火の鳥 〜黎明編〜
手塚治虫/角川文庫

手塚治虫さんの「火の鳥」です。
私は文庫本になったものを買いました。ずっと読んでみたかった作品でした。
前に「鳳凰編」と「ヤマト編」をテレビ放送されたときに見てからずっと、
原作を読んでみたかったんですが、なかなか機会がなくて、ようやく、って感じでしたね。(^^;

この「黎明編」は不老不死になるという火の鳥の血をほしがる人たちを巡り、
ナギという少年が猿田彦というもともとは、敵地にいたナギを自分が故郷の敵だと知っていながら、
顔がみにくいということから、孤独がちで、ひとりぼっちだった猿田彦が敵地につれて来るんです。
そこはヒミコが治める国だった…。そして、ヒミコは自分の美しさのために、火の鳥の血を
求めていた…。そんなかんじで、話は進みます。(わかりにくくてごめんなさい(−−;)

…猿田彦の孤独。それをナギは一緒に暮らすうちに人は見かけではない。
猿田彦のやさしさ、人柄を見ていくうちに、彼のことが好きになります。そのときの
猿田彦の嬉しさ…ほんとに嬉しそうな、それまではどこか寂しいところがあったような
顔つきが、ナギという本当に自分を理解してくれる人に出会ったことで、
彼は救われたんだなぁ…と感じました。
その後、もう一人彼を本当に理解してくれる人に出会うんです。
この人は奥さんになる人なんですが、人は心なんだ、と本当に純粋に心が綺麗な人が
この人なんだなぁと思いました。

…火の鳥のスケールは本当に大きくて、なんて書いていいものか正直、
私ごときにはわからないんですが、(汗)なんにしても、今、ここまで純粋に、
心が綺麗な人がどのくらいいるんだろう…。純粋にほんとに欲とか、そういうものに
とらわれない人が、上に立ってくれたら…、何かが変わるのかもしれないと感じずにはいられません。
手塚さんのメッセージ。今、世界の人たちが受け取らなくてはならない大事なメッセージ、
なんじゃないかと、思います…。


火の鳥 〜未来編〜

二巻目は「未来編」です。この未来編は読んでいてとても怖くなった本です。
…だんだん同じ未来が近づいているような気がして…。ほんとにこわいんですよ〜、これ。(−−;

地球は、死にかかっていた…。ここから物語りは始まります。
地上に住めなくなった人類は、すべてを地下に持ち込み、生活の場としていました。
都市は5つ、大きなビル、あふれかえるたくさんの人々…。
あまり変わらない光景ですが、人々は自ら作り出したコンピュータ達によってすべてを統制されて
いました。人類戦士、と呼ばれる人により、その統制は守られていて、主人公、マサトも
人類戦士でしたが、あることをきっかけに都市を追われ、何もない地上に
ムーピーという不定形生物のタマミとともに出てきます。
そこでマサトは火の鳥に出会い、永遠の命を与えられ、地上の生物の復活を見届けなくては
ならなくなります。生物の復活…人は過ちを犯し、5つあったすべての都市が
超爆弾によって滅びてしまうからなんです。
…人は…いつの時代も同じ…なんですね。戦争、爆弾、今のこの世界と同じような、
事態になってしまう…。どうして、皆が一緒に暮らしてはいけないのか…。
それを言ってしまったらきりがないですけど、でも、コンピューターに制御されつつ
ある現在、人はどこまで人らしくしていけるんだろうか…。
いろんなコンピュータ(まぁ、これもそうですが)が作られ、便利になっていく世界で、
でも、人らしさはけして忘れてはいけないんだ…と思います。
人は「考えられる」んです。
これからの未来、本当に人はどうすべきなのか、考えなければいけないんでしょうね。(−−;


火の鳥〜ヤマト・異形編〜

火の鳥三巻目は「ヤマト・異形編」です。
ヤマト編は前に映画化されていて、TVでも放送され、それをビデオに録って何度も見ました。
主人公オグナはヤマトの王子。クマソの長である川上タケルを倒してくることを父に命ぜられます。
しかし、タケルはとても尊敬に値する人物、しかも、タケルの妹、カジカの事を好きに
なってしまうオグナ。そんな中で、ヤマトに帰るべきなのか、このままクマソの人間として
生きるべきなのか、迷うオグナにクマソの守り神である火の鳥はオグナに
ヤマトへ帰るよう導きます。「オグナにはヤマトで成し遂げなければならない事がある」
このために、オグナはタケルを裏切り、カジカをも裏切ってヤマトへ帰ります。
…帰ったオグナに待っていたものは、父の墓(古墳)作りだった…。
古墳。学校の歴史で必ず習いますよね。そして、王が死ぬと一緒に「殉死」と言う形で、
生きた人が一緒に土に埋められていた事を…。
オグナはやさしい王子でした。この殉死をなんとかやめさせようとするんです。
なぜ、無関係な人々まで一緒に埋められなくてはならないのか…。
なんとかして、助けようとするんですが、ついにはオグナも一緒に殉死させられて
しまうんです。でも、オグナには火の鳥からもらった不老不死になるという火の鳥の
生き血を含ませた布がありました。それをその人たちになめさせるんです。
…そう、オグナの役目とはこれだったんです。
生き血をなめた人たちは、土の中で生き続け声を出して訴えます。
「殉死なんてやめろ!」と。
これが、映画ではオグナの笛の音だったんですが、漫画では生の声で合唱したりと
生きている人たちに訴えるんです。
なぜ、一人の人間の為に多くの人たちの命までもが奪われなくてはいけないのか…。
それを生きている人間に訴える事こそ、オグナの役目だったんだ…。
涙がとまりませんでした。

その後は歴史で習ったように、墓の周りに「埴輪」を置く事によってこの殉死の
慣わしは終わります。
…これを読むと、本当にこんな事があったんじゃないか…と思ってしまうのは
私だけ…?(苦笑)

カジカとは、ヤマトで再会します。兄の仇を討ちに来たカジカですが、どうしてもオグナを
討つことはできず、しかも、カジカも殉死の生贄にされてしまうんです。
でも、オグナとは隣に埋められ、最後は二人とも幸せそうに息を引き取るんです。
きっと、きっと幸せになってほしい…と願わずにはいられませんでした。(;;)

異形編のほうは、自分の犯した罪を償うために、何度も同じ時を繰り返し、
その罪が消えた時に救われるという女の人が描かれてました。
これも、なかなか怖いです。(−−;


火の鳥〜復活・羽衣編〜

復活編は、一度事故で死んだ少年、レオナの物語です。
レオナは車の(と言っても未来の車で、空を飛んでるようなものなんですけど)落下事故を起こし、
一度命を失います。
ところが、レオナは生き返るんです。未来の『科学』の力で。
人工頭脳を頭に入れられ、自分の意思とは無関係に事は進められ、レオナは命を吹き込まれるんです。
…でも、やはり人が命を…一度失った命を戻せるなんてもはや人の手に余るもの…。
レオナは生き返りましたが、周りの命あるもの、人、動物などががらくたのように、
見えてしまうようになってしまいます。無機質のもの…家具や、絵などは
普通に見えるんです。
そんな中で、レオナに唯一人として見えたのが、『チヒロ』という女性…。
この人は本当はただのロボットなんですが、レオナにとってはただ一人の心を許せる人に
なっていくんです。
そのうち、レオナは真実を知ります。なぜ、自分は事故にあったのかを。
実は、レオナの家の財産を目当てにした親族が、殺し屋を雇い、レオナを事故に見せかけ
車から落下させていたんです。
財産…。確かに大事なものかもしれません。でも、人の命を奪ってまで…それで
本当にいいのでしょうか?人が人を殺す…今でもニュースなどでこのような『事件』は
たくさん聞きます。でも…人とは一体なんなんでしょうか?
一生懸命生きている人の命を…どうして奪う事ができるんでしょうか(;;)

そのうちチヒロは海賊の女ボスに気に入られ、死んだ後、女ボスに身体をくれてやる事を
承諾します。しかし、心まではやれない、心はいつだってチヒロと一緒だから…と、
自分の電子頭脳をロボットであるチヒロの中に移してほしいと博士に頼み、
そうしてチヒロとレオナが一緒になり、作られたロボットが、『ロビタ』と呼ばれる
ロボットになるんです。
…このお話は、レオナの時代と、ロボット・ロビタの時代とが交互に展開していきます。
そう、ロビタも、レオナも同じだから。どちらも人の心をもった人間だから。
ロビタのたどる運命もまた悲しい運命です。読んでいて、涙が出る物語です。(;;)

羽衣編はちょっと作りが他のものと違い、見世物小屋っていうんでしょうか?
舞台風に描かれているちょっと特殊な(?)物語です。
昔話の『羽衣物語』(っていうんでしたっけ?)みたいなお話で、天女、とされているのは
実は未来から来た人だったという話。
読んでいてなんか納得させられてしまいました。(苦笑)

そう、ロビタは他のお話にも出てくるんですよ。
『未来編』だったと思うんですが。
火の鳥はそうやっていろいろリンクしているので、そういったところも読んでいて楽しいです。