VRRP / Virtual Router Redundant Protocol
■ VRRP。Virtual Router Redundant Protocol。
複数のルータやレイヤ3スイッチを利用したネットワークで、
デフォルトゲートウェイに設定していたルータが障害になったとき、
デフォルトゲートウェイを自動的に切り替えるためのプロトコル。
RFC2338に規定されている。
VRRPは、直接IP上で動作する(IPパケットに直接カプセル化される)
トランスポート層プロトコルであり、
プロトコル番号としては112が割り当てられている。
なお、米シスコシステムズの独自仕様である
HSRP(Hot Standby Router Protocol)も同様の機能を持っている。
■ 仮想ルータ。Virtual Router。
VRRPではLAN上に、
複数の物理ルータ(複数のIPアドレス/MACアドレス)から構成される
1つの仮想ルータを定義する。
そして仮想ルータには、仮想IPアドレスが定められる。
同じ仮想ルータを構成するルータ・グループを識別するためのIDを
仮想ルータID(VRID)という。
また仮想ルータを構成する物理ルータのうち、
通常使用されているものをマスタルータ、
スタンバイ状態になっているものをバックアップルータという。
■ 仮想IPアドレス。
仮想ルータは単一の仮想IPアドレスを持ち、
ホストはこの仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定する。
なお仮想IPアドレスには、
実際の物理ルータのIPアドレスを使用することもできるが、
仮想ルータ専用のアドレスを作ることもできる。
仮想ルータは、以下のような仮想MACアドレスを持ち、
LAN内ホストからの、仮想IPアドレスに対するARP要求に対しては、
このMACアドレスを応答する。
00-00-5E-00-01-[VRID]
なおARP要求に応答するのは、マスタールータだけである。
■ マスタールータ。
VRRPでは、仮想ルータを構成する(同一のVRIDを持つ)
複数の物理ルータのうちの1台を、マスタールータと定める。
そして通常時は、このマスタールータが
仮想IPアドレスを利用し、トラフィックの転送を行う。
もしも仮想ルータのIPアドレスとして、
物理ルータの実IPアドレスを利用する場合には、
この物理ルータが必ずマスタールータになる。
しかし別のIPアドレスを利用する場合には、
プライオリティ値(1〜254)の大きい物理ルータがマスターになる。
(同値であれば、IPアドレスを比較する。)
■ バックアップルータ。
VRRPでは、マスタールータ以外の物理ルータは、
すべてバックアップルータとして動作する。
バックアップルータは、
マスターがダウンしたとき、速やかに仮想IPアドレスを引き継ぎ、
あたかも仮想ルータが存在し続けているように動作する。
LAN内のエンドホストは、もともと
仮想ルータのIPアドレスをデフォルトゲートウェイに設定しているので、
マスターがダウンしても、切り替えを意識することなく通信を継続できる。
■ VRRPメッセージ。
VRRPメッセージの種類には、VRRP広告しかない。
マスタールータは、このVRRP広告を使って、
自身のプライオリティ値とVRIDを、1秒間隔で通知する。
このVRRP広告は、同一のVRIDの中では、マスタールータしか送信できない。
VRRP広告を送信する際には、
送信元IPアドレスには、物理ルータのインターフェースアドレスを、
あて先IPアドレスには、224.0.0.18という専用のIPマルチキャストアドレスを使用し、
TTLは255に設定される。
バックアップルータは、
マスタールータからのVRRP広告に含まれるプライオリティ値が
自分のものより大きいときは、バックアップのままで待機する。
しかしいざマスタールータに障害が生じてVRRP広告が来なくなると、
バックアップルータは自らVRRP広告を行うようになる。
すると、同じVRIDに含まれるルータは、
互いにプライオリティ値を比較して、再度マスタールータを決める。
新しいマスタールータが決まると、
そのルータはすぐLAN内にマルチキャストフレームを送信する。
このとき使用する送信元MACアドレスは、
以前のマスタルータから引き継いだ、仮想MACアドレスである。
すると、LAN内のスイッチは
そのMACアドレスを再学習し、即座にMACテーブルを更新、
フレームを転送すべき物理ポートを切り替えることができる。
■ 負荷分散。
VRRPはルータの2重化のみを提供するもので、
複数のルータに負荷分散を行う機能は備えていない。
負荷分散を併用するには以下のようにする。
ネットワーク内に2つのVRID(VRID1/VRID2)を作成し、
VRID1ではルータ1をマスタールータとし、
VRID2ではルータ2をマスタールータとする。
ネットワーク内のパソコンの半数は
VRID1の仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定し、
残りではVRID2の仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイに設定する。
以上。
2004/03/04 pm