二週間後。日が落ちて間もない夕方。

「何もアナタ自身が行く事はないんじゃないでーすか?」

織姫は大帝国劇場玄関前で鳴滝と話をしていた。

「いや、私の仲間になるかもしれない人たちだからね。自分の眼で確かめたいんだ」

実験演習は昨日で終了していた。
すると鳴滝はさっそく新部隊の隊員候補生の元へ自ら赴くことにしたのだ。
突然の鳴滝の決断に織姫は戸惑っていた。
この二週間、鳴滝との仲は完全に修復されていた。いや、昔以上に親密になったかもしれない。
二人の仲の良さをさくらから聞かされた噂好きの榊原由里はさっそく噂を広めてしまった。
既に歌劇団内では『二人は恋人』との認識を受けてしまっていた。
織姫はそんなからかい混じりの噂を一つ一つ『怒り』を持って打ち消そうと懸命だった。
もっともそれが逆効果であることを本人だけはまったく気がついていなかったが……

「どこまで行くのですか?」

「二人は養成校の『乙女学園』の生徒だから最後かな? 後は東南アジア、朝鮮、アメリカ……
 ブラジルもあったかな?」

「……そんなに!?」

「ああ。副司令の情報収集力には驚かされるよ。
 霊力の高い人物をよくこうも世界中から見つけ出したもんだ」

肩をすくめる鳴滝。

(そういう意味でいったんじゃないんでーすけど……)

織姫は鳴滝の勘違いを訂正する気はなかった。

「君には……感謝している」

「やめてください、鳴滝。ワターシたちは『仲間』でしょう?」

「そうだね……だから私は強くなりたい。今度は私が君を守れるように……」

「え!?」思わぬ言葉に織姫の顔が少し紅潮する。

「え、あ、いや、そんな深い意味で言ったわけでは……」

鳴滝も自分の言った言葉の意味に気がついたのか、照れている。

「ホント、鳴滝は表情が豊かになりましたねー。前はにやけた表情ばっかりだったのでーすけど」

「にやけたは酷いな……でも、自分でもそう思うよ」

「まあ、昔よりずっといいでーすよ、その方が」

「そうかな?……まあ、そうだね。『普通』が一番いいんだろうね」

ふと、時計を見る鳴滝。

「おっと、そろそろ行かないと汽車に間に合わないな。それじゃあ、行くよ」

「……ねえ、鳴滝?」

「うん?」

織姫は空を見上げ、上空を指差す。夜空には満天の星がきらめいていた。

「私たちはあの『星』だった……『星』は流れ、2つの『星屑』は『花』を咲かせまーした」

「……」

「もう1つの『星屑』は何になるのでーすか?」

「私は……」ゆっくりと空を見上げる。

「また帰るさ……あの『宙』へね……」

新部隊『宙組』(そらぐみ)命名の瞬間だった……



〜星屑の記憶〜 終劇
 
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