒木瞳ののっ ぺらぼうにはやられた。しかも包丁持って追っかけてくるんだよ。す ごいぜ。これだけでそそられる。4作目もやるようだが、今度は誰が どんな妖怪になるのか。楽しみだ。
7人の男女が乗った船が難破し、無人島に漂着する。しかしその島 には動物もおらず、食料はどんどんなくなっていく。彼らは別の難破 船を見つけるが、中で見つけた航海日誌には「キノコは食べてはいけ ない」と書かれていた。
人間としての尊厳を持ちながら死ぬか、それともそれらをすべて捨 てて生きてゆくか──。これがこの作品のテーマである。このテーマ もこの作品については必ずいわれていることだが、知らない方もいる と思うので一応書いた。作品の長さは90分だが、濃密な時間を過ご せるだろう。血が吹き出るだけの中途半端なホラーよりよっぽど怖い。 本多猪四郎と円谷英二は「ゴジラ」だけではないのである。久方ぶり に観たが、やはり面白い。一つ言えるのは、これを観たらキノコを数 日間食べられなくなるだろうということだ。
やり手の弁護士マーティン・ヴェイルは、大司教を殺した罪で捕ま ったエアロン(映画字幕ではアーロン)・スタンプラーの弁護を引き 受ける。しかし、どう見てもスタンプラーの有罪は動かないように思 われた。さらに検事局は、この事件にヴェイルの検事局時代の部下ヴ ェナブルを立ててきた……。
原作を読んだら面白かったので映画も見た次第。端所ったり細部を いじったりすることは映画化の際にはよくあることだが、残念だった のは、ヴェイルのキャラクター設定。原作では法曹界の表も裏も知り つくし、百戦錬磨のやり手という設定だったが、映画だと、やり手で はあるがかつて検事局時代に不正を犯し、それを隠滅しようとした自 分に嫌気がさして辞めた、正義のヒーローなのだ。私としては原作の 方が断然良かった。例えば原作の中では市の有力者たちの土地転がし の実態や大司教のある癖をバラさない。逆に取引の材料に使ったりす る。こういったところが表も裏も知りつくした切れ者──という印象 を私に与えたし、法廷で闘う時は、中だけでないのは勿論、外での駆 け引きも重要というのがよくわかった。ところが、映画では先述のバ ラさなかった部分を堂々と明かし、「正義」の名のもとに○断するの だ。
この方が観客に受けると製作側が考えたのか、あるいはリチャード ・ギアがそう望んだのかはわからないが、あまりに安易である。この 紋切型の主人公では魅力が半減してしまう。法廷で闘う者はギリギリ の部分で勝負している(ゆえに「ずるい」と言われる領域に踏み込む 場合もある)と私は思っている。だから、リーガル・サスペンスは面 白いのだ。法律の知識うんぬんだけじゃなく。
あと法廷シーンの序盤、細かいカット割りはスピード感に溢れてい て良かった。法廷シーンだと検察・弁護側どちらかが弁論していると 「異議あり」とか声が入ってスピードを殺していたからだ。しかしこ の映画も途中からそのパターンになる。
付け加えておくと、スタンプラーを演ずるエドワード・ノートンは 良い。それに相対する精神科医モリー・アリントン役のフランシス・ マクドーマンドとのかけあいは、演技達者同士で必見。
パリに住むアンナ(ゲンズブール)は眠りにつくと、ヴェネツィア に自分が居る夢を見る。ヴェネツィアのアンナ(=夢の中のアンナ) が眠りにつくと、パリのアンナ(=本当のアンナ)が目覚める。そん な時、刑事がやってきて…
観客の前に提示されたパズルのピースを一つ一つ埋めて形にしてゆ くタイプの作品。何の予備知識もなく見ると結構面白く感じるのでは ないだろうか。
誘拐 脅迫 強奪 カラオケ 人が愛のためにやること。
ご存知「シャロウ・グレイヴ」「トレインスポッティング」のスタッ フがおくる第3弾。ハリウッド進出第1弾でもある。
清掃作業員のロバート(ユアン・マクレガー)は会社をクビにされ て、単身社長室に乗り込んだはいいが、社長令嬢のセリーン(キャメ ロン・ディアス)を人質にして逃げなくてはいけなくなった。一方天 使であるジャクソン(デルロイ・リンドー)とオライリー(ホリー・ ハンター)は、ロバートとセリーンをくっつけなければ天へ戻れない ため、あの手この手で2人を引っ張り回すが……
ハリウッド進出ということで期待された本作品だが、残念ながら出 来は前2作より落ちる。誘拐した張本人のロバートはまるで役立たず で、逆に甘やかされて育ったセリーンが父親(演ずるはイアン・ホル ム)に痛い目にあわせてやろうとするところは面白い。ロバートとセ リーンの掛け合いもすっとぼけていて笑える。ただ、構成は平凡だし、 リンドーとハンターの天使2人が見ているうちに邪魔に思えてくる。 これはけっしてリンドーとハンターが悪いわけではなく、天使という 役柄がこの物語に合っていないのだ。この2人が出てくると、物語が 止まってしまう。いっそ天使を出さず、2人の逃避行で話を作ったほ うが突き抜けてて面白かったのではないか。
転校してきた少女(タニー)は、その学校で魔女と呼ばれている少 女3人組に声をかけられる。聞けば彼女たちは黒魔術に凝っており、 お告げによれば彼女が4人目の仲間だというのだ。仲良しになった4 人は黒魔術で悩みを解決し始める。
力を過信してそれにおぼれるものは痛い目にあう、という話である。 底が浅く、手堅くまとめてはいるものの、先が見えていてはサスペン スは生まれないし、それをねじ伏せる力もない。唯一ネーヴ・キャン ベルとスキート・ウールリッチが出ている点が買いか。
キャンベル扮する女子高校生は、一年前何者かに母親を殺されてお り犯人は未だ捕まっていなかった。そんな中、同級生2人が惨殺死体 となって発見され、学校は騒然となる。そして殺人鬼の魔手は主人公 の周辺にも伸びてきた。犯人はいったい誰なのか?
過剰な期待をしなければ、ホラー映画のパロディになっているので 楽しんで見られる。しかし、ミステリ好きから見ると、この犯人には がっかりだ。これが「意外」ねえ……
時速250kmのカー・チェイス!
なお製作・脚本はリュック・ベッソン。ベッソンがかかわったということから か、私が見に行った時は満員だった。
主人公はタクシー運転手。スピード違反をしたことで若い刑事と知 り合いになるが、その刑事の目下の悩みは欧州各国を荒らし回った強 盗団がここマルセイユにやって来たことだった。刑事はスピード違反 による免許停止を取り消す代わりに、強盗団の追跡に手を貸すように 要請する。
このピレスという監督はベッソンの独特の笑いをうまく映像化して いる。笑いの間の取り方も絶妙で、映画館でも笑い声が起こっていた。 カー・チェイスも迫力があり、観客の目を釘づけにするだろう。ただ はっきり言うと私はのれなかった。おそらく人物描写がはっきりせず、 映画の中に活かされていないのだと思う。笑いのシーンとカー・チェ イスのシーン以外は無駄に思えて仕方なかった。この監督は観客のの せ方、というものがよくわかっていないようだ。「普通じゃない」と の違いはそこにある。「普通じゃない」は、主人公2人が類型的なが ら強く観客にアピールしていた。それにより、観客はすんなり2人に 感情移入できる。「TAXI」にはそれがない。とってつけたように 過去のシーンを主人公が語り始める場面は、どうみても今までの話の 流れを止めていたし、必要だとも思えなかった。最後に、「ドーベル マン」の二番煎じのような銀行強盗のシーンにはうんざりした。比べ てはいけないと思うが、あれなら出来の悪い「ヒート」の方がまだま しである。
9月分も載せたかったが、分量が長くなるので来月に回す。
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