フレームリレー / Frame Relay


■ フレームリレー。Frame Relay。

  1992年に登場したパケット交換の標準規格。

  光ファイバなどの信頼性の高い回線の使用することを前提に、
  X.25の誤り制御の手順を簡略化することにより、
  高速で遅延の小さい通信を実現する目的で設計された。
  通信速度は、一般的には64kbps〜1.5Mbps(最大6Mbps)。

  フレームリレーは、エラーを検出した場合でも、
  送信側に通知することなく廃棄する。
  このため再送制御を行なうには、
  端末同士が別の上位層プロトコルを使用する必要がある。

  具体的な通信サービスとしては、
  NTTのスーパーリレーFR等がある。

■ フレームリレーのプロトコルスタック

  フレームリレーは、
  OSI参照モデルの物理層とデータリンク層(下半分)で動作する。

  フレームリレーのレイヤ1は、
  ISDNのレイヤ1仕様であるITU-T勧告I.430,I.431をそのまま利用する。

  フレームリレーの中核部分となるレイヤ2は、転送プロトコルの役割を担う。
  (PVC/SVCを使用した)フレーム多重、誤り検出、輻輳制御などの機能を持つ。
  コアプロトコルとしてLAP-Fを利用する。ITU-T勧告Q.922で規定されている。

  フレームリレーのレイヤ3は、呼制御プロトコルの役割を担う。
  SVCの呼制御やPVCの状態確認手順を司る。ITU-T勧告Q.933で規定されている。

  フレームリレーの上位層のプロトコルは、TCP/IPを使用することができる。
  そのほかにも、IPX、AppleTalkなど、幅広いプロトコルをサポートしている。

■ フレームフォーマット。

  フレームリレーでは、
  HDLCフレームをベースにしたLAP-Fフレームを使用する。
  LAP-Fフレームは、HDLCフレームの制御部を省き、アドレス部を2オクテットに拡張。
  ここにDLCIのほか、プロトコルの機能をすべて盛り込んでいる。

  

■ 論理多重。

  フレームリレーは、
  論理多重通信の機能を持っているコネクション型のプロトコルである。
  単一の物理回線上に複数の仮想回線を多重できる。

  この仮想回線は、DLCI(データリンク接続識別子)で識別する。
  DLCIは、10ビットの領域を持つので、1〜1,023までの値を設定できるが、
  このうちユーザが通信相手の識別に利用できるのは、16〜991までである。

  接続形態としては、SVCとPVCの両方を使用できるが、
  利用形態としてはPVCの方が多い。

■ PVC。Permanent Virtual Connection。

  相手固定接続型コネクション。
  フレームリレーなどのパケット交換網における接続形態の1つ。
  仮想回線を確立し永続的に維持するもの。
  端末間での通信の有無にかかわらず、恒常的にコネクションを張っておく。

  PVCでは、ネットワーク管理者があらかじめ手動で、
  交換機や端末にコネクションを固定的に設定しておく必要がある。
  このため、ネットワークが大きくなるほど作業は煩雑になり、
  運用管理も困難になる。

  しかし、SVCのように
  回線の確立と切断の制御のためのトラフィックが発生しないので、
  ネットワーク帯域を節約できる利点がある。
  このため、現在の企業ネットワークでは、主にPVCが使われている。

■ SVC。Switched Virtual Connection。

  相手選択接続型コネクション。
  フレームリレーなどのパケット交換網における接続形態の1つ。
  通信を行うときだけ端末間で仮想回線を設定する方法。
  通信を始めたいエンドシステムが、通信相手を指定して、
  交換機に呼設定要求を送ると、交換機が自動的に仮想回線を設定する。

  人手によりあらかじめ各機器にコネクションを設定する必要がないので
  初期導入時や増設時の設定作業が少なくて済む。
  運用管理は比較的楽である。

  しかし、呼の確立や切断のやり取りに一定の帯域を消費する。
  このためSVCは、データ転送が散発的である場合だけに使われる。

■ 輻輳制御。

  フレームリレーは、輻輳制御が可能である。

  フレームリレーは、ウィンドウ制御やバッファ制御によって、
  網内に入力されるパケット数を制限する仕組みを持たない。
  このため、各端末からいっせいにデータが送出されると、
  ネットワークの輻輳が発生する危険性がある。

  このためフレームリレーには、
  網内が輻輳した場合に、そこから抜け出すための仕組みが規定されている。
  具体的には、軽輻輳と重輻輳の2レベルを定義。
  レベルに応じて、輻輳制御やフレーム廃棄が行われる。

■ FECN。Forward-Explicit Congestion Notification。

  フレームリレー網において、交換機が輻輳を検知した場合に、
  その事実を宛先DTEに通知する仕組み。
  具体的には、フレームヘッダのFECNビットをオンにする。

  トラフィックの流れと同じ方向に対して通知するので、
  順方向明示的輻輳通知(フェックン)と呼ぶ。

■ BECN。Backward-Explicit Congestion Notification。

  フレームリレー網において、交換機が輻輳を検知した場合に、
  その事実を送信元DTEに通知し、
  パケット送信速度を落とすように指示する仕組み。
  具体的にはフレームヘッダのBECNビットをオンにする。

  トラフィックの流れとは逆方向に対して輻輳を通知することから、
  逆方向明示的輻輳通知(ベックン)と呼ぶ。

■ DE。Discard Eligibility。廃棄可能表示。

  フレームリレーでは、
  CIRを超える速度で送信されたすべてのフレームについて、
  ヘッダのDEビットを立てておく。
  そして輻輳時には、このDEビットがオンになっているフレームを
  優先的に破棄するルールになっている。

■ CIR。Committed Information Rate。

  認定情報速度。
  フレームリレー網が輻輳した場合でも、
  各端末に最低限保証されるデータ伝送速度。
  CIRは論理的な伝送速度であり、PVCごとに設定できる。

  ユーザは通常時は、
  CIRを超える通信速度でバーストデータを送出することができる。
  しかしフレームリレー網が混雑した場合には、
  CIRを超える速度で送信されたフレーム(DEビットが立っているフレーム)が
  網側で廃棄されることになる。

  もしCIR=0に設定すると、輻輳時に保証される伝送速度が0になる。
  つまり、CIR=0としたチャネルでは、
  ユーザデータが全く送れない状態が発生することがあるの。

■ FRAD。Frame-Relay Access Device。

  データ網や電話網をフレームリレー網へ接続するための機器。
  データをフレームリレー形式に変換して送信したり、
  受信したフレームから元のデータを復元したりする機能を持つ。

  実際にはルータがFRADの機能を持っていることが多い。
  大抵の場合、ルータをフレームリレーのFRADとして設定することによって、
  接続することができる。

■ LMI。Local Management Interface。

  ルータなどのフレームリレー端末と
  フレームリレー交換機間のPVC管理に関するプロトコル。
  ANSIが勧告したこのLMIを元にして、
  ITU-T勧告Q.933のPVC状態確認手順が策定された。

  LMIでは、ユーザ側の端末からフレームリレー網に対して、
  一定間隔で、網の状態を問合わせるメッセージ(Status ENQ)を送信する。
  フレームリレー交換機は、求めに応じて、個々のPVCの使用可否(Status)を返送する。
  もしも網側から応答がなければ、ユーザ側端末は網に障害が発生したと判断する。

  LMIはこうして、
  キャリア側のフレームリレー交換機とユーザ側端末の間で、
  ほぼリアルタイムの故障検知を実現することができる。

以上。

2004/02/06 pm


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