「なあ、長森」
「どうしたの、浩平? 」
「なんで、走ってるんだ、俺達? 」
時折、凍えるような風が流れてくる。
道路には溶け残った、雪がちらほらと見える。
そんな、いつもと変わらない日。
俺はやっぱり長森と走っていた…。
「浩平がすぐ起きないからじゃないか〜」
少し息を切らせながら、長森は怒ったふうに言う。
「そうだっけ? 」
「そうだよ〜。まったく、やっぱり浩平には私が必要だよ」
凄いことをさらっと言いやがったな…。
「なに言ってんだよ。お前が俺を起こせないから、走ってるんだろ? 」
「それはそうだけど…」
俺は長森をからかってみることにした。
「だったら、俺には長森よりしっかりした人が必要なんじゃないのか? 」
「そんなぁ…。あっ、浩平危ない! 」
少し後ろに走る長森を見ながら走っていた俺は、言われて前を向く。
そこには女の子がいた。
この赤いリボンは、あいつか!
俺は、肘を前に突き出し、腰の辺りにねらいを定めた。
と、長森の声を聞いたのか、女の子が後を振り向いてしまった。
「きゃぁー! 」
「ぐおっ」
どか〜ん!
けっこう、良い音がした。
幸いなことに、俺に怪我は無い。
俺の肘は鳩尾に入ったし、言うこと無しだ。
これがオリンピックの競技になったら、俺は確実に日本代表に選ばれるだろう。
「言うこと無しじゃないわよ〜!げほっ、げほっ…」
「なんだ、やっぱり七瀬か」
七瀬は苦しそうな振りをして、その場にうずくまっている。
「大丈夫、七瀬さん? 」
「大丈夫じゃない…」
「なんだ、本当に痛がってたのか? 」
顔を上げた七瀬の目には涙が光っていた。
「当たり前でしょう! 急に後からぶつかってきたと思ったら、鳩尾に肘を入れられたら、誰だって痛いわよ! 」
「浩平、そんな事したの? 」
「まあな。あの一瞬に凄い判断だったと、俺自身驚いている」
「なにが凄い判断だよ! 」
きーん、こーん、かーん、こーん
「やばい! 遅れる! 」
「ちょっと、置いていかないでよ〜」
「なんだよ、早く動けよ」
「痛くて動けないのよ! 」
痛い、痛いと言うわりには元気だよな…。
「ったく、しょうがねえな。待っててやるから、早くしろよ? 」
「誰の所為で痛がってるのよ! 」
「よけなかった、七瀬の所為…」
「あんた、絶対殺してやるわ…」
おお、目が血走ってる。
これはやばいかもな…。
「二人とも…」
七瀬の目を見てしまった、長森は恐る恐る言った。
「もう、完全に遅刻だよ…」
『なに! 』
長森は腕時計を俺達に見せる。
時計は8時45分を指していた。
「遅刻だな…」
「1時間目始まってるよ〜」
「不味いわね…」
「走るぞ! 」
俺は学校目指して、走る。
長森と七瀬も後についてくる。
いつもと変わらない日常だった。
でも、俺には凄く楽しかった。
嬉しかった。
なによりも、長森が隣に入てくれることが。
帰ってきて良かった…。
心からそう思えた…。
Fin
どうも、BASARAです。
御巫吉良さん、50000HITおめでとうございます。
凄いですね〜。
いや〜、羨ましいかぎりです(笑)
で、そのお祝いとしてこのSSを書きました。
私にとって、初めてのONEのSS。
なかなか、上手く書けたんじゃないかと、自分では思ってますが、皆さんはどう思います?(核爆)
出来れば、感想送ってくれると嬉しいです(笑)。きついことでも構いません。
ただ、嫌がらせは辞めてね♪
それでは、最後にもう一度、50000HITおめでとうございました♪