【タイトル】170
【 名前 】ヘタレ文スマソ書きたくなった
【 日付 】2000/10/03 14:50
2000年年末、本日のコミックマーケットで全ては終わる。
冷たい空気の中、俺は一人で列に並んでいた。中小のイベントしか
行かない人混み嫌いの俺が、このコミックマーケットに来るのは
これで2度目。1度目は学生の頃、友人に手伝いを頼まれて。
当時はエロ本目当てに走り来るオタクパワーズに圧倒されたものだ。
だが、今日は・・・
大行列などほど遠く、実に閑散としている。事前コスプレ者の姿もめっきり
見えない。皆一様に息を潜めているようにも感じた。
いや実際そうなのだろう。元気なのはテレビのクソリポーターどもくらいだ。
「見て下さい、白麦茶の集団です!!」
声が鼻につく女リポーターが楽しげに叫び、カメラが俺達を映していた。
2週間前。西鉄バスジャック犯「ネオ麦茶」と同じ掲示板で犯行を
予告し、6人の幼女を惨殺したという日本史上最悪のロリペドが捕まった。
名は、「白麦茶」。・・・「白」は精液が由来らしい。
彼の部屋からはアニメ・漫画の少女があえぐ
変態同人誌が大量に見つかり、愛用のパソコンからは某掲示板へのアクセスも
認められた。細く白くニキビ顔、淀んだ瞳。ワイドショーは今
気色の悪い彼の顔一色だ。
それはつい先日まで、中学生活でのいじめを耐えつつ、放課後は
幼女を凶器で脅し林の中へ連れ込んでいた、15歳の少年の顔であった。
(つづく)
【タイトル】203
【 名前 】ヘタレ文スマソ2
【 日付 】2000/10/11 13:54
小さい者ほど大きい者の皮をかぶりたがる。「ネオ麦茶」も
「麦茶」という、当時その掲示板では高名だった固定ハンドル名を
いじくったものだという。・・その正体は幼い子供でさえ
凶器の助けがないと干渉できない真性のクズだというのに。
「・・・」
そこまで考えて、俺は自分を嘲笑した。
15歳。そのころやはりいじめに遭っていて、家で鬱憤ばらしに
9つ年下の妹をいじめていた俺が、言えた義理ではないからだった。
白麦茶逮捕後、当然ながら某掲示板そしてコミックマーケットへの
風当たりはクライマックスを迎えた。
掲示板は殺人予告が出る度に利用者を増やし、ネオ麦茶の時をしのぐ話題の
サイトと化していた。が、それもマスコミが
卑劣残虐掲示板として辛辣に報道するようになってからは、
バスジャック時のように逆にそれをウリにする、ということも不可能となった。
そして数日前、ついに閉鎖を余儀なくされた。
(すまん つづく)
【タイトル】208
【 名前 】ヘタレ文スマソ3
【 日付 】2000/10/12 09:11
実は俺もその某掲示板を結構利用していた「名無しさん」の
一人だった。ギコ猫という、色々な変形を遂げ、
毒を吐いたり素晴らしいことをほざいたりする謎の生命体が
可愛くて大好きだったりした。匿名性の無法地帯(?)なだけに
それ故がかもしだす面白味が俺にしっくりきていたのだ・・他にも
煽りや嫌味まじりの敬語レス達で、ネットで生きていく術を
学ばしてもらったり・・無視の技術とか荒らしへの耐性とか・・・
・・俺の精神がガキらしく、あんまり体得できなかったが。
「あのう」
どもった声が、トリップ中の俺をいきなり引き戻した。
真横に小学生の女の子がいる。
ゆるいウェーブのかかったダークブラウンの髪。控えめな
グレイのカラーのアンサンブルスーツをまとっている。
こんな時に小学生がこんな所にいるのもビックリだが、
もっと俺を戸惑わせたのは、彼女の眼鏡の向こうの大きな瞳から
数滴の涙がこぼれているという、即誤解を生みそうな
シチュエイションであった。
「あのう・・あのう、えと・・」
おどおどしながら目をこすり少女は、
「ははははははい何でしょう?え、ホント何?え?」
少女の涙にパニックになる実に情けないオトコに
一体の猫人形を見せた。
・・突如俺に閃光が走った。
ヤフゥ掲示板で速攻排除された、ある1つのレス。
『ラストコミケに出没します。某掲示板で「筋肉大暴走伝説」という
固定ハンドルを名乗っていた者です。当日は某掲示板の
マスコットも連れていきます。良かったら声をかけて下さい。
合言葉は・・・』
【タイトル】209
【 名前 】ヘタレ文スマソ4 <sage>
【 日付 】2000/10/12 10:00
「合言葉は・・・」
指さす手を震わせる俺を、
ターンエーの口をしているギコ猫がじいっと見つめていた。
「逝ってよし」
その解答はギコ猫の持ち主を微笑ませ、大粒の涙を1粒
地面に落とした。
コテハン筋肉大暴走伝説は、ワイドショーが喜んで非道意見として
取り上げるレス達の
生みの親御さんである。ネナベネカマとはよく聞くが・・
まさかティムポマンコ連呼人間がこんな美少女小学生とは、誰が予測
できただろう。
「あ、あたしこれでも高2なんですよ」
「うそっ」
「化粧もしないし、むかつくほど童顔ですからねー
仕方ないけど、ビックリなされるの。
まあそのかわり中身は・・ね。」
・・・・うん。
少女は照れて顔を伏せた。