ADSL / Asymmetric Digital Subscriber Line
■ ADSL。Asymmetric Digital Subscriber Line。 非対称デジタル加入者線。 4種類あるDSL技術の1つ。DSLとは、 従来の電話回線を用いて、数MHzの高周波数を載せることにより、 数十Mbpsの広帯域通信を提供するアクセス回線技術である。 ADSLは、他のDSL技術と異なり、とくにダウンストリームの方が アップストリームと比較して多くの帯域幅を伝送できる仕様のため、 非対称(Asymmmetric)と呼ばれる。 ADSLは、ITU-Tが標準化を行い、複数の勧告を出している。 最初に標準化されたG.992.1(G.dmt)では、 下り最大8Mbps、上り最大1.5Mbpsの通信速度を実現する仕様である。 他に簡易版としてG.liteなどがある。 ADSL通信に使用する機器のうち、 センター側機器をDSLAM(DSL Access Multiplexer)と呼ぶ。 ユーザ宅内に置かれる機器をADSLモデムと呼ぶ。 両機器は、DMT方式(Discrete Multitone)と呼ばれる方法で通信する。 1MHz程度の周波数帯域を4kHzごとに細かく区切り、 個々のの帯域に少しづつデータを載せることでノイズ耐性を高めている。 この1つ1つの帯域を搬送波(ビン)と呼ぶ。 なお、ADSLの上位層はATMと規定されているため、 DSLAMのアップリンクはATM回線であることが多い。 一般にユーザ認証のため、PPPoAまたはPPPoEが併用される。 ADSLは、コンシューマ向けのブロードバンドインフラとして、 韓国や日本で爆発的に普及した。 最近ではキャリア、ベンダを問わず、さらなる高速化への挑戦が盛んで、 すでに下り最大40Mbpsのサービスも実現している。 ■ ITU-T勧告 G.992.1。 ADSLの最初の標準規格。 通称をG.dmt(ジードットディーエムティー)と呼ぶ。 上り通信に26kHz〜138kHz、 下り通信に138kHz〜1.1MHzの周波数帯域を使用し、 下り最大8Mbps/上り最大1.5Mbpsの通信速度を実現する規格。 G.992.1には、北米仕様のAnnex A、欧州仕様のAnnex B、 日本仕様のAnnex Cの3種類の付属勧告がある。 Annex Cは、日本独自のISDN規格(ピンポン伝送方式)との 干渉を避けるための特別仕様であり、DBM(Dual Bitmap)を使用する。 ■ ITU-T勧告 G.992.2。 G992.1の簡易版。 通称をG.lite(ジードットライト)と呼ぶ。 上り通信に26kHz〜138kHz、 下り通信に138kHz〜552kHzの周波数帯域を使用し、 下り最大1.5Mbps/上り最大512kbpsの通信速度を実現する規格。 G.992.2には、北米仕様のAnnex A、欧州仕様のAnnex B、 日本仕様のAnnex Cの3種類の付属勧告がある。 Annex Cは、日本独自のISDN規格(ピンポン伝送方式)との 干渉を避けるための特別仕様であり、DBM(Dual Bitmap)を使用する。 ■ ADSLの高速化。 現在では、ADSLの高速化が進み、 通信事業者からは下り通信速度が12Mbpsのメニューや、 24Mbpsメニュー、40Mbpsメニュー等が提供されている。 これらの高速メニューのうち12Mbpsまでのサービスは、 基本的に8Mbpsと同じ規格(G.992.1)に準拠しているため、 使用する周波数帯は同じ(〜1.1MHz)であるが、 高速化のために下記(1)〜(3)のような技術が追加で用いられている。 また、24Mbps以上の速度を実現するADSLでは、 これらの技術を利用するほか、使用する周波数帯域を2倍にし、 従来最大1.1MHzだった周波数を2.2MHzに高めている。 のちにG.992.1 Annex Iとして、ITU-T標準化された(2003年5月)。 ADSL技術では、一般に高速化するほど伝送距離は短くなる。 これは主に線路のノイズが悪影響するためである。 このため、12Mbps以上の速度を出せるのは2km以内とされ、 24Mbpsにいたっては、200m以内と言われている。 (1) フルビット・ローディング。 G.992.1の規格に厳密に従い、 1つの搬送波に15ビットの信号を乗せること。 以前はチップの性能の限界で11〜12ビットしか載せられなかった。 (2) オーバーラップ。 G.992.1 Annex Cの拡張オプション。 上り通信用の周波数帯域を下り通信にも使用することで、 搬送波(ビン)の数を増やす技術。 上り信号と下り信号が混ざるが、エコーキャンセラで区別できる。 もともと上り通信帯域は低周波数帯域であり、 ここにに拡張することになるため、長距離化も図れる利点がある。 (3) S=1/2。エスイコールニブンノイチ。 G.992.1に規定されている誤り訂正符号のビット数を半分にし、 その分をデータ転送に割り当てる技術。 もともと線路ノイズが少ない場合に限り、有効である。 ■ BAS。Broadband Access Server。 DSLサービスを提供する通信事業者は、 ISP向けのホールセールというサービス形態をとることが多く、 ユーザーからISPへの接続の処理を効率的に運用するため、 BASを導入している。 BASは基本的にはレイヤ3デバイスなので、 ルータ機能を持ち,優先制御や帯域管理なども可能である。 ブロードバンド版のRASといってよい。 BASは、通常DSL事業者の集約局内に設置され、 各電話局のDSLAM(数十〜数百台)が接続されるATM回線を集約し、 上位回線へのアグリゲーションを行う。 また、ADSLモデム、ブロードバンドルータ、PCなど、 ユーザ宅内に設置されたPPPクライアントからのPPPセッションを終端し、 RADIUSと連携して、接続先ISPへの選択的な接続を行う。 米RedBack Networks社のSMSなどの製品が有名で、広く採用されている。 参考URL RedBack社 SMSファミリ http://www.redback.com/ja-JP/products/home_sms.html ■ ユーザ認証の方法 ADSL網は上位プロトコルとしてATMを使用する。 このためADSLモデムを認証するには、PPPoAを使用する。 しかし、ADSLモデムを透過して、 宅内LAN上のローカルルータやPCを直接認証する場合には、 PPPoEを使用する。 (1) PPPoA。PPP over ATM。 ATM上でPPPを利用してIP通信を実現する仕組み。 ADSLモデムからBASに接続してPPP認証を受ける場合に用いる。 RFC2364で規定されている。 (2) PPPoE。PPP over Ethernet。 イーサネット上でPPPフレームを伝送する技術。 LAN内のPCなどからWAN内のBASに直接PPP接続することができる。 以上。 2004/02/26 pm